フード・ビジネス・インデックス(Food Business Index、以下FBIという。)とは、生活に身近な飲食料品に関連する「食料品工業」、「食料品流通業」、「飲食店、飲食サービス業」の活動状況を把握できるよう試算した経済指標です。
今回は、2024年分の数値をまとめた「飲食関連産業の動向(2024)」スライド資料より抜粋してFBIの動きをご紹介します。
なお、元データである鉱工業指数(経済産業省)と第3次産業活動指数(経済産業省)が2020年基準となったことを受け、FBIも本公表分より2020年基準に改定しています。そのため、過去分のデータが以前の公表値(2015年基準)と異なりますのでご注意ください。

3年連続の上昇となった2024年のFBI
下のグラフは、FBIの年単位での動きを表したものです。2024年のFBIは、指数値96.3、前年比0.3%と3年連続の上昇となりました。
FBIを構成する3業種のうち「飲食店、飲食サービス業」は前年比3.5%と3年連続で、「食料品工業」は同0.2%と5年ぶりに上昇しました。一方、「食料品流通業」は同マイナス1.5%と6年連続の低下となりました。

FBIの前年比0.3%上昇に対する3業種の影響度合い(寄与度)をみると、最も影響が大きかったのが「飲食店、飲食サービス業」で0.8%ポイントの上昇寄与、対して「食料品流通業」が0.6%ポイントの低下寄与でした。2024年のFBIの上昇は、前年に引き続き、「飲食店、飲食サービス業」がけん引したことが分かります。

FBI四半期の動き、第1四半期は上昇したものの、第2四半期以降は低下
FBIの年間の動きを四半期ごとにみると(下グラフ、黒点線)、第1四半期において上昇したものの、第2四半期以降は低下を続け、第4四半期は指数値94.8となりました。

内訳業種別では、「食料品工業」は、小幅な上昇・低下を繰り返しながら、ほぼ横ばいで推移しました。
「食料品流通業」は、緩やかな低下傾向で推移していたところ、第4四半期に大幅に低下しました。
「飲食店、飲食サービス業」は、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法における位置付けが5類に移行したことにより、経済社会活動の正常化が進む中で上昇傾向に推移。第2四半期に一時低下したものの、下期は再び緩やかに上昇しました。
「飲食店、飲食サービス業」全体は3年連続で上昇するも、飲食サービス業は低下傾向
次に、2024年FBIに対する上昇寄与が最も大きかった「飲食店、飲食サービス業」の動きを詳しく見ていきたいと思います。
「飲食店、飲食サービス業」の動きについて、まず2023年を振り返ってみると、経済社会活動の正常化が進む中、コロナ禍の影響を大きく受けてきた「パブレストラン、居酒屋」、「喫茶店」、「食堂、レストラン、専門店」が前年比で大幅に上昇しました。
2024年に入っても、引き続きこれら3業態において上昇が続くとともに、「ファーストフード店」はこれまでも高い水準で推移していましたが、前年比で大きく上昇しました。
一方、飲食サービス業(持ち帰り・配達飲食サービス業)は、2022年以降低下が続いています。持ち帰り・配達といった販売形態は、感染症の影響を受けにくいということもあり、コロナ禍においては他の業態と比較し、相対的に低下幅は小さくとどまりましたが、「食堂、レストラン、専門店」等の対面サービスが回復していく裏で、緩やかな低下傾向が続いています。
このように、2024年の動きをみると、飲食サービス業とその他の4業態とで動きに違いが見られました。

続いて、2024年における「飲食店、飲食サービス業」の内訳系列の影響度合いを寄与度順にみると、前年に引き続き、上昇寄与の1位は「食堂、レストラン、専門店」、2位は「パブレストラン、居酒屋」でした。3位は、2023年は「喫茶店」でしたが、2024年は「ファーストフード店」となりました。
具体的には、「飲食店、飲食サービス業」の前年比3.5%上昇に対し、「食堂、レストラン、専門店」が2.6%ポイント、「パブレストラン、居酒屋」が0.5%ポイント、「ファーストフード店」が0.3%ポイントの上昇寄与となりました。2024年は、前年に引き続き、コロナ禍の影響を受けた業態の上昇寄与が大きかったほか、ファーストフード店の寄与も大きくなりました。物価上昇が続く中、比較的安価で食事可能なファーストフード店を利用する機会が増えた可能性があります(注)。
注 一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査令和6年(2024年)年間結果報告」を参考に記載。
2024年の動きを振り返ってみると、前年と比較して回復の勢いは落ち着いたものの、上昇が続く「飲食店、飲食サービス業」がけん引したことにより、フード・ビジネス全体では3年連続の上昇となりました。インバウンド需要が好調である一方、飲食料品の価格上昇が続く中、フード・ビジネスの状況はどのように変化していくのでしょうか。引き続きフード・ビジネスの動向を注視し、またご紹介していきたいと考えます。
この他にも、今回ご紹介しきれなかったフード・ビジネスの動きについて「飲食関連産業の動向(2024年)」スライド資料に掲載していますので、是非御覧ください。
- ミニ経済分析「飲食関連産業の動向(FBI 2024年)」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20250722minikeizai.html