国際標準化機構(ISO)において、我が国が主体となって提案・開発を進めてきたオンライン紛争解決(ODR)サービスの提供に関する手引きの国際規格(ISO 32122)が発行されました。昨今、海外との電子商取引(EC)においては、言語や各国法規制等の制約、物流
・決済手段等での課題・トラブル等が増加しています。従来の対面で行われる、裁判所による手続きや裁判外紛争解決(ADR)と比較して、オンライン上で紛争を解決する仕組みであるODRは、越境ECにおける取引保証に有効です。本規格が普及することにより、日本をはじめ各国においてEC事業者によるODRサービスの導入が促進され、EC市場での円滑な取引の促進、健全な消費環境の確立及びEC市場の更なる拡大が期待されます。
1.背景
COVID‐19等の影響を受けて、世界の電子商取引(EC)市場規模は拡大する一方、国境を越えた電子商取引(越境EC)においては、言語や各国法規制等の制約、物流・決済手段等での課題・トラブル等が増加しています。そして、越境ECにおける取引保証は、対面で行われる、裁判による手続きや民間の手続きである裁判外紛争解決(ADR)では実現できないことから、昨今は、オンライン紛争解決(ODR)が広く利用されるようになってきています。
このような状況を踏まえ、2019年8月に、アジア太平洋経済協力(APEC)会合において、越境ECの安全性確保のためのODRの協力フレームワークが採択されました。このフレームワークを基に、日本は、国際標準化機構(ISO)のTC321(電子商取引におけるトランザクション保証)/WG3にODRに関する規格の策定を2022年に提案し、規格開発の議論を主導してきました。
2.規格の概要
今回発行されたISO 32122(※)は、自らODRサービスを提供するEC事業者及びEC事業者から委託を受けるODRプロバイダのために開発された、ODRサービスの提供に関する手引きです。ECの安心・安全な利用のため、取引過程で生じる紛争の解決手法が規定されており、特に越境ECでの紛争時には有用です。
主な規定事項は以下のとおりです。
- 基本原則
ODRサービスの設計、実施、維持等を行う際に考慮すべき原則として、「アクセシビリティ」、「説明責任」、「専門性」、「機密保持」、「公平性」、「公正、公平及び中立」、「法令」、「安全」、「透明性」の9項目を規定。
- 技術的推奨事項
ODRサービスの過程で取得又は生成された情報について考慮すべき事項として、「個人情報及びプライバシーの保護」、「決定事項の匿名化」、「記録の封印」、「記録のセキュリティ及び保管」、「記録へのアクセス」の5項目を規定。
- 運用マニュアル
ODRプロバイダが運用マニュアルを作成する際に、考慮すべきステップとして、当事者間による「交渉」、中立者が介入する「調停」、最終手続きである「意思決定」の3段階を規定。
3.期待される効果
本規格が普及することにより、日本をはじめ各国においてEC事業者によるODRサービス導入が促進され、EC市場での円滑な取引の促進、健全な消費環境の確立及びEC市場の更なる拡大が期待されます。
図:本規格の対象とするODRサービス
※ 正式名称:ISO 32122:2025
Transaction assurance in E-commerce — Guidance for offering online dispute resolution services
お問合せ先
国際標準について
イノベーション・環境局 国際標準課長 西川
担当者:吉成、石毛、内山
電話:03-3501-1511(内線 3423)
メール:bzl-s-kijun-ISO★meti.go.jp
※[★]を[@]に置き換えてください。ISO32122について
商務情報政策局 情報経済課長 守谷
担当者:船越、宇田川、近藤
電話:03-3501-1511(内線 3961)
メール:bzl-junsoku★meti.go.jp
※[★]を[@]に置き換えてください。
最終更新日:2025年3月21日