- グローバル出荷指数は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響はあるものの、2021年は前年比6.4%と3年ぶりの上昇
- 海外出荷、国内出荷ともにグローバル出荷の上昇に寄与
- 海外出荷は、すべての業種が上昇
- ASEAN4、中国などすべての現地法人からの出荷が上昇
- 国内出荷は、輸送機械を除きすべての業種で上昇
- 出荷海外比率、海外市場比率は前年より上昇、逆輸入比率は前年より低下
経済解析室では、製造業のグローバル展開を踏まえ、日系製造業の国内外の拠点全体での出荷の動向を一元的に捉える観点から、国内拠点からの出荷(国内出荷)と日系企業の海外拠点からの出荷(海外出荷)の動きを比較可能な形で指標化し、合算した「グローバル出荷指数」を試算し、公表しています。この度、2021年の数値がまとまりましたので、概略をご紹介していきます。

グローバル出荷指数は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響はあるものの、2021年は前年比6.4%と3年ぶりの上昇
まず、日系製造業の国内拠点からの出荷と日系企業の海外拠点からの出荷を合算したグローバル出荷指数は、2021年は指数値96.9、前年比6.4%と3年ぶりの上昇となりました。日系製造業の国内外合わせた活動は、2018年に指数値104.4と2015年基準での最高値を記録しましたが、それ以降は、2019年の世界経済の減速に続き、2020 年の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により右肩下がりの傾向で推移していました。しかし、2021年は引き続き新型コロナウイルス感染症拡大の影響はあるものの、前年の大幅な低下の反動により3年ぶりに上昇に転じました。
グローバル出荷の内訳をみると、海外出荷指数(日系企業の海外拠点からの出荷)は、指数値103.6、前年比9.6%と3年ぶりの上昇となりました。
また、国内出荷指数(日系製造業の国内拠点からの出荷)は、指数値93.9、前年比4.8%と3年ぶりの上昇となりました。このうち、国内向けは前年比2.2%の上昇だったのに対し、輸出向けは同14.8%の上昇となり、輸出向けの方が大幅に上昇していました(上表参照)。
2021年は引き続き世界的に新型コロナウイルス感染症拡大の影響はあるものの、前年の大幅な低下の反動で海外出荷指数や国内出荷指数が上昇に転じています。

海外出荷、国内出荷ともにグローバル出荷の上昇に寄与
グローバル出荷指数の前年比6.4%上昇に対する影響度(寄与)をみると、国内出荷(日系製造業の国内拠点からの出荷)が3.2%ポイント、海外出荷(日系企業の海外拠点からの出荷)が3.1%ポイントとともに上昇に寄与しています。
2019年以降、国内出荷・海外出荷ともに低下していましたが、2021年は前年の大幅な低下の反動により国内出荷・海外出荷ともに上昇に転じています。

海外出荷は、すべての業種が上昇
2021年の海外出荷指数(日系企業の海外拠点からの出荷)の動きをみると、汎用・生産用・業務用機械工業は指数値118.0で前年比19.3%と3年ぶりの上昇、輸送機械工業は指数値100.5で前年比12.0%と3年ぶりの上昇、化学工業は指数値119.7で前年比8.4%と2013年の現行基準指数作成以来連続の上昇、電気機械工業は指数値106.4で前年比7.6%と4年ぶりの上昇となりました。
前年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で多くの業種が低下となりましたが、その反動でそのすべての業種が前年比プラスとなっています。
このように2021年は、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、世界各地の企業の生産・販売が回復に転じていますが、この先どのような動きとなるのか、注視したいと考えます。

ASEAN4、中国などすべての現地法人からの出荷が上昇
日系企業の海外拠点からの出荷を当該拠点が立地する地域別に指数化した地域別海外出荷指数をみると、ASEAN4(マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン)指数は前年比16.5%と3年ぶりの上昇、中国(含香港)指数は同10.5と2年連続の上昇、北米指数は同3.6%と2年ぶりの上昇となりました。
前年は感染症拡大が生産・販売に多大な影響を及ぼしましたが、比較的早期に感染症拡大の影響から回復した中国(含香港)を含め、2020年下半期にはほぼすべての地域で回復傾向に転じたことから上昇したと考えられます。

国内出荷は、輸送機械を除きすべての業種で上昇
2021年の国内出荷指数(日系製造業の国内拠点からの出荷)の動きをみると、汎用・生産用・業務用機械工業は指数値108.0で前年比17.0%上昇、電気機械工業は指数値99.3で前年比10.1%上昇、化学工業は指数値98.4で前年比3.1%上昇、それ以外の業種計も上昇となりました。一方、輸送機械工業は指数値86.5で前年比マイナス0.8%低下となりました。
輸送機械工業が半導体不足やアジアでの新型コロナウイルス感染症拡大に伴う部材供給不足などの影響を大きく受けた結果となりました。

出荷海外比率、海外市場比率は前年より上昇、逆輸入比率は前年より低下
グローバル出荷指数を用いて、「出荷海外比率」、「海外市場比率」、「逆輸入比率」の3つの指標も試算しています。これら3つの指標は、「グローバル化比率」と呼び、製造業のグローバル化の指標としております。

このうち、日系製造業のグローバル出荷全体(日系製造業の国内外の拠点全体での出荷)に占める海外出荷(日系企業の海外拠点からの出荷)の比率である「出荷海外比率」は2年ぶりに上昇し、2021年の比率は33.5%と最高値(2015年基準)を更新しました。
グローバル出荷全体のうち、日本市場以外の海外市場向けに出荷されたものの比率である「海外市場比率」は45.8%と3年ぶりの上昇、日本の輸入に占める日系企業の海外拠点から日本向けに出荷された割合を示す「逆輸入比率」は23.5%と2年連続の低下となりました。

以上のように、2021年の日系製造業のグローバル出荷は、国内出荷・海外出荷ともに3年ぶりに上昇したことにより、前年比6.4%と3年ぶりに上昇しましたが、2020年に新型コロナウイルス感染症の世界的大流行により大幅に減少した反動による増加となりました。
世界ではまだまだ新型コロナウイルス感染症による影響が見られますが、経済活動を再開している国も徐々に増えてきています。今後の動向も注意深くみていきたいと考えます。
- ミニ経済分析「グローバル出荷指数 2021年(2015年基準)」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20220506minikeizai.html
- グローバル出荷指数のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai-result-gb.html