第1節 G7/G20/OECD
1.G7
(1)英国(2021年1月~2021年12月)
① G7サミット
2021年6月11日から13日にかけて、英国・コーンウォールでG7コーンウォール・サミットが開催された。当該サミットは、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大以後、初めて対面で開催されたサミットとなった。
G7の中心的議題である、世界経済・貿易や外交・安全保障について、G7首脳間で率直な議論が行われたほか、新型コロナ対応を含む国際保健、気候変動・生物多様性及び基本的価値に関する議論については、アウトリーチ国や国際機関からの参加も得て、議論が行われた。
菅総理は、新型コロナ対策・国際保健、世界経済・自由貿易、気候変動、地域情勢といった重要課題について、積極的にG7の議論に貢献し、首脳間の率直な議論をリードした。「開かれた社会」に関するセッションでは、データ保護の課題に対処しながら価値あるデータ主導型技術の潜在力を活用するため、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)を推進する重要性を指摘するとともに、基本的価値を共有する国々が、インド太平洋地域へのコミットメントを明確にすることが重要であり、特にASEANと連携しつつ、具体的協力を推進すべきと述べた。
G7として協力して新型コロナに打ち勝ち、より良い回復を成し遂げ、国際協調と多国間主義に基づき、民主的で開かれた経済と社会を推進することで一致した。
議論の総括として、G7首脳コミュニケ、3つの附属文書及びその他の文書が発出され、「自由で公正な貿易に対するコミットメントの下、連帯する」こと、「持続可能なサプライチェーンへの移行の促進に関するG7貿易大臣の結論を承認し、カーボンリーケージのリスクを認識し、このリスクに対処し、我々の貿易慣行がパリ協定の下での我々のコミットメントと合致するよう協力的に取り組む」こと、「新型コロナウイルス対策に不可欠な物品及びワクチン並びにその原料の製造における、開かれた、多様で、安全かつ強靭なサプライチェーンに対する貿易大臣の支持を歓迎する」こと、「個人を強制労働から守り、グローバルなサプライチェーンが強制労働の利用に関わらないことを確保するため、我々自身が利用できる国内的手段及び多国間機関を通じて協働し続ける」こと、「WTOの現代化において進展が図られることを確保する上で必要な持続的な取組及び機運を与える」こと、「引き続きデータ保護に関する課題に対処しながら価値のあるデータ主導の技術の潜在力をより良く活用するため、信頼性のある自由なデータ流通を擁護する」こと等が明記された。
[参考]G7メンバー・招待国・国際機関
<G7メンバー>
日本、米国、フランス、ドイツ、英国(議長国)、イタリア、カナダ、EU
<招待国>
豪州、韓国、南アフリカ、インド
<国際機関>
国連、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)、経済協力開発機構(OECD)
② G7貿易大臣会合
2021年のG7議長国であった英国は、過去開催されてこなかったG7貿易大臣会合を立ち上げ、合計3回の貿易大臣会合をオンラインで開催した。
翌2022年の議長国であるドイツは、本会合の意義を引き継いで、2022年もG7貿易大臣会合を開催することを決定した。
(第1回目)
2021年3月31日に開催され、梶山前経済産業大臣、茂木前外務大臣が参加した。
本会合では、WTO改革、貿易を通じた気候変動対策・環境問題への貢献、医療関連物資のサプライチェーン強靭化、デジタル貿易の促進などについての議論がなされ、議長声明が発出された。
議長声明においては、主として、以下の旨が盛り込まれた。
- 多角的貿易体制の必要性を再確認し、WTO改革の議論に不可欠な政治的モメンタムを提供する。
- 貿易を通じた気候変動対策・環境問題に対する貢献の重要性を再確認し、持続可能なサプライチェーンの構築等に向けて議論を進める。
- 医療関連物資の貿易促進及びサプライチェーン強靭化に向けた通商政策のあるべき方向性を検討する。
- デジタル保護主義への反対、信頼性のある自由なデータ流通(data free flow with trust)の重要性等に合意し、デジタル貿易に関する高い水準の原則の策定を進めることを約束。
- デジタル貿易はWTOの新たなルール形成における重要分野であり、WTO電子商取引交渉を進める取組を強化し、第12回WTO閣僚会議までに実質的な進捗を達成することを目指す。
