経済産業省
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第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第3章 ものづくりの基盤を支える教育・研究開発
第2節 ものづくり人材を育む教育・文化基盤の充実

1.キャリア教育・職業教育の充実

(1)キャリア教育・職業教育の充実

2011年1月31日、中央教育審議会において「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」の答申が行われた。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1301877.htm外部リンク

答申では、若年者の完全失業率や非正規雇用率の高さ、若年無業者や新卒者の早期離職者の存在など「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていないこと、また、コミュニケーション能力など職業人としての基本的な能力の低下や職業意識・職業観の未熟さ、進路意識・目的意識が希薄なまま進学する者の増加など、「社会的・職業的自立」に向けた課題が見られることを指摘している。

このような中において、学校教育は重要な役割を果たすものであり、答申では、人々の生涯にわたるキャリア形成を支援する観点から、次の三つの基本的方向性に沿った具体的な方策が提言されている。

  • 幼児期の教育から高等教育に至るまでの体系的なキャリア教育の推進
  • 実践的な職業教育の重視と職業教育の意義の再評価
  • 生涯学習の観点に立ったキャリア形成支援(生涯学習機会の充実、中途退学者などの支援)

この答申を踏まえ、文部科学省では、キャリア教育実践のための指導用資料(小・中・高等学校)の作成やインターンシップの促進、高等教育段階における教育課程の内外を通じた社会的・職業的自立に取り組むための体制整備(大学設置基準・短期大学設置基準の改正)、専門学校等の教育機関や産業界との連携による成長分野等における中核的専門人材養成の推進など各学校段階を通じたキャリア教育・職業教育の充実に取り組んでいる。

職業に関する学習が生涯にわたり行われるためには、その基盤として、様々な職業に必要な能力と、その修得に必要な学習内容が明確化されることが必要である。その際、人々がキャリア形成を図る上での指針・評価指標として、それぞれの職業に必要な能力と、これを修得するための教育プログラムの質が保証・明確化され、相互の関係が体系化・明確化されていることが重要である。

現在、政府は、成長分野における人材の育成・確保を図るため、実践的な職業能力評価の評価・認定制度(キャリア段位制度)を構築するとともに、それに基づく育成プログラムの整備や労働移動の円滑な仕組みづくりを含めた全体を、「実践キャリア・アップ戦略」として推進しており、大学・専門学校等との連携による学習プログラムの構築にも取り組んでいる。これまで、「介護プロフェッショナル」「カーボンマネジャー」「食の6次産業化プロデューサー」の3分野について、実践的な職業能力の評価の基準、育成プログラム等について検討を行った上で、2012年度より、レベル認定を実施している。

(2)社会人の学び直しの取組

社会人となった若者が転職や昇進のために大学等で学び直しを行うことの重要性が高まっているが、教育資金の問題や、企業ニーズに合ったプログラムが大学等にないといった問題により断念している状況が見受けられており、2013年6月に閣議決定された日本再興戦略においても、女性のライフステージに対応した活躍支援や、若者の活躍促進等で、社会人の学び直しが挙げられており、さらに、2014年6月に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014においても、女性のための学び直しの地域ネットワークの創設などの体制整備が盛り込まれている。

文部科学省においては、2014年4月より若者等の学び直しの支援のための奨学金制度の弾力的運用を行うとともに、大学、大学院、専門学校等が産業界と協働して、高度な人材や中核的な人材の育成等を行うオーダーメード型の職業教育プログラムの開発・実施を推進している。

2.ものづくりの理解を深めるための生涯教育

(1)ものづくりに関する科学技術の理解の促進

科学技術振興機構が運営する「日本科学未来館」では、先端の科学技術を分かりやすく紹介する展示の制作や解説、講演、イベントの企画・実施などを通して、研究者と国民の交流を図っている。常設展示「未来をつくる」では、“創造力” をテーマにした「技術革新の原動力」、“情報社会”をテーマにした「アナグラのうた」、“くらし”をテーマにした「2050年くらしのかたち」などの展示を通じ、持続可能な社会システムや人間の豊かさを実現する未来について考える機会を提供している。

また、制作した展示や得られた成果を全国の科学館に展開することで、全国的な科学技術コミュニケーション活動の活性化に寄与している。「日本科学未来館」が提供する実験教室は、第一線の研究者と科学コミュニケーターが一緒に作り上げている。「導電性プラスチックを作ろう~有機ELへの応用」などのプログラムでは、実験と対話を通じて、先端科学技術への理解を深めるとともに、子供に「ものづくり」の面白さを伝えるなどの取組を実施している。

さらに、科学技術振興機構では、生活の中で目にする様々な製品の製造工程を、科学技術の動画ライブラリ「サイエンス チャンネル」内コンテンツ「THE MAKING」で紹介している。

(2)公民館・博物館などにおける取組

地域の人々にとって最も身近な学習や交流の場である公民館や博物館などの社会教育施設では、ものづくりに関する取組を一層充実することが期待されている。

公民館では、地域の自然素材などを活用した親子参加型の工作教室や、高齢者と子供が一緒にものづくりを行うなどの講座が開催されている。こうした機会を通じて子供たちがものを作る楽しさの過程を学ぶことにより、ものづくりへの意欲を高めるとともに、地域の子供や住民同士の交流を深めることができ、地域の活性化にも資する取組となっている。

