第Ⅲ部 第1章 ルールベースの国際通商システム

第1節 G7/G20/OECD

1.G7

(1)日本議長年(2023年)

① 首脳会合
(G7広島サミット)

2023年5月19日から21日にかけて、G7広島サミットが開催された。岸田総理は、今回のサミット全体を通じての大きなテーマは、分断と対立ではなく協調の国際社会の実現に向けたG7の結束の確認と役割の強化であり、そのための積極的かつ具体的な貢献を打ち出すことである旨述べ、G7首脳は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くこと、G7を超えた国際的なパートナーとの関与を強化することの重要性について一致した。

セッション1「分断と対立ではなく協調の国際社会へ/世界経済」では、貿易、デジタルを含む世界経済について議論が行われた。貿易について、岸田総理は、WTOを中心とするルールに基づく自由で公正な貿易体制は、世界の成長及び安定の基盤である旨述べた。G7首脳は、自由で公正な貿易体制の維持・強化に取り組んでいく必要性について一致した。デジタルについて、岸田総理は、「人間中心の信頼できるAI」を構築するためにも、DFFTを具体化させるべく、閣僚レベルの合意に基づき、国際枠組みの早期設立に向けて協力を得たい旨、また、議長国として相応の拠出も含め、貢献していく旨を述べた。G7首脳は、G7の価値に沿った生成AIや没入型技術のガバナンスの必要性を確認するとともに、特に生成AIについては、「広島AIプロセス」として担当閣僚のもとで速やかに議論させ、2023年中に結果を報告させることとなった。

セッション5「経済的強靱性・経済安全保障」では、経済安全保障上の課題に対処する重要性の急速な高まりを受け、今回初めてサミットの議題として取り上げ、G7として、率直な議論を行った。「グローバル・サウス」を含む国際社会全体の経済的強靱性と経済安全保障を強化していくことも必要であるという認識の下、G7として、(1)サプライチェーンや基幹インフラの強靱化、(2)非市場的政策及び慣行や経済的威圧への対応の強化、(3)重要・新興技術の適切な管理を含め、結束して対応していくことを確認した。また、経済安全保障はG7が緊密な連携の下で取り組んでいくべき戦略的な課題であるとの認識の下、経済安全保障に関する取組について、G7枠組みを通じて包括的な形で協働し、連携していく意思を確認した。本セッションでの議論を踏まえ、G7として初めて、経済的強靱性及び経済安全保障に関する包括的かつ具体的なメッセージを「経済的強靱性及び経済安全保障に関するG7首脳声明」として発出し、4月の貿易大臣会合の成果を踏まえ、「強靱で信頼性のあるサプライチェーンに関する原則」を表明した。また、経済的威圧への対応の一環として、「経済的威圧に対する調整プラットフォーム」という枠組みを立ち上げた。同様に、本セッションでの議論を踏まえ、G7として、クリーンエネルギー移行に必要不可欠な重要鉱物及び再生エネルギー機器製造のサプライチェーンの強靱化に関する「クリーンエネルギー経済行動計画」を発表し、世界全体のクリーンエネルギー経済への移行を加速することで一致した。

セッション7「持続可能な世界に向けた共通の努力」では、8か国の招待国と7つの招待機関を交え、気候・エネルギー、環境等について議論した。岸田総理から、エネルギー安全保障、気候危機、地政学リスクを一体的に捉え、この「トリレンマ」の克服のために、再エネや省エネの活用を最大限進めつつ、経済成長を阻害しないよう、各国の事情に応じ、あらゆる技術やエネルギー源を活用する多様な道筋の下で、ネット・ゼロという共通のゴールを目指すことの重要性や、クリーンエネルギー移行に不可欠なクリーンエネルギー機器及び重要鉱物のサプライチェーンの強靱化の必要性を共有した。G7、招待国及び招待機関は、気候変動、生物多様性、汚染といった課題に一体的に取り組む必要があることを確認した。

[参考]参加国
<G7メンバー>

日本(議長国)、イタリア、カナダ、フランス、米国、英国、ドイツ、EU

<招待国>

豪州、ブラジル、コモロ(アフリカ連合(AU)議長国)、クック諸島(太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国)、インド(G20議長国)、インドネシア(ASEAN議長国)、韓国、ベトナム (※別途ゲストとして、ウクライナも参加。)