[参考]参加した国際機関
世界貿易機関(WTO)
(第2回目)
2021年5月27日及び28日に開催され、梶山経済産業大臣、茂木前外務大臣が参加した。
本会合では、第12回WTO閣僚会議も見据え、WTOを中心とする自由貿易体制が抱える課題や、その対応の方向性についての議論がなされ、閣僚声明が採択された。
閣僚声明においては、主として、以下の旨が盛り込まれた。
- 産業補助金、国有企業に関するより強力な国際的な規律の策定に向けた交渉開始を求め、強制技術移転への対処を継続。
- WTO紛争解決制度の改革に関する率直かつ建設的な議論を行い、10月の次回会合に向けて議論を継続することを約束。
- グローバルなサプライチェーンにおける強制労働を防止、特定、撤廃するべく、データ及び証拠を共有するための技術的な議論を実施し、ベストプラクティスに基づく提言を策定するよう、事務方に指示。
- WTOで行われている貿易と環境持続可能性に関する体系的議論が、機運を高める機会であることを認識。
- 世界的なワクチンの生産と流通の拡大に向けた解決策を特定するため、議論を優先的に行い、WTOにおける作業を支援。
- デジタル保護主義への反対について団結。信頼性のある自由なデータ流通(data free flow with trust)の重要性に合意。データローカライゼーションがデータ流通に影響を与え、ビジネス、特に中小零細企業に影響を及ぼしうることを認識。10月の貿易大臣会合において「デジタル貿易原則」を採択。
[参考]参加した国際機関等
世界貿易機関(WTO)、経済協力開発機構(OECD)、B7、ジェンダー平等諮問委員会(GEAC)
(第3回目)
2021年10月22日に開催され、萩生田経済産業大臣、石井経済産業副大臣、三宅外務大臣政務官がオンライン参加した。
本会合では、強制労働や市場歪曲的措置への対応、気候変動対策やデジタル化の進展を踏まえた政策的対応等に関して議論がなされ、閣僚声明とあわせて、G7で初めてとなる、強制労働及びデジタル貿易に関する2つの附属文書が採択された。
閣僚声明及び附属文書においては、主として、以下の旨が盛り込まれた。
<閣僚声明>
- WTO閣僚会議を成功裏に開催し、貿易と保健に関する多面的な成果に合意できるよう取り組む。有害な漁業補助金の実効的な規律に関する有意義な合意等を支持。
- WTO改革に向けた取組を前進させることにコミット。モニタリング、交渉と紛争解決制度を適切に機能させるためには、長年の課題に対応することが必要。進捗に必要な政治的な機運を与えるため積極的にこの取組に関与。
- 市場歪曲的措置について措置の不透明性が継続していることに留意。市場歪曲的措置に対抗し、産業補助金や国営企業に対する強化された国際ルールの発展を支持。
- あらゆる形態の強制労働の利用に関する懸念を共有。グローバルなサプライチェーンの中で強制労働を特定し、防止、撤廃するための提言(附属文書A:強制労働にかかるG7貿易大臣声明)を支持。
- デジタル保護主義・権威主義に反対。G7デジタル貿易原則(附属文書B)を採択。電子商取引の共同イニシアティブを前進させることにコミット。
- 気候に対してカーボンリーケージが与えうる悪影響を認識。これに対するいかなる措置も、透明でWTO整合的であることが重要。
<附属文書A:強制労働に係るG7貿易大臣声明>
- グローバルなサプライチェーンにおいて、国家により行われる脆弱なグループ及び少数派の強制労働を含むあらゆる形態の強制労働の利用に関する懸念を共有。
- 貿易政策が、グローバルなサプライチェーンにおける強制労働を防止し、特定し、撤廃するための包括的なアプローチにおける重要な手段の一つとなりうることを認識。
- 全ての国、多国間機関、ビジネスに対し、人権と国際労働基準を堅持することにコミットし、責任ある企業行動についての関連原則を尊重するよう要求。
- 強制労働を根絶し、強制労働の犠牲者を保護し、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)によって認められている原則の実施を改善する上での政府の重要な役割を認識。
- ビジネスにとっての明瞭性と予見可能性を更に強化することにコミット。
- 人権デュー・ディリジェンスに関するガイダンスを促進することにコミット。
- 個人を強制労働から守り、グローバルなサプライチェーンにおいて強制労働が利用されていないこと及び強制労働を行った者に対し責任を問うことを確保するため、各国が利用できる国内的手段及び多国間機関を通じた協働を継続。
