第1章世界経済の動向

第1節 不安を抱え、回復への足取りの重い世界経済

2.主要な経済指標の動向

1.の全体概況を踏まえて、2011年の世界経済の主な減速要因を整理すると以下のとおりである。

以下、こうした要因が生じる背景となった主要国・地域の経済動向を、主な経済指標を通じて確認する。

(1)金融市場の動向 〜欧州債務危機の拡大懸念により混乱〜

1. 周辺諸国の財政問題からユーロ圏金融市場、さらに域外への影響拡大

主要国の株価は、2011年に入ると4月にかけて上昇が続いたが、その後は伸び悩んだ。8月には米国経済の先行き、欧州債務問題の深刻化に対する懸念が台頭し、株価は大幅に下落した(第1-1-2-1図)。

第1-1-2-1図 主要国の株価動向
第1-1-2-1図 主要国の株価動向

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国債利回りをみると、ギリシャのデフォルト懸念を巡って夏場以降ギリシャ国債の利回りが急上昇していったほか(第1-1-2-2図)、イタリア、スペインの信用不安から、両国の国債利回りが金融支援要請の目安とされる7%を超える場面も見られた(第1-1-2-3図)。保証料率の推移をみても、これと整合的である(第1-1-2-4図)。

第1-1-2-2図 主要国の国債利回りの推移
第1-1-2-2図 主要国の国債利回りの推移

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第1-1-2-3図 イタリア・スペイン10年物国債利回り
第1-1-2-3図 イタリア・スペイン10年物国債利回り

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第1-1-2-4図 南欧等諸国のCDS保証料率の推移
第1-1-2-4図 南欧等諸国のCDS保証料率の推移

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また、為替市場では8月以降ユーロ安が進む一方、安全資産とされる円が買われて円高が進んだ(第1-1-2-5図)。8月19日のニューヨーク外国為替市場の円相場は1ドル=75円95銭まで円高が進行し、同年3月17日につけた76円25銭の戦後最高値を更新した。

第1-1-2-5図 主要国の為替動向
第1-1-2-5図 主要国の為替動向

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このように、当初の、一部南欧等諸国の財政危機は、イタリア、スペインなどの財政への懸念の高まりによりユーロ圏全体の金融市場の問題となり、更には欧州域外国へと拡大した。市場ではリスク回避スタンスが強まり、欧州や新興国からの資金流出と日本への資金逃避の状況が顕著になった。日銀が公表した2011年10〜12月期の資金循環統計(速報)によると、同年末時点の海外投資家の国債保有残高は78兆円(前年比37.8%増)と、過去最高を記録した。2012年に入ってから欧州経済に対する市場の不安は後退したが、同年3月に入ると、スペインの財政への懸念が強まり、市場ではスペインのみならずイタリアについても国債利回りが急上昇するなど、危機への懸念は払拭されていない。

株価の世界合計時価総額をみても、2011年12月末時点で前年比13.6%のマイナスとなり、2012年に入って1-2月は増加したが、3月には再び微減となっている。(第1-1-2-6図)。

第1-1-2-6図 世界合計時価総額の推移(2011年1月〜2012年3月)
第1-1-2-6図 世界合計時価総額の推移(2011年1月〜2012年3月)

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また、各国・地域別に株価の時価総額をみると、2011年12月、大多数の国・地域において1年前よりも減少している(第1-1-2-7図)。欧州債務危機の深刻化、米国の景気低迷、新興国の景気減速等により世界経済の先行きが不安視される中、2011年は世界的に景気が減速した状況が改めてわかる。

第1-1-2-7図 各国・地域別の株価時価総額(前年同月比、2012年12月)
第1-1-2-7図 各国・地域別の株価時価総額(前年同月比、2012年12月)

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2. 新興国の金融市場への影響拡大〜資金の流出入により大きく動揺〜

世界経済危機の発生以降、新興国には高い経済成長と高金利を求めて多額の資金が国外から流入し、新興国の株式市場の発展と安定した経済成長を支えていた6。しかし、2011年8月以降、欧州債務問題の深刻化に伴い、中国、インド、ブラジル等の新興国からの資金引揚げが生じた(第1-1-2-8図、1-1-2-9図)。

