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令和7年度 産業標準化事業表彰 経済産業大臣表彰 受賞者インタビュー

経済産業大臣表彰(規格開発・認定・認証部門) 是永 敦(これなが あつし)氏

国立研究開発法人産業技術総合研究所 経営企画本部 企画部 企画室 産業技術総括調査官

POINT
 
○四半世紀にわたり、滑り軸受の国際標準化活動に尽力し日本製品の市場拡大に貢献

○国際標準化における適切なテーマを見極めるため、議論やプロセスが重要となってくる

○標準化活動の持続的発展のためには若い世代の参加が不可欠。標準化をビジネスツールとして活用できることを伝えていくことが重要


ISO/TC 123(平軸受)/SC 7(特殊軸受)国際議長として規格化に尽力

 

 滑り軸受は、主に回転軸を潤滑剤によって支持し、スムースな運動を実現させる機械部品で、自動車や産業機械などで広く使われている。2000年に日本機械学会 ISO/TC 123国内委員会委員に就任して以来、滑り軸受の国際標準化に取り組んできたのが経済産業大臣表彰を受賞した産業技術総合研究所(以下、「産総研」という。)の是永敦氏だ。
 是永氏は日本メーカーによる滑り軸受市場のシェア拡大とともに標準化の必要性を発信し、三つのSC設立及びそれらの幹事国獲得に貢献した。2019年にISO/TC 123/SC 7国際議長就任後は、SC運営のほか、軸受面に固体潤滑剤を埋め込む表面改質軸受に関する標準化をプロジェクトリーダーとして進め、最終的にTS(Technical Specification=技術仕様書)発行を達成した。さらに2件のISO規格の発行にも貢献した。また日本機械学会ISO/TC 123 JIS原案作成委員会委員長として、延べ12件のJIS改正を主導し、一部をISO規格にも反映させるなど、省エネルギーに貢献する滑り軸受の国際標準活動に大きな力を発揮した。    

 
 
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2025年10月に韓国・栄州市で開催されたISO/TC 123国際会議の参加メンバー
(前列左から3番目が是永氏)
写真提供:是永 敦氏

 

 是永氏は「標準化の第一の目標は皆が共通に使うことができる基準を国際的なレベルで作ることです。」と述べた。その上で、これからの標準化はそうした基盤的な標準化活動に加えて、その先にある市場の創出・獲得、そして拡大につなげていく必要がある。「特に日本のメーカーが世界市場でビジネスを行うには、ヨーロッパが既に進めているように、製品全体の戦略の中で一つのツールとして標準化を位置づけて、取り組んでいく必要があります。」
 また人材育成も重要で、日本では国際標準化人材の高齢化が問題視されて久しい一方、海外からは国際標準化活動の場に若手が多く参加しているという。「特に最近は、企業でも大学でも研究所でも、若い人があまり標準化活動に関わらない状況になっています。そのためにも、若い人たちが入ってくることができる仕組みを作ることが必要になっています。」
 滑り軸受は世界市場で日本が技術的にリードしており、その中で規格を開発していくことは日本のためだけではなく、世界の滑り軸受業界にとって有益であり、かつ、グローバルでの業界全体の発展につながるようにバランスをとることが重要となる。


難しいことは国際標準化が可能なテーマや技術の見極め

 是永氏は特殊軸受分野の標準化に取り組んでいるが、標準化を進めていく際のテーマを選ぶことが一番難しいという。例えば、ある特定の企業しかできない技術を標準化することは、貿易上の障壁となる可能性があるため、基本的に国際標準にはできない。しかし、滑り軸受は日本が優位に立っている分野であり、グローバルな市場にインパクトを与えることができるため、グローバルでも使える規格を開発したいと考えるのは自然なことだ。
 「もともと研究者なので、学会に参加して発表を聞き、その中でどの技術であれば標準化に落とし込んでいくことができるかをいつも考えています。そこは悩ましいところで、TSとなった表面改質軸受の技術も少し尖った内容でした。このような場合、規格に必要な要求事項を設定することが難しく、最初はISO規格として提案しましたが、海外から規格化は難しいという意見が出て、議論を重ね、最終的にTSに落ち着きました。」
 その技術は元々、ある大学が中心になって、自動車関連部品に適用するために開発されていたものだ。そのため、製品化には少し時間を要し、特に企業の委員から見れば、規格として扱うには躊躇する内容であったかもしれない。ただ継続的に新しい技術を提案していかないとTCの存在価値がなくなり閉じられてしまう可能性もあるので、多少先を行く技術であっても、積極的に規格化するために提案するようにしている。


