■EUの取り組み事例 |
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■EUの取り組み |
●基本的な考え方 |
○廃棄物管理について |
1. |
環境行動計画 |
EUでは、1972年の欧州理事会において、環境の保護と改善のためには共同体レベルでの行動が必要である、とされてから、環境に対する政策が推進されることとなった。1973年~1976年を対象とする第1次環境行動計画以降、これまでに6つの環境行動計画(1973~1976年、1977~1982年、1983~1987年、1987~1992年、1992~2000年、2001~2010年)が発表されている。 |
(1) |
第5次環境行動計画 |
欧州委員会では、1992年のリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」における「アジェンダ21」を受け、2000年に向けたEUとしての環境プログラムとして作成されたものである。「持続可能な開発」を目指し、環境対策を推進していくことが目標とされている。 大気汚染や廃棄物処理など、発生したものに対する対策ではなく、事前の汚染防止、資源の合理的な利用、生産物の効率的活用、クリーンテクノロジーの研究開発の必要性が指摘されている。 特に廃棄物対策については、考え方の優先順位として第一になるべく廃棄物を発生しないという「発生回避」、第二に排出されたものに対しては可能な限り「リサイクル」、第三としてリサイクルできないものに対しては安全等の対策がなされた焼却、埋立処分といった適切な「処理」と示されている。 |
(2) |
第6次環境行動計画 |
ここでは、主要な優先事項として、気候変動、自然と生物多様性、環境と健康、天然資源と廃棄物という4つが挙げられている。これらの優先事項に対する対策として以下の5つを挙げている。
- 既存の環境に関する法律の確実な実施
- あらゆる分野での環境への配慮
- 解決策を見出すための企業および消費者の協力
- 環境について適切かつ入手しやすい情報の市民への提供
- 土地を利用する際の環境を意識した姿勢の育成
天然資源と廃棄物に関する主な目標としては、生産・消費パターンへのシフトによる大幅な廃棄物削減(リデュース)、リユースおよびリサイクルの促進による廃棄量の最小化とされており、いわゆる3R(Reduce, Reuse, Recycle)について示されている。
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2. |
廃棄物に関する主な法令 |
(1) |
廃棄物に関する指令(廃棄物枠組み指令) |
本指令では、廃棄物の再生や処分によって人間の健康や環境に対する悪い影響を与えないための対策が必要とされている。 本指令により、 ・廃棄物処理の計画、組織、許可、監視に責任を負う当局の設置 ・当局による廃棄物管理計画の立案 ・廃棄物の処理を行う施設や取り扱う事業体に関する当局の許可 について定められた。 EUでは、加盟国によって廃棄物リストが統一されていなかったが、共同体として統一した廃棄物関連用語を用いた欧州廃棄物一覧が作成された。この欧州廃棄物一覧は、2002年1月1日から各国の国内方で法制化するように義務付けられた。 |
(2) |
焼却に関する指令 |
特殊廃棄物の焼却に関する基準は加盟国間で概ね同様であったのに対し、家庭廃棄物の焼却基準が加盟国間で異なっていた。このような状況への対策として、EUでは焼却指令を作成し、2000年12月に施行された。加盟国は2002年12月28日までに本指令を国内で法制化するように義務付けられた。 本指令は焼却される全ての廃棄物に適用され、レベルの高い排出基準が設定された。
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○EUの包括的製品政策(IPP)について |
1. |
IPPとは |
IPP(Integrated Product Policy)は、ある製品についてライフサイクル全体における製品による環境負荷を最小化することを目指した政策である。 あらゆる製品が市場で流通するまでには、天然資源からの原料製造、設計、製造、組立、マーケティング、流通、販売、使用そして廃棄というライフサイクルを辿る。また製品ライフサイクルにおいては、メーカー、小売店、消費者など多くの人々が関係することとなる。こうした製品ごとのライフサイクルの各段階で、環境という観点からみた性能を向上させようとするのがIPPである。 |
2. |
IPPに関するグリーンペーパー |
IPPでは、多くの製品や人々に関わるものであるため、単一の政策や措置で対応できるものではなく、経済的措置、特定物質の使用禁止、自主的な取組や規制、環境ラベリング、製品設計に対するガイドラインなど、様々な政策手法を活用した取組を求めている。EUでは最適な政策手法の組み合わせを検討するベースとして、2001年2月にIPPに関するグリーンペーパーを公表している。 |
3. |
IPPグリーンペーパーの主要戦略 |
○ 価格メカニズムの活用 より環境にやさしい製品に関する市場開拓にとって価格メカニズムの活用は最も効果的な手法である。手法案としては、以下のような例が挙げられる。 ・環境ラベル製品に対するVAT(付加価値税)の軽減 ・生産者責任概念の新たな分野への拡張 ・環境保護のための国家助成に関する新ガイドライン(2000.12)に基づく支援策の活用 ○ より環境にやさしい製品に対する需要喚起 環境にやさしい製品需要を高める為には、簡単に入手できて、かつ分かりやすい情報が必要とされており、各種環境ラベルがこのような要望を満たすことができる。 公共調達は環境にやさしい製品の市場開拓に寄与し、そのポテンシャルが高いと考えられる。従って、EU内における公共調達法と環境配慮製品優遇の可能性について検討することが必要である。また、調達当局間における実績の交換も重要な手法といえる。 ○ グリーン生産の強化 一旦、製品が市場に出されると、その環境インパクトを削減すうことは難しい。従って、環境配慮設計に注目することが必要であり、その戦略としては、 ・製品のライフサイクル情報の作成と流通の改善 ・環境設計ガイドラインの推奨 ・標準化プロセスへの環境配慮の導入 ・包装指令、計画中の電気電子機器指令のような、いわゆる新たな手法の見直し などが挙げられる。 |
