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GENIAC開発事業者と利活用企業との第6回マッチングイベントを開催しました!

イベントレポート

2026/03/12

2026年3月9日(月)、GENIACの基盤モデル開発事業者およびデータ・生成AI利活用実証事業者と、生成AI利活用企業との交流を促進する第6回マッチングイベントを開催しました。本イベントは競争力のある基盤モデルの開発とその社会実装の促進を目的としております。当日は、80社以上の開発事業者・ユーザー企業・ベンチャーキャピタルなどが参加し、開発事業者によるプレゼンテーションの後、会場内に設置された開発事業者ごとのブースで、意見交換などの活発な交流が行われました。

「全員、AI人材」から「全社、AI企業へ」

はじめに、経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 AI産業戦略室 総括補佐の秋元 裕太が登壇し、本事業やコミュニティの活動内容に加え、重要性が一層高まる生成AIの現状と今後の展望について紹介。あわせて、本マッチングイベントの位置づけについても説明しました。

経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 AI産業戦略室 総括補佐 秋元 裕太
経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 AI産業戦略室 総括補佐 秋元 裕太

秋元はまず、生成AIが日本経済に与える影響の大きさに触れ、AIの利用が海外サービスに偏った場合にはデジタル赤字の拡大につながる懸念もあると指摘。「生成AIは日本の新たな成長エンジンである一方、国内で開発し、社会実装していくサイクルをしっかり回すことが重要です」と述べ、国内で開発と実装を循環させる必要性を強調しました。
こうした考えのもと、政府ではAI・半導体分野を重点領域の一つと位置づけ、2030年度までを見据えた継続的な支援を進めています。その施策の一翼を担うGENIACでは、GPUなどの計算資源への支援、学習に必要なデータ整備、そして知見を横断的に共有するナレッジシェアの三つに取り組んでいます。個別企業の開発を後押しするだけでなく、日本全体のAI競争力を高める基盤づくりを目指していることも説明されました。
また、今後の展開として、従来の領域特化モデルやデータエコシステム構築に加え、新たにロボット基盤モデルの研究開発や、製造業データなどのAI-Ready化に関する研究開発も支援対象に加える方針を紹介。日本の強みである製造現場のデータをAI開発に生かしていく方向性も明確に打ち出し、「最後に必要なのはアプリケーションであり、それは結局ドメインです」と述べ、産業現場に根ざしたAI活用の重要性を印象づけました。
さらに、社会実装を後押しする施策として、GENIAC-PRIZEや税制措置、中小企業向けの「デジタル化・AI導入補助金」にも言及し、「全員、AI人材。全社、AI企業へ」と呼びかけました。AI活用は一部の先進企業だけの課題ではなく、あらゆる企業にとって重要な経営課題になっていくという認識が示されました。

マッチングイベントに登壇した開発事業者一覧

本イベントでは下記の開発事業者15社と、実証事業者1社がプレゼンテーションに登壇しました。本事業で採択された分野と開発の概要は次の通りです。

<基盤モデル開発事業者>

株式会社ABEJA [エージェント]

ローカル環境で動作可能な長文対応軽量言語モデルを用いたAIエージェントを開発

Nishika株式会社[バックオフィス]

要約タスクに対して出力形式への追従性を高めた軽量言語モデルを開発

株式会社リコー[文書読み取り]

複雑な図表を含む文章読み取りに特化した言語・画像モデルの開発

株式会社AIdeaLab[アニメーション]

アニメ制作や映像制作を支援する、MoEを用いた動画生成モデルを開発し、ネット上の個人ユーザーのモデルへの満足度を検証

カラクリ株式会社[サービス]

カスタマーサポートを目的とした言語・動画像・音声に対応したモデルを開発

インフィニマインド株式会社[言語・動画]

長尺動画のコンテクストを理解する言語・動画モデルの開発

株式会社Kotoba Technologies Japan [言語]

大規模データを用いたリアルタイム音声基盤モデルの開発

株式会社NexaScience[音声・画像・言語]

マルチエージェントによるR&Dの効率化を目的とした、個別モデルの微調整を必要としない最適入力変換アダプターモデルを開発

ストックマーク株式会社[製造×文書読み取り]

製造業特化の文書読み取り用の中規模サイズ(32B)の言語・画像モデルを開発

株式会社Preferred Networks [言語・画像]

自律稼働デバイスに搭載可能な10B以下の高精度な軽量言語・画像モデルを開発

Zen Intelligence株式会社[建築]