6 一方、資金流入によって、通貨高圧力の高まりや、高インフレ、不動産価格の高騰といった問題ももたらした。


第1-1-2-8図 欧州の金融機関によるアジア、新興国向け与信状況(前期比)
第1-1-2-8図 欧州の金融機関によるアジア、新興国向け与信状況(前期比)

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第1-1-2-9図 新興国への資金の流れ
第1-1-2-9図 新興国への資金の流れ

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主な背景として、欧州の民間銀行が、債務問題の深刻化による信用収縮に備えて手元のドル資金を確保するため、新興国から企業向け融資を引き揚げ、株式、国債、コモディティ等を売却・現金化したこと、投資家のリスク回避姿勢が強まり、価格変動の度合いが高い新興国の株式を売却したこと等が挙げられる。この結果、新興国の株価は下落(第1-1-2-10図)、また、投資家が株の売却による資金を本国に戻す(リパトリエーション)際、新興国通貨を売って自国通貨に替えるため、新興国通貨が急激に下落した(第1-1-2-11図)。新興国は、こうした資本流出に歯止めをかけるための対策を講じ7、また、外貨準備の売却による為替介入等を実施した(第1-1-2-12図)。

7 例えば、インドは、2012年1月15日より、外国個人投資家によるインド株の直接購入を解禁、ブラジルは同年12月1日、外国人投資家の株式投資に係る税率の0%への引下げを含む金融取引税の減免措置を発表。


第1-1-2-10図 新興国の株価の推移
第1-1-2-10図 新興国の株価の推移

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第1-1-2-11図 新興国の対ドル相場の推移
第1-1-2-11図 新興国の対ドル相場の推移

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第1-1-2-12図 主要国の外貨準備高と為替レートの推移
第1-1-2-12図 主要国の外貨準備高と為替レートの推移

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このように、新興国への資金流入が著しく減少した結果、銀行の資金繰りが悪化し、貸出基準の厳格化と需要の低下がみられた(第1-1-2-13、1-1-2-14図)。こうした状況が長期化すれば、新興国の景気を下押しし、世界経済の減速を招きかねないとの懸念が高まった。

第1-1-2-13図 新興国市場の銀行の貸出基準の状況
第1-1-2-13図 新興国市場の銀行の貸出基準の状況

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第1-1-2-14図 新興国市場の銀行の貸出需要の状況
第1-1-2-14図 新興国市場の銀行の貸出需要の状況

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しかし、新興国の資金流出は2011年10月以降は沈静化に向かい、2012年に入って欧州債務危機にある程度の落ち着きがみられるようになると、新興国市場では、資金流入が再び活発化した。このことから、2011年秋口の資金流出はリーマン・ショック後の状況と比べても、影響は限定的であったとの指摘がある8

ただし、先進国・地域がもたらす下ぶれリスクは依然として存在しており、新興国としては、各国に見あった適切なマクロ経済政策を実施することが主要な課題である、とされている9

8 IMF(2012a)

9 同上。


3. 世界的なマネーフローの変化

以上のような国際金融市場の動向を反映し、2011-12年にかけて世界的なマネーフローに変化が生じた。これまで見てきた世界経済の流れを念頭に置きつつ、世界経済危機前後まで遡って世界のマネーフローの様子を追うと、以下のようになる。

(a)危機発生前(2007年第2四半期):第1-1-2-15図

危機発生前の2007年第2四半期においては、米国に向けて、全ての地域から資本が流入している。かつ、いずれも、米国に流入する資本の方が、米国から流出する資本よりも多い。また、米国・欧州間については、いずれの地域との間よりも大きな資本の流れがある。

新興国についても、グローバル投資家のリスク選好が高まったことを背景に、証券投資(株式、債券)や直接投資などが拡大した結果、2007年夏頃まで資本流入が拡大した。

第1-1-2-15図 主要国・地域間の資金の流れ(2007年第2四半期)
第1-1-2-15図 主要国・地域間の資金の流れ(2007年第2四半期)

(b)危機発生時(2008年第3四半期):第1-1-2-16図

2007年夏以降、サブプライムローン問題の発生、さらに2008年秋のリーマン・ブラザーズの破綻を契機に、投資家のリスク選好は急速に低下し、その結果、資本を引き揚げる動きが顕著となった。すなわち、欧州、中南米、中東アフリカから米国へ流入する資本も、米国からアジア太平洋諸国、中東アフリカ、オフショアへ流出する資本も、いずれもマイナス(引揚げ超過)となった。ただし、アジア・太平洋地域から米国に向かう資本の流れは、同時期においても前期比で2割弱の減少幅にとどまっている。