<国際機関>

国連、国際エネルギー機関(IEA)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)

(G7首脳テレビ会議)

G7日本議長年の総括として、2023年12月6日、議長国である我が国の主催により、G7首脳テレビ会議が行われ、岸田総理が議長を務めた。ウクライナ情勢や中東情勢を始めとする重要課題について議論が行われ、G7首脳声明が発出された。

岸田総理は、対露制裁について、ロシア個人・団体の追加制裁に加え、制裁の迂回に関与した疑いのある第三国団体も年内に制裁対象に指定予定であること、また、翌年1月からはロシア産ダイヤモンドの直接輸入規制も導入し、その後段階的な間接輸入規制についても導入していくことを紹介するとともに、引き続きG7で連携して効果的な制裁を実施していきたい旨述べた。また、AIについて、12月1日のG7デジタル・技術大臣会合で合意された「広島AIプロセス包括的政策枠組み」を歓迎するとともに、これで広島AIプロセスは終わりではなく、今後、閣僚会合で策定された、広島AIプロセスを更に前進させるための作業計画に基づき、国際指針や行動規範といった今般の成果を、グローバル・サウスや企業を含め広く国際社会に拡大していきたい旨述べた。さらに、気候変動について、全ての国が多様な道筋の下でネット・ゼロという共通の目標を目指すことが重要である旨強調し、特に世界の排出の半分を占めるアジアでの取組が重要であり、日本の技術力と金融力をフル活用して後押しする旨述べた。加えて、経済的強靱性及び経済安全保障の分野におけるG7の連携が進展したことを歓迎するとともに、非市場的政策・慣行や経済的威圧への対応、サプライチェーンや基幹インフラの強靱化、機微技術の管理等における連携強化が必要である旨指摘した。

[参考]参加国
<G7メンバー>

日本(議長国)、イタリア、カナダ、フランス、米国、英国、ドイツ、EU

<招待国>

ウクライナ

② 貿易大臣会合
(2023年第1回G7貿易大臣会合)

2023年4月4日に西村経済産業大臣(以下、いずれも当時)は、林外務大臣(当時)と共同で、G7貿易大臣会合をテレビ会議形式にて開催した。会合では、WTO改革や経済安全保障について議論を行い、G7貿易大臣声明を取りまとめた。

WTO改革のセッションでは、西村経済産業大臣から、①紛争解決制度改革について遅くとも第13回WTO閣僚会議(MC13)において改革の方向性に合意すべき、②漁業補助金協定の早期発効を目指すべき、③電子的送信に対する関税不賦課モラトリアムの第13回WTO閣僚会議(MC13)における恒久化の実現を目指すべき、④電子商取引共同声明イニシアティブ交渉の共同議長として野心的な成果を妥結するべき、⑤補助金規律の強化などルール作りの議論も加速すべき、と述べた。また、経済安全保障のセッションでは、①「信頼性」を含めた新たなサプライチェーンの原則を、グローバル・サウスを含むG7を超えた同志国のパートナーにも広げるべく議論を深めたい、②経済的威圧を抑止しその影響を緩和するためにG7で何ができるのか具体化させるべく産業界や発展途上国を含むG7外の同志国との連携も課題である旨を述べた。

(2023年第2回G7貿易大臣会合)

我が国は2023年のG7議長国として、10月28日から29日に大阪・堺で第2回会合を開催し、西村経済産業大臣(以下、全て当時)と上川外務大臣が共同議長を務めた。会合では、(1)貿易と持続可能性、(2)WTO・MC13に向けて、(3)公平な競争条件の確保、(4)経済的威圧・サプライチェーン強靱化をテーマにした4つのセッションにおいて議論を深め、G7貿易大臣声明を採択した。また、招待国・機関や民間企業を交えたサプライチェーン強靱化に関するセッションを開催し、G7内外の連携の強化を確認した。