「学」の領域でインセンティブを働かせるために活動する

 是永氏は現在、産総研から外部機関へ出向し、国際標準戦略を扱う部署で仕事をしている。ISO/TC 123の活動を続けながら、経済産業省など関係省庁とも協力して、日本全体で標準化活動をより活性化するための様々な取組を進めている。
 「国際標準の場で扱われる内容は様々で、その取組にはそれぞれ特徴があり、進め方は全く異なります。例えば、電子デバイスの標準化は各国の競争が激しい分野ですが、私が取り組んできた滑り軸受は歴史も長く、比較的落ち着いた技術です。また最近ではウェルビーイングのように、製品というよりも概念的な標準も出てきています。そうした違いを踏まえた上で、より広く標準化活動全般を見ていきたいと考えています。」
 その中で、是永氏は研究者として学会に行くことが多いことから、学会をもう少し活用していきたいという。「企業は自分たちの利益になることがわかれば標準化に取り組みますが、現在はあまり活発とはいえません。大学の研究者は研究業績にもならないため、標準化にあまり魅力を感じていませんが、新しいアイデアを持っている。したがって、産学交流の場でもある学会が、突破口の一つと考えています。経済産業省も取り組み始めていますが、基礎研究の段階から標準を意識して、研究者にもインセンティブを働かせるための活動も含め、所属している日本機械学会などで始めていこうと考えています。」
 標準化は非常に地味な活動で、寸法などの規格を決めるというイメージが強い。ただ今は昔と違い、規格にすることで収益化することも考えるべきである。
 「若い人たちには研究に取り組む中で、頭の片隅に標準化を入れて、ツールとして活用できるという認識を持ってもらえると、とてもうれしいです。」


【略歴】
1994年4月~現在 通商産業省 工業技術院 機械技術研究所(現 国立研究開発法人産業技術総合研究所)
2000年4月~現在 一般社団法人日本機械学会 ISO/TC 123(平軸受)国内委員会 委員
2012年4月~2013年3月 一般社団法人日本機械学会 標準・規格センター 標準事業委員会 副委員長
2012年6月~2013年3月 ISO/TC 213グループC関係JIS原案作成委員会 委員
2013年1月~2013年10月 一般社団法人日本機械学会 ISO/TC 123 国内委員会 JIS原案作成委員会 委員長
2013年4月~2015年3月 一般社団法人日本機械学会 標準・規格センター 標準事業委員会 委員長
2015年8月~2016年5月 一般社団法人日本機械学会 ISO/TC 123 国内委員会 JIS原案作成委員会 委員長
2016年4月~2018年3月 一般社団法人日本機械学会 標準・規格センター 副センター長
2017年5月~2019年3月 一般社団法人日本機械学会 ISO/TC 123 国内委員会 表面改質技術原案作成部会 プロジェクトリーダー
2018年4月~2019年3月 一般社団法人日本機械学会 標準・規格センター センター長
2019年4月~現在 ISO/TC 123/SC 7(特殊軸受)国際議長
2020年4月~2023年2月 ISO/TC 123/SC 7 ISO/TS 24137(固体潤滑剤埋込による表面改質)プロジェクトリーダー
2020年10月~2024年3月 国立研究開発法人産業技術総合研究所 製造技術研究部門 トライボロジー研究グループ長
2021年12月~現在 日本産業標準調査会 標準第一部会 委員(機械要素技術専門委員会 委員長)
2024年4月~現在 同研究所 企画本部 産業技術総括調査官(内閣府 知的財産戦略推進事務局)
2024年10月~現在 一般社団法人日本機械学会 ISO/TC 123 国内委員会 JIS原案作成委員会 委員長

最終更新日:2026年2月9日