経済産業省
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第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第3章 ものづくりの基盤を支える教育・研究開発
第1節 ものづくりにおける理工系人材の戦略的育成

1.科学技術イノベーションを推進する人材育成について

(1)優れた若手研究者の育成、活躍促進

科学技術イノベーションは我が国の成長戦略の重要な柱の一つであり、我が国が成長を続け、新たな価値を生み出していくためには、これを担う創造性豊かな若手研究者の育成・確保が重要である。そのためには、若手研究者が自らの自由な発想に基づいた研究に挑戦することができるよう、研究環境を整備していくことが求められている。

文部科学省では、従来、優秀な若手研究者が自らの研究に専念できる環境を整備し、安定的なポストに就けるようにするために「テニュアトラック制」を導入する大学等を支援する「テニュアトラック普及・定着事業」の取組を始めとして、キャリアパスの整備や博士課程の学生及び若手研究者等に対する経済的な支援などの取組を講じている。

さらに、2014年度からは、複数の大学等でコンソーシアムを形成し、企業等とも連携して、若手研究者等の流動性を高めつつ、安定的な雇用を確保しながらキャリアアップを図るとともにキャリアパスの多様化を進める仕組みについて「科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業」の取組を開始しており、2015年度は当該取組を拡大する。

また、2013年12月に公布された、「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」において、大学等の研究者などが労働契約法の特例の対象となり、無期労働契約に転換するまでの期間が10年に延長された。これにより、研究者が契約期間中にまとまった研究業績等を上げ、適切な評価を受けやすくなり、安定的な職を得られることが期待されている。

これらの新たな事業や制度等も活用しつつ、引き続き、研究者の育成や雇用の安定などの処遇の改善を図り、若手研究者の活躍を促進していく。

図311-1 若手研究者等のキャリアパスの多様化を進める取組

(2)多様な場で活躍できる人材の育成

我が国の成長の原動力となるイノベーション創出を推進するためには、多様な場で活躍できる人材の育成が必要であり、その担い手となる若手研究者が、早い段階から産業界を含む異分野・異業種とのインタラクションの機会を得ることが望ましい。

しかし、日本では、企業での博士号取得者の割合が他国に比べて低く、博士号取得者の多様な場での活躍促進が不十分な状況にある。

図311-2 博士号取得者採用企業数の割合(各国比較)

この状況を受け、文部科学省では、ポストドクターが企業等における長期インターンシップに参加する機会を提供する大学等を支援する「ポストドクター・キャリア開発事業」を実施し、博士号取得者のキャリアパスの多様化を推進してきている。

さらに、文部科学省では「グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)」を2014年より実施し、ベンチャーキャピタルやメーカー等の民間企業や海外の機関と連携しながら、若手研究者や大学院生を対象とした実践的な起業家・イノベーション人材育成を実施する大学を支援している。また、採択された大学における人材育成に加えて、機関横断の取組として、起業家・イノベーション人材育成のノウハウの共有、教員・メンターの育成及び全国的なシンポジウム・コンテストを行っている。これらの取組を通じて、起業家・イノベーション人材を育成するとともに、大学発ベンチャーや新事業創出に必要なネットワークを日本に形成し、イノベーションが継続的に創出される環境の構築を目指す。

また、我が国の大学等では、研究開発内容について一定の理解を有しつつ、研究マネジメントを行う人材が十分でなく、その結果、研究者に研究活動以外の業務で過度の負担が生じている状況にある。このような状況を背景に、2011年4月より文部科学省において、研究者の研究活動を活性化するための環境整備、大学等の研究開発マネジメント強化による研究推進体制の充実強化等に向けて、「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」事業を実施し、大学等における研究マネジメント人材としてのリサーチ・アドミニストレーター(URA)の育成・定着を支援している。また、URAの実務能力を明確化・体系化した指標であるスキル標準及び研修・教育プログラム等を活用した研修会を実施運用することにより、URAの質の向上を図るとともに、URAシステムの課題を共有し、大学間の連携を促すことでURAのネットワーク構築に向けた取組を進めている。

また、2013年8月より、研究マネジメント人材群の確保・活用や、大学改革・集中的な研究環境改革を組み合わせた研究力強化に向けて、「研究大学強化促進事業」を実施している。

そのほか、国立研究開発法人科学技術振興機構(以下、「科学技術振興機構」と記載。)では2015年度より、「プログラム・マネージャーの育成・活躍促進プログラム」を実施し、我が国の優秀な人材層に、「プログラム・マネージャー(PM)」という、イノベーションの触媒、目利き、イノベーションの可能性に富んだ研究開発プロジェクトの企画・遂行・管理を担う新たなイノベーション創出人材モデルの育成を開始している。

(3)次代を担う科学技術人材の育成

次代を担う科学技術人材を育成するため、初等中等教育段階から理数系科目への関心を高め、理数好きの子供たちの裾野を拡大するとともに、優れた素質を持つ子供を発掘し、その才能を伸ばすため、次のような取組を総合的に推進し、理数教育の充実を図っている。

文部科学省では、理数教育を重点的に行う高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定し、各指定校に対して科学技術振興機構が支援を行うことで、将来の国際的な科学技術人材等の育成のための取組を推進している。具体的には、学習指導要領によらないカリキュラムの開発・実践や課題研究の推進、科学技術人材の育成等を実施するとともに、他校への成果の普及に取り組んでいる。2014年度においては、全国204校の高等学校等が特色ある取組を進めている。

