通商・貿易分野経済連携
石川 なな子通商政策局 経済連携課(併任:APEC室)課長補佐(2022年8月時点)
保護主義が台頭する 国際情勢での日本の役割
ここ数年、米中貿易摩擦やポピュリズムの台頭、新型コロナウイルスによる経済危機、そして2022年に入りロシアによるウクライナ侵略が勃発する等、国際情勢は歴史上の大きなうねりを迎えています。サプライチェーンの混乱やエネルギー・食料価格の高騰を背景に、一方的な貿易制限措置や自国産業を過度に優遇する保護主義的な動きも見られます。こうした動きは、企業のサプライチェーンが国境を越え多岐に及び、ヒト・モノ・カネの動きが多極化するなか、世界のビジネスに大きな不確実要素・リスクを生み出しています。これに対して、私がいる経済連携課では、各国との厳しい交渉を経て、インド太平洋地域ではCPTPPやRCEP、欧州では日EU・EPAを締結・発効する等、経済連携協定というツールを活用して、貿易投資の自由化を促進し、「自由で公正な経済秩序」を具体化するルールメイキングを進めています。
経済連携協定の意義とは
経済連携協定と一言に言っても中々内容がわかりづらいところがあると思います。経済連携協定、EPAやFTAでは、関税の削減・撤廃や外資規制の撤廃といったいわゆる「貿易投資の自由化」と呼ばれるものだけでなく、知的財産、補助金や政府調達、データの取扱いや基準規格など、企業が海外で活動する上で欠かせないビジネス環境を整備するルールが幅広く規定されています。国内だけでなく、二国間又は多国間で制度作りに携われる、まさに政府の仕事の醍醐味だと思います。例えば、一方的な輸出制限措置や、企業進出で強制的に技術移転を求める措置、自国産業を不当に優遇する市場歪曲的な補助金等、保護主義的・権威主義的措置を禁じるルールもあります。このように、経済連携協定には、関税撤廃のように直接的に短期的に企業のビジネスに大きく影響をもたらすものから、中長期的に保護主義を是正し、自由で公正な貿易投資環境を守り改善していくものまで、国際経済を左右する様々な内容が含まれ得るわけです。
企業課題から 国際的な経済秩序まで
私自身は、米国留学のあと、経済連携課に所属し、トルコとのEPA交渉やブレグジットを決めた英国とのEPA交渉、そしてCPTPPの新規加入への対応等、様々な交渉を担当しました。短期的・中長期的な視点から、ビジネス課題を精査・改善策の検討、優先順位づけ、相手国の考えの分析等を通じて、細部から全体まで戦略をたて、交渉を行えるよう日々模索してきました。こうした中、ハイレベルなルール・自由化に合意し連携していくためには、真のビジネス課題を互いに理解し、経済的な必要性をしっかり共有できることが重要だとひしひしと感じました。また、デジタル経済やカーボンニュートラル、人権問題への対応など、世界経済の価値や重心が大きく変わっていく中で、時代に合わせてルールや経済連携のあり方を柔軟に考えないといけません。経産省では、企業の現場からグローバルな通商の世界まで、縦にも横にも幅広く見られるからこそ、日本の目指すビジョンを描き、戦略を組み立て実行していくことができるのだと思います。是非皆さんと一緒に進めていけることを楽しみにしています。
経済産業省Ministry of Economy, Trade and Industry, JAPAN
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最終更新日:2023年12月21日