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令和7年度 産業標準化事業表彰 経済産業大臣表彰 受賞者インタビュー

経済産業大臣表彰(標準化人材育成・支援部門) 鈴木 敏厚(すずき としあつ)氏

日本ケミコン株式会社 技術本部 ソリューション開発部 主幹研究員

POINT
 
○JEITA標準化専門委員会において教育研修会・基調講演を継続的に企画・実施し、標準化の意義と国際交渉の実務を体系的に伝える人材育成の仕組みを構築

○IEC規格の作成ルールを、課題別に日本語で検索できるガイダンスブックを作成し、8年にわたり継続的に改定。新任委員の早期戦力化と標準化人材の質の向上に貢献

○IEC/TC 40(電子機器用コンデンサ及び抵抗器)のAG内で日本・ドイツ・フィンランドによる国際的な規格開発ガイダンス作成に取り組む


教育研修会や基調講演を主導し、標準化人材育成の体制を構築

 

 鈴木敏厚氏は日本ケミコンの主幹研究員として、研究開発及びコンデンサや抵抗器などの受動部品に関する標準化活動に長年にわたり携わってきた。電子情報技術産業協会(JEITA)の受動部品標準化ワーキンググループ(WG)では主査として、国内電子部品メーカー22社の意見を取りまとめ、日本としての統一方針を形成する役割を担った。
 受動部品は、自動車、スマートフォン、社会インフラなど、あらゆる電子機器に不可欠な基幹部品である。IEC/TC 40(電子機器用コンデンサ及び抵抗器)で策定される国際規格は、製品の性能要件や試験方法を左右し、各国の産業競争力に直結する。鈴木氏は2010年以降、全てのIEC/TC 40国際会議に出席し、電気二重層コンデンサなど複数の規格でプロジェクトリーダーを務めるとともに、日本の技術や産業界の意見を国際規格に反映させてきた。
 今回の受賞は、こうした国際標準化活動の実績に加え、標準化人材の育成・支援における継続的な取組が高く評価されたものだ。受動部品標準化WGの上位組織である標準化専門委員会において、教育研修会や活動報告会の中の基調講演の企画・実施を長年にわたって主導し、標準化活動の意義や国際交渉の実務を次世代に伝える体制を構築してきた功績が認められた。    

 


独自のガイダンスブックと失敗事例の共有で知識継承の課題を克服

 鈴木氏が同分野の標準化活動における最大の課題として捉えたことは、人材の入れ替わりへの対応だ。特に、各企業の人事異動により委員が頻繁に交代してしまうため、IEC規格作成のルールや議論の進め方といった実務上の知識が蓄積しにくい構造的な問題が存在した。
 この問題を克服するため、鈴木氏は8年前から、実務上の課題を起点として「ISO/IEC Directives」を日本語でわかりやすく検索できるガイダンスブックの作成に取り組んだ。ISO/IEC Directivesは、ISO及びIECの専門業務用指針が記された国際規格を作成する上で従うべき基本手順を定めた規則文書であり、その内容は膨大かつ専門的である。鈴木氏は、IEC/TC 100(オーディオ・ビデオ・マルチメディアシステム及び機器)国内委員会で作成されていた教材を基に、IEC/TC 100国内委員会の助言も受けながら、標準化専門委員会に参加しているIEC/TC 40、SC 37A/B(低圧サージ防護デバイス)、SC 48B(電子機器用コネクタ)及びTC 51(磁性部品及びフェライト材料)国内委員会の実情に合わせて独自に再構成した。また、ISO/IEC Directivesが改訂されるたびにガイダンスブックも更新し、さらに新たに寄せられた質問に関する内容を盛り込む作業を毎年継続してきた。ガイダンスブック改定のリーダーとして計5回の大幅改定を重ね、常に最新のルールを反映させた。
 「配付すれば皆さん活用してくれました。以前は規格作成の不明点があると主査や事務局に質問がきて回答が負担になっていましたが、問い合わせの件数が大幅に減りました。また、質問がきたとしても、すぐに答えるのではなく、まず『こちらを読んでください』と資料を案内するようにしました。」
 また、開催する教育研修会や活動報告会の中の基調講演では初心者にもわかるように基礎的な説明を盛り込んだ資料の作成を講師に依頼し、失敗事例などもあれば盛り込むよう働きかけた。また、自ら教育研修会の講師も行った。「講演では標準化担当者だけでなく、その上司の方が聴講して理解できるような内容になるよう心掛け、標準化への見識を深めてもらうことも意識しました。また、標準化の成功事例紹介はもちろん重要ですが、「なぜうまくいかなかったか、どうしたらよかったか」という失敗からの視点も、成功例と同じくらい貴重なデータだと考えています。」


