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2022年小売業販売を振り返る;コロナ禍からの回復状況と残る影響

    商業動態統計(経済産業省)は、財における個人消費の動向を供給側から直接把握することができる指標です。2022年の小売業販売動向について、この指標を用いて業種別、業態別販売額の変動要因等を分析したスライド資料「2022年小売業販売を振り返る」より、主な図表を紹介し、2022年1年間の小売業販売について振り返ります。

    下の図は、商業動態統計における主な業態から見た商業販売額の概要図です。

    2022年の商業販売額は、前年比6.0%増加し、約585兆円でした。うち74%を占める卸売業は前年比7.3%増加、26%を占める小売業は同2.6%増加しました。

    小売業について業態別にみると、百貨店、ドラッグストア、コンビニエンスストア、スーパーは2021年より販売額が増加し、ホームセンター、家電大型専門店は減少しました。

    図表01

    業種別では燃料小売業、医薬品・化粧品小売業が数量要因で増加

    下のグラフは、小売業販売額への業種別寄与度をあらわしたものです。2022年の前年比2.6%の増加に最も寄与したのは「燃料小売業」、次いで「医薬品・化粧品小売業」でした。他方、減少への寄与は、「自動車小売業」が最も大きく、次いで「機械器具小売業」でした。

    図表02

    スライド資料では、業種別に販売額の変動要因を「数量」と「価格」に分解したグラフを掲載しています。

    2022年小売業の販売額増加に最も寄与した「燃料小売業」は、2021年央から価格要因による増加傾向にあり、2022年もその傾向が続きました。ガソリン、灯油、LPガスといった石油製品の価格上昇の影響が小幅となりつつも継続していることがうかがえます。「医薬品・化粧品小売業」は、価格要因の変化は余り見られず、2021年上期は数量要因により上下に変動していたところ、下期は増加傾向がみられ、2022年に入り引き続き数量要因による増加傾向となりました。行動制限の解除による外出機会の増加の影響が大きかったことが考えられます。

    図表03
    図表04

    他方、販売額の減少に寄与した「自動車小売業」をみると、2021年9月から数量要因による減少傾向が続いていましたが、一巡する2022年9月になり数量要因で増加に転じました。2021年は部材不足による納車遅れ等が生じており、2022年に入っても供給制約の影響が続いていましたが、9月以降にはそれらの影響が緩和され増加傾向となったことがうかがえます。

    図表05

    コンビニエンスストア販売額はコロナ前を上回る

    スライド資料では、百貨店、スーパー、コンビニエンスストアの販売額の変動要因を「店舗数」と「1店舗当たり販売額」に分解したグラフを掲載しており、それぞれの業態の出店傾向をうかがいながら販売額の推移をみることができます。

    3業態のうち、販売額が対前年比で最も大きく増加したのは百貨店でした。百貨店の販売額推移を「店舗数」と「1店舗当たり販売額」でみていくと、長期的には百貨店の店舗の集約化が続いており、2022年も店舗数は引き続き減少しました。1店舗当たり販売額は前年比12.3%と大幅に増加しており、2年連続での増加となりました。

    続いてコンビニエンスストアをみると、1店舗当たり販売額は大幅に増加しましたが、店舗数は減少となりました。店舗数の減少は2019年以来2度目であり、ここ数年の出店抑制傾向がうかがえます。

    他方、スーパーは出店数の増加が続いていますが、1店舗あたり販売額はわずかに減少しました。

    図表06

    商品別寄与度をみると、百貨店では、「身の回り品」、化粧品や貴金属などを含む「その他の商品」、「婦人・子供服・洋品」が増加に大きく寄与し、他の項目も全て増加となりました。

    2022年の月次推移をみると、新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)拡大の影響で2月は落ち込みがみられたものの、2月を除く全ての月で販売額が前年を上回っており、外出機会の増加の影響が大きかったことが考えられます。

    図表07

    コンビニエンスストアは、「非食品」、「ファーストフード及び日配食品」等全ての項目で増加し、2年連続での増加となりました。2022年の月次推移をみると、感染症拡大の影響で2月は増加幅の縮小が見られたものの、全ての月で前年を上回っており、百貨店と同様に人流が回復傾向にある影響が大きかったことが考えられます。

    感染症拡大前(2019年)との比較では、食品やサービス売上高販売額は回復していないものの、「非食品」が大きく増加し、全体の販売額では2019年を上回りました。

    図表08

    スーパーは、主力の「飲食料品」等が増加し、巣ごもり特需の反動減となった2021年から増加に転じました。2022年の月次推移をみると、外出機会の増加で内食(家庭内調理)需要が落ち着き、前年を下回った月もあるものの増加傾向で推移しました。物価高の影響で内食、中食(惣菜・弁当など)需要が再び増加していることも考えられます。

    図表09

    前年比5%増に戻ったドラッグストア、2年連続減少のホームセンター

    次に、専門量販店3業態(家電大型専門店、ドラッグストア、ホームセンター)から、好調の続くドラッグストアと巣ごもり特需の反動減から脱し切れていないホームセンターをみていきます。下のグラフは、ドラッグストア販売額の商品別寄与度をあらわしたものです。

    図表10

    販売額は前年比5.5%の増加、店舗数は同4.6%の増加となりました。販売額はドラッグストアの統計調査で前年比が比較可能な2015年以降、コロナ特需の反動減となった2021年を除き5~6%増で推移しており、2022年も好調が続いています。

    商品別にみると、最も増加に寄与したのは「食品」、次いで「調剤医薬品」、「ビューティケア(化粧品・小物)」でした。

    好調を維持する中で、感染症拡大前(2019年)の販売額と比較してみると、「ビューティケア(化粧品・小物)」のみ減少しており、この商品については感染症拡大の影響からの回復途上にあることがうかがえます。

    図表11

    一方、2021年は巣ごもり特需の反動減で販売額が減少となったホームセンターは、2022年の店舗数は前年比1.4%と増加に転じたものの、販売額は同1.4%の減少となりました。減少に最も寄与したのは「インテリア」、次いで「DIY用具・素材」で、「カー用品・アウトドア」及び「その他」を除く全ての項目で減少しました。

    巣ごもり特需の落ち着きが見られるものの、感染症拡大前(2019年)の販売額と比較してみると、主力の「DIY用具・素材」や「園芸・エクステリア」は増加しています。在宅時間の充実志向が一定程度浸透してきたと言えるのかもしれません。

    このように、毎日の生活の中で身近な小売業ですが、改めてデータで振り返ってみると、実感する変化と数字を通してみる変化、両方の変化をみることができ、より興味深いのではないでしょうか。

    「2022年小売業販売を振り返る」スライド資料では、今回紹介しきれなかったグラフや詳細を掲載していますので、ぜひ御覧ください。

    ミニ経済分析「2022年小売業販売を振り返る」のページ
    https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20230414minikeizai.html
    グローバル出荷指数のページ
    https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai-result-gb.html

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