<附属文書B:G7デジタル貿易原則>
開かれたデジタル市場
- G7が団結し、デジタル保護主義・権威主義へ対抗するとともに、オープンなデジタル市場を支持。
- インターネットは、オープンで、自由で、かつ、安全なものでなければならない。
- 送信されたコンテンツを含む電子的送信は、電子的送信におけるWTO関税不賦課モラトリアムに従い、関税が免除されるべき。関税賦課の恒久的な禁止を支持。
信頼性のある自由なデータ流通
- デジタル経済がもたらす機会を活用するため、信頼性のある自由なデータ流通(data free flow with trust)を可能とすべき。
- データローカライゼーション要求が保護主義・差別的目的に用いられる状況を懸念。
- プライバシーや知財保護等に取り組む一方、越境データ流通に対する不当な障壁に対処。
- ガバメントアクセス(政府による個人データへのアクセス)に関する共通原則の策定を目指す。
労働者、消費者及び企業の保護
- デジタル貿易を支える労働者の保護及びオンライン消費者保護を実施すべき。
- サイバーセキュリティを確保し安全なデジタル貿易環境を維持すべき。
- 市場参入要件として、技術移転やソースコード・暗号の開示が求められるべきでない。
- ガバメントアクセス(政府による個人データへのアクセス)に関する共通原則の策定を目指す。
デジタル貿易体制
- より多くの企業が貿易に参加できるよう、貿易関連書類の電子化を推進すべき。
- 相互運用性を主たる目的とし、シングルウィンドウが開発されるべき。
公正かつ包括的なグローバル・ガバナンス
- WTOにおけるデジタル貿易の共通ルール作り(電子商取引交渉)を進展させるべき。
- 包摂的な形での成長を推進するため、各国間及び国内のデジタル・デバイドへの取組が強化されるべき。
[参考]参加した国際機関等
経済協力開発機構(OECD)、経済の強靱性に関するG7パネル
③ デジタル・技術大臣会合
英国が議長国を務め、2021年4月28日及び29日の2日間にわたり、G7デジタル・技術大臣会合がオンラインで開催された。本会合には、日本から佐藤経済産業大臣政務官及び武田総務大臣が参加し、“Building Back Better”をテーマに、①情報通信インフラのサプライチェーン、②デジタル技術標準の開発、③Data Free Flow with Trust(信頼性のある自由なデータ流通。以下「DFFT」)、④インターネットの安全性向上、⑤デジタル市場における公正な競争の確保、⑥貿易業務の手続の電子化の6分野についての議論が行われた。
会合中、佐藤政務官からは、2019年のG20大阪サミットで日本が提唱したコンセプトであるDFFTの実現加速に向け、本会合で取りまとめられたDFFT協力ロードマップに基づき、各国と連携強化を図りながら、引き続き推進していくことの重要性を発信した。また、データの流通を支える情報通信インフラについて、O-RANなどのオープン・アーキテクチャに基づく5G携帯基地局の整備推進のための税制支援などの日本の取組を紹介し、多様で持続可能な情報通信サプライチェーン市場の確立に向けて取り組んでいく旨発信した。
さらに、健全なデジタル市場の発展のために、リスクへの対応とイノベーションの創出を両立する、柔軟かつ機動的な「アジャイル・ガバナンス」を、G7が中心となって確立していくことの必要性を主張した。
こうした議論を踏まえ、新型コロナウイルス感染症からの包摂的な復興において、デジタル技術を活用しながら生産性の高い強靭な社会を構築することを目指し、民主主義的な価値を共有するG7各国がともに協力するというメッセージを大臣宣言として採択した。
<デジタル大臣宣言の内容>
5Gや将来の通信技術を含む通信インフラ等が果たす役割、及びその安全性と強靱性を確保する重要性を認識。イノベーションの促進や、オープンで相互運用可能な通信アーキテクチャについて検討を開始。
デジタル技術標準の開発における政府管理型アプローチに反対し、産業界主導の包摂的なマルチステークホルダーアプローチを支持。
国境を越えてデータを自由に流通させることは、経済成長とイノベーションのために重要。2019年のG20大阪首脳宣言等でも言及されたDFFTを実現するため、ⅰ)データローカライゼーションの影響評価、ⅱ)越境データ移転に関する各国政策の比較分析、ⅲ)信頼性のあるガバメントアクセスのための指針策定、ⅳ)データの相互共有の促進について具体的な成果を目指し、ロードマップを策定。
人々がオンライン上で安全な選択ができるよう、インターネットリテラシーの向上が必要であり、インターネットの安全性を向上させるための基本原則と具体的行動を承認。
