おせち料理から食品流通について考えるシリーズ、第2部では、おせちの準備に欠かせない「先立つもの」、購入資金を左右する可処分所得に大きく影響する賃上げを中心に統計データをみてみたいと思います。
おせちの準備に「先立つもの」
2023 年は例年にない「賃金底上げ」の年となりました。
まず、民間主要企業の春闘での賃上げの状況を確認すると、2023 年の春闘賃上げ率(定期昇給分とベースアップ相当分の合算)も3.58%で、1994 年以来の高水準でしたが、2024 年の春闘賃上げ率(7月最終回答集計結果)は5.10%と、1991 年以来となる5%台もの賃上げ回答となりました。
しかし、ここ数年は、おせち料理の値段が、標準的な三段重、または3~4人前サイズの商品の平均価格にして年々1,000 円以上も値上がり(2022 年 24,382 円、2023 年 25,461 円、2024 年26,619 円。注)しているほどの物価高騰が続いています。
注: 株式会社帝国データバンク・プレスリリース「特別企画:2024 年正月シーズン「おせち料理」価格調査」
そこで、毎月勤労統計調査で、物価上昇の影響を考慮した実質賃金の推移(紫の折れ線)を見ると、今回の賃上げで2023 年は、名目賃金こそ前年比1.2%増と上昇しましたが、実質賃金は前年比2.5%減で、賃金増が物価高騰に追い付いておらず、消費者の購買力はかえって低下したのではないかと思われます。

「メリハリ消費」とおせち商戦
民間によるおせちに関するアンケート調査によると、回答者の約7割が「おせちは節約を意識しない」と回答、また、購入価格帯が年々、少しずつ高価格帯へと移行しているのが見てとれます。実質賃金の低下が続いているなかでも、「正月のおせちくらいは良いものを」食べよう、という「メリハリ消費」のあらわれと言えそうです。

賃上げによって、「名目」上は増えた可処分所得と「メリハリ消費」、そしてコロナ禍での自粛から解放された後の「リベンジ消費」や、大人数での会食需要を取り込もうと過熱気味のおせち商戦ですが、みなさんは、今年のおせちはどうされたでしょうか? また、来年はどうされますか?
(本解説に関する注意事項)
本解説は、公に入手可能で、経済産業省経済解析室が信頼できると判断した情報を用いて作成しています。ただし、使用した情報を全て、個別に検証しているものではないため、これらの情報が全て、完全かつ正確であることを保証するものではありません。
また、本解説は、統計等の利活用促進を目的に、経済解析室の分析、見解を示したものであり、経済産業省を代表した見解ではありません。