第7節 ロシア
1.日露関係
2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの侵略が開始された。9月21日、プーチン大統領は部分的動員令を公表し、当局の発表によれば30万人規模の動員を行った。また、9月下旬、ウクライナ国内のドネツク、ルハンスク、ザポリッジャ及びへルソンにおいてロシアへの「編入」に関する「住民投票」と称する行為が実施され、その結果を口実として、ロシアはこれらの地域を違法に「併合」した。
こうした状況下にあるロシアによるウクライナへの侵略に対し、日本政府は、G7をはじめとする国際社会と連携し、個人・団体等に対する制裁、銀行の資産凍結等の金融分野での制裁、輸出入禁止措置等の対露制裁を実施。
また、ロシアによるウクライナへの侵略により、経済分野を含め二国間関係を従来どおりとすることは困難な状況となった。このため、2016年に提案された8項目の「協力プラン」281を含む、ロシアとの経済協力に関する政府事業は、当面見合わせることを基本としている。こうした状況下で、これまでにロシアに進出してきた日本企業は、ビジネス環境の悪化やロシア政府による対抗措置等によって、多大な影響が生じている。経済産業省は、日本貿易振興機構(JETRO)や日本貿易保険(NEXI)に相談窓口を設置し、影響を受ける日本企業の事業活動の支援を行っている。また、ロシアからの撤退を含めた経営判断を迫られる日本企業に対して、その経営判断に資するよう現地制度に関する情報提供等を実施している(第I-1-2-25図)。
第Ⅲ-2-7-1図 ロシアにおける我が国企業の事業動向(再掲)
281 1)健康寿命の伸長、(2)快適・清潔ですみやすく、活動しやすい都市作り、(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大、(4)エネルギー、(5)ロシアの産業多様化・生産性向上、(6)極東の産業振興・輸出基地化、(7)先端技術、(8)人的交流の抜本的拡大
2.ロシア・ベラルーシ等輸出入等禁止措置・資産凍結等措置
ロシアによるウクライナへの侵略に対し、我が国はG7をはじめとする国際社会と連携しつつ、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、3月までに資産凍結や半導体など汎用品のロシア向け輸出に関する制裁、ロシアの軍事関連団体に対する輸出に関する措置を実施した(以下、措置の施行日・適用日を基準に記載)。
4月2日、資産凍結等の対象として3月3日付で追加された特定銀行への資産凍結等の措置を実施。
4月5日、ロシア連邦への奢侈品の輸出禁止措置を実施。
4月10日、資産凍結等対象として3月11日付で追加された特定銀行への資産凍結等の措置を実施。
4月12日、資産凍結等対象者を指定。
4月19日、一部物品の輸入禁止措置を実施。
5月10日、資産凍結等対象者、輸出等禁止措置対象のロシア連邦の特定団体を指定。
5月12日、資産凍結等対象として4月12日付で追加された特定銀行への資産凍結等の措置及び、同日公示されたロシア連邦向けの新規対外直接投資禁止措置を実施。
5月20日、ロシア連邦への先端的な物品等の輸出等の禁止措置を実施。
6月17日、ロシア連邦への産業基盤強化に資する物品の輸出禁止措置を実施。
7月5日、資産凍結等対象者、輸出等禁止措置対象のロシア連邦及びベラルーシ共和国の特定団体を指定。
7月7日、資産凍結等対象として6月7日付で追加された特定銀行への資産凍結等の措置を実施。
8月1日、7月25日付で公示したロシア連邦からの貴金属(金)の輸入禁止措置を適用。
9月5日、7月5日付で公示した信託サービス、会計・監査サービス、経営コンサルティング・サービスの提供の禁止措置を適用。
9月26日、輸出等禁止措置対象のロシア連邦の特定団体を指定。
10月7日、資産凍結対象者を指定、ロシア連邦への化学・生物兵器関連物品等の輸出禁止措置を実施。
12月5日、上限価格を超える価格で取引されるロシア連邦を原産地とする原油の輸入禁止措置、上限価格を超える価格で取引されるロシア連邦を原産地とする原油の海上輸送等に関連するサービスの提供の禁止措置を実施。
2023年1月27日、資産凍結等対象者、輸出等禁止措置対象のロシア連邦の特定団体を指定。
2月3日、ロシア連邦への軍事能力等強化関連汎用品等の輸出等の禁止措置を実施。
2月6日、上限価格を超える価格で取引されるロシア連邦を原産地とする石油製品の輸入禁止措置、上限価格を超える価格で取引されるロシア連邦を原産地とする石油製品の海上輸送等に関連するサービスの提供の禁止措置を実施。
2月28日、資産凍結等対象者、輸出等禁止措置対象のロシア連邦の特定団体を指定。
3月30日、資産凍結等対象として2月28日付で追加された特定銀行への資産凍結等の措置を実施。
ウクライナ侵略以降、こうした類似の措置を2023年3月現在に至るまでに経済産業省で実施している、ロシア・ベラルーシ等輸出入等禁止措置は、以下のとおりとなっている。
(1)国際輸出管理レジームの対象品目282のロシア及びベラルーシ向け輸出の禁止等に関する措置
(2)ロシア及びベラルーシの軍事能力等の強化に資すると考えられる汎用品283の両国向け輸出等の禁止措置
(3)ロシア向け化学・生物兵器関連物品284等の輸出の禁止措置
(4)ロシア及びベラルーシの特定団体(軍事関連団体)285への輸出等の禁止措置
(5)ロシア向け先端的な物品286等の輸出等の禁止措置
(6)ロシア向け産業基盤強化に資する物品287の輸出の禁止措置
(7)ロシア向け石油精製用の装置等の輸出等の禁止措置
(8)ロシア向け奢侈品(しゃし品)288輸出の禁止措置
(9)ロシアからの一部物品289の輸入等の禁止措置
(10)「ドネツク人民共和国」(自称) 及び「ルハンスク人民共和国」(自称)との間の輸出入の禁止措置
経済産業省としては、引き続き、事態の動向を注視し、G7を始めとする国際社会と連携し対応する。
282 対象品目:工作機械、炭素繊維、高性能の半導体等及び関連技術。
283 対象品目:半導体、コンピュータ、通信機器等の一般的な汎用品及び関連技術、催涙ガス、ロボット、レーザー溶接機等。
284 対象品目:化学物質、化学・生物兵器製造用の装置。
285 対象団体:ロシア国防省、ロシアの航空機メーカー等ロシア357団体、ベラルーシ27団体。
286 対象品目:量子コンピュータ、3Dプリンター等及び関連技術
287 対象品目:貨物自動車、ブルドーザ等。
288 対象品目:高級自動車、宝飾品等。
289 対象品目:アルコール飲料、一部木材、機械類・電気機械、上限価格を超える原油及び石油製品の輸入(及び海上輸送に関連するサービスの提供)。