経済産業省
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第2部 平成26年度においてものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策
第1章 ものづくり基盤技術の研究開発に関する事項
第1節 ものづくり基盤技術に関する研究開発の推進等

1.ものづくり基盤技術に関する研究開発の実施及びその普及

(1)研究開発税制等の推進

①研究開発税制(減収見込6,440億円(2014年度))

(ア)試験研究費の総額に係る税額控除制度

試験研究費の総額に対して、試験研究費割合(試験研究費総額の売上高に占める割合)に応じて8%~10%注1の税額控除ができる措置を引き続き講じた。税額控除限度額は、2013年度から当期の法人税額の30%となっている(2014年度まで)。

注1 特別試験研究費がある場合の税額控除割合は、12%から試験研究費の総額に係る税額控除割合を控除した割合。

【備考】

 税額控除限度超過額については、1年間繰り越して控除することができる。

また、特別試験研究費税額控除制度(オープンイノベーション型)について、「大学・公的研究機関との共同研究・委託研究」等を対象としていたところ、2013年度から「企業間の共同研究」、「中小企業への委託研究」、「技術研究組合に支払う賦課金」を新たに対象とするほか、「大学等との共同研究・委託研究」における要件(大臣認定等)を緩和し、当該制度に係るガイドライン(「特別試験研究費税額控除制度ガイドライン」)を公表している。

(イ)中小企業技術基盤強化税制

中小企業者等が行う研究開発活動に対して、試験研究費の12%の税額控除ができる措置を引き続き講じた。税額控除限度額は、2013年度から当期の法人税額の30%となっている(2014年度まで)。

【備考】

 税額控除限度超過額については、1年間繰り越して控除することができる。

(ウ)試験研究費の増加額等に係る税額控除制度

上記に加え、2014年度から、試験研究費の増加額に係る税額控除制度(増加型)を試験研究費の増加割合に応じて税額控除割合が高くなる仕組み(最大30%まで)に改組した。また、増加型又は平均売上金額の10%相当額を超える試験研究費の額に係る税額控除制度(高水準型)のいずれか(上記(ア)又は(イ)の制度とは別に、当期の法人税額の10%を限度)を選択して適用できる措置を2014年度から3年間延長した。

②中小企業投資促進税制(減収見込 721億円(2014年度))

中小企業の設備投資を促進するため、一定の機械装置等注2を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除注3を認める措置を引き続き講じた。また、機械装置等のうち、最新モデルであるなど生産性向上の要件を満たすものについては、即時償却又は取得価額の10%の税額控除注4を認める措置を新たに講じた(2016年度末まで)。

注2 対象設備:機械装置、器具備品(電子計算機、デジタル複合機、試験又は測定機器)、工具(測定工具及び検査工具)、ソフトウェア、普通貨物自動車等。

注3 税額控除は資本金3,000万円以下の中小企業又は個人事業主のみ適用可能。

注4 10%の税額控除は、資本金3,000万円以下の中小企業又は個人事業主のみ適用可能。資本金3,000万円超の中小企業の税額控除率は7%。

(2)特定研究分野における技術開発支援

①未来開拓技術プロジェクト(173億円)

研究開発プロジェクトが小粒化、近視眼化する傾向にあるなか、技術で勝ってビジネスでも勝てるよう、我が国が強みを持つ技術であり、かつ、我が国経済社会に大きなインパクトを与える、従来技術の延長線上にない開発リスクの高い技術を未来開拓研究に指定し、文部科学省等との緊密な連携の下、研究開発を推進している。

②研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)((独)科学技術振興機構運営費交付金の内数)

独創的な研究開発を支える基盤を整備するため、先端計測分析における革新的な要素技術開発、機器開発、プロトタイプ機の性能実証及びこれまでに開発されたプロトタイプ機の活用・普及を促進した。

③ナノテクノロジープラットフォーム(17億円)

ナノテクノロジーに関する最先端の研究設備とその活用のノウハウを有する機関が協力して、全国的な共用体制を構築することにより、産学官の利用者に対し、最先端設備の利用機会と高度な技術支援を提供した。

