- 業種別では飲食料品小売業、医薬品・化粧品小売業等が増加
- 百貨店、スーパー、コンビニエンスストア全ての販売額が前年を上回る
- ドラッグストアは前年比6.9%の大幅増、家電大型専門店、ホームセンターは4年ぶりの増加
商業動態統計(経済産業省)は、財における個人消費の動向を供給側から直接把握することができる指標です。2024年の小売業販売動向について、この指標を用いて業種別、業態別販売額の変動要因等を分析した スライド資料「2024年 小売業販売を振り返る」 より、主な図表を紹介し、2024年1年間の小売業販売について振り返ります。
下の図は、商業動態統計における主な業態から見た商業販売額の概要図です。
2024年の商業販売額は、前年比3.2%増加し、約614兆円でした。うち約73%を占める卸売業は前年比3.5%増加、約27%を占める小売業は同2.5%増加しました。卸売業、小売業ともに4年連続の増加となりました。
小売業について業態別にみると、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、家電大型専門店、ドラッグストア、ホームセンターの全ての業態で前年より販売額が増加しました。

業種別では飲食料品小売業、医薬品・化粧品小売業等が増加
下のグラフは、小売業販売額の業種別寄与度を表したものです。2024年の小売業販売額は、前年比2.5%の増加となりました。増加に最も寄与したのは「飲食料品小売業」、次いで「医薬品・化粧品小売業」でした。他方、「自動車小売業」が減少に寄与しました。

スライド資料では、業種別に販売額の変動要因を「数量」と「価格」に分解したグラフを掲載しています。
2024年小売業販売額の増加に最も寄与した「飲食料品小売業」は、飲食料品の価格上昇の影響で価格要因による増加傾向にあって、2024年もその傾向が続きました。ただし、販売額全体は価格要因で増加した一方で、価格上昇もあり数量要因は年後半にかけて下げ幅を拡大していることには注意が必要です。 次いで増加に寄与した「医薬品・化粧品小売業」は、数量要因には一服感がみられたものの、価格要因による増加傾向が続きました。

他方、小売業販売額の減少に寄与した「自動車小売業」をみると、一部自動車工場の稼働停止に伴う出荷停止の影響により新車販売台数が大きく落ち込んだ後も回復に力強さを欠くなど、数量要因により減少傾向で推移しました。

百貨店、スーパー、コンビニエンスストア全ての販売額が前年を上回る
スライド資料では、百貨店、スーパー、コンビニエンスストアの販売額の変動要因を「店舗数」と「1店舗当たり販売額」に分解したグラフを掲載しており、それぞれの業態の出店傾向をうかがいながら販売額の推移をみることができます。
3業態のうち、販売額が対前年比で最も大きく増加したのは百貨店で、前年比6.3%の増加となりました。
百貨店の販売額推移を「店舗数」と「1店舗当たり販売額」に分解してみていくと、長期的には百貨店の店舗の集約化が続いており、「店舗数」は2024年も引き続き減少しましたが、「1店舗当たり販売額」は4年連続の増加となりました。
スーパー販売額は前年比2.6%の増加で、「店舗数」および「1店舗当たり販売額」ともに増加しました。
コンビニエンスストア販売額は前年比1.2%の増加で、「店舗数」はわずかに減少しましたが、「1店舗当たり販売額」は4年連続の増加となりました。

商品別寄与度をみると、百貨店では、化粧品や宝飾品等を含む「その他の商品」や「身の回り品」等が増加し、4年連続の増加となりました。この背景には、インバウンド需要による押し上げもあり、ラグジュアリーブランドのバックや宝飾品・時計などの高額品、化粧品などが好調(注1)だったことが考えられます。
注1 一般社団法人全国百貨店協会「全国百貨店売上高概況」を参考に記載。

スーパーは、主力の「飲食料品」や、化粧品・医薬品などを含む「その他の商品」等が増加し、3年連続の増加となりました。この背景には、節約志向から買上点数の減少傾向が続く中、店頭価格の上昇や農産品の相場高(注2)などにより、飲食料品の販売額は増加したことが考えられます。
注2 日本チェーンストア協会「2024年1~12月度(暦年)チェーンストア販売概況について」を参考に記載。

コンビニエンスストアは、「サービス売上高」以外の全ての項目で増加し、4年連続の増加となりました。
この背景には、訪日外国人、記録的な高気温、物価高騰による生活防衛意識に対応した品揃え、次回来店時に使用できるクーポン発行等の販促施策により来店客数が増加した(注3)ことが考えられます。
注3 一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会「コンビニエンスストア統計調査年間集計」を参考に記載。

ドラッグストアは前年比6.9%の大幅増、家電大型専門店、ホームセンターは4年ぶりの増加
次に、専門量販店3業態(家電大型専門店、ドラッグストア、ホームセンター)をみていきます。
下のグラフは、ドラッグストア販売額の商品別寄与度をあらわしたものです。2024年の販売額は前年比6.9%の増加、店舗数は同3.3%の増加となりました。最も増加に寄与したのは「食品」、次いで「ビューティケア(化粧品・小物)」でした。また、昨年好調だった化粧品は、インバウンド需要の追い風もあって、一層の増加を見せました。

次に、家電大型専門店をみてみますと、2021年から3年連続で減少していましたが、2024年の販売額は前年比2.1%の増加となりました。巣ごもり需要により2020年まで好調であった「情報家電」や「AV家電」は引き続き減少しましたが、「生活家電」や住宅設備家電などを含む「その他」等が増加しました。

家電大型専門店と同様に、2021年から3年連続で減少していたホームセンターは、2024年の販売額は前年比1.7%の増加、店舗数は同1.2%の増加となりました。増加に最も寄与したのは「家庭用品・日用品」、次いで「DIY用具・素材」でした。

このように、毎日の生活の中で身近な小売業ですが、改めてデータで振り返ってみると、実感する変化と数字を通してみる変化、両方の変化をみることができ、より興味深いのではないでしょうか。
「2024年小売業販売を振り返る」スライド資料では、今回紹介しきれなかったグラフや詳細を掲載していますので、ぜひ御覧ください。
- ミニ経済分析「2024年小売業販売を振り返る」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20250610minikeizai.html