各セッションについて、(1)貿易と持続可能性のセッションでは、上川外務大臣が議長を務め、持続可能な開発目標(SDGs)を達成する観点から包摂性の重要性について指摘し、貿易と持続可能性においてもジェンダーや適切に代表されていない集団の視点も重要である旨強調したほか、西村経済産業大臣から、環境や気候変動と貿易の分野において非関税障壁の除去等具体的な取組を進めることについて合意すべき旨、DFFTを実現すべくデータ・ローカライゼーション措置等に対抗すべき旨、強靱で信頼できるサプライチェーンの構築を実現したい旨述べた。(2)WTO・MC13に向けてについては、西村経済産業大臣が議長を務め、紛争解決制度改革、「貿易と国家介入」に関する審議等の審議機能の強化、電子商取引共同声明イニシアティブ交渉の推進、電子的送信に対する関税不賦課モラトリアム等の議論を主導し、特に、公平な競争条件については、非市場的な措置に対抗し、グローバルに公平な競争条件を確立することは重要課題であり、今後、WTOやそのほかの枠組みも生かして非市場的措置に対応する具体的なアクションを取ることが重要であると述べた。また、上川外務大臣からも、日本として、上記の分野のみならず、漁業補助金協定の早期発効及び包括的規律の合意に向けた議論の加速化や輸出規制の透明性向上、開発問題等に関しても成果を目指している旨述べた。(4)経済的威圧・サプライチェーン強靱化についても、西村経済産業大臣が議長を務め、経済的依存関係を武器化するような行為に対してG7で深い懸念を共有し、迅速な情報共有を行い結束して対応するとともに、G7外のパートナー国へアウトリーチすることや産業界とコミュニケーションを取ることの重要性を確認した。上川外務大臣からは、ALPS処理水の海洋放出後の日本産水産物に対する輸入規制措置についても言及し、科学的根拠に基づく冷静な対応が必要である点を改めて説明した。

[参考] 参加した招待国・国際機関
<招待国>

豪州、チリ、インド、インドネシア、ケニア

<国際機関>

世界貿易機関(WTO)、経済協力開発機構(OECD)、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)

③ デジタル・技術大臣会合
(2023年第1回G7デジタル・技術大臣会合)

2023年4月29日及び30日の2日間にわたり、群馬県高崎市において、G7デジタル・技術大臣会合が開催され、日本から、西村経済産業大臣(以下、いずれも当時)、太田経済産業副大臣(当時)、河野デジタル大臣、松本総務大臣が参加した。また、4月28日には、デジタル・技術大臣会合の公式官民会合として、経済産業省と世界経済フォーラム(WEF)の共催の下、「デジタル・トランスフォーメーション・サミット(DXサミット)」を開催した。

本会合では、6つのテーマ(1)越境データ流通と信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の推進、(2)安全で強靱性のあるデジタルインフラ、(3)自由でオープンなインターネットの維持・推進、(4)経済社会のイノベーションと新興技術の推進、(5)責任あるAIとAIガバナンスの推進、(6)デジタル市場における競争政策について議論が行われ、本会合の成果として、「G7デジタル・技術閣僚宣言」が採択された。

本会合では、西村経済産業大臣が、「経済社会のイノベーションと新興技術の推進」のテーマの下、AIやIoT、メタバースといった新興・革新的技術のイノベーションによって、経済・社会システムが歴史的な転換期を迎えていることを踏まえ、社会全体がこれらのイノベーションの恩恵を受けられるよう、先進国共通の課題となり得る論点として、①デジタルインフラの基幹技術の相互運用性とセキュリティの確保、②革新的技術等のイノベーションに親和的なガバナンス(規律)手法の活用(ガバナンスイノベーション)、③デジタル技術とグリーントランジション、④メタバースやデジタル証明のような未来に向けた議論、の4つを提案した。

(2023年第2回G7デジタル・技術大臣会合)

2023年12月1日、経済産業省は、デジタル庁、総務省と共同で、「G7デジタル・技術大臣会合」をテレビ会議形式で開催し、広島AIプロセス(議長:鈴木総務大臣(当時))及びDFFT(議長:河野デジタル大臣)について議論を行い、成果文書として、「広島AIプロセス G7デジタル・技術閣僚声明」及び「DFFT の具体化に関する閣僚声明」を採択した。

本会合で、西村経済産業大臣からは、①AIのイノベーションと規律のバランス確保の観点が重要であり、イノベーションと規律の両立のためのツールとして、総務省とともに事業者向けのAIガイドラインの策定を進めていること、②各国でAIのルールメイキングが同時並行で進む中、AIを活用する事業者が国境を越えて活動しやすい環境を確保すべく、米国を含む各国のAIガバナンス枠組みとの相互運用性を向上させるため協力を進めていく考えであること、③イノベーション創出のため、我が国としてAI開発力強化に向けて官民を挙げた支援に取り組んでいくこと、を強調した。