博物館では、実物、模型、図表、映像などの資料の収集・保管・展示を行っており、日本の伝統的なものづくりを後世に伝える役割も担っている。最近はものづくりを支える人材の育成に資するため、子供たちに対して、博物館資料に関係した工作教室などの「ものづくり教室」を開催し、その楽しさを体験し、身近に感じることができるような取組も積極的に行われている。

また、「(独)国立科学博物館」では、自然史や科学技術史に関する調査研究と標本資料の収集・保管を行い、人々のものづくりへの関心を高める展示・学習支援活動を実施している。展示においては、ものづくりに関連して、常設展では「科学と技術の歩み」をテーマに江戸時代以降における我が国の科学技術の発展について実物資料を中心に展示している。あわせて、人々の興味や関心の高いテーマの特別展や企画展を開催しており、特別展「ヒカリ展」では、様々な光を駆使して、人類が宇宙や地球の様々な現象を明らかにし、また、光をどのように利用しているかを展示するとともに講演会等を開催し、科学の面白さや奥深さを体感し学べる機会を提供した。また、企画展においては、経済産業省の「ものづくり日本大賞」を受賞した人材や技術を紹介する「ものづくり展」を2006年度以降開催しており、第5回(2013年度から2014年度)では、多くの来館者に日本のものづくりの優れた技術を紹介した。このほか、世代別の学習プログラムの普及を行うとともに、体験活動等を通して、自然史や科学技術史についての理解を深め、ものづくりへの関心を高める学習支援活動を実施している。

コラム:産業講座での現場見学とものづくり体験-愛媛県総合科学博物館-

愛媛県総合科学博物館では、毎年約40の博物館講座を開催している。講座の分野は多岐に渡り、自然・科学・産業をカバーしている。このうち産業分野の講座では、愛媛の産業史等を学ぶことを目的に産業の現場見学やものづくり体験を行っている。

2014年度の現場見学では、「化学工場見学会」と題して、市内にある住友化学株式会社愛媛工場を訪れた。住友化学株式会社は、新居浜で生まれた日本トップクラスの総合化学メーカーである。工場見学の際、受講者からは「化学工場はどのように発展してきたのか?」「現在はどのような製品が製造されているのか?」等、多くの質問が出た。現場の方からの丁寧な説明を受け、充実した工場見学となった。参加した高校生からは、次のような感想が寄せられた。「普段だと絶対に入れないような場所を見学することができて、すごくいい経験になりました。自分の将来の夢は材料系のものをしたいと思っているので、今回の講座はものすごく役に立ちました。」。

ものづくり体験では、「粘土をこねて 砥部焼 とべやき づくりに挑戦!~夏休みの宿題、大作戦~」と題し、愛媛の伝統産業である砥部焼づくりの講座を開催した。砥部焼の歴史について学ぶと共に、参加者自身で粘土をこねて形をつくり砥部焼を完成させることで、ものづくりの難しさや楽しさを感じてもらうことができた。また、ものづくり体験の講座では実際にその産業に従事している方を講師に招いているため、業界の現状をダイレクトに知ることができる点も参加者に評価されている。

博物館では、今後さらにものづくりの現場と地域を結ぶハブとなれるよう事業を展開していきたいと考えている。

写真:砥部焼づくり講座の様子

3.伝統的なものづくり技術等の後世への伝承

(1)重要無形文化財の伝承者養成

文化財保護法に基づき、工芸技術などの優れた「わざ」を重要無形文化財として指定し、その「わざ」を高度に体得している個人や団体を「保持者」「保持団体」として認定している。

文化庁では、重要無形文化財の記録の作成や、重要無形文化財の公開事業を行うとともに、保持者や保持団体などが行う研修会、講習会や実技指導に対して補助を行うなど、優れた「わざ」を後世に伝えるための取組を実施している。

(2)選定保存技術の保護

文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術又は技能で保存の措置を講ずる必要のあるものを選定保存技術として選定し、その保持者又は保存団体を認定している。

文化庁では、選定保存技術の保護のため、保持者や保存団体が行う技術の錬磨、伝承者養成等の事業に対し必要な補助を行っている。また、選定保存技術の公開事業を行っており、2014年度は岩手県盛岡市において「日本の技体験フェア ふれてみよう!文化財を守り続けてきた匠の技」を開催した。

コラム:2014年度選定保存技術公開事業「日本の技体験フェア ふれてみよう!文化財を守り続けてきた匠の技」

2014年度選定保存技術公開事業「日本の技体験フェア ふれてみよう!文化財を守り続けてきた匠の技」においては、文化財庭園保存技術者協議会等の31の選定保存技術保存団体ごとにブースを設置して、団体の活動や材料などの製作工程を分かりやすく紹介するパネル展示や伝統的な修理技法に用いられる材料や道具の展示、屋根葺き、オリジナルの箸づくり、竹の手箒(てぼうき)づくり、伝統的な文様(組子)のコースターづくりなどの体験コーナーを設けた。

多くの来場者が、選定保存技術保存団体の展示・実演・体験コーナーに立ち寄り、中でも体験コーナーは子供たちにも好評で、熱心に取り組む姿が見られた。

写真:竹の手箒(てぼうき)づくりの体験
文化財庭園保存技術者協議会

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