④元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>(20億19百万円)

我が国の産業競争力強化に不可欠である希少元素(レアアース・レアメタル等)の革新的な代替材料を開発するため、物質中の元素機能の理論的解明から新材料の創製、特性評価までを密接な連携・協働の下で一体的に推進した。

⑤小型地球観測衛星の研究開発(47億87百万円)

大型衛星に劣らない機能・低コスト・短期の開発期間を実現する高性能小型衛星及び小型地上システムを開発した。

⑥光・量子科学技術研究拠点形成に向けた基盤技術開発(14億44百万円)

光・量子科学技術は、広範な科学技術や微細加工等の産業応用に必要不可欠な基盤技術である。我が国の光・量子科学技術分野のポテンシャルと他分野のニーズとをつなげ、産学官の多様な研究者が連携・融合しながら光・量子科学技術の基盤技術開発を進めるとともに、この分野を将来にわたって支える人材育成を推進した。

(3)国家基幹技術の開発・利用によるものづくり基盤の強化

①X線自由電子レーザー施設(SACLA)の整備・共用(75億25百万円)

国内の300以上の企業の技術を結集して開発・整備されたX線自由電子レーザーは、従来の10億倍を上回る明るさのX線レーザーを発振し、レーザーと放射光の特徴を併せ持つ光を用いて原子レベルの超微細構造、化学反応の超高速動態・変化を瞬時に計測・分析することを可能とする世界最高性能の研究基盤施設である。本施設を広く研究者等の利用に供することにより、医薬品や燃料電池の開発、光合成のメカニズムの解明など、幅広い研究分野で革新的な成果を生み出すことが期待されている。2012年度からは先導的成果の創出を目指すとともに、利用者・利用分野の拡大、今後の産業利用の推進を図るため「X線自由電子レーザー重点戦略研究課題」を実施し、2014年度には世界で初めて1兆分の1秒以下でおこる化学結合形成に伴う分子の生成過程を直接観測するなど最先端の成果を創出した。

②革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築(150億52百万円)

HPCIは、世界最高水準の計算性能を有するスーパーコンピュータ「京」を中核とし、国内の大学等のスパコンやストレージを高速ネットワークでつなぎ、多様な利用者のニーズに対応する革新的な計算環境を実現するものである。2012年9月末に共用を開始したHPCIを最大限活用し、画期的な成果創出、人材の育成、最先端計算科学技術研究拠点の形成を目指し、「次世代ものづくり」を含む戦略5分野注5における研究開発や計算科学技術推進体制の構築を推進している。例えば、自動車の開発などで従来行われている風洞実験では実現が難しい、高速走行時に車両が蛇行した際の走行安全性をシミュレーションで実現することで、設計期間の短縮、コスト削減による産業競争力の強化への貢献が期待されている。

注5 「京」を中核としたHPCIを最大限利用して画期的な成果を創出し、社会的・学術的に大きなブレークスルーが期待できる分野として、以下の五つの分野を設定している。
分野1:予測する生命科学・医療及び創薬基盤  分野2:新物質・エネルギー創成  分野3:防災・減災に資する地球変動予測
分野4:次世代ものづくり  分野5:物質と宇宙の起源と構造

③ポスト「京」の開発(フラッグシップ2020プロジェクト)(12億6百万円)

最先端のスーパーコンピュータは、科学技術や産業の発展などで国の競争力等を左右するため、各国が開発にしのぎを削っている。文部科学省としては、我が国が直面する社会的・科学的課題の解決に貢献するため、2020年をターゲットとし、世界トップレベルのスーパーコンピュータと、課題解決に資するアプリケーションを協調的に開発するプロジェクトを2014年度より着手している。創薬・エネルギー・ものづくり分野を含む九つの重点課題を選定し、今後、本格的な研究開発が進められる。

④大型放射光施設(SPring-8)の共用(92億59百万円)