[参考]参加国
<G7メンバー>

日本(議長国)、イタリア、カナダ、フランス、米国、英国、ドイツ、EU

<招待国>

インド、インドネシア、ウクライナ

<国際機関>

経済協力開発機構(OECD)、国際電気通信連合(ITU)、世界銀行、国連、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)

④ 気候・エネルギー・環境大臣会合

2023年4月15日、16日に、北海道札幌市においてG7気候・エネルギー・環境大臣会合が開催され、西村経済産業大臣(当時)及び西村環境大臣(当時)が出席した。気候・エネルギー分野においては、気候変動対策とエネルギー安全保障の確保、さらに経済成長の同時推進が求められる中、本会合では、多様な道筋の下で共通のゴールを目指すこと、グローバル・サウスと連携していくこと、地政学リスクをマネージしていくこと等について議論が行われ、気候・エネルギー・環境大臣会合として、閣僚声明及び産業脱炭素化や重要鉱物等に関する付属文書が採択された。閣僚声明には、各国既存目標等に基づく洋上風力150GWの増加・太陽光1TWへの増加を含め、再エネ導入拡大やコスト低減に貢献していくこと、水素アンモニアにおいて「炭素集約度」の概念を含む国際標準や認証スキーム構築の重要性、e-fuelやe-methaneのようなカーボンリサイクル燃料(RCFs)を含め、CCS及びCCU/カーボンリサイクル技術が重要となり得ることのほか、省エネ、ガス、原子力等について盛り込まれた。産業部門の脱炭素化では、ライフサイクルベースでの評価の重要性及び測定基準やデータ収集の開発を強調し、鉄鋼生産及び製品の排出に関する「グローバルデータ収集フレームワーク」の実施に向けた作業の開始に合意したほか、交通部門においては、保有車両からの排出削減の重要性を認識し、2035年までにG7全体で保有車両からのCO2排出を50%削減(2000年比)する可能性を認識した。また、G7で初めて、企業のネット・ゼロ移行におけるトランジション・ファイナンスの重要性に言及するとともに、ほかの事業者の排出削減への貢献を可視化する「削減貢献量」の価値を認識した。

[参考]参加国
<G7メンバー>

日本(議長国)、イタリア、カナダ、フランス、米国、英国、ドイツ、EU

<招待国>

インド、インドネシア、アラブ首長国連邦

<国際機関>

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局、経済協力開発機構(OECD)、国際エネルギー機関(IEA)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)、国際自然保護連合(IUCN)、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)

(2)イタリア議長年(2024年)

① G7首脳テレビ会議

ロシアによるウクライナ侵略が開始されてから2年となる2024年2月24日、議長国イタリアの主催によりG7首脳テレビ会議が行われ、日本から岸田総理が出席した。会合後、G7首脳声明が発出された。

岸田総理は、ウクライナ支援に関し、2月19日にシュミハリ・ウクライナ首相及び多くのウクライナ政府・企業関係者を東京に迎え、日・ウクライナ経済復興推進会議を開催し、官民一体となってウクライナを力強く支援していく姿勢を表明し、計56本の協力文書を成果として発表することができたことを説明した。加えて、対露制裁に関し、日本はG7メンバーと連携しつつ、これまで厳しい措置を講じてきており、今回新たにロシア個人・団体の指定を含む追加制裁を行う旨述べた。

[参考]参加国
<G7メンバー>

日本、イタリア(議長国)、カナダ、フランス、米国、英国、ドイツ、EU

<招待国>

ウクライナ

② 貿易大臣会合
(2024年第1回G7貿易大臣会合)

2024年に入りG7議長がイタリアに引き継がれ、2月7日にはイタリア主催でG7貿易大臣会合のテレビ会議が開催され、日本から齋藤経済産業大臣、辻󠄀外務副大臣が出席した。会合では2月26日からアブダビで開催されたMC13に向けて、DS改革、電子的送信に対する関税不賦課モラトリアム、「貿易と産業政策」を始めとするWTOにおける審議機能強化など、G7としての優先事項等について、G7貿易大臣の間で活発な議論がなされ、G7貿易大臣共同コミュニケが発出された。

