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工業統計調査
《トピックス》長期的にみた製造業の設備投資
- 有形固定資産取得額と民間企業設備の動向
製造事業所(従業者30人以上、以下同じ)の「有形固定資産取得額(土地以外のもの)」(以下、製造業の投資 額という)を実質化し(GDPの民間企業設備デフレータによる)、GDPの実質民間企業設備とともに昭和40年からその推移をみると(平成2年=100と して指数化)、製造業の投資額は「いざなぎ景気から列島改造ブーム」、「円高不況時の昭和60年前後」(以下、円高不況前後という)及び「平成景気」(以 下、その後の景気後退期を含めてバブル期という)の3時点に投資額の山がみられ、民間企業設備では平成3年に明確な山がみられるほかは、ほぼ一貫して増加 傾向を示している。第1図 有形固定資産取得額と民間企業設備の推移(平成2年=100)
両者の動きをみると(第2図)、「いざなぎ景気から列島改造ブーム」にかけては、製造業では鉄鋼業、化 学工業などが需要増に対応した長期的な投資増の後、投資の一巡ないし一服感から減少となったのに対し、民間企業設備では電力業において需要増に対応した長 期的な投資が続いた。「円高不況前後」は、景気回復・拡大に寄与したのは主に輸出と設備投資であった。製造業では、円高不況前に輸出比率の高い電気機械器 具製造業の投資額が急拡大、また、工業統計調査にたばこ産業が対象となったこともあって投資額が大幅に増加したが、円高不況による輸出の大幅減などにより 昭和60年に山がみられた。一方、民間企業設備は、サービス業の拡大、引き続き電力業の投資増がみられたことなどから増加傾向で推移した。
なお、製造業の投資額の民間企業設備に対する割合(有形固定資産取得額/民間企業設備)は、昭和46年まで約 3割を占めていたが、以降その割合は縮小、バブル崩壊以降には15%前後まで低下しているものの、製造業の投資額は引き続き増加傾向にあり、その水準も高まっている。第2図 製造業の有形固定資産取得額の産業別伸び率寄与度の推移
- 製造品出荷額等と製造業の投資額
次に、製造品出荷額等(以下、出荷額という)を実質化し(デフレータは国内卸売物価指数の工業製品による)、これを製造業の投資額と比較してみる(平成2年=100)(第3図)。
第3図 製造業の有形固定資産取得額と製造品出荷額等の推移(平成2年=100)
- 各産業の出荷額と投資額の関係
各産業ごとに、製造事業所の出荷額と投資額の関係をみてみる。
なお、出荷額の実質化には各産業に対応する国内卸売物価指数の商品群・類別指数を用い、投資額の実質化には各産業ともGDPの民間企業設備デフレータを用いた。- (1) 出荷額と投資額の比較
製造業における各産業別の製造品出荷額等及び有形固定資産取得額(ともに昭和40年~平成9年の33年間の平均値、出版・印刷・同関連産業については45年からの28年間)の関係をみてみる(第1表)。 -
第1表 製造品出荷額等と有形固定資産取得額の構成比及び投資・出荷比率
(注1) 製造品出荷額等は、国内卸売物価指数の商品群・類別指数で実質化し、有形固定資産取得額はGDPの民間企業設備で実質化しており、製造品出荷額等は、内訳の産業の積み上げと製造業計は一致しない。
(注2) 「食料・飲料等製造業」は食料品製造業と飲料・たばこ・飼料製造業を、「繊維・衣服等製造業」は繊維工業と衣服・その他の繊維製品製造業を、「プラスチック製品・その他製造業」はプラスチック製品製造業とその他の製造業をそれぞれ統合した。
- (1) 出荷額と投資額の比較
(1) 出荷額の動向
製造業の出荷額は、列島改造ブームの昭和48年まで増加を続けた後、第1次オイルショックの影響から49年、 50年には2年連続の減少となった。その後は、61年の円高不況時のわずかな減少を除き平成3年まで増加が続き、バブル崩壊後の4~6年には3年連続の減 少となったが、7年以降再び増加が続いている(第3図、第4図)。
出荷額を景気動向(注)と併せてみると、景気の山と出荷額の山が一致しているのは平成3年であり、3年を除けば、景気の山・谷に関係なく出荷額は増加の一途をたどっており、景気動向と出荷額の動きには違いがみられる。
