第9節 アフリカ
アフリカは、若年層を中心に13億人を超える人口を抱え、コロナ禍でも人口増加トレンドは変わっておらず、電力・運輸・港湾等のインフラ需要は引き続き大きい。他方で、資源・インフラを中心としていたアフリカビジネスは、各国の産業開発や、医療・食糧ニーズの増加、急速な情報技術の発達を背景とした一足飛びの電子金融導入、電子商取引の普及などを通じて、様々な分野での社会課題解決に向けた事業の展開など、多様化しつつある。また、2021年1月にはアフリカ大陸自由貿易圏の運用が開始され、アフリカ域内貿易の促進が具体的に進むことが期待される。
我が国は、質の高いインフラ整備の推進、投資協定や租税条約の締結促進などとともに、アフリカ開発会議(TICAD)や日アフリカ官民経済フォーラムなどの官民が一体となった対話の場を活用し、アフリカに加え第三国や国際機関との協力を強化することを通じて、日本企業のアフリカ進出を支援していくとともに、進出した企業のアフリカにおける円滑な業務遂行をサポートする。
1.進捗状況
3年に1度のTICAD開催年にあたる2022年は、例年以上にアフリカに関する活動が活発に行われた。2022年5月、経済産業省はケニア政府及び日本貿易振興機構(JETRO)と共同で第2回日アフリカ官民経済フォーラム全体会合をナイロビ(ケニア)で開催し、経済産業省からは細田経済産業副大臣(当時)が出席した。全体会合では、ホスト国ケニアを含め、アフリカ諸国から9名の閣僚級の参加が得られたのを始め、日本及び15か国のアフリカ諸国から約250名の政府・企業関係者の参加を得て、2021年12月の分科会の結果を踏まえ、日本とアフリカの民間企業間の協力や日本企業のビジネス活動促進のための官民双方の取組について意見が交わされた。この中で細田副大臣は、日アフリカ経済関係深化のために今後経済産業省が取り組む方向性と具体的な方策を表明した。また、この機会に、2021年12月の分科会以降に新規締結された分を含む計18本の協力MOU等が披露された。
官民一体でアフリカビジネスを継続的に議論するプラットフォームである「アフリカビジネス協議会(JBCA)」(2019年6月発足)では、官民の参加者間でアフリカビジネスに係る情報共有と意見交換を行い、関係省庁・機関による支援策の検討・実施・見直し等を行っている。具体的には、①アフリカ政府・企業とのネットワーキング・マッチング機会の提供、②アフリカ各国のビジネス環境改善の促進、③各省庁・機関横断による支援策の連携促進等を目標に掲げ、活動を行ってきた。
JBCAには、経済産業省、外務省、日本経済団体連合会、経済同友会を始め、約400の企業・団体・官公庁・国際機関が所属しており(2023年3月時点)、中堅中小企業、投資環境改善、農業、ヘルスケアなどをテーマとしたワーキング・グループが、アフリカビジネス展開に関する課題の吸上げや、現地事情などの関連調査、日本企業と現地関係機関との関係構築等を実施している。
2022年8月には、発足以降で初となる第2回本会議を開催した。経済産業大臣も一員に名を連ねる共同議長を始め、アフリカビジネスに関心を有する官民の関係者が参加し、JBCA発足以降の活動やTICAD8を見据えた今後の展望について、報告、確認が行われた。また、経団連及び経済同友会からのアフリカビジネス推進に関する政策提言における、JBCAの活動への期待及び体制強化の要望を踏まえ、JBCAの機能強化を図ることが確認され、その一環として、JETRO理事長が新たに共同議長に加わることとなった。
また、2022年度においては、引き続きコロナ禍の影響を背景に、JETROも通じて、デジタルツールを活用した現地最新情報等の提供、アフリカ進出支援策の情報共有、オンライン商談会(日用品・雑貨等、医療機器、農業資機材等の分野)等を実施した。加えて、コロナ禍収束傾向から水際措置が緩和されたことを受け、2022年11月には3年ぶりにナイジェリアの「ラゴス国際見本市」にジャパン・パビリオンを設置したほか、2023年2月にはガーナやモロッコへのビジネスミッションを催行した。
2022年8月27~28日、第8回アフリカ開発会議(TICAD8)がチュニス(チュニジア)で開催され、20名の首脳級を含むアフリカ48か国、日本・アフリカ連合友好議員連盟、国際機関、民間企業、市民社会が参加した。経済産業省からは中谷経済産業副大臣がTICAD8の全体会合及び「ビジネスフォーラム」へ参加した。また、チュニジア、ケニア、モザンビーク、セネガル、エチオピア、ナミビア及びナイジェリアの要人と会談等を実施し、日本企業のアフリカ進出に関する意見交換を行った。また、今次TICAD8では、中谷副大臣自らが署名したケニアにおける産業技術人材育成に関するMOCを含む、計92件の協力MOUが披露された。
2023年2月、ケープタウン(南アフリカ)でアフリカ鉱業投資会議「マイニング・インダバ2023」が開催され、経済産業省からは里見経済産業大臣政務官が参加した。この会議において、里見政務官は南アフリカ、コンゴ民主共和国、ナミビア、ザンビア及びボツワナの要人と会談するなど、鉱業分野等における日アフリカ間の一層の関係強化に取り組んだ。また、同会議のマージンで開催された鉱物資源安全保障パートナーシップ(MSP)閣僚級会合に出席し、MSPメンバー国やアフリカなどの資源国と連携して重要鉱物のサプライチェーン強靱化・多角化に取り組んでいくことを表明した。さらに、近年日本企業の進出が増加傾向にあるケニアを訪問し、前年に実施された大統領選挙を受けて発足した新政権の経済関係閣僚等と会談を行い、日本企業のビジネス展開拡大や、更なる二国間関係強化について議論を行った。