建築現場の施工管理を自動化するAI基盤モデルの開発

ONESTRUCTION株式会社[建築]

建築要件の説明テキストを建築専用のデータ規格(IDS)に自動変換するモデルを開発

株式会社EQUES[言語]

薬学分野・製薬業務に特化したLLM(大規模言語モデル)の開発

株式会社プレシジョン[医療]

医療現場の入力作業や情報整理の削減を目的とした診療録校正・匿名化・DPC構造化・放射線所見整理・がん診療RAGに特化した言語モデルを開発

アリヴェクシス株式会社[創薬]

創薬研究開発の支援を目的とした、低分子化合物間の結合親和性スコアの予測モデルの開発

<データ・生成AI利活用実証事業者>

note株式会社

RAG(データをモデルに学習させず外部に保持したまま都度参照する技術)を通じ、データホルダーが保有する書籍‧記事‧論⽂等を安全に利⽤できるエコシステムの構築

開発事業者とユーザー企業が活発に意見を交換

招待制の本イベントでは、ユーザー企業70社のほか、ベンチャーキャピタルやコミュニティ運営を支援する組織11社が参加するなど、過去最大の規模となりました。各事業者のプレゼンテーション後には、各社のブースにてマッチングタイムが実施され、アプリケーション開発企業やユーザー企業、ベンチャーキャピタルの担当者が訪れ、活発な意見交換が行われていました。

開発事業者、データ・生成AI利活用実証事業者へのインタビュー

第6回マッチングイベントに登壇・参加参加した開発事業者の、アリヴェクシス株式会社とインフィニマインド株式会社、およびマッチングタイムに参加したデータ・生成AI利活用実証事業者のVisual Bank株式会社のコメントを紹介します。

シミュレーションで創薬AIに不足するデータを補い、探索の幅を広げる
アリヴェクシス株式会社

アリヴェクシス株式会社 取締役・CSO 寺田 央氏
アリヴェクシス株式会社 取締役・CSO 寺田 央氏

創業以来、計算機を用いた創薬研究開発に取り組んできたアリヴェクシス株式会社の中核にあるのは、一般的なAI開発というよりもシミュレーション技術です。製薬会社との共同研究や技術提携、自社創薬で見出した化合物のライセンスなどで実績を重ねてきた同社は、近年のAI創薬の広がりを受け、自社の強みをAIと組み合わせる方向で開発を進めています。GENIAC 基盤モデルの開発事業の第3期では、創薬研究開発の支援を目的に、低分子化合物と標的タンパク質の間の結合親和性を高速かつ高精度に予測するモデルの開発に取り組みました。

同社が課題として捉えているのは、AI創薬の性能を左右するデータ不足です。特に低分子創薬では、探索すべき化合物空間が極めて広く、実験データだけでは十分にカバーしきれません。そこでアリヴェクシスは、シミュレーションによって正確なデータを計算機上で生成し、それを既存モデルのファインチューニングに活用する仕組みを構築。モデルそのものをゼロからつくるのではなく、予測が難しい領域に対して必要なデータを補い、自律的に学習を進める基盤を整えたことが今回の成果だと言います。
「AI創薬に足りていないのは、結局データです。私たちはシミュレーションで正確なデータを大量につくれるので、それをAIと組み合わせることで、今のAI創薬が苦手としている部分を補えるのではないかと考えました」(寺田氏)
この仕組みは、人向け医薬品にとどまらず、動物薬や農薬のような周辺分野にも応用可能です。創薬そのものはプレイヤーが限られる領域ですが、近接分野へ展開できれば技術の活用範囲は広がります。アリヴェクシスは、自社のシミュレーション技術が、新たな標的や新領域の探索を支える手段として評価されていると説明します。
「今回のGENIACでは、モデルをゼロからつくるというより、ファインチューニングを高速かつ自律的に実行できるプラットフォームをつくった、というのが実態に近いです」(寺田氏)

マッチングイベントでは、新たな接点も得られたと話す寺田氏。同社はこれまで製薬会社などの関係者とのネットワークを築いてきましたが、会場ではIT企業やIT系のベンチャーキャピタル、商社など、これまで十分に接点を持てていなかった相手とも対話できたと言います。
「今まで出会えていなかった相手と出会えたことが一番大きな成果です。これからAIの方向にビジネスをより広げていく上で、IT関連のプレイヤーとの対話も中心になっていくと思っています」(寺田氏)

