第5節 インド
インドは、人口約13.8億人で中国に次ぐ世界第2位であり、国連の推計では今後10年以内に人口15億人に達し、世界第1位となる見通しである。2014年に発足したモディ政権では、「Make in India」、「Skill India」、「Start-up India」等の様々なイニシアティブを打ち出し、経済改革、製造業振興による雇用の創出、投資促進のためのビジネス環境整備、インフラ整備などを進めている。
2005年から首脳間の相互往来が行われる等、日印関係は良好な関係を構築しており、首脳会談等を通じて日印関係の深化に努めてきた。経済分野では、デジタル、スタートアップ、人材育成、投資促進、ビジネス環境整備、エネルギー、知的財産等、様々な分野で協力を進めてきた。
2019年12月に梶山経済産業大臣が訪印した際にゴヤル大臣と立ち上げた日印産業競争力パートナーシップでは、インドの産業競争力強化に向け、分野別課題や個社の課題、ビジネス環境整備等について議論を行っており、第1回を2020年2月、第2回を2020年5月に開催している。また、第2回会合時にはインドの物流の効率化や繊維分野の競争力強化をすべく、物流作業部会や繊維作業部会を立ち上げた。2021年3月には日印産業競争力パートナーシップの一環として、産官学を招いたシンポジウム「India’s potential in the global economy」を開催し、日本・インドの有識者からインドの競争力強化に向けた取組・課題を議論した。
鉄鋼分野では、2019年12月に梶山経済産業大臣とプラダン石油・天然ガス兼鉄鋼大臣の間で、建築物における鋼材利用の促進や製鉄所の省エネルギー技術の普及等の協力を目的とした日印鉄鋼対話の創設に合意した。2020年12月には、本対話の実施及び協力事項にかかる覚書(MoC)について、双方次官(日本側:田中経済産業審議官、インド側:Pradip Kumar Tripathi鉄鋼省次官)により署名した。
繊維分野では2021年1月、日本側は長坂康正経済産業副大臣、インド側はスムリティ・ズビン・イラニ繊維大臣同席のもと、一般財団法人ニッセンケン品質評価センターとインド繊維委員会との間で合意に至り、繊維製品の品質向上や貿易促進等の相互協力に関する覚書の調印式を行った。
物流分野では2020年12月、日本ロジスティクスシステム協会等の支援を受けたインド工業連盟ロジスティクス部門は、物流現場のリーダーを育成する資格認定講座「Certified Warehouse Kaizen Practitioner」を開講し、2021年3月に受講者の修了式を行った。
デジタル分野では、2020年9月に第7回IT・エレクトロニクスに関する日印合同ワーキンググループを開催し、2018年に立ち上げた日印デジタルパートナーシップに係る日印のデジタル協力について官民合同で議論する場を設けた。アジアDX等新規事業創造推進支援事業においては、デジタル技術の活用によって新興国進出や新事業創出に資することを目的として、新たなプロダクトやサービスの開発および実証・評価を行う日印両国の連携案件を10件採択した。また、2021年1月に日本インドデジタル大動脈パートナーシップシンポジウムを開催し、日印デジタル連携においてはインドIT人材の獲得が重要であることを議論した。
人材育成の分野では、2016年11月の日印首脳会談で決定した10年間で3万人のもの作り人材の育成を目指し、製造業の人材育成に係る「日本式ものづくり学校(JIM)」および寄附講座(JEC)の新規開設に取り組んでおり、2020年度には、新規JIMが1件開講し、合計でJIMは14校、JECは5講座となった。
二国間協力に加えて、2020年9月には日豪印経済大臣会合を開催し、新型コロナ危機及び、最近の世界規模での経済的な変化を踏まえ、インド太平洋地域におけるサプライチェーン強靱化の必要性について、認識を共有した。また、サプライチェーン強靱化の実現に向けた新たなイニシアティブの立ち上げに向けて取り組むことで一致した。さらに、2021年3月には日本のイニシアティブで、サプライチェーン強靭化に向けて、日・豪・印・ASEANの政府関係者、学識者、産業団体、企業等がサプライチェーン強靱化に関する現状分析、課題、そして解決策について議論する「サプライチェーン強靭化フォーラム」を開催した。