第3節 中国
1.今後の方針
中国はGDP世界第2位の経済大国であり、日本と緊密な経済関係を有する重要な隣国である。コロナ禍で世界経済が低迷する中、中国経済は、2020年のGDP成長率がプラス2.3%と世界の中でもいち早く持ち直すとともに、2021年3月の中国全国人民代表大会では、今後の経済の見通しとして、2021年の実質GDP成長率目標をプラス6%以上と発表している。
日中関係について、日本政府は、2021年1月の菅総理による施政方針演説において、「安定した日中関係は、両国のみならず、地域、国際社会のためにも重要であり、ハイレベルの機会も活用しつつ、主張すべきは主張し、具体的な行動を求めた上で共通の諸課題の解決に向けて連携していく」という方針を示している。
経済産業省は、中国に対して、知的財産権保護の強化、市場歪曲的な産業補助金等の是正、強制技術移転の禁止、中国輸出管理法やデータ関連法制等の運用の明瞭化といった公平・公正なビジネス環境の整備、さらには中国市場の更なる対外開放を、様々なレベルで要請している。また、日本と中国の共通の社会課題であるエネルギー・環境や高齢者介護・ヘルスケア等を始めとして、様々な分野での協力を進めており、こうした要請と協力とを両輪として政策を展開している。
2.主な進捗
省エネルギー・環境分野では、2020年12月20日に、経済産業省及び一般財団法人日中経済協会と、中国国家発展改革委員会及び商務部の共催で、日中のエネルギー・環境分野の官民合同フォーラムである「第14回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」を実施した。2020年度は、東京会場と北京会場をつないだオンライン形式で、日本側から、梶山経済産業大臣、宗岡日中経済協会会長ほか、中国側から、何立峰国家発展改革委員会主任、李成鋼商務部部長助理ほか、双方合わせて450名を超える官民関係者が参加した。全体会合では、梶山経済産業大臣から、今回のフォーラムの重点として、「脱炭素社会に向けたエネルギー協力」を挙げ、2020年9月の国連総会において2060年カーボンニュートラルを掲げた中国と2050年カーボンニュートラルの実現を目指す日本が、水素・カーボンリサイクル等の分野で連携する意義について発言を行ったほか、両国が互いの特徴を活かして協力を深化させ、世界における経済と環境の好循環の実現に貢献していくことを表明した。フォーラムでは、エネルギー・環境分野での日中の企業間のMoUが新たに14件創出され、2006年の第1回フォーラムからの累計での協力案件は402件に達した。全体会合に続いて、「エネルギー効率の向上(省エネ)」、「自動車の電動化・スマート化」、「水素・クリーン電力分科会」、「日中長期貿易(水環境対応と汚泥処理)」の四つの分科会を開催し、日中双方の政府部門や主要企業等が意見交換を行った。また、フォーラムの同日、梶山経済産業大臣と何立峰国家発展改革委員会主任との間でバイ会談を行い、両国のカーボンニュートラルの実現に向けた政策対話と経済政策全般に関して意見交換を行った(第Ⅲ-2-3-1図)。
第Ⅲ-2-3-1図 第14回日中省エネルギー・環境総合フォーラム、梶山経済産業大臣と何立峰国家発展改革委員会主任との会談(2020年12月)
ヘルスケア分野では、2020年12月18日及び23日に、日本への医療インバウンド推進を目的とした日中でのオンラインイベントを経済産業省主催で実施し、日本の医療の強みでもあり、中国からの医療渡航受診者からのニーズの高い分野でもあるがん治療や人間ドック等の紹介、両国の医療受診環境の情報交換等を実施した。また、JETROと協力し、中国の南京市、上海市、広州市、北京市、重慶市、成都市で「地方都市高齢者産業交流会」を実施し、日本の介護サービス・福祉用具の事業者と中国現地企業とのビジネスマッチングを行った。
コンテンツ分野では、2020年11月5日に、「第13回日中韓文化コンテンツ産業フォーラム」をオンライン形式で開催した。今回の会合では、新型コロナウイルス感染症が各国のコンテンツ産業に与えた影響、新型コロナウイルス拡大後のコンテンツ振興及び活用事例、国際見本市等を通じた交流及び企業間連携等の施策について議論した。また、日中韓の関係機関及び産業界が連携して議論を継続し、コンテンツ産業の共同発展に向けた協力を推進していくことに合意した。
知財分野では、2020年12月1日に、特許庁と中国国家知識産権局、韓国特許庁が「第20回日中韓特許庁長官会合」及び「第27回日中特許庁長官会合」をそれぞれオンライン形式で開催した。日中韓特許庁長官会合では、商標出願者の審査結果の予見可能性を高めるため、日中韓で初めて作成した「類似群コード対応表」の公表を確認し、日中特許庁長官会合では、中国のハーグ協定加入を促すとともに、2020年10月に改正された専利法の施行に関して日本企業を交えた意見交換会を開催すること等について議論を行った。
産業保安分野では、2021年3月24日に、経済産業省と中国工業信息化部の主催で、両国のプラント等の保安レベルの向上を目的として「日本-中国スマート産業保安セミナー」をオンライン形式で開催した。セミナーでは、産業保安に従事する管理者や担当者を対象として、日中の政府・団体・企業から、両国における産業保安のスマート化に関する現状・課題及び今後の展望を共有した。