SPring-8は世界最高性能の放射光を利用する施設である。放射光を用いることで微細な物質の構造や状態の解析が可能なことから、環境・エネルギーや創薬など、日本の復興や経済成長を牽引する様々な分野で革新的な研究開発に貢献している。企業等への利用促進を図り、2014年度は年間16,000人以上が利用し2,100件以上の課題に活用され、ものづくりに関する研究開発を後押しした。

⑤大強度陽子加速器施設(J-PARC)の整備・共用(167億77百万円)

大強度陽子加速器施設(J-PARC)は、世界最高レベルのビーム強度を持つ陽子加速器から生成される中性子やミュオン、ニュートリノ等を利用して、生命科学技術や、物質・材料科学技術など、様々な産業利用に貢献している。2014年度は約4,000人が利用し、約300件の課題に活用された。

(4)提案公募型の技術開発支援

①中小企業技術革新制度(SBIR)制度

中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律(平成11年法律第18号)に基づき、新産業の創出につながる新技術開発のための特定補助金等の指定及び特定補助金等における中小企業者向け支出の目標額の設定、特定補助金等を利用して開発した成果の事業化支援措置等の方針の作成により、国の研究開発予算の中小企業者への提供拡大及び技術開発成果の事業化を図った。

②戦略的基盤技術高度化支援事業(126億円の内数)

我が国経済を牽引していく重要産業分野の競争力を支える特定ものづくり基盤技術の高度化等に向け、中小企業等が産学官連携して行う、製品化につながる可能性の高い研究・開発及び販路開拓への取組を一貫して支援した。2014年度においては、150件の認定計画に従って行われる取組を採択した。また、2014年6月に改訂された『「日本再興戦略」改訂2014』において、「マーケットインの発想に基づく産学官連携による製品開発を促進するため、中小ものづくり高度化法の対象技術にデザイン等を追加するなど支援制度を見直す」よう指摘された。これを受け、商品の価値を高める技術を支援するため特定ものづくり基盤技術に「デザイン開発技術」を追加した。

③中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業(1,400億円)

対象分野をものづくり基盤に加え商業・サービス革新にも拡大し、中小企業・小規模事業者が行う革新的な試作品・サービスの開発や設備投資等を支援することとし、2014年度は14,431件を採択した。

④中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構運営費交付金の内数)

中堅・中小・ベンチャー企業が、革新的な技術シーズを事業化に結びつける「橋渡し」機能を有する機関の能力を活用して、共同研究等を実施する際に、新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じ支援を行う。

⑤研究開発型ベンチャー支援事業((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構運営費交付金の内数)

海外からのVC等の誘致や日本のVC等の育成に係る施策とともに、研究開発型ベンチャーへの支援の施策を組み合わせることにより、我が国にベンチャー・エコシステムの構築を図り、オープンイノベーションの推進に取り組む。

⑥産業技術研究助成事業((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構運営費交付金の内数)

産業技術力強化の観点から、産業界のニーズや社会のニーズに応える産業技術シーズの発掘や産業技術人材の育成を図るため、2011年度までに採択した研究テーマについて、引き続き助成金を交付した。

(5)つくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点(TIA-nano)の形成

ナノテクノロジーの研究開発を加速させるため、(独)産業技術総合研究所、(独)物質・材料研究機構、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)及び(一社)日本経済団体連合会が連携して産学官連携集中拠点「つくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点(TIA-nano)」を推進している。研究開発プロジェクト成果であるカーボンナノチューブのサンプル試料をユーザー企業に提供し評価をフィードバックする取組などにより、民間企業や大学等と連携網を広げ、産学官に開かれた研究開発拠点として、ナノテクノロジーの産業化と人材育成を一体的に推進している。また、共有施設制度による利用可能装置群を拡大し利便性を向上しており、特にパワエレ分野のオープンイノベーションを推進する民活型の共同研究体では、クリーンルームの24時間稼働を2014年4月に開始した。

