化学兵器禁止法の概要
平成15年4月9日
化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律(平成7年4月5日法律第65号)
1. 目的
化学兵器禁止条約(化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約)及び爆弾テロ防止条約(テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約)の適確な実施を確保するため、化学兵器の製造、所持、譲渡し及び譲受けを禁止するとともに、特定物質の製造、使用等を規制する等の措置を講ずることを目的とする。
2. 対象物質等[法第2条、第29条]
- 毒性物質:
人が吸入し、又は接触した場合に、これを死に至らしめ、又はその身体の機能を一時的若しくは持続的に著しく害する性質を有する物質であって、施行令別表第三欄に掲げる物質 - 化学兵器:
砲弾、ロケット弾等の兵器(施行令第2条)であって、毒性物質又はこれと同等の毒性を有する物質を充填したもの(その他の物質を充填したものであって、その内部で化学変化を生ぜしめ、毒性物質又はこれと同等の毒性を有する物質を生成させるものを含む) - 特定物質〔条約上の表1剤〕:
施行令別表一の項の第三欄(毒性物質;表1A剤)又は第四欄(原料物質;表1B剤) - 指定物質〔条約上の表2剤又は表3剤〕:
施行令別表二の項又は三の項の第三欄(毒性物質;表2A剤又は表3A剤)又は第四欄(原料物質;表2B剤又は表3B剤)- 第一種指定物質〔条約上の表2剤〕:施行令別表二の項の第三欄(毒性物質;表2A剤)又は第四欄(原料物質;表2B剤)
- 第二種指定物質〔条約上の表3剤〕:施行令別表三の項の第三欄(毒性物質;表3A剤)又は第四欄(原料物質;表3B剤)
- 有機化学物質〔条約上の「表剤以外の識別可能な有機化学物質」〕:
特定物質及び指定物質以外の有機化学物質であって、施行令第4条第1項に定めるもの - 特定有機化学物質〔条約上のPSF化学物質〕:
有機化学物質であって、燐原子、硫黄原子又は弗素原子を含むもの
3. 化学兵器の製造等の禁止
次の行為を禁止行為としている。
- 化学兵器の製造、所持、譲渡し、譲受け[法第3条第1項、第2項]
- 化学兵器の製造の用に供する目的での、毒性物質若しくはこれと同等の毒性を有する物質又はこれらの物質の原料となる物質の製造、所持、譲渡し、譲受け[法第3条第3項]
- 専ら化学兵器に使用される部品又は専ら化学兵器を使用する場合に用いられる機械器具の製造、所持、譲渡し、譲受け[法第3条第4項]
4. 許可・届出等関係
(1)特定物質の製造、使用、輸入等
- 特定物質を製造、使用する者は、経済産業大臣の許可を受けなければならない。[法第4条、第10条]
特定物質を輸入する者は、外国為替及び外国貿易法(外為法)により承認を受けなければならない。[法第13条] - 許可使用者がその使用許可に係る特定物質を譲り受ける場合以外は、特定物質の譲渡し、譲受けはしてはならない。[法第15条]
- 法令に基づく場合等のほか、特定物質を所持してはならない。[法第16条]
- 特定物質を運搬する場合は、都道府県公安委員会に届け出て、運搬証明書の交付を受けなければならない。[法第17条]
- 特定物質を使用することを要しなくなった時等は、特定物質を廃棄しなければならない。[法第18条]
- 許可製造者及び許可使用者は、製造/使用の実績数量等を経済産業大臣に届け出なければならない。[法第21条]
- 許可製造者は、日誌を備え、製造数量、保有量等を記録しなければならない。[法第22条]
- 特定物質が盗取され、又は所在不明となった時は、警察官又は海上保安官に届け出なければならない。[法第23条]
(2)第一種指定物質の製造等及び使用
第一種指定物質を次の数量を超えて製造等又は使用する者は、翌暦年の予定数量及び前暦年の実績数量を経済産業大臣に届け出なければならない。[法第24条、第25条、第26条]
- BZ:1kg
- BZ以外の毒性物質:100kg
- 原料物質:1t
(3)第二種指定物質の製造
第二種指定物質を30tを超えて製造する者は、翌暦年の予定数量及び前暦年の実績数量を経済産業大臣に届け出なければならない。[法第27条]
(4)指定物質の輸出入
指定物質を輸出又は輸入した者は、前暦年の実績数量を経済産業大臣に届け出なければならない。[法第28条]
(5)有機化学物質、特定有機化学物質の製造
有機化学物質、特定有機化学物質を次の数量を超えて製造した者は、前年の実績数量を経済産業大臣に届け出なければならない。[法第29条]
- 有機化学物質:当該年にその事業所で製造した全ての有機化学物質の合計数量が数量しきい値(200t)を超えた者
- 特定有機化学物質:当該年にその事業所で製造した全ての特定有機化学物質の合計数量が数量しきい値(30t)を超えた者
5. 国際検査
事業所等に対し、経済産業省職員(申立検査の場合は経済産業省職員及び外務省職員)の立会いの下、国際検査を受け入れる義務が課せられている。[法第30条]
- 国際検査の目的は、申告(届出)情報と実際の活動との整合性の確認等である。
- 国際機関へ申告を行った事業所のうち、次の数量を超えて活動を行うものが、国際検査対象となる。またこれ以外に、申立検査(ある締約国からの申立てによる国際検査)がある。
- 特定物質:民生活動の施設については、年間100g
- 第一種指定物質:
BZ:10kg
BZ以外の毒性物質:1t
原料物質:10t - 第二種指定物質:200t
- 有機化学物質:総量につき200t
- 特定有機化学物質:一物質につき200t
6. 立入検査
経済産業大臣は、法の施行に必要な限度において、その職員をして、特定物質の許可製造者、承認輸入者、許可使用者又は廃棄義務者に対し、立入検査を行わしめることができる。
都道府県公安委員会は、第17条第2項の規定(運搬における特定物質の盗取等防止)の施行に必要な限度において、警察職員をして、特定物質の許可製造者、承認輸入者、許可使用者又は廃棄義務者に対し、立入検査を行わしめることができる。
[法第33条]
7. 罰則
次の者は、処罰される。
- 化学兵器を使用して、毒性物質又はこれと同等の毒性を有する物質を発散させた者[法第38条第1項、未遂罪;第38条第3項、予備罪;第40条]
- 毒性物質又はこれと同等の毒性を有する物質をみだりに発散させて人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者[法第38条第2項、未遂罪;第38条第3項]
- 法第3条に違反した者[法第39条第1項~第3項、未遂罪;第39条第4項、第39条第1項(化学兵器製造罪)の予備罪;第41条]
- 第38条~第41条の国外犯[法第42条]
- 特定物質について、許可を受けないで製造、使用した者等[法第43条、第44条]
- 特定物質又は指定物質について、必要となる届出をせず、又は虚偽の届出をした者等[法第45条] 等
お問合せ先
製造産業局 化学物質管理課 化学兵器・麻薬原料等規制対策室
電話:03-3580-0937
FAX:03-3580-7319
お問合せページ:http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/contact.html