第2節 APEC を通じた地域経済統合の推進と経済成長の促進
1.APEC
2022年はタイがAPECの議長を務め、全体テーマ「Open, Connect, Balance」の下、(1)全ての機会に開かれた(OPEN TO ALL OPPORTUNITIES)、(2)全ての次元で連結した(CONNECT IN ALL DIMENSIONS)、(3)全ての側面で均衡のとれた(BALANCE IN ALL ASPECTS)の3つの優先課題を掲げ、各種取組を行った。
同年5月21日及び22日のAPEC貿易担当大臣会合では、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の新たなモメンタムを伴う進展や、物流関連サービスの効率化・円滑化、質の高いインフラ開発と投資を通じた遠隔地の連結性向上等について議論が行われた。最終的に、共同声明の発出にはコンセンサスが得られず、議長声明の発出となった。
また、同年11月18日及び19日のAPEC首脳会議では、ポストコロナの経済回復に向け、包摂的で持続可能な成長に焦点を当てた構造改革実現について議論がなされ首脳宣言が発出されたとともに、持続可能な経済成長を可能とするBCG(Bio Circular Green)経済モデルを実現するための「バイオ・循環型・グリーン経済に関するバンコク目標」が採択された。
2023年のAPECは、米国が議長を務め、全体テーマ「全ての人々にとって強靱で持続可能な未来を創造(Creating a Resilient and Sustainable Future for All)」の下、(1)相互連結(Interconnected)、(2)革新的(Innovative)、(3)包摂的(Inclusive)、の3つが優先課題とされた。デジタル貿易・サービス貿易の促進や、気候変動・環境問題への対処、女性のエンパワーメントを含むジェンダー平等の定着等を通じ、これらの優先課題に取り組んでいる。
日本としては、2010年の「横浜ビジョン」を基礎とした議論の流れを着実に引き継ぐとの方針に基づき、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を始めとするアジア太平洋地域の経済統合の実現、質の高いインフラ開発・投資の促進、現実的なエネルギー・トランジションを通じたカーボンニュートラル実現、サプライチェーン強靱化、デジタルの活用及びそのベースとなるDFFTの理念の重要性や、持続可能かつ包摂的な経済成長実現及び女性のエンパワーメントを通じた経済活動への一層の参画を促進するための取組の実施などを通じ、この地域の力強い成長力を取り込みつつ、我が国経済に豊かさと活力をもたらすことを目指している。また、MC13に向けたWTO改革の必要性についての認識し、WTO発足時には貿易投資ルールの対象として想定されていなかったデジタル貿易・電子商取引分野に関する具体的な取組を進め、市場歪曲措置の是正やレベル・プレイング・フィールドの確保にも取り組んでいる。