第Ⅲ部 第1章 ルールベースの国際通商システム

第1節 G7/G20

1.G7首脳テレビ会議(2020年3、4月、2021年2月)

2020年3月16日、G7首脳間で初めてのテレビ会議が行われた。会合後には、首脳声明が発出され、G7として、①人々を守るための必要な衛生上の手段の調整、②市場の信認及び成長の回復、雇用の保護、③国際貿易及び投資の支援、④科学、研究及び技術協力の促進に取り組むことで一致した。

【参考】G7首脳テレビ会議出席者

日:安倍総理大臣(当時)、米:トランプ大統領(当時)、独:メルケル首相、加:トルドー首相、伊:コンテ首相(当時)、英:ジョンソン首相、仏:マクロン大統領、EU:ミシェル欧州理事会議長、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長

また、2020年4月16日にもG7首脳テレビ会議が行われ、参加したG7首脳は、新型コロナウイルス感染症に関し、各国内の経済状況や感染拡大防止策について意見交換を行った。各国首脳からは、同年3月のテレビ会議以降の各国の取組の進捗が紹介されたほか、官民を挙げた国際的な連携を通じたワクチン開発の重要性、アフリカや東南アジア、島嶼国への支援の重要性などの意見が一致した。また、事態の収束後、各国の経済活動を安全な形で再開するための準備が重要との点についても一致し、新型コロナウイルス感染症への対応に国際社会が一丸となった取組が求められる中でのG7としての一致した姿勢を示した。

【参考】G7首脳テレビ会議出席者

日:安倍総理大臣(当時)、米:トランプ大統領(当時)、独:メルケル首相、加:トルドー首相、伊:コンテ首相(当時)、英:ラーブ外相(代理出席)、仏:マクロン大統領、EU:ミシェル欧州理事会議長、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長

そして、2021年に入ってからは2月19日にG7首脳テレビ会議が行われた。この会議では、新型コロナに対するワクチンの公平な普及、将来の感染症への備えに向けた国際協力等について活発な意見交換が行われ、G7首脳間で、ポストコロナの国際秩序づくりにおけるG7の連携が確認された。

【参考】G7首脳テレビ会議出席者

日:菅総理大臣、米:バイデン大統領、独:メルケル首相、加:トルドー首相、伊:ドラギ首相、英:ジョンソン首相、仏:マクロン大統領、EU:ミシェル欧州理事会議長、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長

2.G20首脳テレビ会議(2020年3月)

2020年3月26日、G20首脳間では初めてのテレビ会議が行われた。参加したG20首脳は、新型コロナウイルス感染症に関し、各国内の経済状況や感染拡大防止策について議論を行った。また、会合後には、首脳声明が発出され、貿易に関しては、「国際的な交通及び貿易に対する不必要な介入を避ける形で国際貿易を円滑化し、対応を調整するために引き続き協働すること」へのコミット等が確認された。

【参考】G20メンバー・招待国・地域・国際機関

(G20メンバー)

サウジアラビア(議長国)、日本、アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、メキシコ、韓国、ロシア、南アフリカ共和国、トルコ、英国、米国、EU

(招待国)

スペイン、ヨルダン、シンガポール、スイス、ベトナム(ASEAN議長国)、アラブ首長国連邦(湾岸協力理事会(GCC)議長国)、ルワンダ(アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)議長国)

(国際機関)

国連、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)、国連食糧農業機関(FAO)、金融安定化理事会(FSB)、国際労働機関(ILO)、経済協力開発機構(OECD)

3.G20リヤド・サミット(テレビ会議)(2020年11月)

2020年11月21日及び22日、G20リヤド・サミットがテレビ会議形式で開催され、新型コロナウイルス感染症への対応、世界経済の回復、包摂的な復興等の国際社会の主要課題について議論が行われた。菅総理大臣からは、ポスト・コロナの国際秩序に関する日本の考えを主張し、議論を主導した。また、内向き志向が強まりかねない中、WTO改革などを通じ多角的貿易体制を維持・強化する必要性等を指摘した。

議論の総括として、G20リヤド首脳宣言が発出され、貿易に関しては、「自由で、公正で、包摂的で、無差別で、透明性があり、予見可能な安定した貿易・投資環境という目標を実現し、開かれた市場を維持するために努力する」ことや、「公平な競争条件を確保するよう引き続き取り組む」ことが盛り込まれるとともに、「過剰生産能力等の構造的問題が負の影響を起こし得ることに留意する」とされた。

【参考】G20メンバー・招待国・地域・国際機関

〈G20メンバー〉

サウジアラビア(議長国)、日本、アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、メキシコ、韓国、ロシア、南アフリカ共和国、トルコ、英国、米国、EU