(6)先端技術の実用化への橋渡し支援

我が国で開発された技術を実用化に結びつけ、新しい市場と産業を創出して行くため、「イノベーション拠点立地支援事業」として民間企業や産学連携等が行う、研究開発環境の整備や産学官連携の枠組みの構築等の技術イノベーションに係る基盤の整備等に関し支援を行った。

2.技術に関する研修及び相談・助言等

(1)(独)中小企業基盤整備機構における窓口相談・専門家派遣、人材・情報提供事業(2013年度(独)中小企業基盤整備機構交付金の内数)

(独)中小企業基盤整備機構では、中小企業支援の高度な専門性と知見を有する専門家等が、創業予定者や創業間もない企業、株式公開を目指している中小企業、経営革新や新事業開拓を目指している中小企業、その他経営課題の解決に取り組む中小企業等に対して、窓口相談及び専門家派遣等を通じて成長発展段階に応じたハンズオン支援を実施した。

(2)中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業(41億20百万円)

中小企業・小規模事業者が抱える経営課題が、内外の事業環境の変化により高度化、複雑化している中で、事業の各段階に応じた様々な経営課題・支援ニーズにワンストップで対応する経営支援体制の整備を図ることにより、きめ細かな対応を行うことを目的とし、地域の支援機関と連携しながら売上拡大や経営改善等の様々な経営相談に対応する「よろず支援拠点」を各都道府県に整備するとともに、高度・専門的な経営課題に対応するために専門家派遣を実施した。

3.知的財産権の取得・活用に関する支援

(1)模倣品・海賊版対策について

①政府模倣品・海賊版対策総合窓口による対応

2004年8月に経済産業省に設置された一元的相談窓口において、権利者等からの模倣品・海賊版に関する相談や情報提供を1,594件受付け(2014年)、関係省庁と連携して解決への対応を行うとともに、必要に応じて外国政府等への働きかけを実施した。

また、外国政府の制度・運用等の対応に問題があることにより、知的財産権に関し利益が適切に保護されていない事案がある場合、本窓口に対する申立に基づき日本政府が調査を行い、必要があれば、二国間協議等を実施する「知的財産権の海外における侵害状況調査制度」の運用を行っており、マレイシアへの働きかけを行った。

②知的財産保護官民合同訪中代表団の派遣

産業界との連携の下、2014年11月には北京、2015年1月には広州に、官民合同訪中代表団(実務レベル)を派遣し、中国政府の知的財産保護担当部局に対して、法制度・運用の改善、地方レベルでの摘発強化等について要請を行い、情報共有等の両国間の連携を継続していくことを確認した。

(2)知的資産経営の推進

金融機関と連携した知的資産経営の全国的な拡大に向け、知的資産経営報告書作成の際に生じる課題等の調査を行うとともに、知的資産経営報告書作成済み企業を対象に、報告書作成前後における財務状況の経年変化を調査することにより、知的資産経営に取り組むことによる効果の確認を行った。

また、「知的資産経営WEEK2014」の開催を支援し、知的資産経営の更なる普及・啓発を図った。

(3)営業秘密管理・技術流出防止

「日本再興戦略 改訂2014」(2014年6月閣議決定)及び「知的財産推進計画2014」(2014年7月知的財産戦略本部決定)において、営業秘密の保護強化に向けた制度整備等が求められたことを受け、産業構造審議会知的財産分科会の下に学識経験者、産業界、法曹界、裁判所等の代表者によって構成される「営業秘密の保護・活用に関する小委員会」を立ち上げ、2014年9月より4回の審議を行った。その審議を踏まえて、営業秘密管理指針については秘密管理性要件等の法解釈に特化したものとして改訂するとともに、不正競争防止法の改正に向け、営業秘密の刑事的保護の強化、民事訴訟における被害者(原告)の立証負担軽減等の方向性についても、一定の結論を得た。

また、2015年1月には、我が国企業の重要技術等の国内外への流出を防ぐべく、官民の代表者が参画する「技術情報等の流出防止に向けた官民戦略会議」を開催し、“営業秘密侵害を断固として許さない社会”を創出するための官民の今後の取組について、「行動宣言」を取りまとめた。