科学技術振興機構では、人材育成活動の実践として、国際的に活躍する次世代の科学技術人材を育成するために、意欲・能力のある高校生等に対して高度で体系的な理数教育プログラムを提供する大学を指定・支援する「グローバルサイエンスキャンパス(GSC)」や、大学等が意欲・能力のある児童生徒を対象に実施する課題研究・体系的教育プログラムを支援する「次世代科学者育成プログラム」、科学部活動を活性化し、専門家との連携により生徒の資質を発掘、伸長する取組を支援する「中高生の科学部活動振興プログラム」等の取組を実施している。

理数系教員に対する支援として、才能ある生徒を伸ばすための効果的な指導方法の修得や地域の枠を超えた教員間ネットワークの形成を促進する取組を支援する「サイエンス・リーダーズ・キャンプ」や、大学(大学院)が教育委員会と連携して、理数分野に関し優れた指導力を有し、各学校や地域の理数指導において中核的な役割を果たす小・中学校教員を養成する取組を支援する「理数系教員養成拠点構築プログラム」を実施している。また、児童生徒の知的好奇心、探究心に応じた学習の機会を提供するため、理科教育用デジタル教材等を開発し、インターネット等を通じて提供している。

その他、文部科学省では自然科学系分野を学ぶ大学学部生等が自主研究を発表し、全国レベルで 切磋琢磨 せっさたくま し合うとともに、研究者・企業関係者とも交流することができる機会として、第4回「サイエンス・インカレ」を兵庫県において開催し、計291組の応募の中から書類審査を通過した計172組が発表を行った。

また、科学技術振興機構では、数学、物理、化学、生物学、情報、地理、地学の国際科学オリンピックやインテル国際学生科学技術フェア(Intel ISEF)注1等の国際科学技術コンテストの国内大会の開催や、国際大会への日本代表選手の派遣、国際大会の日本開催に対する支援等を行っている。2014年度は、全国の高校生等が、学校対抗・チーム制で理科・数学等における筆記・実技の総合力を競う場として茨城県で開催された「第4回科学の甲子園」では千葉代表チームが優勝し、中学生を対象に東京都江東区で開催された「第2回科学の甲子園ジュニア」では茨城県代表チームが優勝した。

注1 Intel International Science and Engineering Fair

写真:科学の甲子園優勝チーム
(渋谷教育学園幕張高等学校)

写真:科学の甲子園ジュニア優勝チーム
(茨城県立並木中等教育学校)

 

2.理工系人材の戦略的育成について

(1)理工系人材の戦略的育成

労働力人口が減少していく我が国は、国際競争力の維持・向上、活力ある地域経済社会の構築、医療・介護サービスの持続的・効率的提供など、重要課題に果敢に取り組みつつ、豊かさを実感できる社会を力強く構築していかなければならない。その実現において、新しい価値の創造や技術革新など、イノベーションが果たす役割は極めて大きい。イノベーションの創出には、高い技術力とともに発想力、経営力などの複合的な力を備え、新たな付加価値を生み出していく人材の育成が必要であり、その際、理工系分野をこれまで以上に強化することは不可欠である。

2013年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略-JAPAN is BACK」では、イノベーション機能の抜本強化と理工系人材の育成の観点から、産業界との対話を進め、教育の充実と質保証や理工系人材の確保を内容とする「理工系人材育成戦略」を作成し、産学官円卓会議を新たに設置して同戦略を推進することが盛り込まれた。

文部科学省では、産学官が協働した理工系人材の戦略的育成の取組を始動すべく、2020年度末までに集中して進めるべき方向性と重点項目を整理した「理工系人材育成戦略」を2015年3月に策定・公表したところである。「理工系人材育成戦略」では、現下及び今後の社会を展望し、理工系人材に期待される活躍の姿として次の四つを掲げ、多角的に取り組むこととしている。

理工系人材に期待される四つの活躍

■新しい価値の創造及び技術革新(イノベーション)

■起業、新規事業化(図312-1)

■産業基盤を支える技術の維持発展

■第三次産業を含む多様な業界での力量発揮(図312-2)

図312-1 起業家活動の国際比較(2012年)

図312-2 理・工・農学分野の就職動向比較(1993年、2013年)

「理工系人材育成戦略」は初等中等教育段階から取組を講じ、特に高等教育段階の教育研究機能の活用を重視する観点から、次に示す三つの方向性と10の重点項目に整理している(図312-3)。

文部科学省では、本戦略に基づき「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」を設置したところであり、産学官それぞれに求められる役割や具体的な対応の検討を進め、協働して理工系人材の質的充実・量的確保に向けて取り組んで行くこととしている。

図312-3 三つの方向性と10の重点項目(理工系人材育成戦略より抜粋)

【戦略の方向性1】高等教育段階の教育研究機能の強化

重点1.理工系プロフェッショナル、リーダー人材育成システムの強化

産業界のコミットメントのもと実践的な課題解決型教育手法等による高等教育レベルの職業教育システムを構築し、理工系プロフェッショナル養成機能を抜本的に強化。産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成するため、産学官から国内外第一級の教員を結集し、専門分野の枠を超えた体系的な教育を構築するなど博士課程教育の抜本的改革と強化を推進。

