カーボンニュートラル社会の実現に向け、燃焼してもCO2を排出しないアンモニアを、燃料として利用するための技術が世界的に注目されており、日本においてもアンモニア燃焼技術の実用化に向けた開発が進められています。
今般、アンモニアを燃料として利用する発電用ボイラについて、排ガス性能評価試験の実施手順など、環境性能を評価するための試験方法を定める技術仕様書※1(ISO/TS 21343※2)が日本主導で開発され、正式に発行されました。
この技術仕様書により、発電用ボイラの環境性能を適切に評価することが可能となり、日本発の発電用ボイラの高い環境性能が認められることで、世界におけるカーボンニュートラル社会の実現に向けた歩みを着実に前進させることが期待されます。
1.背景
燃料アンモニアは、燃焼してもCO2を排出しないゼロエミッション燃料であり、地球温暖化対策において有効な手段の1つとなっています。燃料アンモニアの利用拡大に向けて、現在日本において最も技術開発が進展しているのが、燃料アンモニアの発電用ボイラへの利用です。この技術は、発電におけるCO2排出量を削減するための有効な手段として、日本だけでなく東南アジア等の海外でも実現が期待されているものです。
アンモニアを燃焼させると、環境汚染物質である窒素酸化物(NOx)が発生することから、アンモニアを燃料として利用するためには、燃焼時におけるNOxの排出を抑制する技術が必要不可欠です。日本では、世界に先駆けてこの課題に対応すべく、NOx排出の低減に繋がるアンモニア燃焼技術の開発が進められてきました。
燃料アンモニアを利用する発電用ボイラについても、その普及には、NOx等の排ガスの抑制等の環境性能が必要です。しかし、その環境性能について一律の評価手法が確立されておらず、日本の高い環境性能を客観的に示すことができませんでした。そこで、今般、日本が主導する形で、燃料アンモニアを利用する発電用ボイラの環境性能を評価するための試験方法等を規定する「技術仕様書(TS)」の開発を進め、2025年1月14日にこれが正式に発行されました。
2.技術仕様書の概要
今回発行された技術仕様書ISO/TS 21343は、日本企業の実証試験の結果を参考に、燃料アンモニアを利用する発電用大型ボイラについて、排ガス性能評価試験の実施手順や報告プロセスを規定しています。
具体的には、発電設備において運用開始前に実施する試験方法(窒素酸化物、一酸化二窒素、未燃アンモニアの濃度の測定方法等)を規定するとともに、発電設備の購入者及び使用者に対する試験結果の報告事項等を規定しています。
ISO/TS 2134の内容の概念図
(アンモニアを燃焼する発電用ボイラの環境性能評価)
3.期待される効果
今回発行された技術仕様書により、日本の燃料アンモニアを利用する発電用ボイラについて、高い環境性能が客観的に評価され、これにより日本発の発電用ボイラが世界中で利用されることに大きく貢献するだけでなく、カーボンニュートラル社会の実現に向けた歩みを着実に前進させることが期待されます。
※1 技術仕様書(TS:Technical Specifications)とは、
国際規格としての合意が直ちには難しい場合に、すぐに使用できるように発行する文書。将来、変更プロセスを経て、国際規格として発行することも可能。発行後3年で見直しが行われる。
※2 正式名称:ISO/TS 21343 Oil and gas industries including lower carbon energy
– Fuel ammonia —Requirements and guidance for boilers for power generation
◯関連リンク
ISOポータルの当該技術仕様書のページ
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担当者:湯川、水野、中島
電話:03-3501-1511(内線 3423)
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※[★]を[@]に置き換えてください。燃料アンモニアの政策について
資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部
水素・アンモニア課長 廣田
担当者:長谷川、宮川、中澤
電話:03-3501-1511(内線 4451)
メール:bza-h2-nh3★meti.go.jp
※[★]を[@]に置き換えてください。
最終更新日:2025年2月7日