第3章 我が国経済の新しい海外展開に向けて 〜世界経済危機(の余波)と震災ショックを乗り越えるために〜

第1節 世界市場の再検証と我が国製造業の戦略

4.我が国製造業のグローバル展開支援策

(1)我が国製造業の輸出強化支援

財団法人国際経済交流財団のアンケート調査によると、現在、自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)を活用している製造業は約27%、活用できる国・地域がないため、活用していない企業が約33%で、その内、約70%は、活用できる国・地域があれば活用する意向があり、FTA・EPA の活用に前向きな企業は全体の約半数となっている(第3-1-4-1 図)。企業が国際間取引に求めている具体的内容を見ても、「貿易の自由化」、「税関手続の円滑化」、「原産地規則の明確化」といった経済連携に関する内容を挙げる企業は多い(第3-1-4-2 図)。

第3-1-4-1 図 自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)の活用状況
第3-1-4-1 図 自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)の活用状況

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第3-1-4-2 図 我が国製造業が国際間取引に最も求めている具体的内容
第3-1-4-2 図 我が国製造業が国際間取引に最も求めている具体的内容

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経済連携の活用に前向きな企業がFTA・EPA の締結を希望する国としては、TPP 域内が最も高く、約75%、ついで中国が約60%、米国が約40%、EU が約30%となっており、4 か国・地域に集中している(第3-1-4-3 図)。

第3-1-4-3図 自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)の締結を希望する国・地域
第3-1-4-3図 自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)の締結を希望する国・地域

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逆に、活用できる国・地域がありながら、活用していない企業も約40%あり、また、活用できる国・地域がなく活用していない企業の内、活用できる国・地域とFTA・EPA を締結しても活用しない企業も25%以上おり、FTA・EPA の活用に消極的な企業も全体の約半数となっている(第3-1-4-1 図)。その理由として、「メリットが感じられない」と「利用方法が分からない」を挙げる企業が約90%と、理由のほとんどを占め、情報の周知が不十分であるといえる(第3-1-4-4 図)。

第3-1-4-4図 自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)を活用しない理由
第3-1-4-4図 自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)を活用しない理由

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財団法人国際経済交流財団のアンケート調査では、FTA・EPA を活用している企業の方が、活用していない企業より、今後の業績を増加傾向とする割合が約20%も高い点、留意されるべきであろう(第3-1-4-5図)。

第3-1-4-5図 自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)の活用状況別に見た今後の業績(売上高)見通し
第3-1-4-5図 自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)の活用状況別に見た今後の業績(売上高)見通し

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(2)我が国製造業に関するマクロ経済環境整備支援

財団法人国際経済交流財団のアンケート調査によると、マクロ経済環境の整備に対する要望として、為替の安定化、政策誘導や法人税減税等の税制改正の必要があると回答した企業が多かった(第3-1-4-6 図)。また、マクロ経済環境の整備により捻出された余裕資金の使途としては、設備投資、研究開発費、内部留保の拡充の順に多かった(第3-1-4-7 図)。実際に、経済環境の整備が国富へ還元されている成果として、外国子会社配当益金不算入制度9 の導入前後における海外子会社利益の使途を見てみると、導入後に本邦へ配当を還元する企業の割合が大幅に伸びていることが挙げられる(第3-1-4-8 図)。新興国市場の獲得に向けて、厳しい競争にさらされている我が国企業への側面支援となるマクロ経済環境の整備が今後も期待される。

第3-1-4-6図 マクロ経済環境の整備に対する要望
第3-1-4-6図 マクロ経済環境の整備に対する要望

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第3-1-4-7図 マクロ経済環境の整備により捻出された余裕資金の使途
第3-1-4-7図 マクロ経済環境の整備により捻出された余裕資金の使途

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第3-1-4-8図 外国子会社配当益金不算入制度の導入前後における海外子会社利益の使途
第3-1-4-8図 外国子会社配当益金不算入制度の導入前後における海外子会社利益の使途

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9 内国法人が、持株割合が25%以上で、保有期間が6 か月以上の外国法人から受け取る配当の95%相当額を益金不算入とする制度。




コラム5 ネクスト・ボリュームゾーンの獲得に向けたBOP市場の可能性

(i) BOPビジネス支援の背景と意義

世界経済における新たな市場として、新興国市場、とりわけ中間所得層市場(いわゆる「ボリュームゾーン」)の獲得競争が激化している。また、更に大きなポテンシャルを有する有望な市場として、途上国の低所得階層、いわゆる「BOP(Base Of the Economic Pyramid)層1」に注目が集まっている。

BOP 層に属する人口は、世界人口の約72%、約40 億人、市場規模としては日本の実質国内総生産に相当する5 兆ドル規模という極めて大きな市場であり、さらには、「通商白書2010 2」でも指摘したように、中長期的には前述の中間所得層に成長する可能性が広く指摘されている。そのため、この層について「ネクスト・ボリュームゾーン」、「ポスト新興市場」との呼び方もなされている。他方で、BOP 層は低い所得水準に起因する貧困、不十分な生活基盤・社会基盤等に起因する衛生面の問題といった社会課題に依然として直面しており、その解決とそれに資する経済協力が強く求められている。

