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令和3年度 産業標準化事業表彰受賞者インタビュー Vol.18

経済産業大臣表彰/中島 眞理(なかじま まり)氏
一般社団法人日本ゴム工業会 ISO/TC45国内審議委員会
シニアエキスパート ゴム用語分科会主査

ゴム製品のバイオベース度を求める試験方法を国際標準化へ

 ゴム製品は私たちの生活に必要不可欠な存在だ。自動車のタイヤ、輪ゴム、ゴム手袋、建物の免震ゴムなどその柔軟性や耐衝撃性を強みに、幅広く展開されている。しかし一方では、生産の際の森林伐採や、道路との摩擦により発生したタイヤ摩耗粉が環境汚染の原因になるなど、生産と利用のプロセスにおける環境負荷が問題視されてきた。

現在、ゴムの生産、使用、廃棄の各段階において再生可能資源を活用することの重要性が高まってきている。時代の要請の一助となるべく、省資源を実現したゴム製品の正確な評価方法の国際標準化を推進してきたのが、一般社団法人日本ゴム工業会の中島眞理氏だ。

中島氏は1975年に株式会社ブリヂストンに入社。その後の会社合併に伴い製品分析を行うラボが米国、ヨーロッパ、日本に増加したことから、「各国が持つ試験方法の中で最も適切なものを検討し、『統一化』する業務に約3年間携わっていた。当時は『統一化』と表現していたが、今思えば立派な社内規格の標準化だった。」と振り返る。その経験を踏まえ、ISO(国際標準化機構)/TC 45(ゴム及びゴム製品)/ SC 2(試験及び分析)/WG 5(化学試験法)に参画した。

2012年、同WGの国内分科会主査に就任。「当時注目されていたのが、バイオマス(再利用可能な有機性資源)由来製品の認証制度。プラスチック業界では、例えば「バイオマスプラ」マーク識別表示制度のような認証化の動きが進んでいたが、ゴム業界は遅れをとっていた。」という。

中島氏は、ゴム製品においても認証制度が制定された際、その精度を保証する試験規格として、製品で使用されているゴムのバイオベース度(再生可能なゴムの含有率)を求める、ISO試験規格の策定を2013年より開始した。

ISO規格の制定には、参加各国の投票による賛成、並びに国際会議での承認が必要である。「その為、この規格の必要性や有効性を各国に理解してもらうべく、頻繁なメール交換や、国際会議の空き時間を利用して、主要国のエキスパートとの個別協議を積極的に行い、日本への信頼を勝ち取っていった。また、他国の委員が来日した際には、分析機器メーカーに案内し、精度の高い日本の最新試験装置を紹介した。」など、日本主導の国際協調体制を築くことに尽力した結果、4年間の活動が実り、2017年にISO 19984(ゴム及びゴム製品−バイオベース度の求め方)が発行された。

「ゴム業界初の持続可能な産業社会の実現に寄与する規格。今後の認証制度への活用に期待したい。」と中島氏。しかし、特筆すべき点はそれだけではない。ISO 19984は、製品そのものを試験することに加えて、製品の原材料を分離分析し、製品に使用されている原材料のバイオベース度を、個別に求めることができる世界初の試験方法なのだ。

「将来、製品のバイオベース度表示などの法規制ができた場合、おがくずや貝殻粉のような安価な天然物を大量に配合し、製品のバイオベース度を無理やり上げた粗悪品が出回る可能性がある。そのような事態を避けるために、原材料ごとに分離して測ることができる試験方法が必要だ。」と規格の重要性を語る。

委員同士の日々のコミュニケーションを大切に

中島氏はTC 45/SC 2及びSC 3 (ゴム工業用原材料)のエキスパートとしても精力的に活動している。活動において課題となるのが、海外からの提案内容への対応だ。

「海外提案の中には、日本での試験が困難なものや、改善の余地があるものが頻繁に見受けられる。」と中島氏。例えば試験方法について、海外の特定メーカーの装置が使用必須となっていたり、作業員や環境への影響が懸念されるハロゲンなどの有害物質の使用が規定されていたりすることがあった。

「日本にも環境にも不利な状況は避けないといけない。修正意図を論理立てて説明し、実証的なデータを示すなどして、ISO 11089(合成ゴム-高速液体クロマトグラフィによる劣化防止剤の定量)では、国内メーカーの機器では測定できない高温で、目的の試験条件には不必要な温度条件が規定されていたため、この抽出条件の変更を求め、ISO 4661-2(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-試験片の調製-第2部:化学試験)では、使用溶剤の種類が1種のみしか規定されていなかったので、汎用溶剤を追加するなどの修正に務めた。日本だけでなく、世界市場での日本のゴム製品の販売促進へ貢献できたらうれしい。」と思いを語る。

標準化活動で重要視していることを聞くと、迷わず「日々のコミュニケーション。」と答えが返ってきた。「化学試験は女性の参加者が非常に多い分野。委員のメンバーが日本に来た際は、着物でお茶会を開くなど、日本文化を経験していただいた。」とのこと。「公式的な会議の場では本音はなかなか話せない。お互いの提案に、誠心誠意かつ前向きに向き合うためには、プライベートの交流は大切だ。」と笑顔を見せる。

「国際標準化の場で、日本からの参加は増えてきたとはいえ、やはり欧州からの委員が多い。」と現状の課題を語る。「例えば、国際議長や国際幹事は中立の立場で活動しているが、それが日本人だったら、日本の委員は言語の壁を超えて、提案の主旨などを予めきちんと説明することができる。自国からより多くの人が参加し、国際議長や国際幹事等の役割を担うことで、産業界の発展へとつながっていく。」ことから、今後はさらに若手の参加を呼び掛けたいという。

【略歴】
1975年~2017年 ブリヂストンタイヤ株式会社(現 株式会社ブリヂストン)
2000年~2001年 ISO/TC 45(ゴム及びゴム製品)/SC 2(試験及び分析)/WG 5(化学試験法)
国内審議委員会委員及びWG 5エキスパート
2001年~2012年 ISO/TC 45/SC 2/WG 5 国内審議委員会 化学試験方法分科会副主査及び
WG 5エキスパート及びプロジェクトリーダー
2002年〜現在 ISO/TC 45/SC 2 及び SC 3(ゴム工業用原材料)/ WG 2(ラテックス)、
WG 3(カーボンブラック・シリカ及びゴム薬品)、WG 4(天然ゴム)、WG 5(合成ゴム・再生ゴム)
各WGエキスパート
2012年〜2018年 ISO/TC 45/SC 2/WG 5 国内審議委員会化学試験方法分科会主査及びWG 5プロジェクトリーダー
2012年〜現在 ISO/TC 45/WG 10(用語)及びWG 16(環境)国内審議委員会 委員
2012年〜2018年 ISO/TC 45/WG 10 及び WG 16 各WGエキスパート
2013年〜2014年 日本工業標準調査会 一般化学技術専門委員会委員
2014年〜現在 日本工業標準調査会(現 日本産業標準調査会)化学・環境技術専門委員会委員
2018年〜現在 ISO/TC 45/WG 10 国内審議委員会用語分科会主査
2018年〜現在 ISO/TC 45 国内審議委員会シニアエキスパート

最終更新日:2022年4月4日