第3節 中国
1.今後の方針
中国はGDP世界第2位の経済大国であり、日本と緊密な経済関係を有する重要な隣国でもある。日中国交正常化50周年を迎えた昨年は11月に対面で約3年ぶりとなる日中首脳会談が行われた。会談では、環境・省エネや医療・介護・ヘルスケア等の分野での日中間の交流を適切な形で後押しすることで一致すると同時に、透明・予見可能かつ公平なビジネス環境確保の重要性も議論された。
こうした中、経済産業省としては、中国に対して、ビジネス環境整備の要請とビジネス協力の具体化の両輪で政策を展開している。具体的には、輸出管理法・データ関連規制といった国内法制度の予見可能性向上や外商投資規制の緩和等を通じた公正・公平な競争環境の実現を求めるとともに、省エネ環境分野や介護サービス分野等の日中が共通の課題を抱える分野での協力強化に向けた取組も行っている。
2.主な進捗
ビジネス環境に関しては、2022年9月5日に中国商務部との次官級定期協議を開催し、日中経済関係をさらに深化させる観点から、強制技術移転や市場歪曲的な産業補助金等の是正を始めとする、中国市場の開放や公平、公正なビジネス環境の構築のための実効性のある形での制度の運用を中国側に要請した。
エネルギー分野では、2022年12月6日に、経済産業省と中国国家発展改革委員会で「第2回脱炭素化実現に向けた日中政策対話」を開催した。日本側からは「クリーンエネルギー戦略」について、中国側からは「第14次5カ年計画の現代エネルギー体系計画」等を紹介し、相互に関心のある分野の取組について意見交換を行うとともに、本政策対話を来年も開催することで一致した。
2023年2月11日には、経済産業省、一般財団法人日中経済協会、中国国家発展改革委員会及び商務部、中国駐日本国大使館の共催で、日中のエネルギー・環境分野の協力プラットフォームである「第16回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」を開催した。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2021年度と同様に東京と北京をつないだオンラインでの開催となり、日本側からは、西村経済産業大臣、宗岡日中経済協会会長ほか、中国側からは、何立峰国家発展改革委員会主任(当時)、李飛商務部部長助理(当時)ほか、約870名の官民関係者が参加した。
全体会合では、西村経済産業大臣から、今回のフォーラムの重点として、「脱炭素とエネルギー安定供給確保の両立に向けた日中協力」を挙げ、日本のカーボンニュートラルの実現に向けた取組について紹介を行った。また、現実的なエネルギー・トランジションの推進に向けた日中連携への期待を表明すると同時に、日中経済交流のためにも、透明・公平な事業環境の整備に努める必要性に言及した。
さらに、フォーラムでは、エネルギー・環境分野での日中企業間の協力案件が新たに17件創出され、2006年の第1回フォーラムからの累計案件数は430件となった。
全体会合に続いて、「エネルギー効率の向上(省エネ)」、「自動車の電動化・スマート化」、「水素」、「水環境対応と汚泥処理」の四つの分科会を開催し、日中双方の政府部門・主要企業等が意見交換を行った。
コンテンツ分野では、2022年10月27日に、「第15回日中韓文化コンテンツ産業フォーラム」を韓国で開催した。本フォーラムでは日中韓の文化コンテンツ産業の交流と協力、特に、没入型コンテンツ市場の現状と相互の交流や協力方策に関して議論を行った。また、日中韓三国は、各国の文化コンテンツオンラインプラットフォームに基づき、市場動向に関する情報等を共有し、企業によるビジネスチャンスの創出を支援する役割を担うことに合意するとともに、没入型コンテンツ制作の源となる、異なる文化コンテンツ分野のIP活用や協業を含め、企業間のビジネスマッチング、プロジェクトピッチングなど、人的交流の機会提供を拡大することで合意した。
ヘルスケア分野では、JETROと協力し、中国の上海市、天津市、江蘇省、広東省、四川省で「地方都市高齢者産業交流会」を実施し、日本の介護サービス・福祉用具の事業者と中国現地企業とのビジネスマッチングを行った。
知財分野では、2022年11月28日に特許庁と中国国家知識産権局(CNIPA)が「第29回日中特許庁長官会合」、同年11月29日に、韓国特許庁(KIPO)を加えた「第22回日中韓特許庁長官会合」をそれぞれオンライン形式で開催した。日中特許庁長官会合では、AI事例比較研究について引き続き協力を進めることで合意するとともに、特許・意匠・商標等の多岐に渡る分野での日中間の協力について議論を行った。また、日中韓特許庁長官会合では、無効審判審決に係る比較研究の取りまとめを確認する等、三庁間での協力について議論した。さらには、「カーボンニュートラル達成へ向けた知財制度の貢献」をテーマとした日中韓特許庁シンポジウムをオンライン形式で開催し、日中韓の各庁担当者が講演を行った。