このようなBOP 層に対しては、欧米のグローバル企業を中心に政府や援助機関、NGO 等と連携してビジネスとして積極的に取り組むとともに、現地の様々な課題の解決を目指す事例も数多く見られる。他方、我が国の状況に目を転じると、一部の先進的な企業において取り組んでいる事例は見られるものの、欧米諸国と比較して未だ少ないのが現状である。

こうした中、我が国行政にとっても、途上国における課題解決という経済協力政策及び海外展開・新規市場獲得支援という産業政策の双方の側面から、BOP ビジネスの普及拡大に向けた各種取組を行っている。

(ii)BOP ビジネス普及拡大に向けた基本的考え方と支援政策概要

このような欧米などの積極的な取組に対し、我が国企業によるBOP ビジネス参入を支援すべき重点分野の基本的な方向性については、各国支援機関における重点分野・支援実績、我が国企業の進出分野及び政府開発援助における重点分野(ODA 大綱等)を踏まえ、以下のようにまとめられている(コラム第5-1図)。

また、地理的近接性やビジネスとしての発展性(例:BOP 人口約40億人のうち、約30億人がアジア)等を踏まえ、アジアに重点を置きつつも、発展途上国を広く対象とすべきだと考えられる。

コラム第5-1図 日本企業にとって有望な主な分野と社会的課題
コラム第5-1図 日本企業にとって有望な主な分野と社会的課題

また、我が国の支援施策、海外機関の支援施策の状況・特徴を踏まえ、「BOP ビジネス政策研究会」においては、BOP ビジネス参入を推進するためには、1. BOP ビジネスに必要な情報等の獲得支援、2.パートナーシップの構築支援、3.現地BOP 層・関係者への普及・啓発支援、4.資金・金融面の課題の解決支援、5.技術開発の促進支援、6.途上国のビジネスインフラ(ハード・ソフト)整備の推進、7.各種支援策の有機的な連携の必要性(BOPビジネス推進プラットフォームの整備)の対応策の方向性が指摘されている。

これを踏まえ、平成22 年度以降、1. BOP ビジネス支援センターの設立・運営・機能強化、2.官民連携による具体的ビジネスの形成支援、3.各種調査・普及啓発事業の実施に取り組んでいる。(コラム第5-2図)

コラム第5-2 図 BOPビジネス推進に向けた平成22 年度の取組及び今後の取組案
コラム第5-2 図 BOPビジネス推進に向けた平成22 年度の取組及び今後の取組案

(iii) BOP ビジネス支援センター

「BOP ビジネス支援センター」は、BOP ビジネスを総合的に支援する仕組みとして、平成22 年10 月13 日に経済産業省により設立された。本支援センターは、企業・NGO / NPO・国際機関・支援機関等を会員とし、1.ポータルサイトによる一元的情報提供、2.マッチング(関係者間の情報交換・連携促進)支援、3.相談窓口により、日本企業等によるBOP ビジネスの促進を目指している(コラム第5-3図)。

コラム第5-3 図 BOP ビジネス支援センターの具体的サービス内容
コラム第5-3 図 BOP ビジネス支援センターの具体的サービス内容

本支援センターの会員は順調に増えており、平成23 年5 月時点で1,300 人以上の会員が登録されるなど、BOPビジネスに対する関心の高さが見受けられる(コラム第5-4図)。

コラム第5-4 図 BOP ビジネス支援センター会員数の推移と内訳
コラム第5-4 図 BOP ビジネス支援センター会員数の推移と内訳

また、会員へのアンケートによると、対象国についてはインド・バングラデシュ等のアジア圏に、対象分野については教育、環境エネルギー機器、水・衛生等に特に関心が集まっている(コラム第5-5図)。

コラム第5-5図 興味のあるBOPビジネス対象国及び分野
コラム第5-5図 興味のあるBOPビジネス対象国及び分野

(iv)BOP ビジネス支援センターの今後の方向性

これまでの協議会や企業へのアンケート等から得られた、改善すべき点・新たに取り組むべき点を踏まえ、今後は、「1. 他機関との連携強化」、「2. 情報提供機能の強化」、「3. マッチング機能の強化」、「4.BOPビジネス支援センターの普及・啓発の促進」に取り組むことが重要だと考えられ、特に、既存の情報の活用・関係機関との連携強化に力を入れるとともに、新たな情報を獲得・整理するための調査を重点的に推進することが重要と考えられる(コラム第5-6図)。

コラム第5-6 図 BOP ビジネス支援センターの今後の方向性(案)
コラム第5-6 図 BOP ビジネス支援センターの今後の方向性(案)




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