第1-1-2-16図 主要国・地域間の資金の流れ(2008年第3四半期)
第1-1-2-16図 主要国・地域間の資金の流れ(2008年第3四半期)

(c)危機発生から1年後(2009年第3四半期):第1-1-2-17図

世界経済はアジア新興国を中心に持ち直しの動きが広がり、2009年春には底打ちした。資金フローにおいても、危機発生から1年後の2009年第3四半期には、米国を巡る資本の流れが回復し始めた。特に、投資家のリスク選好が回復し、アジア・太平洋については、米国から世界経済危機以前を上回る資本が流入し、中南米についても、米国からの資本流入が危機以前のレベルまで回復した。

第1-1-2-17図 主要国・地域間の資金の流れ(2009年第3四半期)
第1-1-2-17図 主要国・地域間の資金の流れ(2009年第3四半期)

(d)危機発生から2年後(2010年第3〜4四半期):第1-1-2-18図,第1-1-2-19図

危機発生から2年後の2010年第3四半期には、1年前(2009年第3四半期)に比べて、米国への資金の流れが更に強まった。特に、中国はじめ新興国の存在感が高まる中、アジア・太平洋地域との資金の流れが強まっており、同地域から米国への資金流入が危機発生前(2007年第2四半期)を上回る一方、米国から同地域への資金の流れも、2010年第3四半期には危機発生前の2倍強,第4四半期には3倍強となった。他の地域についても、中東アフリカを除いて回復した。

欧州については、2010年第3四半期、オフショア金融センターはじめ西半球諸国からの流入が回復したが、第4四半期には再び同地域による資金引揚げが生じた。また、2010年第4四半期は、米国との間の流出入が前期に比べて減少し、特に、米国から欧州への流入が第3四半期の1675億ドルから第4四半期の182億ドルへと大幅に減少した。こうした欧州への資金流入の後退は、2010年末にかけて、アイルランドの財政状況に対する懸念が顕在化し、欧米を中心に市場マインドが悪化したことによると考えられる。

世界全体としては、2010年第3-4四半期の資金の流れは、2007年第2四半期以来の安定を見せた。

第1-1-2-18図 主要国・地域間の資金の流れ(2010年第3四半期)
第1-1-2-18図 主要国・地域間の資金の流れ(2010年第3四半期)

第1-1-2-19図 主要国・地域間の資金の流れ(2010年第4四半期)
第1-1-2-19図 主要国・地域間の資金の流れ(2010年第4四半期)

(e)欧州債務問題の深刻化(2011年第1〜4四半期):第1-1-2-20図、第1-1-2-21図、第1-1-2-22図、第1-1-2-23図

米国と欧州の間の資金フローは、2011年第1四半期、著しく拡大し、2007年2月以来で最も活発となった(第1-1-2-20図)。しかし、その後の欧州債務危機への懸念が高まる中、米国はじめオフショア金融センターその他西半球諸国、アジア太平洋地域による欧州からの資金引揚げが加速した。2011年第3四半期に危機が深刻化すると、米国による欧州からの資金引揚げは1,112億ドルに達した。

一方、欧州資本の引揚げも目立つ。欧州の各銀行は、信用収縮に備えて手元のドル資金を厚めにするため新興国からの資金引揚げを実施、また、市場では投資家のリスク回避姿勢が強まった。こうした背景により、2011年第3-4四半期は、米国やアジア・太平洋地域、オフショア金融センターその他西半球諸国、中東アフリカ等における資金流出が活発化した。

第1-1-2-20図 主要国・地域間の資金の流れ(2011年第1四半期)
第1-1-2-20図 主要国・地域間の資金の流れ(2011年第1四半期)

第1-1-2-21図 主要国・地域間の資金の流れ(2011年第2四半期)
第1-1-2-21図 主要国・地域間の資金の流れ(2011年第2四半期)

第1-1-2-22図 主要国・地域間の資金の流れ(2011年第3四半期)
第1-1-2-22図 主要国・地域間の資金の流れ(2011年第3四半期)