一方で、同社は日本のAI創薬がまだ発展途上にあるとも見ています。欧米では、AIそのもの以上に、その先の臨床開発や事業化まで含めた仕組みに資金が集まっている状況から、日本では産業で使えて欧米と十分に戦える基盤技術をどう育てるかが課題です。だからこそ、単なる研究で終わらない実装志向の技術開発を継続できる環境が重要だと強調します。GENIACで構築した仕組みを土台に、今後は製薬会社との連携をさらに進めながら、AI創薬の実装を広げていく考えです。
「論文を書いて終わるのではなく、本当に産業で使える技術を継続して開発できる状況が整えば、日本にもまだまだ勝ち目はあるのではないかと感じています」(寺田氏)

長尺映像理解:クラウドの壁を越え、「現場」で動くAIへ
インフィニマインド株式会社

インフィニマインド株式会社 竹岡 良輔氏
インフィニマインド株式会社 竹岡 良輔氏

インフィニマインド株式会社は、GENIAC第3期で長尺動画のコンテクストを理解する言語・動画モデルの開発に取り組んでいます。同社は、もともとSDio株式会社として日本で事業を始めましたが、米国での法人設立と投資受け入れを機に、ブランド統一のために社名をインフィニマインドへ変更しました。
同社が提供する大規模映像基盤モデルの特徴としてまず挙げられるのが、クラウドだけでなく、オンプレミスサーバーやエッジデバイスでも動作する点です。海外の競合はクラウド前提のサービスが多い一方で、同社は、データを外部に出しにくい製造業やセキュリティの現場など、業務の中核で継続的に使われる場面に組み込まれることを重視していると話します。
「クラウドで使えるだけではなく、製造ラインやセキュリティの求められる現場で、本業に不可欠なものとして動く状態を目指しています。そのためには、オンプレミスやエッジでも動かせることが重要です」(竹岡氏)

もう一つの軸は、日本の文化や文脈を踏まえた理解です。同社は、日本で使われる映像や言語を扱うことを前提にモデルを設計しているといいます。単に高精度な個別モデルを組み合わせるのではなく、映像、音声、テキストを早い段階で統合し、全体として機能するアーキテクチャを重視している点も特徴です。
「私たちは、個別のモデルの精度だけを見ているわけではありません。映像、音声、テキストを一つの空間で扱えるようにし、アーキテクチャやプラットフォームまで含めて最適化することで、初めて現場で使える性能になると考えています」(竹岡氏)
わかりやすい活用先の例としては、工場の製造ラインの監視映像を用い、これまで人が担っていた品質チェックを支援する用途などがあります。また、映像解析による現場改善に向けた使い方も進めていると言います。長尺動画理解の技術を、単なる解析にとどめず、リアルタイム処理や業務改善に結びつけようとしていることがうかがえます。
「実装のわかりやすいイメージとしては、製造業とセキュリティです。工場では、これまで人が行っていた品質チェックを映像解析で支援するような取り組みも進めています」(竹岡氏)

GENIACのマッチングイベントについて、新しい企業やチャンネルと接点を持てる点に大きな意義を感じていると話す竹岡氏。一方で、より深い議論のためには、質疑応答や対話の時間がさらに必要だという率直な感想も聞かれました。
「普段は出会えない会社とつながれるのは大きいです。そこから先につなげられるかは自分たち次第ですが、こうした場に参加できること自体に高い価値があります。」(竹岡氏)

今後については、第3期で開発した大規模映像基盤モデル「DeepFrame」の成果を軸に、より小型で、エッジやオンプレミス環境にも展開しやすいモデルへと磨き込んでいく方針です。大規模モデルに匹敵する性能を、より扱いやすいサイズで実現することが重要な成果になりつつあると言います。さらに同社は、ソフトウェア開発の現場が大きく変わったように、製造業もAIとロボティクスによって変わっていくと見ています。日本が強みを持つものづくりの領域で、先行事例を生み出していくことへの期待も大きいようです。
「コーディングの世界が変わったのと同じように、製造業もこれから大きく変わっていくはずです。日本は本来そこに強みがあるので、先陣を切って雛形や先行例を示していけると良いと思っています」(竹岡氏)

