第3節 APECを通じた地域経済統合の推進と経済成長の促進
1.APEC
2021年はニュージーランドがAPECの議長を務め、全体テーマ「共に参加し、共に取り組み、共に成長する(Join, Work, Grow. Together.)」の下、(1)回復を強化する経済・貿易政策(Economic and Trade Policies that Strengthen Recovery)、(2)回復に向けた包摂性・持続可能性の向上(Increasing Inclusion and Sustainability for Recovery)、(3)イノベーションとデジタルに対応した回復の追求(Pursuing Innovation and a Digitally-Enabled Recovery)の3つの優先課題を掲げ、各種取組を行った。
同年6月5日のAPEC貿易担当大臣会合(テレビ会議)では、①貿易政策がパンデミックによる経済への打撃の回復にどのように資するか、APECはどう支援できるか、②第12回WTO閣僚会合に向けた優先事項は何か、APECは会合の具体的な成果に向けてどのような後押しができるか、について議論が行われ、声明を採択するとともに、「コロナワクチン・サプライチェーンに係る宣言」「必要不可欠な物品の移動を支援するサービスの宣言」を発出した。
また、同年11月12日のAPEC首脳会議(テレビ会議)では、新型コロナウイルス感染症からの経済回復を加速させるためのAPECの連携やポスト・コロナ時代の経済成長の在り方等について議論が行われ、APECの中長期ビジョンである「APECプトラジャヤ・ビジョン2040」の実施計画「アオテアロア行動計画」と、APECが行う取組を付記した首脳宣言が採択された。
2022年のAPECは、タイが議長を務め、全体テーマ「オープン、コネクト、バランス(Open, Connect, Balance.)」の下、(1)貿易・投資の円滑化、(2)連結性の回復(特に旅行や観光)、(3)持続可能で包摂的な成長の促進の3つの優先課題に取り組んでいる。
日本としては、2010年の「横浜ビジョン」を基礎とした議論の流れを着実に引き継ぐとの方針に基づき、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を始めとするアジア太平洋地域の経済統合の実現、質の高いインフラ開発・投資の促進、持続可能かつ包摂的な経済成長実現及び女性による経済活動への一層の参画を促進するための取組の実施などを通じ、この地域の力強い成長力を取り込みつつ、我が国の経済に豊かさと活力をもたらすことを目指す。また、WTO発足時には貿易投資ルールの対象として想定されていなかったデジタル貿易・電子商取引分野に関する具体的な取組を進め、市場歪曲措置の是正やレベル・プレイング・フィールドの確保にも取り組む。