第1-1-2-23図 主要国・地域間の資金の流れ(2011年第4四半期)
第1-1-2-23図 主要国・地域間の資金の流れ(2011年第4四半期)

(2)景況感、景気先行指数 〜下ぶれリスクの高まりを背景に悪化〜

以上のように金融市場の動揺が続き、2011年を通じて世界経済の下ぶれリスクが高まる中、2011年は世界各国で景況感が悪化した。ユーロ圏の製造業購買担当者指数は特に弱く、2011年11月(46.4)まで4か月連続で景況感の分岐点とされる「50」の数値を下回り、同年12月は46.9と微増にとどまった。また、ギリシャ(42.0)、スペイン(43.7)、イタリア(44.3)の指数の低さが目立った(第1-1-2-24図)。

第1-1-2-24図 主要国の製造業購買担当者指数
第1-1-2-24図 主要国の製造業購買担当者指数

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2011年12月以降、先進国、新興国のいずれもPMIが上昇した(第1-1-2-25図)。背景として、タイ洪水の影響が解消されつつあること、米国の景気に改善の動きが見られること、欧州債務危機への懸念が一定の落ち着きを取り戻したこと等を背景に、各国の鉱工業生産並びに貿易の勢いが増したことが考えられる。

第1-1-2-25図 製造業購買担当者指数(先進国、新興国)
第1-1-2-25図 製造業購買担当者指数(先進国、新興国)

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OECD景気先行指数(2012年4月公表分)をみると、2011年後半にかけて先進国、新興国共に低下が続いたが、OECD加盟国については2012年2月時点で前年(2011年)12月から4か月連続の上昇と、回復基調が見受けられた(第1-1-2-26図)。ただし、国・地域によるばらつきがある。日本と米国は6か月連続の改善、また、韓国も2012年に入って回復傾向となり、いずれも景気の分岐点の100を上回る一方、ユーロ圏は2011年10月以降、100を下回る水準での推移となった。また、EUの主要4か国であるイタリア、フランス、ドイツ、英国はいずれも引き続き100を下回るものの、ドイツと英国はプラスに転じており、一方、フランスとイタリアはマイナスで推移した(第1-1-2-27図)。新興国については、中国とインドが6か月連続のプラス、ブラジルが3か月連続のプラスとなり、いずれも改善傾向を示した。また、ロシアは2010年7月以降、100を上回って推移した。一方、インドネシアは2012年に入りマイナスが続いた(第1-1-2-28図)。

第1-1-2-26図 OECD景気先行指数(主要先進国)
第1-1-2-26図 OECD景気先行指数(主要先進国)

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第1-1-2-27図 OECD景気先行指数(EU主要国)
第1-1-2-27図 OECD景気先行指数(EU主要国)

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第1-1-2-28図 OECD景気先行指数(主要新興国)
第1-1-2-28図 OECD景気先行指数(主要新興国)

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(3)生産動向 〜景気低迷により停滞〜

1. 鉱工業生産〜2011年は横ばい、2012年に入り回復傾向〜

総合的な鉱業・製造業の活動状況を示す鉱工業生産指数は、2010年中は緩やかな回復を見せたが、2011年に入り、東日本大震災によるサプライチェーンへの衝撃、夏場以降の米国の債務上限引上げ問題等を契機とする米国経済の減速懸念、欧州債務危機等、様々な下押し要因が影響を及ぼした結果、2011年の鉱工業生産指数はおおむね横ばいで推移した(第1-1-2-29図)。我が国については、3月の東日本大震災の影響によって大きく落ち込み、年後半にはタイ洪水によるサプライチェーン被害を受けたが、2012年に入ると、鉱工業生産指数は急上昇を示した。ユーロ圏については、債務危機が深刻化する中で下降傾向をたどったが、2012年に入って回復の動きも見られた。新興国については、2011年末以降、上昇が続いた。