重点2.教育機能のグローバル化の推進

大学等の教育機能の国際化を推進し、世界規模での課題発見・解決等ができる理工系人材を育成。

理工系分野のカリキュラムにおける留学プログラムの設定や海外大学との単位互換を促進。

重点3.地域企業との連携による持続的・発展的イノベーション創出

重点4.国立大学における教育研究組織の整備・再編等を通じた理工系人材の育成

【戦略の方向性2】子供たちに体感を、若者・女性・社会人に飛躍を

重点5.初等中等教育における創造性・探究心・主体性・チャレンジ精神の涵養

主体的・協働的な学び(アクティブ・ラーニング)を促進するための教育条件整備や観察・実験環境の計画的整備、大学等との連携による意欲・能力のある児童生徒の発掘や才能を伸ばす取組を推進。

重点6.学生・若手研究者のベンチャーマインドの育成

ベンチャーマインドや事業化志向を身につける大学の人材育成プログラムの開発・実施を促進、大学発ベンチャー業界等に飛び込む人材や新規事業に挑戦できる人材を育成。

重点7.女性の理工系分野への進出の推進

重点8.若手研究者の活躍促進

重点9.産業人材の最先端・異分野の知識・技術の習得の推進~社会人の学び直しの促進~

【戦略の方向性3】産学官の対話と協働

重点10.「理工系人材育成-産学官円卓会議」(仮称)の設置

特に産業界で活躍する理工系人材を戦略的に育成するため、産学官が理工系人材に関する情報や認識を共有し、人材育成への期待が大きい分野への対応など、協働して取り組む「理工系人材育成-産学官円卓会議」(仮称)を設置。

(2)大学(工学系)の人材育成の現状及び特色ある取組

①大学(工学系)の人材育成の現状

ものづくりと関連が深い「工学関連学部」は、2014年度現在、233学部(国立74学部、公立18学部、私立141学部)が設置されており、37万5,655人(国立12万8,870人、公立1万4,789人、私立23万1,996人)の学生が在籍している。2013年度の卒業生8万6,684人のうち約55%が就職し、約36%が大学院等に進学している。職業別では、ものづくりと関連が深い機械・電気分野をはじめとする専門的・技術的職業従事者となる者が約75%を占めており、産業別では、製造業に就職する者が約26%を占めている(表312-4)。また、工学系の大学院においては、職業別では、専門的・技術的職業従事者となる者が、修士課程(博士課程前期を含む)修了者で就職する者では約92%、博士課程修了者で就職する者でも約92%を占めており、産業別では、製造業に就職する者は修士課程修了者で就職する者では約56%、博士課程修了者で就職する者では約31%を占めている。

表312-4 工学関連学部の状況

09年度10年度11年度12年度13年度
卒業者数89,62390,04987,54486,31386,684
就職者数42,32843,29543,90545,71447,357
就職者の割合47.2%48.1%50.2%53.0%54.6%
製造業就職者数12,30913,41313,70012,77012,333
製造業就職者の割合29.1%31.0%31.2%27.9%26.0%
専門的・技術的職業従事者数31,48831,75432,48033,80835,294
専門的・技術的職業従事者の割合74.4%73.3%74.0%74.0%74.5%

資料:文部科学省「学校基本調査」

②大学(工学系)の人材育成の特色及び取組等

大学(工学系)では、その自主性・主体性の下で多様な教育を展開しており、我が国のものづくりを支える高度な技術者等を多数輩出してきたところである。各大学においては、より一層、学生が社会で活躍できるよう、産業界と連携した実践的な工学教育など、工学教育の質的改善を不断に進めている。

例えば、実際の現場での体験授業やグループ作業での演習、発表やディベート、問題解決型学習など教育内容や方法の改善に関する取組が進められているほか、教員の指導力を向上させるための取組などが進められている。また、工学英語プログラムの実施、海外大学との連携による交流プログラムなど、グローバル化に対応した工学系人材の育成に向けた取組が行われている。

また、教育再生実行会議「今後の学制等の在り方について(第五次提言)」(2014年7月3日)を受けて、我が国の将来を担う質の高い専門職業人を養成するため、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化が検討されている。2015年3月に取りまとめられた有識者会議における審議のまとめを踏まえ、本年4月に中央教育審議会に諮問が行われ、現在、新たに設置された「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会」で議論されている。

コラム:大学における取組
-金沢工業大学-

金沢工業大学及び金沢工業高等専門学校では、マサチューセッツ工科大学をはじめとする世界100以上の大学や高等教育機関が参画する「CDIO」注2という技術者教育の質向上の国際的枠組みに加盟し、教育改善に努めている。

「CDIO」では、製品の設計と、設計に伴う社会的責任を一つの学習体験で学ぶ等、個人・対人スキルと製品・システム開発スキルを同時に修得する学習体験を重視するとともに、学生同士で学び合い、議論し、ものをつくり、実験できるワークスペース環境の充実も図っている。金沢工業大学では、ユーザーが何を必要としているのかチームで考え、創出した解決策を具体化して、実験・検証・評価するプロジェクトデザイン教育を全学生必修で実施している。

写真:プロジェクトデザイン授業風景

-工学院大学-

工学院大学では、「FDハンドブック-教育力の一層の向上をめざして-」を作成し全教員に配布している。ハンドブックでは、教職員行動規範や授業運営の方法の解説のほか、具体的な学習到達目標を盛り込んだシラバスの作成事例を示しながら、授業の到達目標の考え方が解説されている。毎年4月には新任教員を対象としてこのハンドブックを利用した新任教員研修会や、シラバス作成の実習を行っている。この実習では、各教員が記入した実際の担当科目のシラバスを持ち寄り、新任教員同士で見せ合い、ハンドブックに書かれたチェックポイントを参考に、より教育効果を高めるシラバスとなるようなアドバイスを相互に行っている。