競争性が確保されたデジタル市場ではイノベーションを促進し消費者の選択肢を増やすことができる一方、巨大企業による市場支配力の濫用が懸念される。政府関係者間の会議を開催し、将来の協力分野等を議論。
貿易業務の電子化により、手続の効率性向上やコスト削減につながる。互換性が担保された形での国内制度改正や、他の国際フォーラにおける取組を支援するための専門家会合を開催。
[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>
豪州、韓国、南アフリカ、インド
<国際機関>
経済協力開発機構(OECD)
④ 気候・環境大臣会合
2021年5月20日から21日にかけて、英国が主催するG7気候・環境大臣会合がテレビ会議形式で開催され、経済産業省から梶山経済産業大臣及び江島経済産業副大臣が参加した。
G7気候・環境大臣会合では、気候・エネルギーに関するセッション、環境に関するセッション、両分野に関する合同セッションが開催され、会合では、気候変動への対応、生物多様性の確保などの課題について議論された。気候・エネルギーに関するセッションでは、パリ協定の実施や、エネルギー、産業、モビリティ分野の脱炭素化について、各国間で活発な議論が行われた。また、G7の議長国である英国がCOP26の議長国でもあることも踏まえ、COP26に向け各国が連携して行動していくことが確認された。梶山経済産業大臣は、気候・エネルギー大臣セッションに参加し、2050年ネットゼロ及び2030年目標の追求が新たな成長を生み出すものであるべきこと、途上国も含めた世界全体でのネットゼロ社会への移行に向けては、安定的なエネルギー供給との両立にも留意した上で、各国の事情に応じて、「あらゆるエネルギー源、あらゆる技術」をバランスよく活用することが重要であることを発言した。加えて、日本の持続可能なモビリティに関する取組みについて発言した。江島経済産業副大臣は、合同セッションに参加し、世界全体のカーボンニュートラルを実現するための国際連携の重要性について発言した。
こうした議論に加え、環境セッションにおける生物多様性等に関する議論を踏まえ、閣僚声明が取りまとめられた。
[参考]参加した招待国
<招待国>
オーストラリア、韓国、南アフリカ、インド
(2)ドイツ(2022年1月~2022年3月まで)
① G7サミット
議長国ドイツの呼びかけにより、2022年2月24日にG7首脳テレビ会議が開催され、岸田総理が出席した。同日、ロシア連邦軍によるウクライナ侵攻が開始されたことも踏まえ、会合後、G7首脳声明及びロシア連邦軍によるウクライナ侵攻に関するG7首脳声明が発出された。
その後も、2022年3月24日にG7首脳会合がブリュッセルで開催され、岸田総理が出席した。また、2022年3月11日にG7首脳声明の発出が行われ、ロシアによる侵略を非難し、ロシアに対する制裁措置、ウクライナ支援等を実施していくことが確認された。
[参考]G7メンバー・招待国・国際機関
・2月24日G7首脳テレビ会議
<G7メンバー>
日本、米国、フランス、ドイツ(議長国)、英国、イタリア、カナダ、EU
<国際機関>
北大西洋条約機構(NATO)
・3月24日G7首脳会合
<G7メンバー>
日本、米国、フランス、ドイツ(議長国)、英国、イタリア、カナダ、EU
<招待国>
ウクライナ
<国際機関>
北大西洋条約機構(NATO)
② 貿易大臣会合
2022年3月23日、ドイツ議長年1回目となるG7貿易大臣会合がテレビ会議形式で開催され、萩生田経済産業大臣、林外務大臣が参加した。本会合では、ウクライナ情勢や第12回WTO閣僚会議(MC12)等に関して議論がされ、ロシアのウクライナ侵攻に対してG7で連携して対応することや、多角的貿易体制の維持・強化に向けてG7でWTO改革を主導していくことを確認した。
[参考]参加した国際機関
世界貿易機関(WTO)
③ 臨時エネルギー大臣会合
2022年3月10日、ロシア・ウクライナ情勢を踏まえたエネルギー情勢について議論すべく、臨時のG7エネルギー大臣会合が開催された。会合の中では、萩生田大臣より、G7として連帯し、安定供給の確保やエネルギー源の多様化等に取り組み、エネルギー市場の安定やエネルギー安全保障を強化していく重要性等について発言し、これらの観点を盛り込んだ閣僚声明が採択された。