③ 産業・技術・デジタル大臣会合

2024年3月14日及び15日の2日間にわたり、イタリア・ヴェローナ及びトレントにおいて、G7産業・技術・デジタル大臣会合が開催され、日本から、石井経済産業大臣政務官、河野デジタル大臣、長谷川総務大臣政務官が参加した。

本会合では、(1)産業におけるAIと新興技術、(2)安全で強靱な通信ネットワーク、サプライチェーン及び主要な投入要素、(3)デジタル開発、(4)公的部門におけるAI、(5)広島AIプロセスの成果の前進、(6)デジタル政府に関する議論が行われ、会合の成果として、閣僚宣言が採択された。

石井経済産業大臣政務官からは、14日の会合において、デジタル技術の産業利用の観点から、AIの開発促進と規律確保、量子の早期の産業化について発信するとともに、公正なデジタル競争環境に向けた国際連携の重要性を強調した。また、半導体のサプライチェーン強靱化に向けたG7諸国との連携強化や戦略物資の持続可能で信頼性のある製品が選択されるマーケット作りに向けた協力の重要性について発言した。また、15日の会合においては、AIガバナンスの観点から、我が国におけるAIセーフティ・インスティテュートの立上げについて紹介するとともに、AI安全性評価手法の策定やAIガバナンス枠組み間の相互運用性の確保に向けた国際協調の重要性を発信した。

[参考]参加国
<G7メンバー>

日本、イタリア(議長国)、カナダ、フランス、米国、英国、ドイツ、EU

<招待国>

ブラジル、韓国、ウクライナ、アラブ首長国連邦

<国際機関>

国際電気通信連合(ITU)、国連(事務総長技術特使)

2.G20

インド議長年(2022年12月~2023年11月)

① 首脳会合
(G20ニューデリー・サミット)

2023年9月9日及び10日、インド・ニューデリーにてG20ニューデリー・サミットが開催され、「一つの地球、一つの家族、一つの未来(One Earth, One Family, One Future)」のテーマの下、食料安全保障、気候・エネルギー、開発、保健、デジタルといった重要課題について議論が行われた。岸田総理は、国際社会は複合的な危機に直面しており、国際経済協力のプレミア・フォーラムであるG20における協力がますます重要である旨述べた。

議論の総括として、G20ニューデリー首脳宣言が発出され、「世界貿易機関(WTO)を中核とする、ルールに基づく、無差別的で、公正で、開かれた、包摂的で、公平で、持続可能かつ透明性のある多角的貿易体制が不可欠である」こと、「強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長を可能にし、気候変動に関する目標を達成する手段として、多様な道筋を通じて、クリーンで、持続可能で、公正で、低廉かつ包摂的なエネルギー移行を加速させることにコミットする」こと、「供給源で加工された重要鉱物及び材料、半導体並びに技術を含むエネルギー移行のための、信頼性が高く、多様な、持続可能かつ責任あるサプライチェーンを支持する」こと、「AIの潜在力を最大限に引き出し、その恩恵を公平に共有し、リスクを軽減するために、AIのための国際的なガバナンスに関する国際協力及び更なる議論を促進するために協働する」こと等が明記された。

[参考]参加国
<G20メンバー>

日本、インド(議長国)、アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インドネシア、イタリア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ共和国、トルコ、英国、米国、EU

<招待国>

バングラデシュ、コモロ(アフリカ連合(AU)議長国)、エジプト、モーリシャス、オランダ、ナイジェリア、オマーン、シンガポール、スペイン、アラブ首長国連邦

<国際機関>

アジア開発銀行(ADB)、災害に強靱なインフラのためのコアリション(CDRI)、金融安定化理事会(FSB)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、太陽に関する国際的な同盟(ISA)、経済協力開発機構(OECD)、国連(UN)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)

(G20首脳テレビ会議)

2023年11月22日、議長国インドの主催により、G20首脳テレビ会議が行われ、岸田総理が出席した。多国間システムの改革、気候変動、デジタル、女性主導の開発といった重要課題について議論が行われ、国際社会が直面する課題に対処するため、引き続きG20の協力が重要であることが確認された。

岸田総理は、気候変動について、ニューデリーで確認したとおり、各国の事情に応じた多様な道筋の下で、ネット・ゼロという共通のゴールを目指すべきである旨述べ、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想の初の首脳会合を12月に東京で開催し、パートナー国と共にあらゆる技術やエネルギー源を活用してイノベーションを推進していく旨紹介した。