第1-1-2-29図 鉱工業生産指数の推移
第1-1-2-29図 鉱工業生産指数の推移

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2. 自動車販売台数

世界的な景気減速の影響を受けて、2011年の主要国の自動車販売台数は伸び悩みが目立つ結果となった(第1-1-2-30図)。世界の主要市場のうち、第1位の中国、第2位の米国をはじめ、インド、カナダは、販売台数は前年よりも伸びたものの、伸び率は前年比で低下した(第1-1-2-31図)。また、日本をはじめ、ブラジル、フランス、英国、韓国では販売台数、伸び率のいずれも前年比で減少した。他方、ドイツとロシアは前年比の伸び率が加速した。これは、ドイツでは雇用環境の改善によって購買意欲が高まったことが、また、ロシアではエネルギー価格上昇に伴う実質所得の増加に支えられて、個人消費が堅調であることが背景と考えられる。

第1-1-2-30図 主要国の新車販売台数の推移
第1-1-2-30図 主要国の新車販売台数の推移

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第1-1-2-31図 主要国の自動車販売台数及び伸び率(対前年比)の推移
第1-1-2-31図 主要国の自動車販売台数及び伸び率(対前年比)の推移

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なお、新興国の新車販売台数は堅調に伸びており、2011年は先進国にわずか171万台差まで迫った(第1-1-2-32図)。新車販売台数を、上位国について、2004年と2011年の2時点で比較してみると、新興国は22.7%から48.8%へと2倍以上に増加した(第1-1-2-33図)。この結果、販売台数の順位は中国が米国と日本を抜いて1位となり、ブラジル、インド、ロシアも順位を上げている(第1-1-2-34図)。

第1-1-2-32図 主要先進国・新興国の新車販売台数の推移
第1-1-2-32図 主要先進国・新興国の新車販売台数の推移

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第1-1-2-33図 主要先進国・新興国の新車販売台数のシェアの変化(2004年、2011年)
第1-1-2-33図 主要先進国・新興国の新車販売台数のシェアの変化(2004年、2011年)

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第1-1-2-34図 新車販売台数上位国の順位とシェアの変化(2004年、2011年比較)
第1-1-2-34図 新車販売台数上位国の順位とシェアの変化(2004年、2011年比較)

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(4)経済成長率(GDP)と労働市場の動向

上述のような世界的な景況感の低迷、低調な生産活動等を背景に、2011年の主要国・地域の経済経済成長率(GDP)は総じて伸び悩んだ。

先進国に関しては、米国では2011年後半から緩やかな回復への兆しが見受けられる一方、雇用・住宅市場を中心に景気の先行きはいまだ不安定である。ユーロ圏では欧州債務危機の深刻化を受けて、第4四半期は景気が減速した。2012年に入って一定の落ち着きがみられるものの、当面は再び景気後退が見込まれている10。英国は、2011年第3四半期、2012年第1四半期と、「景気後退」と判断される2期連続マイナス成長となった。我が国は、2011年3月の東日本大震災によって一部の素材や部品の供給が滞り、第1四半期は大幅なマイナス成長となると共に、限定的ながら、国外に対しても減速要因となった。さらにタイの洪水や外需減速等により、2011年第4四半期もマイナス成長となったが、2012年第1四半期には、エコカー補助金の復活等による個人消費の増加、復興需要の顕在化による公共投資の拡大、輸出の持ち直し等が寄与し、予想を上回る伸びとなった(第1-1-2-35図)。

10 IMF(2012a)


第1-1-2-35図 GDP成長率の推移(先進国)
第1-1-2-35図 GDP成長率の推移(先進国)

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新興国に関しては、2011年、物価抑制に向けた金融引締め策の実施、欧州債務危機の金融面、貿易面での波及等により、減速傾向を示した。アジア新興国については、これらに加えて東日本大震災によるサプライチェーン寸断、タイの洪水等も影響した。世界経済の牽引役とされる中国は、依然として底堅い成長を維持したものの、伸び率にやや鈍化が見られる。インドではインフレの進行に対応した政策金利の引上げによる借入れコスト上昇が企業活動を抑制した。ブラジルは景気過熱感の高まりを受けた財政・金融引締め政策やレアル高による輸出鈍化が経済成長の減速につながった。一方、ロシアは原油高に伴う所得増を受け、内需を中心とする経済成長が目立つ(第1-1-2-36図)。

第1-1-2-36図 GDP成長率の推移(新興国)
第1-1-2-36図 GDP成長率の推移(新興国)