(注) 景気基準日付は月単位であるため、ここでは景気の山のある月を含む年を景気の山の年、景気の谷のある月を含む年を景気の谷の年とした。ただし、昭和52年は1月が景気の山、10月が景気の谷であるため、翌年以降との関係をみる場合は景気の谷の年として取り扱った。
(2) 製造業の投資額の動向
製造業の投資額は、昭和42~45年にかけて前年比2桁の増加、47年から53年まではほぼ減少傾向で推移した。その後60年まで増加が続き、円高不況時には2年連続の減少となったが、バブル期には4年連続の2桁増となっている。バブル崩壊後は3年連続の大幅減 となったものの、平成6年以降は増加傾向にある(第3図、第4図)。
投資額を景気動向と併せてみると、昭和60年及び平成3年の景気の山では製造業の投資額も山となっている。一方、景気の谷とでは、製造業の投資額は景気の谷より遅れて谷となっており、唯一50年が景気、投資額とも谷が一致している。
(3) 出荷額と投資額の関係
出荷額と投資額の前年比の動向をみると(第4図)、前年比の増減幅に相違はあるものの、両者似た動きとなっている。そのなかで、昭和41年から平成9年までの32年間のうち、6時点でプラス・マイナスの符号が逆転している。6時点ともすべて出荷額が増加、投資額が減少となっているが、このうち昭和41年、47年、53年及び62年は景気の谷の翌年に当たり、48年及び52年は投資額が減少傾向にある時期となっている。
出荷額、投資額とも景気動向と併せてみると、企業においては設備投資は研究開発部門などから行われ、遅れて事業所(工場)の設備投資が行われる。その後、製造品の生産がスタートすることから、製造業の投資額、出荷額は景気の山・谷に比べ拡大、後退がずれ込むと考 えられる。
なお、出荷額と投資額の指数水準による相関をみると、製造業計の相関係数は0.896と高い値を示している。
第4図 製造業の有形固定資産取得額と製造品出荷額等の前年比の推移
- 1) 出荷額を産業別にみると、電気機械器具製造業(構成比14.8%)、輸送用機械器具製造業(同14.0%)、食料・飲料等製造業(同11.0%)の3産 業が2桁台の構成比を占め、次いで一般機械器具製造業(同9.1%)、化学工業(同8.6%)、鉄鋼業(同7.4%)の構成比が高く、機械関連の加工組立 型がほぼ4割を占めている。
- 2) 投資額を産業別にみると、電気機械器具製造業(同16.2%)、輸送用機械器具製造業(同13.7%)、化学工業(同11.3%)、鉄鋼業(同 11.2%)の4産業が2桁台の構成比を占め、次いで一般機械器具製造業(同7.7%)、食料・飲料等製造業(同7.5%)の構成比が高い。この6産業 は、出荷額でも構成比が高い上位産業であり、加工組立型の構成比は、ほぼ4割となっている。
- 3) 出荷額に対する投資額の比率をみると、製造業計では5.1%となっている。
各産業ごとにみると、鉄鋼業、窯業・土石製品製造業、パルプ・紙・紙加工品製造業、化学工業、ゴム製品製造業、非鉄金属製造業の素材型の産業では6%を 超える高い比率となっている。次いで、電気機械器具製造業、精密機械器具製造業、プラスチック製品・その他製造業の順となっているが、これら9産業の比率 は製造業計を上回っている(第5図)。
第5図 製造品出荷額等に対する有形固定資産取得額の産業別の比率
4) 以上のように、出荷額の構成比が高い産業は投資額の構成比も高く、出荷額の構成比が低い産業は投資額の構成比も低い。
出荷額に対する投資額の比率は、出荷額及び投資額の構成比が高い6産業では、装置型の鉄鋼業及び化学工業が上位にあるのに対し、加工組立型の電気機械器具 製造業、輸送用機械器具製造業、一般機械器具製造業は中ほどの順位となっている。また、なめし革・同製品・毛皮製造業、家具・装備品製造業、木材・木製品 製造業は、出荷額、投資額とも構成比は小さく、出荷額に対する比率も小さい(第6図)。
第6図 製造品出荷額等と有形固定資産取得額の構成比及び投資・出荷比率のバブル図
(注) バブル図は、3つの値の組合せを比較するグラフで、散布図に似ているが、縦軸・横軸のほかに3番目の値としてバブルの面積が示される。ここでは、製造品出荷額等に対する有形固定資産取得額の比率をバブルの面積としている。