化学兵器禁止条約の概要
1. 経緯
第一次世界大戦において化学兵器の大規模な使用により多くの悲惨な犠牲が生じたことを背景として、1925年に「窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書」(ジュネーブ議定書)が成立したが、同議定書は、化学兵器の戦争における使用を禁止したものの、生産、開発、保有等に関する規制は設けられず、包括的な化学兵器の禁止という観点からは不備なものであった。
このため、1969年にウ・タント国連事務総長が「化学・細菌兵器とその使用の影響」と題する報告書を提出し、これを契機として、化学兵器・生物兵器の全面禁止についの議論が国連軍縮委員会(現在は「軍縮会議」)において行われることとなった。条約交渉は当初、検証措置に関する議論が遅々として進まず、約20年間膠着状態が続いていたが、1990年代に入り東西冷戦構造の終焉及び地域紛争の激化による国際情勢の流動化に伴い、大量破壊兵器の廃絶・不拡散の重要性が高まり、1992年11月30日に国連第47総会において「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」(化学兵器禁止条約)が採択された。
我が国は1995年9月15日に同条約を批准し、世界各国も順次批准を進め、1997年4月29日に同条約は発効した。その翌月の5月6日には第1回締約国会議が開催され、化学兵器禁止機関(OPCW;Organization for the Prohibition of ChemicalWeapons)が設立された。その後も各国の批准が進み、2014年1月1日現在、締約国は190箇国に達している。これまでにおいて、世界的な条約実施体制の整備は着実に進展しており、我が国を含めた各締約国においては、条約に規定する各種の申告や国際検査の受入れを実施しているところである。
化学兵器禁止条約の編年
採択 | 1992年(平成4年)11月30日(国連第47総会) | |
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発効 | 1997年(平成9年)4月29日 | |
日本国 | 署名 | 1993年(平成5年)1月13日 |
国会承認 | 1995年(平成7年)4月28日 | |
批准 | 1995年(平成7年)9月15日 | |
公布 | 1997年(平成9年)4月21日(平成9年条約第3号) | |
発効 | 1997年(平成9年)4月29日 |
2. 概要
化学兵器禁止条約は前文、本文24箇条及び末文並びに3つの附属書から成り、主たる内容は次の通りである。
- 締約国は、いかなる場合にも化学兵器の開発、生産、取得、貯蔵、保有、移譲及び使用並びに使用のための軍事的準備活動を行わないこと。
- 化学兵器及び化学兵器生産施設を原則として条約発効後10年以内に廃棄すること。
- 化学兵器の原料物質たり得る化学物質を民生用途として取り扱う事業者について、申告及び国際検査の受入れを行うこと。(いわゆる「産業検証制度」。3.参照)
- 条約違反の疑念がある締約国に対し、他の締約国からの申立てにより、OPCWが査察を行うこと(申立査察、チャレンジ査察)。
3. 産業検証制度
各締約国が条約上の義務を遵守していることを確認するために、条約では次の措置を実施することを規定している。これを、「産業検証制度」という。
- 締約国はOPCWに対し、一定の化学物質(化学兵器への転用のリスク等に応じて、表1剤、表2剤、表3剤、その他の有機化学物質に分類される)の生産等に関する情報を申告する。
- OPCWは、申告情報と実際の活動との整合性を確認するため、申告施設に対する現地検査を実施する。
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製造産業局 化学物質管理課 化学兵器・麻薬原料等規制対策室
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