2022年3月28日、ロシア・ウクライナ情勢を踏まえたエネルギー情勢について追加で議論すべく、臨時のG7エネルギー大臣会合が開催された。G7のエネルギー大臣らは、プーチン大統領によるルーブルでの支払いに関する要求を拒否し、ほぼ全てのガス供給契約ではユーロまたはドルでの支払いが明確に規定されていることから、合意済のガス供給契約を尊重することを再確認した。会合の中では、萩生田大臣より、今般のロシア政府による一方的な民間取引の契約変更指示は、民間企業の取引の安定性を著しく阻害するものであり、許容できるものではないことを発言した。
[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>
ウクライナ
<国際機関>
国際エネルギー機関(IEA)
2.G20
(1)イタリア(2020年12月~2021年11月)
① サミット
2021年10月30日及び31日、イタリア・ローマにてG20ローマ・サミットが開催され、世界経済のより良い回復と持続的かつ包摂的な成長の実現に向け、新型コロナウイルス対策を含む保健、気候変動、開発等の重要課題について議論が行われた。岸田総理からは、これらの重要課題に関し、日本の取組やG20として連携を強化すべき点について発言し、議論に貢献した。世界経済に関するセッションでは、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」の理念の下、国際的なルール作りの議論を主導するとともに、国内においても、「デジタル田園都市国家構想」の下、地方からデジタルの実装を進め、都市部とのデジタル格差を是正していく旨述べた。
議論の総括として、G20ローマ首脳宣言が発出され、「開かれた、公正で、公平で、持続可能で、無差別かつ包摂的な法に基づく多角的貿易体制の役割の重要性と、WTOを中心とした、体制強化へのコミットメントを確認」し、「WTOの全機能を改善しつつ必要な改革を担うため、すべてのWTO加盟国と積極的にかつ建設的に取り組んでいくことに引き続きコミット」すること、「公正な競争の重要性を強調し、好ましい貿易及び投資環境を育成するため、公平な競争条件の確保に引き続き取り組む」こと、「信頼性のある自由なデータ流通及び国境を越えたデータ流通の重要性を認識」し、「将来の相互運用性を促進するため、引き続き共通理解を促進し、既存の規制手段と、信頼性のあるデータ流通を可能にする枠組との間の共通性、補完性及び収れんのための要素の特定に向け、引き続き取り組んでいく」こと等が明記された。
[参考]G20メンバー・招待国・国際機関
<G20メンバー>
イタリア(議長国)、日本、アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、英国、米国、EU
<招待国>
オランダ、シンガポール、スペイン、ブルネイ(ASEAN議長国)、ルワンダ(AUDA-NEPAD議長国)、コンゴ民主共和国(AU議長国)
<国際機関>
アフリカ連合委員会(AUC)、国連食糧農業機関(FAO)、金融安定化理事会(FSB)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、国際連合(UN)、世界銀行(WBG)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)
② 貿易・投資大臣会合
2021年10月12日、G20貿易・投資大臣会合がイタリアで開催され、広瀬経済産業審議官、山﨑在ジュネーブ国際機関日本政府代表部大使が参加した。本会合では、新型コロナウイルス感染症や気候変動問題への懸念などが国際的な課題となる中、第12回WTO閣僚会議(MC12)も見据え、貿易政策面からどのような貢献ができるか議論がなされ、閣僚声明が採択された。
閣僚声明においては、主として、以下の旨が盛り込まれた。
WTOの全ての機能を向上させるための改革が必要。WTOの再活性化に向け、改革を前進させる重要な機会とするため、第12回WTO閣僚会議を成功させ、前進に必要となる積極的な関与と政治的な機運を与えることにコミット。
新型コロナウイルス感染症に対処するための緊急的な貿易措置が必要な場合でも、的を絞り、釣り合いのとれた、透明かつ一時的なものであって、最も脆弱な人々を守る必要性を反映し、不必要な貿易障壁やグローバル・サプライチェーンへの混乱を生じさせず、WTOルールに整合的であることの重要性を改めて強調。
・WTOにおける電子商取引、投資円滑化、サービス国内規制に関する共同声明イニシアティブに参画しているG20メンバーは、全てのWTO加盟国の積極的な参加を奨励し、第12回WTO閣僚会議までの有意義な進展を期待。