さらに、(独)工業所有権情報・研修館(INPIT)に、中小企業等からの営業秘密の管理や特許化/秘匿化等の知財戦略に関する相談に対応する「営業秘密・知財戦略相談窓口」(~営業秘密110番~)を2015年2月に新設した。

(4)知財権情報の活用・出願手続等に関する支援

① 特許電子図書館(IPDL)((独)工業所有権情報・研修館運営費交付金の内数)

知財権情報を活用した効率的な先行技術調査及び技術開発等を促進するため、国内外で発行された約10,030万件(2015年3月末時点)の特許・実用新案、意匠及び商標に関する公報類及び審査・審判に関する経過の関連情報を特許電子図書館としてインターネットを通じて無料で提供した。

また、特許情報について、高度化、多様化するユーザーニーズに応えるべく、特許電子図書館を刷新し、新たな特許情報提供サービス「特許情報プラットフォーム (英語名:Japan Platform for Patent Information、略称:J-PlatPat)」を2015年3月末より提供した。特許情報プラットフォームでは、検索サービスの機能の充実化、ユーザーインターフェースの刷新、外部サービスとの連携、「色彩」や「音」等の新しいタイプの商標への対応等を実施した。

②特許出願技術動向調査(11億73百万円)

企業や大学、公的研究機関における研究開発活動の検討や効果的な出願戦略の構築のための資料、行政機関の科学技術政策策定のための基礎資料の提供を目的として、特許、意匠、商標の出願動向等の調査分析を行っている。

2014年度は、「バイオミメティクス」、「パワー半導体デバイス」等の20の技術テーマについて実施した。

(5)権利化に対する支援

①円滑な権利化に対する支援

中小企業の円滑な特許権取得を促進するため、特許法、産業技術力強化法及び中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律(中小ものづくり高度化法)に基づき、一定の要件を満たす中小企業を対象として、特許料(第1年分から第10年分)及び審査請求料の半額軽減措置を講じている。

また、2014年4月1日から、産業競争力強化法に基づき、中小ベンチャー企業、小規模企業等を対象として、特許料(第1年分から第10年分)及び審査請求料、PCT国際出願に係る調査手数料及び送付手数料等を3分の1にまで軽減する措置を講じている。

なお、中小企業による2014年度の軽減措置の利用件数は21,651件であった。

②早期権利化に対する支援

権利の早期確定により、我が国企業の国際競争力の向上に資するよう「知的財産推進計画2004」(2004年5月27日知的財産戦略本部決定)において掲げられた長期目標(一次審査通知までの期間を10 年後の2013 年度末までに11 か月以内とする)を、達成した。10年間の長期目標であったFA11を達成した今日、これまでの特許制度を巡る情勢変化や新たな課題を踏まえ、今後10年以内に特許の「権利化までの期間注6」と「一次審査通知までの期間」をそれぞれ、平均14か月以内、平均10か月以内とするなど、「世界最速・最高品質の特許審査」の実現に向けた新たな目標を設定した。また、研究開発成果の早期活用、グローバルな経済活動等に対する支援を目的として、特許出願に対する早期審査・早期審理を継続して実施した。2013年の早期審査の利用件数は約16,400件、早期審理の利用件数は約150件。

加えて、東日本大震災により被災した企業の企業活動に必要な技術を早期に保護し、活用可能とするため、被災した企業、個人等が簡便な手続で早期審査・早期審理を受けられる「震災復興支援早期審査・早期審理」について、当面の間、継続して実施することとした。

注6 審査請求から一次審査又は一回目の拒絶理由通知に対する出願人の応答(意見・補正)に対する二次審査で審査が終了するまでの平均期間を対象とする。すなわち、二回目の拒絶理由を通知しなければならない案件は除外される。また、応答期間の延長等、出願人に起因する延長期間を除くものである。

