1. ホーム
  2. 政策について
  3. 政策一覧
  4. 経済産業
  5. 標準化・認証
  6. 主な支援施策等
  7. 表彰制度
  8. 令和7年度 産業標準化事業表彰 経済産業大臣表彰 受賞者インタビュー

令和7年度 産業標準化事業表彰 経済産業大臣表彰 受賞者インタビュー

経済産業大臣表彰(規格開発・認定・認証部門) 清家 剛(せいけ つよし)氏

国立大学法人東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授

POINT
○四半世紀にわたり、30件近いJIS開発に携わることで建材の製品規格・試験規格の開発、改正に貢献

○JISによる建築に不可欠な品質を保つため、専門知を継承し、若手が標準化活動しやすい仕組み作りが求められる

○ISO規格のJIS化は日本の実情に合わせた形で進めることが重要で、専門知識を持った人材の育成が必要


建築分野のJISの策定、取りまとめに貢献

 

 建築物に使用される建材などは基本的にJISに準拠した製品が使われる。これにより、材料の品質が保証され、建築物の安全性が向上する。
 清家剛氏は1990年代初めに建築分野のJISの委員となり、長年、建築に関わるJISに携わってきた。2015年からは日本工業標準調査会(現 日本産業標準調査会)総会の委員に就任し、産業標準化の推進に関する提言を行うとともに、標準第一部会及び建築技術専門委員会の委員を歴任した。さらに2021年からは同委員会委員長に就任し、利害関係者の意見を取りまとめて、数多くのJISを世に送り出してきた。また25年間にわたって、30件近いJISの開発においてその多くを原案作成委員会委員長として携わり、建材の製品規格・試験規格などで関係者の意見を引き出した。その中で対立し合う意見に対しても議論を重ねることで、粘り強くコンセンサスに導き、我が国にとって最善となる規格の開発、改正に大きく貢献している。    

 


JISは建築の品質確保の基盤として社会に不可欠

 清家氏は「建物を建てるためには必要な事項を仕様書やJISなどの規格にきちんと書いておく必要があります。JISは建築の品質確保の基盤となっていて、それに支えられて様々な仕様書が書かれ、建築基準法による規制があります。その意味で、建築分野において、JISは非常に大切な規格なのです。」と述べた。
 清家氏は、元々専門にし、得意としている外壁や窓などの分野について、深い知識を持っている。メーカーの担当者は自分たちが製造しているものしかわからないため、もう一回り広い世界から見て、良い規格にしていくことができるという自信もあり、JISの策定に携わってきた。「JIS化を進めているうちに、外壁や窓以外の分野も担当してほしいと言われて、関与する分野がどんどん広がっていきました。」ある建築材料がJIS化されていないと、その材料は建築現場で使えず、建築物を建てることができない。そのため、清家氏は自身の専門でない分野の試験方法の規格化などにも積極的に取り組んできた。そして規格間の整合性を重視し、他の規格への影響も考慮して、JIS化を進めてきた。
 JIS原案作成委員会の委員長は、その多くが大学の教員である有識者が務めており、さらに同委員会での作業はかなり時間を要するため、若手を巻き込みにくく、年配者が多くなる傾向にある。加えて、規格は策定する段階では様々な議論や作業といったプロセスがあるものの、規格が安定してしまうと維持するだけになってしまう。「数年間関わった技術専門委員会でも、規格の承認に際しては表面的なことしか確認できませんでした。ルーティンワークのようにしてやってきた部分もあるので、若手の研究者に担当してもらうことは正直難しいです。しかし、今までのように年配の有識者にお願いし続ける仕組みだと、どこまで維持管理していくことができるのか、とても心配になります。」
 そうした状況を変えるため「若手を育てていくための様々な機会を設ける仕組みが必要だ」とJIS原案作成委員会でも発言して、議題にしてきた。「今までなかなか浸透しないと残念な思いでいたのですが、今年度から産業標準化事業表彰のイノベーション・環境局長表彰を標準化活動に取り組む若手の方々や標準化活動の経験が短い方々に対する表彰とし、奨励者表彰に特化したことは、とてもよかったと思います。」


標準化人材を評価することで、規格の維持・発展を図る

 清家氏は「研究者の世界には標準化活動は業績にならないという風潮があります。しかし、JISに関わることで、自分が取り組んでいる研究が見えてくるという大きなメリットもあります」という。今後の標準化活動を活性化するためには、研究者にはその点を自覚して取り組むこと、そして、大学側も標準化活動を研究業績の一部として評価を行うこと、企業でも標準化活動に関わる人材をきちんと評価し、そのキャリアパスを確保すること、この三者がそれぞれの立場において責任ある行動を取ることが求められる。
 「私が最近、気になっていることは、規格担当の中で「JISはISO規格を日本語に翻訳すれば作ることができる。」と考える人が出てきていることです。建築技術専門委員会の委員長をしている時に、「ISO規格をただ翻訳すればよいわけではない。日本の規格としての覚悟を持って作らなければいけない。」と言いました。」ISO規格には発行に至るプロセスの中で様々な国の利害が盛り込まれ、様々な逃げ道もある。ISO規格をベースとしてJIS化を行うためには、そうした各国の思惑を見据えて理解した上で、思惑のトーンを抑えることや日本流に変換するなどして、JISとしての思想を込めて、一つの独立した規格として開発していくことが求められる。
 JISで定められた規格が一つでも存在しなくなったら、建築物を建てることができなくなる。材料の評価を自分たちで行うか、別の材料を使わなければならなくなる。そうした事態を避けるためには、JISの改正も含めた維持管理の作業を永続的にできるようにしていく必要がある。そのためにはJISに関わる人材を、企業でも大学でも、広く社会でもきちんと評価していくことが重要になる。
 「建材をはじめ建築関係の製品の品質が保証されているのは、JISとしてきちんと規格化され、製品がそれに準拠して製造されているからです。世界中どの国でも保証されているわけではありません。日本ではJISがあることで、製品の品質が保証され、それによって社会が安定的に維持されているのです。」


【略歴】
1991年4月~1999年3月 東京大学工学部建築学科 助手
1999年4月~2019年3月 東京大学大学院新領域創成科学研究科 助教授(2007年より准教授に職名変更)
2000年1月~2021年12月 日本工業標準調査会総会委員、JIS原案作成委員会委員長等(26件)
2019年4月~現在 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授
2020年10月~2021年5月 日本産業標準調査会 標準第一部会 建築技術専門委員会 委員
2021年6月~2025年3月 日本産業標準調査会 標準第一部会 委員
2021年6月~2025年3月 日本産業標準調査会 標準第一部会 建築技術専門委員会 委員長

最終更新日:2026年2月3日