新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」)の感染拡大によって外出自粛要請や飲食店への営業自粛要請等があった影響により、おうちで飲酒を楽しむようになるなど、飲酒のあり方が新型コロナ以前と変わった方もいるのではないでしょうか。今回は特に「ウイスキー」に注目して、近年の家庭での消費の動向について見ていきます。
酒類の生産は緩やかに回復の兆し
鉱工業指数(IIP)から酒類生産の指数をみると、新型コロナにより外出自粛要請や飲食店への営業自粛要請等があった2021年頃までは減少傾向で推移していますが、その後はおおむね緩やかに回復傾向にあります。

ウイスキーの国内需要はV字回復
ウイスキーの国内需要の状況を課税数量(国内向け生産と輸入の合計)で見てみると、2007年度まで下落傾向だったものの、2008年度以降回復しています。新型コロナの影響か、2020年と2021年に減少しましたが、2022年以降再び増加に転じ、2024年度は206千キロリットルと2007年度の2.8倍、ここ30年で最も多くなっています。増加の背景としては、ハイボールの流行や、ウイスキーを題材としたドラマの影響等があるのではないかと言われています。

コロナ禍以降ウイスキーの家庭での消費が定着
家庭での酒類及びウイスキー全体の消費について、実質購入量(家計調査(2人以上の世帯)の購入金額を、消費者物価指数(2020年基準)で除して実質化し、2019年を100として指数化)を算出し比較してみたところ、酒類全体は2020年に上昇した後、緩やかに減少傾向で推移し、2024年には2019年とほぼ同じ水準になったのに対し、ウイスキーは同じく2020年に大きく上昇した後、横ばいで推移しています。家庭でのウイスキーの消費増はコロナ禍の巣ごもり需要による一過性のものではなく、その後も定着しているのではないかと思われます。

ウイスキー購入量を年代別に見ると・・・?
ウイスキーの実質購入量について、世帯主の年齢階級別に見ると、特に49歳以下で2020年以降の購入量が増加しています。新型コロナ以前は自宅以外で飲酒することが多かったと思われる比較的若い世代が、新型コロナによる外出自粛等により自宅でウイスキーを嗜み始め、定着したのかもしれません。

まとめ
今回はウイスキーを例にして、新型コロナ前後の消費行動の変化について見てみました。引き続き、新型コロナ以後の消費行動の変化や定着状況についても注目していきたいと思います。
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