〈招待国〉

スペイン、ヨルダン、シンガポール、スイス、ベトナム(ASEAN議長国)、アラブ首長国連邦(湾岸協力理事会(GCC)議長国)、ルワンダ(アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)議長国)

〈国際機関〉

国連、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)、国連食糧農業機関(FAO)、金融安定化理事会(FSB)、国際労働機関(ILO)、経済協力開発機構(OECD)、AMF(アラブ通貨基金)、IsDB(イスラム開発銀行)

4.G7貿易大臣会合(テレビ会議)(2021年3月)

2021年3月31日、G7貿易大臣会合がテレビ会議形式で開催され、梶山経済産業大臣、茂木外務大臣が参加した。なお、G7で貿易大臣による議論の枠組みが設けられたのは今回が初となる。

本会合では、WTO改革、貿易を通じた気候変動対策・環境問題への貢献、医療関連物資のサプライチェーン強靭化、デジタル貿易の促進などについての議論がなされ、議長声明が発出された。

議長声明においては、主として、以下の旨が盛り込まれ、同年5月に開催される次回の貿易大臣会合において議論を深めていくこととなった。

5.G20貿易・投資大臣会合(テレビ会議)(2020年3、5、9月)

2020年には合計3回のG20貿易・投資大臣会合が、いずれもテレビ会議形式にて開催された。

(第1回目)

2020年3月30日に開催され、梶山経済産業大臣、若宮外務副大臣が参加した。

本会合では、新型コロナウイルス感染症の拡大に際し、貿易に対する不必要な介入を避け、国際貿易を円滑化するべく対応についての議論を行い、新型コロナウイルス感染症の拡大によってサプライチェーンの途絶や消費活動の減退が深刻であること、人の移動が制限される中で、モノ・サービスの自由な流通を確保し、経済活動を維持していくため、G20として貿易面でも連携を強化していくことを確認した。

また、共同声明では、主に以下の内容について合意した。

(第2回目)

2020年5月14日に開催され、梶山経済産業大臣、若宮外務副大臣が参加した。

本会合では、前回会合(同年3月)を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済への影響を抑えるため、貿易投資政策の観点から、G20が連携して短期的・長期的に取り組む具体的なアクションについての議論を行い、新型コロナウイルス感染症の拡大によって世界経済が大きな影響を受けている状況を踏まえ、自由貿易の促進やデジタル技術の活用等による経済活動の維持を図るため、G20としての具体的な方策を議論し、連携して行動することの重要性を確認した。

共同声明では、主に以下の内容に合意した。

(第3回目)

2020年9月22日に開催され、梶山経済産業大臣、四方外務省経済局長が参加した。

本会合では、多国間貿易体制の維持・強化やデジタル経済に関するルール整備の加速、公平な競争条件の確保など、これまでG20で積み上げてきた論点を更に議論するとともに、議長国のサウジアラビアが特に関心を持つ個別分野(中小企業の競争力強化、経済多様化の促進、国際投資の強化)の議論も行われ、閣僚コミュニケが採択された。

採択された閣僚コミュニケでは、主として、以下の旨が盛り込まれた。また、WTO改革に向けて、貿易投資作業部会の議長の責任の下で「WTOの未来に関するリヤド・イニシアティブの下で実施した意見交換に係わる議長総括」(附属書 1)も取りまとめられた。

6.鉄鋼グローバル・フォーラム閣僚会合(2020年10月26日)

2020年10月26日、EU及び韓国を共同議長として、鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラム(GFSEC)閣僚会合が開催された。

閣僚報告書では、2016年から2019年にかけて生産能力と需要のギャップは縮小したが、高い水準の構造的な過剰生産能力が存在し、2019年以降再び拡大していることや、新型コロナウイルス感染症による世界経済危機により、2009年の経済危機以降で最も急激に鉄鋼需要が減少したこと、近年の中国企業を中心とした東南アジアにおける生産能力の拡大に対する懸念などが盛り込まれた。

また、過剰生産能力の脅威や新型コロナウイルス感染症による景気後退、非参加国の生産能力拡大に対する懸念など、鉄鋼産業が直面する課題への対応を促進するため、G20首脳に対し、共同声明が発出された。

本取組は、2019年10月に梶山経済産業大臣を議長、牧原経済産業副大臣を議長代理として開催されたGFSEC閣僚会合において、完全なコンセンサスには至らなかったものの、大多数のメンバーがこれまでの進め方を基礎に鉄鋼の過剰生産能力問題に関する取組を継続することに合意したため、31か国・地域により2020年以降も継続されている。

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