③世界で通用する安定した権利の設定に向けたインフラ整備

経済のグローバル化や、イノベーションのオープン化が進展する中にあって、国際的に信頼される質の高い権利を付与し、「世界最高品質の特許審査」を実現するために、特許庁は2014年4月に品質管理の基本原則となる「特許審査に関する品質ポリシー」を公表した。また、特許審査の品質管理の実施状況・実施体制等について外部から客観的な評価を受け、それを内部の取組に反映し、ひいては品質のさらなる充実につなげることを目的として、2014年8月に産業構造審議会知的財産分科会の下に審査品質管理小委員会を設置した。

また、企業活動のグローバル化や事業形態の多様化に伴い、企業の知的財産戦略も事業を起点としたものに移りつつある。そこで、事業で活用される知的財産の包括的な取得を支援するために、2013年4月から事業戦略対応まとめ審査を開始した。事業戦略対応まとめ審査は、新規の事業や国際展開を見据えた事業に係る製品・サービスを構成する複数の出願について、事業説明を受けたうえで、分野横断的に一括して審査を行うものである。これにより、企業の望むタイミングで、企業の事業展開を支える知財網の形成が可能となる。また、2014年10月に、一の事業の中に位置づけられる出願群であるならば、その出願群に申請者が出願人となっていない出願が含まれている場合にも、まとめ審査の申請が可能とするなど、「事業戦略対応まとめ審査ガイドライン」の改訂を行った。

(6)知的財産の戦略的な活用に対する支援

①知的財産に関するワンストップ相談窓口「知財総合支援窓口」(21億92百万円)

「知的財産は敷居が高く相談に行きにくい」「どこへ相談に行けばいいかわからない」という中小企業の声を踏まえ、2011 年度から、知的財産に関する悩みや課題に関する相談を一元的に受け入れる「知財総合支援窓口」を都道府県ごとに設置し、様々な専門家や支援機関等とも連携して知的財産のワンストップサービスを提供している。2013年度からは、より専門的・具体的な課題解決策を提案すべく、デザイン、ブランド及び海外知財法務に詳しい専門家を活用し、中小企業等の知財活用の促進を図った。

さらに、2014年度から、全窓口に知的財産の専門家(弁理士及び弁護士)を定期的に配置し、専門的な相談に迅速に対応できるように体制を強化した。また、これまで窓口の利用経験のない中小企業を積極的に訪問し、知的財産の裾野を広げる活動を強化し、利用の拡大を図った。

2014年度の延べ支援件数は146,612件であった。

②地域中小企業外国出願支援事業(4億60百万円)

中小企業者の戦略的な外国出願を促進するため、都道府県等中小企業支援センター及び2014年度からは新たに全国実施機関として(独)日本貿易振興機構(ジェトロ)を通じて、外国への事業展開等を計画している中小企業に対して、外国への出願にかかる費用(外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費用等)の一部を助成した。総支援件数は540件であった。

③海外知的財産プロデューサーによる支援((独)工業所有権情報・研修館運営費交付金の内数)

海外での事業内容や海外展開先の状況・制度等に応じた知的財産戦略策定等、海外における事業展開を知的財産活用の視点から支援するため、海外での事業展開が期待される有望技術を有する中小企業等に対して、知的財産マネジメントの専門家(海外知的財産プロデューサー)を派遣している。

2014年度は、6人の海外知的財産プロデューサーにより、211者(2015年2月末現在)の支援を行った。

④開放特許情報データベースの提供((独)工業所有権情報・研修館運営費交付金の内数)

特許の活用を促進するため、大学・公的研究機関、企業等が保有する知的財産権で、他者にライセンス又は権利譲渡する意思のある特許(開放特許)の情報を、「開放特許情報データベース」において提供している(登録件数:35,030件(2015年2月末時点))。

⑤リサーチツール特許データベースの提供((独)工業所有権情報・研修館運営費交付金の内数)

ライフサイエンス分野におけるリサーチツール特許の使用を促進するため、大学・公的研究機関、企業等が保有するリサーチツール特許の情報を、「リサーチツール特許データベース」において情報を提供している(登録件数:560件(2015年2月末時点))。