国際的な人材育成へ展開、越境経験で視野の拡大を

 国内での人材育成の取組を経て、現在、鈴木氏はその知見を国際的に展開しようとしている。鈴木氏はIEC/TC 40内のAG 42(TC 40全体の一般事項及び作業計画を審議するアドバイザリグループ)において、IEC/TC 40を対象とした規格開発ガイダンスの作成に取り組んでいる。「ISO/IEC Directivesに足りない細かい部分を各国のIEC/TC 40の新規参加者も理解できるような資料を作っています。日本とドイツとフィンランドの3カ国で進めており、IEC/TC 40における『規格類文書の開発及び改定を行うためのガイダンス』を国際的に使用できる資料として整備しています。」

   
 そして、鈴木氏は標準化活動を単なる規格作りだけではなく、技術の国際的な整合性や産業競争力を支える重要な戦略であると感じているという。「理想としては、若手の技術者や研究者が標準化の重要性を理解し、取り組みやすい環境を整備していくことが必要で、そのためには企業の理解が不可欠です。研究者が開発を進める中で、標準化を常に意識しながら進めていくことが、国際的にその製品を普及させるための近道となる一つの手段だからです。」
 標準化人材の育成が重要となる背景には、国際競争の現実がある。「例えば海外から自国の製品を市場に参入しやすくする目的で、『規格値の許容差を広げる』という提案が出てくることもあります。そうした動きに対しては守りの姿勢をとる一方で、日本がリードしている小型化技術などは、日本がプロジェクトリーダーとなり、先に規格を作って市場をリードしていく攻めの姿勢が必要です。」
 最後に、後進へのアドバイスとしては、専門分野を超えた越境経験を勧める。「私の場合はIEC/TC 40が主な活動の場ですが、他のTCに参加する機会もありました。例えばIEC/TC 9(鉄道用電気設備とシステム)は鉄道分野ですが、鉄道用コンデンサの規格を作成する際にIEC/TC 40の代表として国際規格の制定に参加したこともあります。他のTCに参加して規格に対する考え方や国際的な交渉、進め方を学ぶ機会があれば、多面的な視点を得ることができます。機会があれば躊躇せずに参加してみることで、視野が広がります。」

【略歴】
1991年4月~現在 日本ケミコン株式会社
2006年4月~2011年3月

一般社団法人電子情報技術産業協会(以下「JEITA」とする。)受動部品標準化専門委員会 電解・フィルムコンデンサグループ EDLC PG(電気二重層コンデンサ作業部会)委員

2007年4月~2014年3月 公益財団法人鉄道総合技術研究所 パワーエレクトロニクス用コンデンサ作業部会委員(TC 40国内委員会代表)
2009年4月~現在 JEITA 電解・フィルムコンデンサグループ 主査、副主査、幹事
2009年4月~現在

JEITA 受動部品標準化WG(主査:20184月~20233月、22社参画)

2010年4月~2012年12月 IEC/TC 9(鉄道用電気設備とシステム)IEC 61881-2(鉄道分野-鉄道車両装置-パワーエレクトロニクス用コンデンサ-第2部:アルミニウム非固体電解コンデンサ)エキスパート(IEC/TC 40(電子機器用コンデンサ及び抵抗器)代表)
2010年4月~2013年12月 IEC/TC 9 IEC 61881-3(鉄道分野-鉄道車両装置-パワーエレクトロニクス用コンデンサ-第3部:電気二重層キャパシタ)エキスパート(IEC/TC 40代表)
2010年4月~2014年12月 IEC/TC 9/WG 47(車両用機器―パワーエレクトロニクス用コンデンサ)エキスパート(IEC/TC40代表)
2010年4月~現在 IEC/TC 40/WG 40(コンデンサ,インダクタ及びフィルタ) エキスパート
2010年4月~現在 JEITA TC 40国内委員会(幹事:2012年4月~現在)
2011年3月~2015年10月 IEC/TC 40 IEC 62391-1(電気及び電子機器用固定電気二重層コンデンサ−第1部:品目別通則)Ed2 プロジェクトリーダー
2012年4月~現在 IEC/TC 40 リエゾンオフィサ(TC 69(電動道路車両・産業車両用の電力/エネルギー伝達システム)/Outgoing)
2013年10月~現在 IEC/TC 40 リエゾンオフィサ(TC 9/Incoming & Outgoing)
2014年4月~2024年3月 JEITA 標準化専門委員会(副主査:2015年 4月~2020年3月)
2018年10月~現在 IEC/TC 40 リエゾンオフィサ(SC 34D(照明器具)/Outgoing)
2020年2月~2022年10月 IEC/TC 40 IEC 62391-1 Ed3 プロジェクトリーダー
2022年12月~現在 IEC/TC 40/AG42(一般事項及び作業計画)ガイダンス文書作成チーム エキスパート
2023年1月~現在 IEC/TC 40 IEC 62391-2(電気及び電子機器用固定電気二重層コンデンサ−第2部:パワー用電気二重層コンデンサ)Ed2 プロジェクトリーダー

最終更新日:2026年1月27日