写真:工学院大学FDハンドブック

注2 CDIOとは、Conceive(考える)、Design(設計する)、Implement(実行する)、Operate(運用する)の頭文字である。

(3)高等専門学校の人材育成の現状及び特色ある取組

①高等専門学校の人材育成の現状

高等専門学校は、実験・実習を重視した、中学校卒業後から5年間一貫の専門的・実践的な技術教育を特徴とする高等教育機関として、2014年度現在、57校(国立51校、公立3校、私立3校)が設置されており、5万4,354人(国立4万8,651人、公立3,634人、私立2,069人、専攻科生を除く)の学生が在籍している。

2013年度の卒業生1万307人のうち約58%が就職しているが、就職希望者に対する求人倍率は約16.9倍、就職率も約99%と他の学校種と比べて高くなっている。職業別では、ものづくりと関連が深い機械・電気分野をはじめとする専門的・技術的職業従事者となる者が約93%を占めており、産業別では、製造業に就職する者が約52%を占めている(表312-5)。

表312-5 高等専門学校の状況

09年度 10年度 11年度 12年度 13年度
卒業者数 10,126 10,155 10,163 10,101 10,307
就職者数 5,219 5,519 5,854 5,845 5,934
就職者の割合 51.5% 54.3% 57.6% 57.9% 57.6%
就職率 98.4% 99.0% 99.0% 99.0% 99.4%
製造業就職者数 2,606 2,926 3,320 3,162 3,080
製造業就職者の割合 49.9% 53.0% 56.7% 54.1% 51.9%
専門的・技術的職業従事者数 4,773 5,149 5,450 5,416 5,554
専門的・技術的職業従事者の割合 91.5% 93.3% 93.1% 92.7% 93.4%
求人倍率 18.4倍 14.9倍 15.1倍 15.7倍 16.9倍

資料:文部科学省「学校基本調査」(求人倍率は文部科学省調べ)

②高等専門学校の人材育成の特色及び取組等

企業の現場を支える実践的・創造的技術者を養成する高等専門学校の教育の特色は、実験・実習を中心とする体験重視型の専門教育にある。高等専門学校での実践的教育の具体的な取組としては、産学連携による教育プログラムの開発や、長期インターンシップの実施、学生の創意工夫を生むための課外活動の充実といった教育内容や方法の改善に関する取組や、企業からの教員派遣や企業での教員研修の実施など教員の指導力を向上させる取組が進められている。これらの取組を通じて、高等専門学校は社会から高く評価される実践的・創造的なものづくり人材の育成に成功している。

例えば、経済協力開発機構(OECD)高等教育政策レビューにおいては、「高等専門学校は、高水準の職業訓練を提供しているだけではなく、産業界(特に製造業部門)のニーズに迅速・的確に応えている」と高く評価されるなど、国際的に見てもものづくり人材の育成に関し優れた教育を行っている高等教育機関であると認識されている。また、「日本技術者教育認定機構(JABEE)」が実施する技術者教育プログラムの認定制度においても、2013年度までに50校(88%)の高等専門学校が認定されているところである。

また、高等専門学校の卒業生は即戦力となる技術を身に付けていることはもちろん、専門知識や、課題解決力、創意工夫、誠実さなど、現場技術者としての資質について優れていると評価されており、多くの企業から高等専門学校の卒業生に満足しているとの声が寄せられている。

国立高等専門学校の運営を行う(独)国立高等専門学校機構では、高等専門学校教育の高度化及び深化に向けて、教育の質保証に向けたモデル・コアカリキュラムの導入や、産業界や地域の技術者ニーズに対応した学科等の改組、グローバル社会で活躍できる技術者を育成するための英語による専門教育の実施など、様々な取組を強化している。

また、2015年度においては、国立高等専門学校における地域・産業界のニーズを踏まえた新分野・領域教育への展開の一環として、生活支援・社会インフラなど社会的な課題を解決するロボットエンジニアの育成に向けた取組などを行うこととしている。

コラム:高等専門学校における取組 -アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト-

アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(通称・ロボコン)は全国の高等専門学校生が毎年異なるルールの下、既成概念にとらわれず、自らの頭で考え、自らの手でロボットを作ることの面白さを体験することで、独創的な発想と「ものづくり」の素晴らしさを共有する教育イベントとして、毎年開催されている。

2015年1月にロボット革命実現会議が取りまとめた「ロボット新戦略」においてもロボットによる技術革新を掲げており、政府はもちろん産業界においても、将来の我が国を支える技術者の卵である高等専門学校生たちが、若き英知を競い合う本コンテストを非常に注目している。

2014年度の第27回大会は「出前迅速」という競技課題のもと、ロボットによる「出前」対決にて競い合った。競技は赤・青2チームに分かれ、ロボットがお盆に高く積み上げられた蕎麦の蒸籠を、三つの障害物(スラローム・角材・傾斜)を乗り越えて運び、競技時間の3分間で、少しでも多くの蒸籠を運び終えたチームが勝利となる。

会場である両国国技館には約4,000人が訪れ、高等専門学校生の独創的なアイデアと日々の学びを活かした高い技術力が詰め込まれたロボットと学生たちの白熱の競技に大きな歓声が送られた。