円滑なビジネス環境とルールに基づく多角的通商システムの維持のため、公平な競争環境の確保に努める。多くのG20参加国は産業補助金に関する規律を強化する必要性、および政府支援の透明性の重要性を確認。
通商政策と環境政策はお互いに支えあうべきであると確信。気候変動に対応する措置はWTO整合的であるべきことを再確認。
・中小零細企業は、貿易や投資協定によって成長する市場へのアクセス向上で恩恵を得る立場にあり、グローバル市場が中小零細企業の成長の重要な源であることを認識。
[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>
ブルネイ、コンゴ民主共和国、ヨルダン、オランダ、ニュージーランド、ルワンダ、シンガポール、スペイン、スイス
<国際機関>
世界貿易機関(WTO)、世界銀行(WB)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)、国際貿易センター(ITC)
③ デジタル大臣会合
イタリアが議長国を務め、2021年8月5日に、G20デジタル大臣会合がハイブリッド形式で開催された。本会合には、日本から佐藤経済産業大臣政務官及び武田総務大臣が参加し、「強靭で強力で持続可能で包摂的な回復のためのデジタル化の活用」を全体テーマとし、デジタル経済及びデジタルガバメントに関する11分野についての議論が行われた。
会合中、佐藤政務官からは、2019年のG20大阪サミットで日本が提唱したコンセプトであるDFFTの具体的な推進に向けて、データの越境移転に対する各国規制の共通項を見出し、相互運用性に関して議論することの重要性や、WTO電子商取引交渉等を通じて、より多くの国とデジタル経済の発展のための国際的なルール作りを加速させていく旨発信した。また、健全なデジタル市場の発展のために、リスクへの対応とイノベーションの創出を両立する、柔軟かつ機動的な「アジャイル・ガバナンス」の確立が急務である旨主張し、我が国での取組を紹介するとともに、国際的にも実装に向けた議論が加速している旨発信した。
こうした議論を踏まえ、新型コロナウイルス感染症からの強靭で強力で持続可能で包摂的な回復に向けて、デジタル化の促進に、引き続き取り組んでいく旨のメッセージをG20デジタル大臣宣言として採択した。
<デジタル大臣宣言の内容>
1.デジタル経済
①持続可能な成長のための生産におけるデジタルトランスフォーメーション
強固かつ強靭で持続可能性のある包括的な回復を促進するために、生産のデジタル化に向けた取組を進めるとともに、国際協力を強化することをコミットし、2021年6月に関連するマルチステークホルダーフォーラムを開催。
②零細中小企業の包摂性及びスタートアップ促進のための信頼できるAI活用
2019年にG20大阪サミットで合意したG20AI原則に基づき、信頼できるAIの実装及び人間中心のアプローチにコミットする意思を再確認するとともに、零細中小企業等へのAI導入促進に係る政策事例(附属書1)を歓迎。
③デジタル経済の測定、実践、影響
2020年にG20リヤドサミットで合意したデジタル測定のためのG20ロードマップが優先事項であることを再確認するとともに、マルチステークの対話を促進すべく、2021年2月に専門家ワークショップを開催。
④グローバルなデジタル経済における消費者意識と消費者保護
パンデミック下でオンライン取引が急増したことを踏まえ、消費者保護のために、消費者の意識向上、教育、支援に向けた行動をとることをコミットし、2021年5月に関連するマルチステークホルダーフォーラムを開催。
⑤デジタル環境における青少年保護とエンパワーメント
パンデミック下でデジタル技術の使用に伴う青少年へのリスクが増加したことから、今回初めて優先事項として取り上げ、G20ハイレベル原則(付属書2)をまとめ、デジタル環境における青少年保護及びエンパワーメントに取り組むことをコミット。
⑥スマートシティ・コミュニティのためのイノベーション促進
適切な公共調達がスマートシティにおけるイノベーションの促進を進めるものであり、G20の取組を再確認するとともに、スマートシティ・スマートコミュニティのための革新的な公共調達の事例集を歓迎。
⑦接続性と社会的包摂
接続性のギャップを埋めるコミットメントを再確認し、2025年までの接続性確保という目標を促進。2021年4月にステークホルダーフォーラムを開催。デジタルインフラ投資に向けたG20財務大臣・中央銀行総裁会合の努力を歓迎。
⑧信頼性のある自由なデータ流通と越境データ流通