コンテンツ産業を支えるデータ基盤の整備を進める
Visual Bank株式会社

isual Bank株式会社 執行役員 望月 逸平氏
Visual Bank株式会社 Qlean Dataset事業責任者 望月 逸平氏

GENIACのデータ・生成AI利活用実証事業に参画したVisual Bankは、マンガ・アニメ領域を含むIT分野におけるデータエコシステムの実現実証に取り組んでいます。狙いは、基盤モデルの開発だけでは埋めきれない、コンテンツ産業のラストワンマイルを支えるデータ基盤を整えることです。完成した作品だけでなく、制作途中のキャラクター素材や効果線、演出表現といった中間制作物も新たな表現を支える資源(産業用データ)として捉え、現場で活用できるAI開発の支援につなげようとしています。
「完成品だけでなく、実際の制作過程で生まれるプロセスデータまで含めて整備することで、現場のプロユースを支える基盤をつくりたいと考えています」(望月氏)

同社の特徴は、ストックフォト事業で長年培ってきた権利処理やライセンス管理の知見を土台としながら、研究開発・検証用の画像、動画、音声、テキスト、3Dデータを生成AIの開発事業者に提供してきた点にあります。さらに、マンガ・アニメ制作支援の現場にも関わってきたことで、研究段階では見えにくい実務上の課題を把握していることも強みです。単にデータを集めるのではなく、現場が本当に必要とする品質や粒度で届けることを重視しています。
「私たちは、権利処理が適切だから使ってほしいというだけではなく、開発現場が実現したいことに対して、最適なデータを用意できることが重要だと考えています」(望月氏)

一方で、マンガやアニメの分野では、出版社だけでなく、作家自身の意思や権利への配慮も欠かせません。Visual Bankでは、表現の傾向を学ぶための情報解析と、特定のキャラクターや作品性を直接利用するケースとを分けて考える必要があると見ています。後者については、利用目的や条件を明示した上で、権利者がコントロールできる仕組みが必要だという立場です。
「特定の著作物性を狙い撃ちにするような利用については、産業用データとして一括りにするのではなく、何に使うのかを明らかにし、権利者側にきちんとコントロール権を持っていただくべきだと思っています」(望月氏)

同社は、GENIACの意義について、単なる支援制度にとどまらない価値を感じています。国としてエコシステムを整備する意思が示されていることに加え、マッチングイベントを通じて、開発事業者やデータ関連事業者と継続的に意見交換できることが大きいと言います。日本発の技術やコンテンツの価値を守りながら、競争力のあるAI開発を後押しする。そのための土台として、データの整備と流通の仕組みづくりを担おうとしています。
「海外勢との競争が激しくなる中でも、日本のコンテンツの価値を守りながら、AI時代に合った仕組みをつくることが重要です。そのための選択肢を提供し続けたいと思っています」(望月氏)

イベント参加企業へのインタビュー

第6回マッチングイベントに参加したユーザー企業から、住友商事株式会社、株式会社JTBのコメントを紹介します。

幅広い事業領域でAI活用を推進し、新たなビジネス創出を模索
AI社会実装に向けたパートナー探索 住友商事×スタートアップとの協業の未来
住友商事株式会社

住友商事株式会社 デジタルプラットフォームユニット AIデータセンター事業開発チーム  チームリーダー代理 増田 夏菜子氏
住友商事株式会社 デジタルプラットフォームユニット AIデータセンター事業開発チーム  チームリーダー代理 増田 夏菜子氏

エネルギー、資源、インフラ、製造業など多様な分野で事業を展開する住友商事では、事業部ごとにAI導入を進めています。こうした取り組みの中で、AIを軸とした新規事業開発にも注力していると、増田氏は話します。
「AI技術の発展は非常に目覚ましい一方で、グループ内だけで新しいAI技術やソリューションを開発・実装していくのは難しい面もあります。そのため、最先端のソリューション開発をされている方々と連携し、新しいビジネスを生み出していきたいと考えています。生成AIに関わるパートナー企業に対しては、ファイナンスの支援や計算資源の提供なども行っています」(増田氏)

GENIACのマッチングイベントへの参加は前回に続き2回目。参加の狙いについて聞いてみると「事業開発を進める中で協業可能なパートナー企業との出会いを求めている」との答えが返ってきました。現在特に注力している分野について、増田氏は次のように説明します。
「フォーカスしているのは、医薬やコンテンツ産業、製造業、ロボティクスです。特に、創薬やIPの海外展開に関わる分野や、製造業の人手不足を解消する取り組みには期待感を持っています。これらはビジネス化のポテンシャルが大きいと考えており、AI技術開発の進展が速そうな領域の様々な開発企業を比較しながら見ています」(増田氏)
GENIACでの出会いが実際の協業に結びついているケースはあるか聞いてみると、「マッチングにとどまらず、ビジネス化の場になっていると感じている」と振り返ります。