[参考]参加国
<G20メンバー>

日本、インド(議長国)、アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インドネシア、イタリア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ共和国、トルコ、英国、米国、EU、コモロ(アフリカ連合(AU)議長国)

<招待国>

バングラデシュ、エジプト、モーリシャス、オランダ、ナイジェリア、オマーン、シンガポール、スペイン、アラブ首長国連邦

<国際機関>

アジア開発銀行(ADB)、災害に強靱なインフラのためのコアリション(CDRI)、金融安定化理事会(FSB)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、太陽に関する国際的な同盟(ISA)、経済協力開発機構(OECD)、国連(UN)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)

② 貿易・投資大臣会合

2023年8月23日から26日にかけて、G20貿易・投資大臣会合がインドで開催され、山田外務副大臣(以下、いずれも当時)と保坂経済産業審議官が出席した。本会合では、WTO改革を始めとした多角的貿易体制の強化や、グローバル・バリューチェーンの強靱化、発展途上国・中小零細企業の貿易への参画の促進等について議論がなされた。

山田外務副大臣からは、ルールに基づく自由で公正な貿易体制の中核はWTOであると述べつつWTO改革の重要性を強調したほか、マルチのルール形成とともに「共同声明イニシアティブ(JSI)」等の取組を前進させ審議機能を強化していくべきであること、漁業補助金協定の早期発効の重要性、貿易コストの削減のための貿易円滑化協定の完全な実施や税関の能力強化支援の重要性等につき述べた。保坂経済産業審議官からは、2024年2月の第13回WTO閣僚会議(MC13)では、紛争解決制度の改革、産業政策・措置の透明性向上、産業分野の国家介入が貿易に及ぼす影響等について議論するべきであること、WTO電子商取引共同声明イニシアティブ交渉については、年内実質妥結に向けて共同議長国として取組を強化するとともに、電子的送信に対する関税不賦課モラトリアムについて恒久化を実現すべきであること、貿易に係る各ステークホルダー間でシームレスなデータ連携を可能にするべく、国際標準に準拠したデータの相互連携を図る取組を進めるべきであること等を述べた。

会合では、成果文書・議長サマリーが発出された。

[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>

シンガポール、バングラデシュ、オランダ、スペイン、スイス、エジプト、オマーン、アラブ首長国連邦、モーリシャス、ナイジェリア

<国際機関>

世界貿易機関(WTO)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、経済協力開発機構(OECD)、国際貿易センター(ITC)、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)

③ デジタル経済大臣会合

インドが議長国を務め、2023年8月19日に、G20デジタル経済大臣会合がベンガルールで開催された。本会合には、日本から河野デジタル大臣、柘植総務副大臣(当時)が参加し、①デジタルインクルージョンとイノベーションのためのデジタル公共インフラ(DPI)、②デジタル経済における安全性、セキュリティ、強靱性及び信頼性の構築、③将来のグローバルな労働力の確保のためのデジタルスキルが議題として取り上げられた。

大臣会合に先立ち行われたデジタル経済ワーキンググループ(DEWG)において、閣僚宣言に係る議論が合意に至らなかったために、閣僚宣言の採択は行われなかったが、会合の成果物として、議論の内容を踏まえた成果文書及び議長総括が発出された。

[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>

モーリシャス、オランダ、ナイジェリア、オマーン、シンガポール、アラブ首長国連邦、バングラデシュ、エジプト、スペイン

<国際機関>

国際電気通信連合(ITU)、経済協力開発機構(OECD)、国連開発計画(UNDP)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、世界銀行

④ 環境・気候大臣会合

2023年7月28日、G20環境・気候大臣会合がインド・チェンナイにて開催され、環境省から西村環境大臣(当時)、及び経済産業省から長峯経済産業大臣政務官(以下、いずれも当時)が参加した。

本会合では、議長国が掲げた優先課題である、①気候変動対策、②土地劣化と生物多様性、③水資源管理、④海洋/ブルーエコノミー、⑤循環経済について議論が行われた。長峯経済産業大臣政務官は、エネルギー安全保障、経済成長の同時実現のためには経済・社会システム全体の変革(グリーン・トランスフォーメーション、"GX")が必要であることと、その実現に向けた日本の取組を紹介し、今後も、世界のGXに向けて貢献していく旨発言した。また、産業界主導で循環経済への移行を促すため、G20議長国インドのイニシアティブにより立ち上げられた「産業同盟(RECEIC)」についても、歓迎の旨を発言した。会合での議論の内容を踏まえ、成果文書及び議長総括が発出された。

