電気設備から生じる電磁界

1.人体への影響等につき調査・公表(平成5年)

電磁界の人体への影響等について専門家による検討を行うため、資源エネルギー庁公益事業部に「電磁界影響調査検討会(座長:関根泰次東京大学名誉教授)」を設置し、平成5年12月に以下の内容の報告書をとりまとめ公表しました。

<報告書の結論>
現時点において、居住環境で生じる商用周波磁界により、人の健康に有害な影響があるという証拠は認められない。
また、居住環境における磁界の強さは、世界保健機関(WHO)の環境保健基準などに示された見解に比べ十分低い。
しかしながら、商用周波磁界と人の健康について科学的な解明を行っていくことは重要であり、今後も国内外の関連機関の考え方などにも十分に目を向けつつ、調査研究等に努めていくことが望ましい。

 2.電磁界についての動物実験の実施(平成5年度~平成18年度)

上記検討会における検討結果等を踏まえ、電磁界影響の安全性についての科学的データの蓄積を図るとの観点から、電力中央研究所、日本生物科学研究所へ委託し、平成5年度から平成18年度まで動物実験を実施しました。
このうち、生殖への影響調査は平成8年度までに終了し、「日常生活で体験することが想定されるレベルからそれを上回るレベルまでの強度の商用周波磁界が動物の生殖に影響を及ぼすとの証拠を示すデータは得られなかった」とする調査結果を得、平成9年に発表しました。
更に、磁界が腫瘍(乳腺腫瘍、皮膚腫瘍、脳腫瘍、リンパ腫・骨髄性白血病)に与える影響を調査するための動物実験を実施し、いずれの試験結果においても、磁界曝露群は非曝露群に比べて統計的に優位な差は認められないとの結論を得ています。

3.電磁界に関する情報の提供(平成11年度~)

国民に電磁界に関する情報を提供するため、電磁界の健康影響に関する国内外の研究動向等を調査するとともに、パンフレットの作成、講演会、シンポジウムの開催を行っています。
これまでに、東京、大阪、名古屋を始め、全国各地で講演会、シンポジウムを開催しました。

4.電力設備電磁界対策WG報告書(平成20年)

平成19年6月から総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会電力安全小委員会電力設備電磁界対策ワーキンググループにおいて、磁界規制のあり方について議論を行い、平成20年6月に報告書をまとめました。
報告書は、WHOファクトシートNo.322の考えに従い、超低周波電界については健康上の問題はないとの見解が示されていることから、超低周波磁界を議論の対象とし、国内外の研究や国際的な規制の動向も踏まえて、超低周波磁界の発生源のひとつである商用周波数50Hz、60Hz の電力設備のうち送電、配電、変電設備に関する一般環境における磁界規制のあり方について、とりまとめたものです。

<報告書の政策提言>
(1)高レベルの磁界への短期的な曝露によって生じる健康影響についての対応(経済産業省は、磁界の影響から一般の人々を防護するため、国際非電離放射線防護委員会が1998年に定めた一般の人々への曝露ガイドラインの制限値(参考レベル)((100μT(50Hz)、83μT(60Hz))を基準値として採り入れる等必要な諸規定の整備、改正を行うべきである。)
(2)低レベルの磁界による長期的な健康影響の可能性に係る対応
 (1) 更なる研究プログラムの推進
 (2) リスクコミュニケーション活動の充実
 (3)曝露低減のための低費用の方策

5.電気設備から生じる超低周波磁界の規制の導入(平成22年度) 

高レベル磁界への短期的な曝露によって生じる健康影響への対応として、電力安全小委員会での議論を踏まえ、ICNIRPが公表した改定ガイドライン(注1)に基づき、平成23年3月31日に「電気設備に関する技術基準を定める省令」を改正(施行は10月1日から)、変電所、開閉所や変圧器、電線路などの電力設備から発生する磁界値を200μT以下とする規制を導入しました。

注1)ICNIRPは、1998年に公表したガイドラインを2010年11月に改定しました。従来、制限値(参考レベル)は50Hzで100μT、60Hzで83μTでしたが、改定ガイドラインでは、50Hz、60Hzともに200μTとなりました。

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最終更新日:2025年3月13日