一方、AI企業との事業連携を進める上での課題についてはどう見ているのでしょうか。増田氏は、データの整備という観点から現状を指摘します。
「AI導入が進まない理由の一つに、『学習すべき情報がデータ化されていない』という問題があります。特に製造現場などには膨大な情報がありますが、AI-Readyなデータに整理されていないケースが多い状況です。これに対してAI事業者と協力して、このデータ利活用のラストワンマイルを突破し、実装を加速させたいと考えています」(増田氏)
GENIAC採択企業をはじめとするスタートアップとの協業における懸念点について聞いてみると、むしろ協業のしやすさを感じているとの答えが返ってきました。
「特定の技術に尖った強みを持つスタートアップと、幅広い事業知見やネットワークを持つ我々が補完し合うことで、大きな相乗効果が生まれる可能性があります。例えば、シミュレーションによる創薬技術を実際の商用生産につなげるような、一気通貫のプロセス設計こそが商社の存在価値です」(増田氏)

スタートアップ側にどのような心構えを求めるのかについて聞くと、「目的やビジョンの共有が重要になる」と語ります。
「スタートアップはリソースが限られているため、何でも対応するのは難しいと思います。長期的に実現したいビジョンと我々の取り組みがどこで交わるのかを一緒に探っていくことが、特に最初の段階では大事になります」(増田氏)
さらに、今後関心を持っている領域について聞くと、来期テーマであるAIロボティクスやフィジカルAIへの期待を挙げます。「我々のグループ内でもPoCがすでに多く始まっており、非常に期待しています」(増田氏)

最後に、GENIACという枠組みに対する期待について聞くと、「先端技術を持つ企業と出会える場があること自体が非常に貴重であり、実際にビジネスにつながる機会になっている」と評価します。
「今後もこうしたコミュニティが盛り上がっていくことを期待していますし、私たちとしても社会に貢献できるAIビジネスを一つでも多く、着実に社会実装していきたいと考えています」(増田氏)

社内実装の積み重ねとGENIAC連携で広がるAI活用の可能性
株式会社JTB

旅行業を軸に多様な「交流創造事業」を展開するJTB。近年はAI導入を進め、業務効率化とサービス品質の向上に取り組んでいます。

組織的な推進体制について、鈴木氏は次のように説明します。
「私たちは本社部門でAIの内製を担うチームです。各事業部門のニーズを踏まえ、スピーディーに内製開発を進めています」(鈴木氏)

現在のAI活用の進捗について尋ねると、すでに社内業務の領域では一定の活用が進んでいるとの答えが返ってきました。

株式会社JTB グループ本社 データインテリジェンスチーム 茂手木 萌絵氏
株式会社JTB グループ本社 データインテリジェンスチーム 茂手木 萌絵氏

「全社員が使える生成AIチャット基盤を整備し、その中に日常業務のタスク自動化機能などを組み込み、展開しています。一方、顧客向け領域ではPOCの先に進めているものはまだ多くはありません。」(茂手木氏)

そもそも、こうした取り組みが始まった背景にはどのような問題意識があったのでしょうか。
「2017年、データドリブン経営の実現に向けたデータ分析基盤整備をミッションとして、私たちのチームの前身機能が立ち上がりました。当時は分社体制の影響もあって様々なチャネルのデータが散在しており、横断的なマーケティング分析に課題を抱えていたためです。一定データの整備が進んでからは、実際にデータを利活用する組織へとシフトしていきました。先ず取り組んだのがBIによるデータ分析の民主化です。続いて機械学習による収益最大化の取り組みに着手し、そのアルゴリズムは現在まで運用と改良が続いています。また、データを主題とする組織として、生成AIの台頭も見逃せませんでした。先述の社用チャットアプリを中心に現行業務への生成AI適用を進め効率化やサービス向上を図りつつ、25年からは新しく内製開発チームを発足し、社内外に向けたサービスの開発を進めています」(茂手木氏)

こうした流れの中で、より専門性の高いAIモデルへのニーズが高まってきたと語る茂手木氏。現在も残る課題についてはどのように取り組んでいるのでしょうか。
「業界全体のデジタル化の遅れや組織規模の大きさもあり、現場活用は道半ばです。旅行の手配書や現場の暗黙知などの情報をどうデータ化するかという課題も残っています」(茂手木氏)

