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「ウイルス感染症対策」において日本はmRNAワクチン等の最新技術で出遅れ
-令和3年度特許出願技術動向調査の結果について-
2022年4月27日
同時発表:特許庁
特許庁は、令和4年4月27日に、将来の市場創出・拡大が見込める最先端分野である「ウイルス感染症対策」の技術テーマについて、特許情報等を調査・分析した特許技術動向調査の報告書を取りまとめました。
調査の結果、予防・治療技術のモダリティ、検出・診断技術の検出対象に関して、日本と他国との間で全体的な傾向に大きな違いはありませんでしたが、mRNAワクチンや次世代シーケンシングによる検出・診断といったCOVID-19流行開始後に実用化が進んだ最新技術に関しては、日本で出遅れていることが分かりました。
新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)への対策が世界的に喫緊の課題である中、COVID-19をはじめとしたウイルス感染症への対策のための技術開発が必要とされています。本調査では、ウイルス感染症対策のうち、(1)予防・治療技術(抗ウイルス剤、ワクチン、付随する症状を緩和・抑制する医薬)、(2)検出・診断技術(核酸分析技術、抗原分析技術、抗体分析技術等)を調査対象としました。 調査の結果、予防・治療技術のモダリティ、検出・診断技術の検出対象に関して、日本と他国との間で全体的な傾向に大きな違いはありませんでしたが、mRNAワクチンや次世代シーケンシングによる検出・診断といったCOVID-19流行開始後に実用化が進んだ最新技術に関しては、日本で出遅れていることが分かりました。
本調査における特許動向の解析から、日米欧中韓への出願(ファミリー件数)は、出願人国籍・地域別の割合では中国籍、米国籍、欧州籍、韓国籍、日本国籍の順に多いことが分かりました。欧州を国別に分けて見ると、日本はファミリー件数では4位、PCT出願では3位であり、ある程度の技術開発力を有しているといえます。
技術分野別では、予防・治療技術のモダリティ、検出・診断技術の検出対象に関して、日米欧中韓で全体的な傾向に大きな違いはありませんでしたが、mRNAワクチンや次世代シーケンシングによる検出・診断といったCOVID-19流行開始後に実用化が進んだ最新技術に関しては、日本国籍からの特許出願はほとんど見られませんでした。一方で、これらの最新技術については種々の改良すべき点が存在しており、様々なアプローチからの対処が考えられます。日本がこれまで培ってきた強みとなる技術を活用して、各種技術の完成度を向上していくことが望まれます。
(1)対象技術・背景
- 新型コロナウイルスによる感染症への対策が世界的に喫緊の課題である中、新型コロナウイルスをはじめとしたウイルス感染症への対策のための技術開発が必要とされている。
- 本調査では、ウイルス感染症対策のうち、下記の技術を調査対象とした。
- 予防・治療技術(抗ウイルス剤、ワクチン、付随する症状を緩和・抑制する医薬)
- 検出・診断技術(核酸分析技術、抗原分析技術、抗体分析技術等)
(2)調査結果:全体動向
- ファミリー件数(出願年:2013年6月~2019年12月)が最も多いのは中国籍の15,990件で、全体の65.4%を占めている。次いで、米国籍が3,810件(15.6%)、欧州籍が1,993件(8.1%)、韓国籍が1,127件(4.6%)、日本国籍が790件(3.2%)。
- 日米欧州籍出願人の自国・地域への出願が総件数の約35%~50%であるのに対して、中国籍出願人は自国への出願が約93%、韓国籍出願人は約68%であり、自国への出願が多い。
(3)調査結果:予防・治療技術に関する動向
- 出願人国籍・地域別に技術区分ごとのファミリー件数を見ると、抗ウイルス剤、ワクチンともに日米欧中韓で全体的な傾向に大きな違いは見られず、特に日本が遅れている技術はない。
- 「抗ウイルス剤」について、いずれの出願人国籍・地域でも出願の中心は「低分子」である。
- 「ワクチン」について、中国・韓国籍の出願では「弱毒化・不活化ワクチン」の比率が他国・地域より高い。
(4)調査結果:検出・診断技術に関する動向、出願人国籍・地域別出願件数
- mRNAワクチン、次世代シーケンシングといったCOVID-19流行開始後に実用化が進んだ最新技術に関し、日本国籍からの特許や論文はほとんど見られなかった。
- 日本国籍出願人はファミリー件数では韓国籍に次いで4位、PCT出願件数では中国籍に次いで3位であり、一定の技術開発力は有している。
日本が培ってきた技術力を各種技術の完成度の向上に生かすことが望まれる。
(参考)特許出願技術動向調査とは
「特許出願技術動向調査」は、世界中の特許情報を、論文情報等と併せて分析して各国や各企業の研究開発動向を把握し、企業・大学・研究機関等が開発戦略・知財戦略を策定するために実施しています。調査においては、有識者からなる委員会の助言等を踏まえ、日本の技術的な強み等を分析し、日本の企業・大学・研究機関等が目指すべき研究開発の方向性を示しています。調査は、新市場の創出が期待される分野、国の政策として推進すべき技術分野を中心に、今後の進展が予想される技術テーマを選定し、行います。
令和3年度は、「ウイルス感染症対策」、「教育分野における情報通信技術の活用」、「手術支援ロボット」、「GaNパワーデバイス」、の4の技術テーマを対象とした特許出願技術動向調査を実施しました。
(参考図)調査のイメージ
公表日
2022年4月27日(水曜日)関連資料
担当
特許庁総務部企画調査課長 仁科
担当者:宮崎、四垂、青柳
電話:03-3581-1101(内線 2155)
03-3592-2910(直通)
03-3580-5741(FAX)