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こうした中、労働市場の回復も遅れた。主要国においては、2009年をピークとする失業率の改善傾向が2011年も続いたが、リーマン・ショック前の水準と比較すると、依然として十分な低下が見られない(第1-1-2-37図)。フランス、英国、豪州は2011年後半に悪化が見られる。また、雇用回復の遅れが続く米国では、同年第4四半期から2期連続で失業率が低下し、市場では雇用の本格的な回復への兆しとの期待が見受けられるものの、いまだ高い水準にある。そうした中、ドイツの失業率の低下が際立っている(第1-1-2-38図)。

第1-1-2-37図 失業率の推移(主要国)
第1-1-2-37図 失業率の推移(主要国)

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第1-1-2-38図 主要国の失業率の推移(指数)
第1-1-2-38図 主要国の失業率の推移(指数)

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一方、スペイン、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、イタリアといった債務問題を抱えるユーロ圏各国については、リーマン・ショック後も、失業率は改善することなく上昇し続けており(第1-1-2-39図)、その影響は、主要国の経済成長との差に表れている(第1-1-2-40図)。

第1-1-2-39図 失業率の推移(南欧諸国等)
第1-1-2-39図 失業率の推移(南欧諸国等)

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第1-1-2-40図 GDP成長率の推移(前年比、南欧等諸国)
第1-1-2-40図 GDP成長率の推移(前年比、南欧等諸国)

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(5)物価動向と金融政策

日本、米国、ユーロ圏、英国等の主要先進国は、デフレ傾向や景気減速に対する懸念から、低金利政策に加えて量的緩和、資産買入れといった非伝統的金融政策による緩和的なスタンスを維持している(第1-1-2-41図、第1-1-2-42図)。欧州は、2011年4月、金融危機後初めて政策金利を引き上げ、金融引締め方向に踏み出したが、その後、欧州債務危機の深刻化と景気減速を背景に、2011年11月には再び政策金利を引き下げた。米国では、2011年秋口から2012年にかけて、緩やかながら景気の回復傾向が見受けられるようになり、雇用と住宅価格もこれまで続いた低迷状態から上向く兆しが出ているが、いまだ勢いを欠いており、米連邦準備理事会(FRB)は超低金利政策を2014年終盤まで継続する方向性を示している。

第1-1-2-41図 消費者物価指数の推移(主要先進国)
第1-1-2-41図 消費者物価指数の推移(主要先進国)

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第1-1-2-42図 政策金利の推移(主要先進国・地域)
第1-1-2-42図 政策金利の推移(主要先進国・地域)

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新興国では、2009年後半以降の力強い回復と先進国の金融緩和による大量の資金流入により、インフレの進行や自国通貨の増価が強く懸念されるようになった。併せて、資源・食料価格の世界的な高騰もあり、物価上昇圧力が高まった。これに対し、2010年中盤以降、アジアを中心とする新興国は、政策金利や預金準備率の引上げ、資本流入規制の強化等を実施してきた(第1-1-2-43図)。この金融引締めの効果により、2011年後半には新興国の消費者物価指数の上昇に歯止めがかかってきた(第1-1-2-44図)。一方、それまでの金融引締めや世界経済の減速により景気の先行き懸念が強まったことから、2011年後半には金融緩和への転換が見受けられ、2012年に入ってからも、インドが3年ぶりの利下げを実施、ブラジルやタイも追加利下げを行う等、金融緩和政策への転換の流れが続いている。

第1-1-2-43図 政策金利の推移(主要新興国)
第1-1-2-43図 政策金利の推移(主要新興国)

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第1-1-2-44図 消費者物価指数の推移(主要新興国)
第1-1-2-44図 消費者物価指数の推移(主要新興国)

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(6)住宅価格

先進国では、デフレ傾向や景気減速懸念により、2011年も引き続き住宅価格が低迷した(第1-1-2-45図)。米国では2011年後半、景気が上向くにつれて住宅価格にも改善の兆しが見受けられるものの、先行きの不透明感は払拭されていない。

第1-1-2-45図 主要先進国の住宅価格の推移(指数)
第1-1-2-45図 主要先進国の住宅価格の推移(指数)

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アジアNIEs、豪州においても、2011年に入ってからの景気減速傾向を反映し、住宅価格はそれまでの継続的な上昇から減速傾向へと転じた国が目立つ(第1-1-2-46図)。