DFFT及び越境データ流通の推進の機会及び課題を再認識するとともに、DFFTの実現に向けて、OECDが実施した国境移転データに関する規制的アプローチの共通項マッピングに係る作業を認識。
(2)デジタルガバメント
⑨公共サービスとその継続性のためのデジタルツール
2018年にG20ブエノスアイレスサミットで策定されたG20デジタル政府原則の重要性を認識。リスクを管理しながら、デジタル技術及び必要な能力育成に取り組むコミットメントを再確認。OECDと取りまとめたデジタルツールG20大要を歓迎。
⑩デジタルアイデンティティ
プライバシーと個人情報保護のための技術サービスにより公共部門と民間のニーズと期待に応えうることができると認識。OECDと共同で作成したG20デジタルID実例集を歓迎。
⑪アジャイル規制
デジタル化や技術革新に対応するため、よりアジャイルで柔軟で強靭なガバナンスや規制アプローチなどの様々なアクションが取られていることを留意。G20参加国のアジャイルな規制に関する調査の他、国際機関の関連作業を認識。
[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>
ブルネイ(ASEAN議長国)、コンゴ民主共和国(AU議長国)、オランダ、ルワンダ(NEPAD議長国)、シンガポール、スペイン
<国際機関>
国連工業開発機関(UNIDO)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、経済協力開発機構(OECD)、国連食糧農業機関(FAO)、国際電気通信連合(ITU)、国連欧州経済委員会(UNECE)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連統計部(UNSD)、世界銀行
④ 気候・エネルギー大臣会合
2021年7月23日、イタリアが主催するG20気候・エネルギー大臣会合がイタリア・ナポリにて開催され、経済産業省から長坂経済産業副大臣が参加した。G20気候・エネルギー大臣会合では、都市と気候変動に関するセッション、持続可能な回復とクリーンエネルギー・トランジションに関するセッションが開催され、気候変動対策の強化や、エネルギートランジションの重要性などの論点について議論された。長坂経済産業副大臣は、2つのセッションに参加し、2050年ネットゼロ目標と、これに整合的で野心的な2030年目標の追求は、新たな成長を生み出すものでなければいけないこと、あらゆるエネルギー源、あらゆる技術を活用した多様且つ現実的なトランジションが重要であること、これらの論点について議論を深めるべく、東京・ビヨンド・ゼロ・ウィークを開催する予定であること等につき発言した。
会合での議論の内容を踏まえ、閣僚声明が取りまとめられた。
[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>
オランダ、シンガポール、スペイン
<国際機関>
IEA(国際エネルギー機関)、UNEP(国際連合環境計画)、OECD、IRENA(国際再生可能エネルギー機関)、ENEA(イタリア政府機関)等
3.経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会
(1)2021年OECD閣僚理事会(第1部)
2021年5月31日及び6月1日、OECD閣僚理事会(Meeting of the Council at Ministerial Level:MCM)第1部が、「共通の価値:グリーンで包摂的な未来の構築」(Shared Values: Building a Green and Inclusive Future)をテーマにテレビ会議形式で開催され、西村経済財政政策担当大臣、鷲尾外務副大臣が参加した。
本会合では、コロナ危機からの回復、世界経済の見通しやリスク、ポストコロナの取組等について議論が行われ、各国からワクチンの接種状況、経済回復期における財政健全化の重要性、グリーンやデジタルなど新たな分野への投資、より包摂的で強靱な経済の再構築、危機におけるOECDの役割の重要性や貢献への期待、デジタル課税の議論を重視する発言があった。
また、グリア前事務総長の過去15年にわたる功績について多くの謝意が示されるとともに、2021年5月に新規加盟を果たしたコスタリカを歓迎する発言が相次いだ。
会合の最後に、閣僚理事会開催の事実や関連文書の採決等の事実関係及び新旧事務総長への言及を含む「閣僚声明」が発出された。
[参考]OECD加盟国・招待機関
<OECD加盟国38か国>