「紙や多様な形式の業務書類を形式知化し、データ構造化を進めています」(中島氏)
課題解決に取り組む中、特に重視しているテーマについて、鈴木氏は共通基盤の構築とモダナイゼーションの重要性を挙げます。

株式会社JTB グループ本社 データインテリジェンスチーム 鈴木 悠哉氏
株式会社JTB グループ本社 データインテリジェンスチーム 鈴木 悠哉氏

「当社のサービスはB to CだけでなくB to Bでもオーダーメード性が高く、要件や書式が細分化されています。グループ会社との密な連携も多いため、情報を一元的に集約し、ニーズとノウハウを中央に集めることでAI開発やDX推進に生かしています」(鈴木氏)

GENIAC採択企業との協業の可能性については、すでに具体的な対話や取り組みを実施していると言います。
「海外事業拡大に向け、語学力の課題をAIで補う可能性を検討しており、同時通訳アプリを開発しているKotoba Technologies Japanのお話を伺いにブースを訪問しました。
また、コンタクトセンターの業務効率化プロジェクトを推進する中で、GENIACマッチングイベントにてカラクリ社と出会い、協業が実現しました。両社で取り組んだ実証実験の成果をGENIAC PRIZEへ応募させていただき、カスタマーサポート領域においてユーザー変革賞を受賞することができました。」(茂手木氏)

今回のマッチングイベントで、印象に残ったプレゼンテーションについても聞きました。
「先端的な取り組みを進める中で、成果発信の重要性も高まると考えています。その点、R&D情報を評価し意思決定や発信を支援するNexaScienceの視点は、当社にとっても重要なテーマになり得ると捉えています」(鈴木氏)
「AIエージェントが増えていく中で、そのチューニングや管理を人手だけで行うのは難しくなるはずです。モデル更新や運用負荷に対応する自動化やオーケストレーションの重要性を感じました」(茂手木氏)

生成AI活用の実務面については、ハルシネーションへの対応も課題だと鈴木氏は指摘します。また、三者とも他業界に向けた取り組みにも強い関心を寄せていると言います。
「業務で使う場合、もっとも重要なのは正確性です。業務用途では、正確性と不確実性の適切な提示が重要です。ローカル環境で動作し、ハルシネーションが少なく、誰でも使いやすい形でAIが提供されるようになれば、技術の民主化が進むのではないかと期待しています」(鈴木氏)

株式会社JTB グループ本社 データインテリジェンスチーム 中島 彩良氏
株式会社JTB グループ本社 データインテリジェンスチーム 中島 彩良氏

今後のAI活用のビジョンについて聞くと、顧客接点の拡大と信頼性の確保を両立する重要性が挙げられました。
「お客様に価値を提供するには、AI活用への理解を得ることも不可欠です。ガバナンスおよびセキュリティ面にも十分配慮し、ブランドの信頼を守りながら活用を進めていきたいと考えています」(中島氏)
「私たちの強みの源泉は「人」であり、AIファーストを追求しつつもデジタル×ヒューマンタッチで価値を高めて行く考えに変わりはありません。AIで自動化できるところは徹底的に自動化しつつ、人ならではの価値を掛け合わせる事でJTBならではの強みを生かしたい。そのためにも、誰でもできる業務は積極的に自動化し、本来注力すべき価値提供に集中できる環境をつくりたいと考えています」(鈴木氏)

最後に、GENIACという枠組みへの期待について聞きました。
「複数企業が連携する形での実証や、データ移行システムのようなテーマは今後さらに重要になると感じています。データ提供者にも価値が還元されるエコシステムの構築に期待しています」(茂手木氏)
中島氏も「ガバナンスやセキュリティの観点から国産LLMの充実は重要」と話し、鈴木氏は「ネット環境が不安定な現場でも使える、ローカルやエッジで動作する小規模なAIの国内開発は旅行業にとって魅力的なテーマ」と期待を寄せました。

第6回マッチングイベントも成功裡に終了

マッチングイベントでの議論や意見交換を通じて得た見識を、基盤モデルの改良や企業・業界特有の課題の解決に生かすことで、生成AIの社会実装に向けた動きがさらに加速していくことが期待されます。今後のGENIACの活動にもご注目ください。

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最終更新日:2026年5月28日