娯楽業は、コロナ禍において一部では営業の自粛に追い込まれるような厳しい状況におかれましたが、その中でもいち早く回復した業種があります。今回は、そのいち早く回復した競輪・競馬等の競走場、競技団について観察してみます。一般的には、公営競技として認識されている方も少なくないと思われますが、見るスポーツとしての一面がありますので違う視点でも観察します。
競輪・競馬等の競走場、競技団は着実に回復している
第3次産業活動指数から「競輪・競馬等の競走場、競技団」指数をみますと、現行基準の2018年以降(図の左)では、上昇が継続しています。季節調整済みの四半期別(図の右)では、コロナ禍の初期には混乱の中にあり前期比マイナスとなっていましたが、その後は上昇傾向が継続しています。

競輪が好調に推移している
公営5競技について売上高の推移をみますと、中央競馬を除きバブル経済の崩壊とともに1991年度以降、長期の売上減少が続いていました。中央競馬も1997年をピークにして売上減少に転じています。その後、2011年度にボートレースが最初に売上増加に転じると、2012年(度)以降、中央競馬、地方競馬も売上増加に転じている中で、競輪とオートレースは減少傾向が続いていました。 2020年からのコロナ禍の中でも巣ごもり需要を逆手にして、さらにテレビCMの効果等もありボートレースが最も売上を伸長させ、2024年度には2010年度の約3倍の売上になっています。競輪も遅れながら2013年度を底にして2024年度は、2013年度と比べて約2.2倍の売上に回復しています。急激に売上を伸長させていたボートレースは2022年度になりますと伸びの鈍化がみられますが、競輪は一時地方競馬に売上を超されたものの、好調な売上を継続して再度上回っているようです。
(注1):中央競馬は1月~12月の暦年、それ以外は4月~3月の年度

競輪の販売チャネルのうち寄与しているのはネット投票だけではない
このところの競輪の売上の伸びに寄与しているのが、電話投票も含むネット投票のようです。2011年度以降、継続してネット投票の売上を伸長させているようですが、ネット投票が開始されたのでは、2002年ですから、かなり以前からになります。 1998年にナイター開催、2011年ミッドナイト競輪、2012年にはモーニング競輪と通常の開催(10時台から16時台)以外の時間帯に開催することで、新たな顧客獲得に努めてきたようです。ミッドナイト競輪は20時40分以降に、無観客でのレースになるため、コロナ禍でも入場者数の上限にも影響を受けないことに加え、近隣対策にもなります。産業構造審議会製造産業分科会車両競技小委員会資料(注2)によれば、一日当たりの売上は、ナイター競輪やミッドナイト競輪が通常の開催(10時台から16時台)を上回っているようです。世代別には20代と30代の若い世代が売上増加の半分以上を占めているようで、新しい客層を獲得した成果と言えるのではないでしょうか。
(注2) https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/sharyo_kyogi/020.html

まとめ
競輪は、「ケイリン」としてオリンピックの自転車競技の一つとしてスポーツとしての一面もあります。競輪場が自転車競技の魅力をアピールし、自転車を活用した幅広い層が利用できる複合施設として続々と生まれ変わっています。このような動きは、競輪だけでなく他の公営競技がすべて取り組んでいるようです。今回は、第3次産業活動指数から、「競輪・競馬等の競走場、競技団」指数の動きを解説するとともに、ネットで見られるスポーツとしての一面を紹介してみました。
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