4. |
IPPに関するコニュニケーションの実現 |
委員会はEU加盟国、EU経済地域と利害関係者によるいわゆるIPP定例会議を開催している。これによりIPPについて委員会でのコミュニケーション実施をモニターし、促進することを目的としており、最初の会合は2004年2月24日に開催され、二回目は2004年9月20日に開催された。 |
5. |
パイロット製品運動 |
この運動では、2つのパイロットプロジェクト(携帯電話とチークのガーデンチェア)を通じて、IPPが実際にどう働くことができるかを示すことを目的としている。委員会は利害関係者による22の提案に基づいてこれら2つのプロジェクトを選択した。それぞれノキアとカルフールからの提案である。これらのプロジェクトは2004年6月中旬に開始した。 プロジェクトは、入手可能な情報に基づく製品の環境影響を見ることによって始まる。この運動はおよそ1年間続くこととなっている。 委員会は、利害関係者が以下の2つのうちいずれかの方法でプロジェクトに参加するよう呼びかけている。 ・問題の製品に関する情報を提出する ・解決策を特定して実施する一員になることに対する興味について述べる パイロットプロジェクトは第一段階にあり、この段階で製品ライフサイクル全体における環境影響をおよそ5ヶ月かけて分析する。既存情報をまとめたレポートは2つの製品に対して準備される。略言するレポートは両方の製品のために作成されるでしょう。 これらのレポートが一旦製作されると、パイロットプロジェクトに参加していない利害関係者も含めたすべての利害関係者には、結果に関するコメントを書面で提出する機会が与えられることになっている。そして、最終報告書が作成されて委員会のウェブサイト上掲載される前にパイロットプロジェクト参加者はこれらについて議論することとになる。 携帯電話のライフサイクル中における環境影響に関するレポートはノキアによって作成された。委員会は、2005年2月11日まで利害関係者に対してレポートに関するコメントを募っている。 |
○EU指令におけるリカバリー、リサイクルの定義 |
1. |
各指令別の定義 |
EU指令ではそれぞれリカバリー、リサイクルについての定義をしている。以下に指令別にこれらの定義を整理する。 |
(1) |
廃棄物枠組み指令 |
EUの3R政策が深く関わる廃棄物枠組み指令では、「リカバリー(Recovery)」の定義として付属書IIBに記載される作業を全て含めるとしている。廃棄物枠組み指令は、75年に採択された(75/442/EEC)のち3回(91/156/EEC, 91/692/EEC, 96/350/EC)修正されており、96/350/ECにおいて付属書IIBが以下のとおり差し替えられた。 <EUにおけるリカバリーの定義> R1 主に燃料として、またはエネルギーを発生させるその他の方法としての利用 R2 溶剤の再生利用(reclamation)/再生(regeneration) R3 溶剤として用いられない有機物のリサイクル(recycling)/再生利用 R4 金属及び金属化合物のリサイクル(recycling)/再生利用(reclamation)(コンポスト化及びその他の生物的な変換の過程を含む) R5 その他の無機物のリサイクル(recycling)/再生利用(reclamation) R6 酸または基剤の再生 R7 汚染削減のために用いられた成分物質(components)のリカバリー R8 触媒からの成分物質(components)のリカバリー R9 石油の再精製又はその他の再使用(re-use) R10 産業又は生態上の向上に寄与する土地への三部 R11 R1からR10のいずれかの作業から得られた廃棄物の利用 R12 R1からR11のいずれかの作業を行うための廃棄物の交換 R13 発生地における一時的な保管や仮の収集を除く、本付属書にあるいずれかの作業を行うための材料の保管 廃棄物枠組み指令では、エネルギー利用もリカバリーに含めるとされている。 |
(2) |
包装廃棄物指令 |
「リカバリー」は廃棄物枠組み指令の付属書IIBで示されている作業を全て含めるとしている。エネルギーリカバリーについては、エネルギーを発生する手段として熱の回収をしながら可燃性廃棄物を単独あるいは他の廃棄物と共に直接焼却することと定義している。 「リサイクル」については、本来の目的や別の目的(有機的リサイクルは含むが、エネルギーリカバリーは除く)に使用するために、廃棄された材料を生産過程において再加工することと定義している。「有機的リサイクル」としては、管理された条件下で微生物を用いて、安定した有機的な残余物又はメタンを生成する、包装廃棄物の生分解可能な部分の好気性(コンポスト化)又は嫌気性(メタン発酵)の処理をいう。 |
(3) |
使用済み自動車指令 |
ここでの「リサイクル」の定義は包装廃棄物指令同様、本来の目的や別の目的(エネルギーリカバリー目的を除く)に使用するために、廃棄された材料を生産過程において再加工することを意味する。 「リカバリー」は廃棄物枠組み指令の付属書IIBで示されている全ての作業を意味する。 |
(4) |
廃電気・電子機器指令 |
「リカバリー」は上記他の指令同様、廃棄物枠組み指令 付属書IIBに示されているあらゆる作業を含むとされている。 「リサイクル」については、本来の目的や別の目的に使用するために、廃棄された材料を生産過程において再加工することを意味する。ただし、他の廃棄物と一緒か否かを問わず、熱の再生を伴う直接焼却によりエネルギーを発生させる手段として、可燃廃棄物を使用することを意味するエネルギー再生は含まないとされている。 |
2. |
今後の動向 |
これまでも「リカバリー」の定義については議論がなされてきており、2003年6月には欧州委員会が都市ごみ焼却炉におけるエネルギー回収はEU指令で示されるリカバリー目標達成にカウントしないとする声明を出している。また2005年2月にはこの点を含めて廃棄物枠組み指令の改定が検討されている。 |
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