今年の大会では熊本高等専門学校「本気の宅配便(まじのたくはいびん)」が競技の優勝とともに、最も優れたアイデアを実現したチームに送られる「ロボコン大賞」を受賞し、ダブル受賞を達成した。「本気の宅配便」は斬新なアイデアを活かした抜群の走行性能と幾重にも施した安定化装置を武器に、圧倒的な量の蒸籠を運び続けることのできる革新的なロボットで、終始安定した試合運びであった。

写真:競技風景(優勝・ロボコン大賞受賞ロボット
「本気の宅配便(まじのたくはいびん)」(熊本高等専門学校))

(4)専門高校の人材育成の現状及び特色ある取組

①専門高校の人材育成の現状

高等学校における産業教育に関する専門学科(農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉の各学科)を設置する学校(専門高校)は、2014年度現在、1,565校設置されており、62万8,195人の生徒が在籍している。2013年度の卒業生19万9,812人のうち、約52%が就職している。この中でも、ものづくりと関連が深い工業に関する学科は2014年度現在、540校に設置されており、25万8,001人の生徒が在籍している。2013年度の卒業生8万1,325人のうち約65%が就職しており、2014年3月末現在の就職率(就職を希望する生徒の就職決定率)は約99%となっている。職業別では、生産工程に従事する者が約56%を占めており、産業別では、製造業に就職する者が約52%を占めている(表312-6)。

表312-6 工業に関する学科の状況

09年度 10年度 11年度 12年度 13年度
卒業者数 84,430 83,422 81,601 82,571 81,325
就職者数 48,241 50,392 51,086 52,293 52,621
就職者の割合 57.1% 60.4% 62.6% 63.3% 64.7%
就職率 97.0% 97.8% 98.2% 98.2% 98.8%
製造業就職者数 26,034 29,239 30,028 28,314 27,507
製造業就職者の割合 54.0% 58.1% 58.8% 54.1% 52.3%
生産工程従事者数 34,967 30,919 32,235 29,789 29,252
生産工程従事者の割合 72.5% 61.4% 63.1% 57.0% 55.6%
専門的・技術的職業従事者数 5,326 5,105 4,801 5,325 5,653
専門的・技術的職業従事者の割合 11.0% 10.1% 9.4% 10.2% 10.7%

資料:文部科学省「学校基本調査」(就職率は「高等学校卒業(予定)者の就職(内定)状況調査」。就職を希望する生徒の就職決定率を表している。)

②専門高校の人材育成の特色及び取組等

現在、経済のグローバル化や国際競争の激化、産業構造の変化、技術革新・情報化の進展等から、職業人として必要とされる専門的な知識・技術及び技能の高度化、また、熟練技能者の高齢化や若者のものづくり離れといったことなどが指摘されている。このような中で、これまでも地域産業を担う専門的職業人を育成してきた専門高校は、より一層期待されている。

専門高校では、ものづくりに携わる有為な職業人を育成するとともに、職業人として必要な豊かな人間性、生涯学び続ける力や社会の中で自らのキャリア形成を計画・実行できる力等を身に付けていく場としても大きな役割を果たしている。

文部科学省では、2014年度から、専門高校において、「社会の変化や産業の動向等に対応した、高度な知識・技能を身に付け、社会の第一線で活躍できる専門的職業人を育成する」ことを目的として、先進的な卓越した取組を行う専門高校(専攻科を含む)を指定して調査研究を行う「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)」を開始した。

本事業では、大学・高専・研究機関・企業等と連携し、生徒を対象とした講義の実施、最先端の研究指導、実践的な技術指導等を行うなど、高度な人材を育成するための取組について研究を行っており、事業終了後は、それらの成果の活用及び全国への普及を図ることとしている。

工業科を設置する高等学校の指定校では、ものづくりの高度な知識・技能を身に付け、我が国の産業の発展のため、第一線で活躍できる専門的職業人を育成するため、大学院と連携した研究指導や、航空宇宙産業や自動車産業など地域を代表するグローバル企業と連携した技術指導など、様々な実践的な学習活動に取り組んでいる。

また、指定校以外の工業科を設置する高等学校でのものづくりに関する教育の展開例として、企業技術者や高度熟練技能者を招いて、担当教員とティーム・ティーチングでの指導による高度な技術・技能の習得、そこで身に付けた知識・技術及び技能も踏まえた難関資格取得への挑戦、伝統建築など地域の伝統産業を支える技術者・技能者の育成、年間20日間に及ぶ長期の産業現場における実践的な学習活動、産業界や関係諸機関等と連携を図るなどして地域の課題を解決する取組等、様々な特色ある取組が実施されている。

さらには、生徒の日頃の学習成果や高校生の視点で見た気づきを活かした製品について、試作品の製作、製品企画のプレゼンテーションを行うなどして、地元企業と連携した商品の開発から販売するまでの取組を体験することを通じて、将来、起業や会社経営を目指す生徒はもちろんのこと、それ以外の生徒においても社会の変化に対応したビジネスアイデアを提案して商品化することができるような、アントレプレナーシップ(起業家精神)の育成を図る実践的な取組も行われている。

工業科以外の農業、水産、家庭等の学科においても、地域産業を活かしたものづくりのスペシャリスト育成に関する教育が展開されている。例えば、農業科においては、米の消費拡大につながる新たな商品開発に向けた研究や、地域の農村女性起業家との連携による地域特産品やブランド品の共同開発が行われている。水産科においては、未利用資源を貴重な水産資源として有効活用する方法を研究し、地域の特産品を開発するなどの取組や、水産教育と環境教育、起業家教育を融合させた教育が行われている。家庭科においては、専門学校と連携して、テレビ会議システムを使って最新のファッション情報を入手し、国体のユニフォームをデザインするなど、企画から製品製作まで、多くの人に受け入れられる品質の高いものづくりを進めている。

