商業動態統計(経済産業省)は、財における個人消費の動向を供給側から直接把握することができる指標です。2023年上期の小売業販売動向について、この指標を用いて業種別、業態別販売額の変動要因等を分析したスライド資料「2023年上期 小売業販売を振り返る」より、主な図表を紹介し、2023年上期の小売業販売について振り返ります。
下の図は、商業動態統計における主な業態から見た商業販売額の概要図です。
2023年上期の商業販売額は、前年同期比1.9%増加し、約290兆円でした。うち約7割を占める卸売業は前年同期比0.5%増加、約3割を占める小売業は同5.9%増加しました。
小売業について業態別にみると、百貨店、ドラッグストア、コンビニエンスストア、スーパーは前年同期より販売額が増加し、家電大型専門店、ホームセンターは減少しました。
業種別では自動車小売業が数量要因で増加
下のグラフは、小売業販売額への業種別寄与度をあらわしたものです。2023年上期の前年同期比5.9%の増加に最も寄与したのは「自動車小売業」、次いで「飲食料品小売業」、「その他小売業」でした。他方、減少への寄与は、「機械器具小売業」が最も大きく、次いで「燃料小売業」でした。
スライド資料では、業種別に販売額の変動要因を「数量」と「価格」に分解したグラフを掲載しています。
増加に最も寄与した「自動車小売業」からみていくと、2022年9月から主に数量要因により増加傾向で推移しており、2023年に入ってもその傾向にあります。部材不足による供給制約の解消等が影響していることがうかがえます。
「飲食料品小売業」は、2022年10月以降、主に価格要因により増加傾向で推移しており、2023年に入ってもその傾向にあります。2022年第4四半期以降の飲食料品の物価上昇が影響しているものと考えられます。
他方、販売額の減少に最も大きく寄与した「機械器具小売業」をみると、2022年以降、主に数量要因により減少傾向が続いています。
百貨店販売額は外出機会増加やインバウンドの回復により前年同期比約10%の大幅増
スライド資料では、百貨店、スーパー、コンビニエンスストアの販売額の変動要因を「店舗数」と「1店舗当たり販売額」に分解したグラフを掲載しており、それぞれの業態の出店傾向をうかがいながら販売額の推移をみることができます。
3業態のうち、販売額が対前年同期比で最も大きく増加したのは百貨店でした。百貨店の販売額推移を「店舗数」と「1店舗当たり販売額」でみていくと、店舗数については、長らく集約化が続いており、特に2019年及び2020年にかけて減少、2010年時点と比較すると店舗数は7割程度まで減少しています。
他方で1店舗当たり販売額は2021年以降、増加傾向で推移しております。
商品別寄与度をみると、「婦人・子供服・洋品」、「身の回り品」、貴金属や宝石などを含む「その他の商品」が増加に大きく寄与し、その他の商品分類も全て増加となりました。
2023年上期の推移をみると、年明けの1月・2月に、前年同月と比べて販売額が大きく増加しており、高額商品も多く含まれる上記の商品群が好調であったことがわかります。
マスク着用が個人判断とされるなど、コロナ禍前の生活に戻りつつある中、外出機会が増加したこと、また水際対策の緩和によるインバウンドの回復の影響が大きかったことが考えられます。
なお、コロナ禍以前(2019年上期)の販売額との比較では、商品別にみると「婦人・子供服・洋品」は約85%と回復途上である一方、バックや履物などが含まれる「身の回り品」は約110%とコロナ前を上回る水準まで回復しています。
食品をメインに好調が続くドラッグストア、ホームセンターは在宅需要の終息か
次に、専門量販店3業態(家電大型専門店、ドラッグストア、ホームセンター)から、好調の続くドラッグストアをみていきます。下のグラフは、ドラッグストア販売額の商品別寄与度をあらわしたものです。
販売額は前年同期比7.7%の増加、店舗数は同3.7%の増加となりました。販売額はドラッグストアの統計調査で前年比が算出可能な2015年以降、一貫して増加で推移しており、2023年上期も堅調に推移しました。
商品別にみると、最も増加に寄与したのは「食品」、次いで「OTC医薬品」、「調剤医薬品」、「ビューティケア(化粧品・小物)」でした。
「食品」の販売額は2015年以降増加を続けており、2023年上期ではドラッグストア販売額の約3割を占めています。
2021年以降販売額の減少が続くホームセンターは、2023年上期も続いて前年同期比0.8%の減少、店舗数は同1.1%の微増となりました。減少に最も寄与したのは「インテリア」、次いで「DIY用具・素材」、「家庭用品・日用品」でした。
2023年上期の推移をみると、5月・6月に、前年同月と比べて販売額が減少しており、この2か月において減少に最も寄与したのは「園芸・エクステリア」、次いで「DIY用具・素材」でした。外出の機会が増加し、コロナ禍で活発化した「巣ごもり需要」が終息しつつあることが考えられます。
このように、毎日の生活の中で身近な小売業ですが、改めてデータで振り返ってみると、実感する変化と数字を通してみる変化、両方の変化をみることができ、より興味深いのではないでしょうか。
「2023年上期小売業販売を振り返る」スライド資料では、今回紹介しきれなかったグラフや詳細を掲載していますので、ぜひ御覧ください。
- ミニ経済分析「2023年上期小売業販売を振り返る」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20231013minikeizai.html