[参考]参加した招待国
<招待国>

バングラデシュ、デンマーク、エジプト、モーリシャス、オランダ、ナイジェリア、オマーン、スペイン、シンガポール、アラブ首長国連邦

⑤ エネルギー移行大臣会合

2023年7月22日、G20エネルギー移行大臣会合がインド・ゴアにて開催され、経済産業省から西村経済産業大臣(以下、いずれも当時)が参加した。G20エネルギー移行大臣会合では、①エネルギー安全保障と多様なサプライチェーン、②万人のエネルギーアクセス、③公正、低廉、包摂的エネルギー移行の道筋、④省エネルギーと責任ある消費、⑤エネルギー移行を通じた技術ギャップへの対応、⑥未来の燃料、⑦エネルギー移行のための低コストファイナンスなどの論点について議論された。西村経済産業大臣は、気候変動対策、エネルギー安全保障確保、経済成長の同時達成に向けては、①多様な道筋によるエネルギー移行、②イノベーションの促進、③世界全体での脱炭素化が重要であることについて発言した。

会合での議論の内容を踏まえ、成果文書及び議長総括が発出された。

[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>

バングラデシュ、デンマーク、エジプト、オランダ、シンガポール、アラブ首長国連邦、オマーン、モーリシャス、ナイジェリア等

<国際機関>

クリーンエネルギー大臣会合(CEM)、経済協力開発機構(OECD)、国際エネルギー機関(IEA)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA) 、アジア開発銀行(ADB)、国連工業開発機関(UNIDO)、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、世界銀行(WB)、世界経済フォーラム(WEF)、石油輸出国機構(OPEC)、万人のための持続可能なエネルギー(SEforALL)等

3.経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会

2023年OECD閣僚理事会

2023年6月7日及び6月8日、OECD閣僚理事会(Meeting of the Council at Ministerial Level:MCM)が、「強靱な未来の確保:共通の価値とグローバル・パートナーシップ(Securing a Resilient Future: Shared Values and Global Partnerships)」というテーマで開催され、日本からは、山田外務副大臣及び中谷経済産業副大臣(いずれも当時)が参加した。

議長国の英国、副議長国のコスタリカ及びニュージーランドの下、開会セレモニーでは、コーマンOECD事務総長から、ウクライナ国別プログラムを始めとするウクライナ支援、エネルギー移行、インド太平洋地域へのアウトリーチ、新規加盟プロセス、ウェルビーイング、ジェンダー平等の推進等における最近のOECDの取組について発言があった。次いで、本会合の議長を務めたクレバリー英外相(当時)から、国際社会の抱える様々な重要課題に立ち向かう上でOECDは礎であり、今次MCMを更なる連携に向けた新たな一歩を踏み出す機会としたい旨発言があった。また、シュミハリ・ウクライナ首相(オンライン参加)から、OECDによるウクライナへの支援に感謝を述べた上で、OECDとウクライナとの協力関係は深化し続けており、今般の国別プログラムがウクライナの復興・改革に更に寄与していくことを期待している旨発言があった。

会合では、ウクライナ支援、経済の強靱性、OECDのアウトリーチ、将来のフロンティア・ネット・ゼロ経済のための革新的技術の活用、エネルギーの未来について議論された。

会合の最後には、ウクライナ支援、東南アジアへのアウトリーチ、気候変動、デジタル等の課題について各国の立場や見解を踏まえた閣僚声明が採択されたほか、「OECDインド太平洋戦略枠組」、「多国籍企業行動指針」の改訂版などの成果文書も併せて採択された。

[参考]キーパートナー国・招待国・国際機関
<キーパートナー国>

ブラジル、中国、インド、インドネシア、南アフリカ共和国

<招待国>

アルゼンチン、ブルガリア、香港、コモロ、クロアチア、エジプト、モロッコ、ペルー、ルーマニア、シンガポール、タイ、ウクライナ、ベトナム

<その他>

東南アジア諸国連合(ASEAN)、アフリカ連合(AU)、経済産業諮問委員会(BIAC)、労働組合諮問委員会(TUAC)、国際エネルギー機関(IEA)ほか

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