コラム:地域におけるものづくり人材育成の取組 -山形県・岩手県等-
-山形県での取組-

2014年から、教育界、産業界、関係機関等の有志が連携し、「やまがたメイ力一ズネットワーク(YMN)」を組織し、「県内の小・中学校、特別支援学校、高等学校に県産部材を活用した手作りの3Dプリンタを導入し、教育活動への活用や変化の激しい時代を生き抜くために必要な能力を身に付けさせるための教育活動を展開し、やまがたの次代を担う人財を育成する。」ことを目的としたプロジェクトの推進を図っている。

このプロジェクトでは、県内にある11校の工業科を設置する高等学校へ組立型3Dプリンタの導入、工業科を設置する高等学校によるものづくり体験教室や出前授業等の地域貢献活動の実施、モータやガイド用鋼材などの県内企業産の部材を活用した教育用3Dプリンタの開発、教育用3Dプリンタの小・中・高等学校・特別支援学校への導入、グループでの協同製作など創造的な教育活動の実践などの研究が行われている。

また、本事業では、工業科の教員が、専門性を深め実践的指導力の向上を図るため、長期休業期間等を活用して教育センターなどの関係機関等が主催する研修会に参加し、関連する技術・技能について研修する取組を実施している。

写真:教育用3Dプリンタを活用しての探究活動
(山形県立寒河江工業高等学校)

-岩手県での取組-

岩手県は、大阪府、東京都に次いで全国第3位のコネクタ出荷額を誇る。そのうち、約7割は宮古・下閉伊地域で生産されており、国内を代表するコネクタの産地である。2014年に「宮古・下閉伊モノづくりネットワーク工業部会」の会員事業所において、高等学校の女子生徒を対象に就業体験の機会を与えることによって、将来の優秀な若手女性技術者の育成・就業に資する取組を実践した。

実習の目標を「所属校の校章の製作」と定め、講師は全て就業体験を実施した企業の社員である機械加工の1級技能士や、地元大学工学部を卒業した女性技術者(いずれも宮古市出身)が担当した。

製品の研磨やマシニングセンタ(多数の工具を備え、プログラムによる制御に従って工具の着脱や切削加工などを自動的に行う数値制御工作機械)の活用によるアルミニウムの切削加工技術等の高度な技術・技能の習得に取り組んだ。

参加した生徒は、今回の就業体験を通して高等学校での学習と実社会との関連性をより明確に理解することができ、授業での取組態度や成績が飛躍的に向上した。あわせて、今回の就業体験は、授業の活性化はもちろんのこと自分自身の将来を自分自身で築き上げていこうとする意欲の向上にも役立っている。

そして、これらの積み重ねから、今まで以上に女性が輝く宮古・下閉伊地域社会の形成につながることが大いに期待されている。

写真:女性技術者の指導下での機械加工(岩手県立宮古工業高等学校)

-「全国産業教育フェア」における「全国高等学校ロボット競技大会」での取組-

2014年11月8日(土)から9日(日)、「第24回全国産業教育フェア宮城大会」において、「第22回全国高等学校ロボット競技大会」が、「頑張ろう東北!震災復興へ!築け!未来の新技術」のテーマのもと宮城県で開催された。

本競技大会は、全国産業教育フェアの中でも人気の高いプログラムの一つであり、「全国の工業科を設置する高等学校等で学ぶ生徒が、創造力を発揮して新鮮な発想で工夫を凝らし、仲間と協力しながらロボット競技大会への参加を目指し、その過程を通して高度な技術・技能を習得し、ものづくりへの興味・関心を高めさせるとともに、次世代を担う技術者としての資質を向上させる」ことを趣旨として開催された。

毎年、開催地の特色を活かしたストーリーと課題のもとに競技が行われ、第22回大会では、支倉常長ら宮城の先人の偉業にあやかり、「暴風雨など幾多の試練を乗り越えて、最後まで諦めず目的を成し遂げる」という競技イメージであるとともに、東北地方が東日本大震災から復興を成し遂げるという強い志を表現した競技であった。

競技の概要は、競技時間3分間で暴風雨に見立てたプラスチックボトルを相手コートのゴールに打ち合う対戦型競技である。競技終了時における相手コート内に入ったプラスチックボトル(暴風雨)と自コート内の青葉城に届けた缶詰(贈り物)による得点により勝敗を決するもので、全国各地の厳しい予選を勝ち抜いた128チームが出場し、熱戦が繰り広げられた(優勝:熊本県立御船高等学校)。

写真:文部科学大臣賞をかけた決勝戦
(熊本県立御船高等学校 対 富山県立砺波工業高等学校)

写真:経済産業大臣賞を受賞したロボット
(大分県立鶴崎工業高等学校)

 

(5)専修学校の人材育成の現状及び特色ある取組

①専修学校の人材育成の現状

高等学校卒業者を対象とする専修学校の専門課程(専門学校)では、2014年度現在、工業分野の学科を設置する学校は466校(公立2校、私立464校)となっており、7万6,934人(公立150人、私立7万6,784人)の生徒が在籍している。2013年度の卒業生2万9,230人のうち約82%が就職しており、そのうち関連する職業分野への就職率は約75%を占めている。