4.戦略的な標準化・認証の推進

(1)新市場創造型標準化制度の創設

新市場の創造や産業競争力の強化につながる戦略的な標準化の推進のため、2014年5月に「標準化官民戦略」を策定し、官民が密接に連携して取り組むべき具体策をとりまとめた。本戦略に基づき、複数の関係団体に跨る融合技術や中小企業を含む特定の企業が保有する先端技術の迅速な国内標準化(JIS化)や国際標準化提案を可能にする「新市場創造型標準化制度」を2014年7月に創設した。

(2)戦略的な国際標準化の推進(34億80百万円)

標準化の戦略的な推進は、新しい技術や優れた製品の速やかな普及を通じ、新市場の創造や我が国産業競争力強化に直結するため、例えば、先端医療機器や、次世代自動車、ロボット等の国際市場での競争優位に不可欠な分野について、戦略的に国際標準化活動を行った。

(3)戦略的なJIS化の推進(2億97百万円)

①JISの高機能化の促進

我が国製造業が強みを持つ高機能材料や製品などの差別化や更なる技術レベルの向上を目指すため、ミニマム標準よりも高いレベルの性能・特性を等級別に盛り込んだJIS(高機能JIS)の開発を推進した。

②安心・安全など社会ニーズを踏まえたJIS化の推進

消費者保護、高齢者・障害者配慮、環境への配慮など社会ニーズが高く安全・安心な社会形成に資する日本工業規格(JIS)原案の開発を実施した。具体的には、電気用品の安全性や、洗濯表示、建築用断熱材等についてJISを制定・改正した。

(4)世界に通用する認証基盤の強化(2013年度補正:175億20百万円)

我が国企業の海外展開の観点から戦略的に重要な分野について、認証又は試験の結果が国際的に認められる認証基盤を国内に整備するため、大型パワーコンディショナ及び大型蓄電池の評価施設の整備を開始した。

(5)アジア諸国等との協力関係強化

我が国製品のアジア諸国での展開、アジア市場獲得を促進するため、我が国の民間企業等が、我が国が強みを持つ製品及び技術が適正に評価される性能評価方法等をアジア諸国の研究機関等と共同開発し、国際標準化を連携して進めるとともにアジア諸国の試験・認証機関の能力向上に資する取組の支援を実施した。また、二国間における標準化・認証分野での協力をより確かなものとするため、2014年9月インドネシアと、標準化・認証協力文書への署名を行った。

(6)標準化人材の育成

国際電気標準会議(IEC)関係企業の若手社員を対象に、国際標準化の概要や規格開発手順等の技術的事項の講義に加え、英語力・国際交渉力のトレーニングも行う「ヤングプロフェッショナル・ジャパン講座」を2012年度から2014年度にかけて計4期実施し、68人が修了した。2014年11月に開催された「IEC東京大会」では、同プログラムの修了生を含む、国内外30か国以上、約100名のIEC関係企業又は団体の若手社員によるワークショップ等が行われた。IECと同様に2014年度からISO関係企業等の国際標準化に関わる社員を対象に、「エキスパートを育てる」、「裾野を広げること」を目的に、「ISO国際標準化人材育成講座」を全10回(実地研修を含む)のプログラムで、2014年12月9日~2015年2月24日に実施。16名が修了した。また、大学の技術経営学等のカリキュラムのための体系的標準化教材を作成し、標準講座導入拡大のための働きかけを実施した。

(7)IEC東京大会へ向けた取組

2014年11月にIECの第78回年次大会である「IEC東京大会」を開催した。80か国以上から約2,600人の専門家が参加し、総会や評議会等の会議の他、53分野の規格開発を行う技術専門委員会が行われた。加えて、主催国である日本が独自に大会テーマ“Integration toward a Smarter World”を設定し、企業、団体等によるテクニカルビジット、技術展示会、シンポジウム、実証実験等の併催イベントを開催した。スマート分野における我が国の最先端技術についての認識を深めてもらうと共に、国際標準化における我が国の貢献を示した。

 

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