米国(議長国)、韓国(副議長国)、ルクセンブルク(副議長国)、日本、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、フィンランド、スウェーデン、オーストリア、デンマーク、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロヴァキア、エストニア、スロベニア、ラトビア、リトアニア、英国、カナダ、メキシコ、豪州、ニュージーランド、スイス、ノルウェー、アイスランド、トルコ、チリ、イスラエル、コロンビア、コスタリカ
<その他>
EU、経済産業諮問委員会(BIAC)、労働組合諮問委員会(TUAC)
(2)2021年OECD閣僚理事会(第2部)
2021年10月5日及び6日には、OECD閣僚理事会(Meeting of the Council at Ministerial Level:MCM)第2部が対面(一部参加者はオンライン)で開催され、岡村OECD代表部特命全権大使、広瀬経済産業審議官、正田地球環境審議官(オンライン)が参加した。
本会合では、議長国である米国(ブリンケン国務長官、ケリー気候変動特使、タイ通商代表らが出席)、副議長国の韓国及びルクセンブルクの下、「共通の価値:グリーンで包摂的な未来の構築」をテーマに、気候変動、国際課税、デジタル化、貿易等、経済分野で国際社会が直面する共通の課題について活発な議論が行われた。
また、2021年はOECD設立60周年にあたり、OECDの今後10年の理念を示した「OECD設立60周年ビジョン・ステートメント」を採択した。同ステートメントには、世界がグローバルな協力と行動を必要とする課題に直面する中、OECD加盟国が、個人の自由の保護、民主主義、法の支配などの共通の価値を持ち、志を同じくすることを改めて強調し、その上で、世界経済の持続可能な発展に対するコミットを新たにすること等が盛り込まれている。会合の最後には、コロナ禍からの回復、気候変動、強制労働等の今日的課題について各国の立場や見解を踏まえた閣僚声明が採択され、その中で、信頼性ある自由なデータ流通(data free flow with trust:DFFT)を通じたデジタル経済の前進にコミットする点や、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」等を通じた質の高いインフラ投資への支援、WTO改革や「G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則」の見直しの重要性等も盛り込まれた。
[参考]キーパートナー国・招待国・国際機関
<キーパートナー国>
ブラジル、中国、インドネシア、南アフリカ
<招待国>
ブルガリア、クロアチア、ペルー、ルーマニア
<その他・国際機関等>
EU、経済産業諮問委員会(BIAC)、労働組合諮問委員会(TUAC)、国連、世界銀行、世界貿易機関(WTO)、国際労働機関(ILO)、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)、国連開発計画(UNDP)
4.鉄鋼グローバル・フォーラム閣僚会合(テレビ会議)
2021年10月1日、鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラム(GFSEC)閣僚会合がテレビ会議形式で開催され、日本(共同議長)のほか、イタリア(議長)、米国(共同議長)、EU、ロシア、韓国等、主要な鉄鋼生産国・地域及びOECD事務局、産業界関係者等が参加した。
閣僚報告書は、生産能力の構造的なアンバランスが継続しており、越境投資を含む新たな生産能力への投資が見受けられることや、過剰生産能力の根本原因は対処されておらず、景気が上向いている間に過剰生産能力問題に対処しなければ、将来の周期的な市況減速時に危機に陥る可能性があること、また鉄鋼産業は世界のCO2排出量の7~9%を占めており、気候変動に対する意識の高まりに対処する必要があること、市場歪曲的な政府支援措置の排除は鉄鋼企業の収益を改善し、過剰生産能力の削減促進や脱炭素への移行を促進する可能性があることなどが盛り込まれた。
出席した全てのメンバー国から閣僚報告書案が支持・承認され、公表された。
本取組は、2019年10月に梶山経済産業大臣を議長、牧原経済産業副大臣を議長代理として開催されたGFSEC閣僚会合において、完全なコンセンサスには至らなかったものの、大多数のメンバーがこれまでの進め方を基礎に鉄鋼の過剰生産能力問題に関する取組を継続することに合意したため、31ヵ国・地域により2020年以降も継続されている。