②専修学校の人材育成の特色及び取組等

人口減少、少子・高齢化社会を迎える我が国にとって、経済成長を支える専門人材の確保は重要な課題である。専修学校は、職業や実際生活に必要な能力の育成や、教養の向上を図ることを目的としており、地域の産業を支える専門的な職業人材を養成する機関として、ものづくり分野においても、地域の産業界等と連携した実践的で専門的な知識・技術を向上させる取組を各地で行っている。このような取組は、ものづくり人材の養成はもとより、地域産業の振興にも大きな影響を与えている。

また、企業内教育・訓練の変化や、職業人に求められる知識・技能の高度化、産業構造の変化等の中で職業・業種の変更を迫られるケースが増加していることに伴い、専修学校においても、就業者の職業能力の向上や離職者の学び直しなど、社会人の学習ニーズに対する積極的な対応が期待されている。

文部科学省では、専修学校において産業界等のニーズを踏まえた中核的専門人材養成を戦略的に推進していく観点から、各成長分野における人材育成に係る取組を先導する広域的な産学官コンソーシアムを組織化し、中核的専門人材養成のための新たな学習システムを整備する取組を行った。

さらに、「高等教育における職業実践的な教育に特化した新たな枠組みづくり」に向けた専修学校の専門課程における先導的試行として、企業等との密接な連携により、最新の実務の知識等を身に付けられるよう教育課程を編成し、より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む「職業実践専門課程」を文部科学大臣が認定し、奨励している(学校数673校、学科数2,042学科(2015年2月17日現在))。

コラム:専修学校における中核的な役割を果たす専門人材を養成するための取組-日本工学院八王子専門学校-

日本工学院八王子専門学校では、2012年度から文部科学省より「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進」事業の委託を受け、東京五輪開催に向けた社会インフラの再整備やこれまでに整備されたインフラの老朽化等に伴うメンテナンス等により、人材需要が高まることが予想される「社会基盤(土木・建築)分野」において、産学官でコンソーシアムを設立し、全国版モデルカリキュラム開発等に取り組んでいる。

3年目を迎えた2014年度は、全国版モデルカリキュラムやシラバス等を完成させるとともに、社会人等の学び直しニーズに応えるため、様々なニーズに合わせてモデルカリキュラムの一部を履修することのできるモデルコースを開発した。また、全国版モデルカリキュラムを地域の特性を踏まえたカリキュラムにしていくため、圏央道や多摩ニュータウンなど多様なインフラがある多摩(八王子)地域において、建設会社の若手社員や建設業への従事希望者などを対象に、BIM注3・CIM注4等の先端技術や建設業の資格と仕事を学ぶ3種類の実証講座を実施し、地域における人材育成を進めている。

今後は、地域連携、企業連携等を深めながら、これまで開発したカリキュラム等を地域の特性を踏まえつつ普及させていく予定である。

写真:「多摩地域における実証講座」風景

注3 BIM
「Building Information Modeling」の略称。コンピュータ上に作成した3次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ等、建築物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築すること。

注4 CIM
「Construction Information Modeling」の略称。コンピュータ上に作成した3次元形状情報に加え、材料・部材の仕様・性能、コスト情報等、構造物の属性情報を併せ持つ構造物情報モデルを構築すること。

(6)ものづくりへの関心・素養を高める理数教育の充実等

①小・中・高等学校の各教科におけるものづくり教育

我が国の競争力を支えているものづくりの次代を担う人材を育成するためには、ものづくりに関する教育を充実させることが重要である。文部科学省では、2008年に小・中学校の学習指導要領、2009年に高等学校の学習指導要領を改訂し、小学校の「理科」「図画工作」「家庭」、中学校の「理科」「美術」「技術・家庭」、高等学校「芸術」の工芸や「家庭」など関係の深い教科を中心に、それぞれの教科の特質を踏まえ、ものづくりに関する教育を行うこととしている。例えば、小・中学校の「理科」では、原理や法則の理解を深めるためのものづくりなど、科学的な体験を充実している。中学校の「技術・家庭(技術分野)」では、技術が生活の向上や産業の継承と発展に果たしている役割について関心を持たせるとともに、ものづくりなどの実践的・体験的な学習活動を通して、基礎的な知識と技術を習得し、技術を評価・活用する能力と態度を育成することとしている。現行の学習指導要領は小学校で2011年4月から、中学校では2012年4月から全面実施されており、高等学校でも2013年4月から年次進行で実施されている。

②科学技術を支える理数教育の充実

ものづくりの関心・素養を高めるためには、科学技術の土台となる理数教育の充実を図ることは重要であり、現行の学習指導要領の「理科」や「算数・数学」では、国際的な通用性や小・中・高等学校の各学校段階の円滑な接続等の観点から指導内容の充実を図り、観察・実験やレポートの作成、論述、自然体験などに必要な時間を十分確保するため、理数系科目の授業時数を増やすなどの改善を図ったところである。

また、将来の国際的な科学技術人材の育成等を目的として、先進的な理数教育を実施する「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」や、全国の高校生等が理科・数学等における筆記・実技の総合力を競う「科学の甲子園」、その中学生版である「科学の甲子園ジュニア」等の取組を通じて、実社会における科学技術との関連の中で児童生徒の学ぶ意欲や探究心の向上を図っている。

さらに、教員にとって負担の大きい実験の準備・調整等の業務を軽減し、指導に注力できる環境を整えるための理科観察・実験アシスタントの配置支援や教員の観察・実験の技能を磨き資質や指導力の向上を図るための理科の観察・実験指導等に関する研究協議の実施を進めている。あわせて、「理科教育振興法」に基づき、観察・実験に係る理科教育設備の充実を図っており、これらを通じて、理数教育充実のための人的・物的の両面にわたる総合的な支援を実施している。

