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バキュロウイルス生産系を用いて生産された試薬の取扱い見直し(2020年11月)
バキュロウイルス生産系を用いて生産された試薬のうち、アフィニティ精製を経ているものについての遺伝子組換えバキュロウイルスの残存如何の判断について
バキュロウイルス生産系を用いて生産された試薬については、試薬中に生産において使用された遺伝子組換えバキュロウイルスが残存する可能性が指摘されています。
当省はこれまで、当該試薬生産に係る第二種使用申請の際、事業者の任意で遺伝子組換えバキュロウイルスが残存していないことの確認を求められた場合には、製品試薬中に遺伝子組換えバキュロウイルスが①PCR検査で検出されないこと、②感染性試験で感染性を示さないことが満たされた場合には、残存していない旨確認してきました。
他方、アフィニティ精製注1の汎用的な標準プロセスを経ている当該試薬については、生産に使用された遺伝子組換えバキュロウイルスが除去されることを示す学術論文注2が発表されています。また、バキュロウイルスが産生する多角体は自然環境下でウイルスが感染力を維持し昆虫個体に感染するために必須であり、遺伝子組換えバキュロウイルスはこの多角体の主構成成分であるポリヘドリンを有していないため、自然環境下で宿主となる鱗翅目昆虫には経口感染できないことが知られています(そもそもヒトを含む哺乳類には感染しません)。このように安全であることを示す科学的知見の蓄積があることを踏まえ、産業構造審議会バイオ利用評価ワーキンググループ(第11回、令和2年9月28日開催)で審議いただいた上で、当該試薬についてはカルタヘナ法規制非該当品として扱う(ただし、膜タンパク質の生産の場合には、タンパク質精製時にウイルス粒子が付着する可能性も否定できないことから、ウイルス粒子を取り除く工程を含めること、また、感染性試験の実施等により当該工程によって実際にウイルス粒子が除去されることが確認されていることを条件とする)こととしました。
また、アフィニティ精製を経ていないその他の当該試薬については、遺伝子組換えバキュロウイルスが残存している可能性があり、経済産業省では、事業者が任意で遺伝子組換えバキュロウイルスの残存の判断を求める場合、基本的に感染性試験でネガティブの結果が出た場合に限って遺伝子組換えバキュロウイルスが残存していないと判断することとします。なお、PCR 検査については、仮に検出されたとしてもウイルスの存在状態は定かでなく、遺伝子組換えバキュロウイルスのリスクの程度を考慮すれば感染性試験でネガティブであることをもって同ウイルスが残存していないと判断して差し支えないと考えられることから、求めないこととしました。
注1)ターゲット分子と特異的かつ可逆的に結合する分子の反応を利用して、ターゲット・タンパク質あるいはその複合体を分離・精製する手法。
注2)Chikako Ono, Junki Hirano, Toru Okamoto, Yoshiharu Matsuura, Evaluation of viral contamination in a baculovirus expression system. Microbiol Immunol 2018; 62: 200-204.
doi: 10.1111/1348-0421.12572(https://doi.org/10.1111/1348-0421.12572)
以上を踏まえ、「カルタヘナ法の解説(申請マニュアル)」に以下のQ&Aを掲載することとしましたので、お知らせします。(太字・強調部分が、主に今回追記した箇所になります。)
(質問1-17) 遺伝子組換えバキュロウイルスをカイコ又は昆虫細胞に感染・増殖させて増殖させ、目的タンパク質を生産させる場合のカルタヘナ法規制上の取扱い如何。 |
(解説等)
遺伝子組換えバキュロウイルスをカイコ又は昆虫細胞に感染・増殖させる行為は、カルタヘナ法の規制対象である遺伝子組換え生物等の使用等に該当することから、法の規定に従って使用等を行う必要があります。
なおカイコに感染させる場合、遺伝子組換えバキュロウイルスがカイコの細胞中に移転しただけで、カイコ自身の核酸に外来の核酸が移入されるわけでないため、カイコそのものは遺伝子組換え生物等には該当しません。しかしながら、当該組換えバキュロウイルスの拡散を防止する観点から、それを保有しているカイコ自体の拡散防止措置を執って使用することが重要であり、事実上、カイコの逃亡防止措置や排泄物等の管理が必要となります。
また、生産するタンパク質には当該組換えバキュロウイルスが残存しないように精製することが必要です。なお、アフィニティ精製を経たもの(注)については、当該バキュロウイルスが残存しないことが学術論文においても示されており、当該タンパク質を含む試薬をカルタヘナ法規制非対象品として扱うことができます。
その他のものについては遺伝子組換えバキュロウイルスが残存している可能性があると考えられます。このため、事業者が任意で経済産業省に対し遺伝子組換えバキュロウイルスが残存していない(カルタヘナ法規制非該当品である)ことの確認を求める場合、基本的に感染性試験でネガティブであることを示す結果が出た場合に限って確認することとします。
(注)ターゲット分子と特異的かつ可逆的に結合する分子の反応を利用して、ターゲット・タンパク質あるいはその複合体を分離・精製する手法です。ターゲット・タンパク質の分離後の洗浄工程含め、適切に精製が行われているものに限ります。
最終更新日:2022年4月25日