フード・ビジネス・インデックス(Food Business Index、以下FBIという。)とは、生活に身近な飲食料品に関連する「食料品工業」、「食料品流通業」、「飲食店,飲食サービス業」の活動状況を把握できるよう試算した経済指標です。 今回は、2021年分の数値をまとめた「飲食関連産業の動向(2021年)」スライド資料より抜粋してFBIの動きをご紹介します。

2年連続で低下となった2021年のFBI
下のグラフは、FBIの年単位での動きを表したものです。2021年のFBIは、指数値90.5、前年比マイナス2.6%と2年連続で低下となりました。FBIを構成する内訳3業種も揃って前年比低下し、食料品工業は同マイナス0.6%と2年連続、食料品流通業は同マイナス0.8%と3年連続、「飲食店,飲食サービス業」は同マイナス8.4%と2年連続の低下となりました。

FBIの前年比マイナス2.6%に対する3業種の影響度合い(寄与度)をみると、最も影響が大きかったのが「飲食店,飲食サービス業」でマイナス2.0%ポイント、次いで食料品流通業がマイナス0.4%ポイントの低下寄与でした。2020年に続き、「飲食店,飲食サービス業」の低調の影響が続いています。

四半期の動き、第4四半期は大幅上昇へ
年間の動きを四半期毎にみると(下グラフ、黒点線)、新型コロナウイルス感染症の影響で緊急事態宣言が発令され、急落した2020年第2四半期(現行基準内で最低値)から、同年第3四半期以降回復傾向が見られましたが、2021年に入り再び緊急事態宣言が発令され、第1四半期に大きく低下しました。その後、緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が9月まで続いたことから、第3四半期まで連続低下し、指数値88.5と2番目に低い水準となりました。第4四半期に入り大幅に上昇しています。

内訳業種別では、食料品流通業は第1四半期に低下し、第2四半期以降わずかな上昇がみられました。食料品工業は、2019年頃より上昇と低下を繰り返していますが、2021年は第1四半期に上昇し、第2・第3四半期は連続低下、第4四半期に入り上昇に転じました。
「飲食店,飲食サービス業」は第1四半期に大きく低下し、第3四半期まで連続低下、第4四半期に急回復したものの、感染症拡大前の水準と比較して8割弱にとどまっています。
低調が続く「飲食店,飲食サービス業」の動きは業態で明暗が分かれる結果に
次に、2021年FBIの低下への影響が最も大きかった「飲食店,飲食サービス業」の動きを詳しくみていきたいと思います。

「飲食店,飲食サービス業」の内訳の動きは、まず2020年を振り返ってみると、幅の差はあるものの全ての系列において上期連続低下、下期連続上昇の共通の動きがみられました。
2021年に入り、「パブレストラン,居酒屋」、「食堂,レストラン,専門店」は、回復途上にあった2020年下期から第1四半期再び大幅に低下し、第3四半期まで落ち込みが続きました。喫茶店は第1四半期に低下した後、第3四半期までほぼ横ばいで推移しました。そして第4四半期に入ると、この3つは緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の解除等により急上昇しています。店舗内での酒類含む飲食の提供がメインとなる業態では、年間を通じた営業制限や外出自粛の継続が大きく影響したことがうかがえます。
他方、飲食サービス業(持ち帰りや配達飲食サービス業)は小さく上下動しながら低下傾向で推移、ファーストフード店は、第1四半期わずかに低下したものの上昇傾向で推移し、その水準は感染症拡大前まで回復しています。ファーストフード店では、その場所で飲食させるだけでなく、ドライブスルー等の持ち帰りや配達サービス事業者を通じた提供等が可能なことから、コロナ禍の影響を受けにくいと考えられます。「飲食サービス業」は、持ち帰りや配達サービスでの提供という共通点があるものの、食堂やレストラン等が新たに持ち帰り商品や配達サービス事業者を通じた提供を開始したことによる競合や、冠婚葬祭や会食等の人が集まる場への飲食提供の機会の減少も影響しているのかもしれません。
このように、コロナ禍が長引く中、2020年と異なり系列によって四半期の動きに違いがみられ、それぞれの業態の特性が影響していることがうかがえます。

続いて、「飲食店,飲食サービス業」の内訳系列の影響度合い(寄与度)をみると、低下・上昇への影響が最も大きかったのは、2020年と同様に「食堂,レストラン,専門店」、次いで「パブレストラン,居酒屋」でした。
前出のグラフでは、「パブレストラン,居酒屋」の低下幅が最も大きく活動の落ち込みが目立っていますが、「食堂,レストラン,専門店」のウエイトが5割超を占めているため、寄与度では大きく影響する結果となりました。
具体的には、「飲食店,飲食サービス業」の第1四半期は前期比マイナス13.8%であったのに対し、「食堂,レストラン,専門店」がマイナス12.0%ポイント、次いで「パブレストラン,居酒屋」がマイナス4.6%ポイントであり、同じく第4四半期の前期比21.0%に対し、「食堂,レストラン,専門店」が18.8%ポイント、「パブレストラン,居酒屋」が8.7%ポイントとなっています。
そして、2021年FBI全体の四半期毎の動きにおいても、第1四半期と第4四半期の低下・上昇に最も影響したのは「飲食店,飲食サービス業」であったことから、「食堂,レストラン,専門店」、「パブレストラン,居酒屋」の動向が、引き続き2021年FBIの動きに大きく影響したことが読みとれます。
2021年の動きを振り返ってみると、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、フード・ビジネス全体で停滞が続きました。なかでも「飲食店,飲食サービス業」は年間を通じて営業制限や外出自粛が続いた影響のため、業態によって明暗が分かれる結果となりました。第4四半期に入り回復傾向が見られますが、2022年に入っても、感染症再拡大への警戒や原材料の高騰、人手不足など、フード・ビジネスを取り巻く厳しい環境が続くことが予想されます。今後の動向を注視し、またご紹介していきたいと考えます。
この他にも、今回ご紹介しきれなかったフード・ビジネスの動きについて「飲食関連産業の動向(2021年)」スライド資料に掲載していますので、是非御覧ください。
- ミニ経済分析「飲食関連産業の動向(FBI 2021年)」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20220520minikeizai.html