第1-1-2-46図 アジアNIEs、豪州の住宅価格の推移(指数)
第1-1-2-46図 アジアNIEs、豪州の住宅価格の推移(指数)

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なお、中国では、2009年以降、都市部を中心に住宅価格が急騰し、2010年以降も高水準で推移した(第1-1-2-47図)。住宅価格の上昇要因としては、都市部の人口増加による住宅需要の高まり、国内銀行の金融緩和や海外からの資金流入を背景とする不動産への投資拡大、地方政府による積極的な都市開発等が指摘されている。中国政府は2010年から実施してきた不動産価格抑制策を2011年に入って更に強化し、2012年初めまでに国内の多くの地域で不動産価格は前年比で下落に転じた。政府の規制により、足下では不動産価格の上昇に歯止めがかかっているが、今後も中国経済は拡大傾向が見込まれること、都市部の人口増加が予測されること等により、不動産の価格上昇圧力が続く可能性がある。

第1-1-2-47図 中国の住宅価格の推移(前年同月比)
第1-1-2-47図 中国の住宅価格の推移(前年同月比)

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(7)商品市場〜原油価格の高騰が各国経済に打撃〜

2010年に急激な価格上昇に見舞われた商品市場では、2011年に入ると、世界経済の見通しの不透明さ、新興国の景気減速懸念等を背景に、第2四半期以降、商品価格が低下した。しかし、2011年秋口以降、中東アフリカの政治不安等を背景に原油価格が高騰し、また、食料品価格も多少落ち着いたとはいえ上昇基調が見受けられる。この結果、インフレ圧力の高まりや、コモディティの輸入依存度の高い中・低所得国の国民生活への打撃等により、世界経済の不安定さを招く一因となった。

1. 地政学的なリスクの高まりと原油価格の高騰

2010年12月のチュニジアにおける暴動を発端に中東の政情が不安定化し、原油価格が高騰したことは、2011年に入ってからの世界的な景気減速の大きな要因のひとつとなった。その後、2011年5月には原油価格が急落し、いったん落ち着いたものの、同年11月にはイラン情勢の緊迫化による原油の国際的な需給逼迫圧力が高まり、原油価格が再び高騰、2012年に入ってからも原油価格は高止まりしている(第1-1-2-48図、第1-1-2-49図)。これが長期化すれば、家計、企業負担の増加につながり、景気回復の重石となることが懸念される。

第1-1-2-48図 原油価格の推移
第1-1-2-48図 原油価格の推移

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第1-1-2-49図 原油需要の推移
第1-1-2-49図 原油需要の推移

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2. 食料価格の推移

2010年に高騰した食料品価格は、2011年の第2四半期以降、低下した(第1-1-2-50図)。穀物、砂糖、油脂の国際価格が低下した主な理由としては、インド、EU、タイ、ロシアの豊作を背景に、2012年度は世界的に生産と供給が改善され、大幅な生産余剰が生じる、との見方を反映したものと考えられている11

11 国連食糧農業機関(FAO)メディアセンター "FAO Food Price Index ends year with sharp decline"(2012年1月12日)http://www.fao.org/news/story/en/item/119775/icode/


第1-1-2-50図 食料品価格指数の推移
第1-1-2-50図 食料品価格指数の推移

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一方、同年末以降の原油価格急騰を受けて、2012年に入ると、食料価格は再び上昇傾向にある。今後、新興国における堅調な経済成長が予測されており、世界的な食料需要は高まるものと考えられ、食料価格は上昇基調で推移することが見込まれている。

このように、コモディティ価格の大幅な変動が、世界経済の不安定化の大きな要因となっている点に関して、G20の下に設立された作業部会が2011年11月4日に報告書を公表した。それによると、

と述べている。

(8)まとめ

ここまで、2011年に入って以降の世界経済の動向を、経済指標を通じて概観した。世界経済の回復は全体として弱く、主要国経済の更なる失速と下振れリスクの高まりに対する懸念は払拭されていない。世界銀行は「現時点では表面化していないが、今後、資金がより広い範囲で滞り、リーマン・ショック時と同程度の激震が発生するリスクは引き続き存在する」と指摘している12

世界経済は引き続き脆弱さを抱えており、今後の回復への道筋が懸念される。

12 WorldBank "Global Economic Prospects"(Jan,2012)





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