(7)ものづくりにおける女性の活躍促進

①女性研究者への支援

女性研究者の活躍を促し、その能力を発揮させていくことは、我が国の経済社会の再生・活発化や男女共同参画社会の推進に寄与するものである。しかし、我が国の女性研究者の割合は年々増加傾向にあるものの、2014年3月31日現在で約15%であり、諸外国と比較すると依然として低い水準にある(図312-7、図312-8)。

図312-7 日本における研究者総数に占める女性研究者の割合

図312-8 研究者に占める女性割合の国際比較

文部科学省では、文部科学省において設置された「『女性の研究推進』タスクフォース」の検討も踏まえ、2015年度からは、「研究環境のダイバーシティ実現イニシアティブ」を開始し、女性研究者の研究と出産・育児・介護等との両立や女性研究者の研究力向上等を一体的に推進する大学等を重点支援するとともに、「特別研究員(RPD)事業」として出産・育児による研究活動の中断後の復帰を支援する取組を拡充するなど、女性研究者への支援の更なる強化に取り組んでいく。

② 理系女子支援の取組

次世代を担う人材を育成するための取組の一環として、科学技術振興機構では、「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」を実施している。これは、科学技術分野で活躍する女性研究者・技術者、女子学生等と女子中高生の交流機会の提供や実験教室、出前授業の実施等を通して女子中高生の理系分野に対する興味・関心を喚起し、理系進路選択の支援を行うプログラムである。

その一つとして、大阪府立大学が大阪府立産業技術総合研究所の協力の下で実施した取組がある。この取組に参加した女子中高生たちは、講演やグループトークを通し、女性研究者の在り方を学び、自身の理系進路選択について考えを深めた。また、生徒たちの興味・関心を喚起するため、体験実習や施設見学も併せて実施している。中学生は花の色素を利用した太陽電池を作製し、高校生は備長炭を使った酸化還元反応を利用して電池を作製した。さらに、施設見学の際には、金属やプラスチック粉末をレーザー光で固め複雑な造形物を作る3Dプリンタ技術が、人工関節などへ応用されるものであることが説明された。

こうした取組を通じ女子中高生の理系分野への興味・関心を高め、より多くの自然科学分野で活躍する女性の育成を推進していく。

写真:太陽電池の体験実習風景
ピペットを用いて電解液を滴下(大阪府立大学)

(8)経済成長を担うグローバル人材の育成の取組

グローバル化した社会で活躍できるものづくり人材を育成するためには、工学系分野をはじめとする大学教育の国際競争力を強化するとともに、学生の海外留学を促進すること、また、海外でのインターンシップを通じた実践的な経験により、海外でビジネスができる素養を育むことが重要である。

文部科学省は、2014年度から、我が国の高等教育の国際通用性と国際競争力の向上を目的に、海外の卓越した大学との連携や大学改革により徹底した国際化を進める大学を支援する「スーパーグローバル大学創成支援」を開始し、37大学を採択した。また、2012年度から「経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援」において、充実した英語教育のほかインターンシップの実施等、グローバル人材として求められる能力を育成する大学の取組を支援するほか、「大学の世界展開力強化事業」では、海外の工学系高等教育機関とのダブルディグリー・プログラムの実施等、我が国にとって戦略的に重要な国・地域との間で、質保証を伴った大学間交流の取組を行う大学を支援している。

幅広い分野で活躍する実践的・創造的技術者の育成を使命とする高等専門学校では、海外に拠点を持つ企業の支援・協力を得て、国際的に活躍できる技術者養成を目的とした「海外インターンシッププログラム」を実施している。高等専門学校生を海外企業へ派遣し、国際的に展開する企業の現場を直接見て実際に業務を体験することにより、異文化理解やコミュニケーション能力などの国際感覚の涵養に取り組んでいる。各プログラムは、単なる見学にとどまらず、実際に現場で直面している問題の解決方策を見出すことを課題として課したり、現地の従業員とのコミュニケーションの機会を設けたりするなど、特色ある効果的な業務体験内容となっている。

また、大学、専門学校においては、我が国の成長分野における職業実践的な教育の質の向上・保証の仕組みや社会人等の実践的な職業能力を育成する効果的な学習体系の構築に向けたカリキュラムの開発・実証及び取組成果の評価等を行うとともに、各分野に共通する国際的な質保証や相互交流を促進する取組を支援している。

経済産業省は、我が国若手グローバル人材の育成や中小企業等の海外展開、インフラビジネスの獲得等に向け、2012年度より若手社会人・学生等を途上国の政府関係機関等に3~6か月派遣し、就業体験をさせる「国際即戦力育成インターンシップ事業」を(一財)海外産業人材育成協会(HIDA)とJETROへ委託して実施している。インターンの受入先は経済産業省、HIDA及びJETROの有するネットワークに加え、我が国での研修経験者による同窓会(HIDA-AOTS同窓会)とのネットワークを活用して開拓している。2014年度は社会人及び学生等計191名を17か国へ派遣した。

インターンシップの結果、派遣されたインターンの異文化適応能力、問題解決能力及び語学力等が向上したほか、企業所属の派遣者の約7割から、本事業が所属先の将来的なビジネス展開に具体的につながる可能性があるとの回答が寄せられた。過去3年間の取組について高い評価が得られ、2015年度以降の事業の実施についても多数の企業から関心が寄せられている。

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