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第2節 一人当たり実質GDP成長率の要因分解

 前節では、TFP上昇率の低下と労働時間の低下が1990年以降の我が国のGDP成長率の下押し要因であることが示された。以下では、一人当たり実質GDP成長率の要因分解を行う。これにより、労働生産性上昇率の鈍化が1990年代以降、我が国の一人当たり実質GDP成長率を継続的に押し下げた要因であったことを示す。

 日本の一人当たり実質GDP成長率を、①労働生産性(マンアワーベース4)、②一人当たり労働時間、③就業率、④生産年齢人口比率の4つの要因に分解5してみると、まず、労働生産性の寄与は1985-1989年をピークに、総じて減少傾向にあることがわかる。(第Ⅰ-1-2-1図)一人当たり労働時間については、分析期間中、マイナスに寄与しているが、方向感が定まらない上に、後に見るように他国も同様の傾向にある。一方、生産年齢人口比率は、1990年以降、一貫してマイナス方向に働いており、そのマイナス幅は年代を追うごとに拡大している。この生産年齢人口比率の低下幅は、以下で見る他国と比較しても、類例のない規模である。これらの要因が相まって、1990年以降、日本の一人当たり実質GDP成長率は2%に満たない水準で推移している。

第Ⅰ-1-2-1図 日本の一人当たり実質GDP成長率の要因分解

 同様の方法で米国及び欧州主要国の一人当たり実質GDP成長率を要因分解する(第Ⅰ-1-2-2図)。米国について見ると、労働生産性の寄与が1%後半を軸に上昇下降を繰り返して推移している。リーマン・ショックの影響を含む2005-09年では、深刻な景気後退による雇用調整を反映して就業率の変化が-0.9%と大きく落ち込んでおり、一人当たり実質GDP成長率を押し下げる要因として働いている。

第Ⅰ-1-2-2図 一人当たり実質GDP成長率の要因分解

 ドイツ6(1991年以前は西ドイツ)では、東西ドイツ統一及びリーマン・ショックによる影響を含む1990-94年及び2005-09年を除いて、2%以上の労働生産性上昇による寄与を維持している。一人当たり労働時間は我が国同様、マイナス寄与が継続している。他方、近年(2005-09年)では、就業率の上昇が他の要因によるマイナス寄与を補い、一人当たり実質GDP成長率の押し上げに貢献している。

 英国では、1985-89年及び2005-09年を除いて、2~3%の労働生産性上昇による寄与を維持している。一方、我が国と同様に一人当たり労働時間が、1990年以降、継続的にマイナス寄与している。

 最後に、フランスでは、1971年以降、労働生産性上昇による寄与が総じて低下傾向を示しているほか、一人当たり労働時間も全期間で大きなマイナス寄与となっている。

 主要先進国と比較しても、労働生産性上昇による寄与の低下傾向が一人当たり実質GDP成長率の下押し要因になったのは日本とフランスのみであることが確認された。

4 マンアワーとは、労働者数×労働時間で計算される総労働投入量である(RIETIホームページ、http://www.rieti.go.jp/jp/database/JIP2012/ans.html?page=Q5外部リンク(新しいウィンドウが開きます))。

5 一人当たり実質GDP成長率の分解方法については付注2を参照。なお、以下本節の文脈では、各要因の上昇率と各要因の寄与を同じ意味で用いる。

6 ドイツについては、1976年以前の一人当たり労働時間データが存在しないため、1971-74年の期間については一人当たり労働時間の変化の寄与を考慮していない。

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