第2節 APEC を通じた地域経済統合の推進と経済成長の促進
1.APEC
2023年は米国がAPECの議長を務め、全体テーマ「Creating a Resilient and Sustainable Future for All(全ての人々にとって強靱で持続可能な未来を創造)」の下、(1)相互連結(Interconnected)、(2)革新的(Innovative)、(3)包摂的(Inclusive)の三つの優先課題を掲げ、各種取組を行った。
同年5月25日及び26日のAPEC貿易担当大臣会合では、「多角的貿易体制の支持」及び「持続可能で包摂的な貿易の促進」について議論を行った。最終的に、共同声明の発出にはコンセンサスが得られず、議長声明の発出となった。
また、同年11月14日及び15日のAPEC閣僚会議では、アジア太平洋地域の持続的な成長に向けた、「自由で公正な経済秩序の構築」や、「イノベーティブな環境の実現」について議論を行い、16日及び17日のAPEC首脳会議では、「持続可能性、気候及び公正なエネルギー移行」及び「相互連結及び包摂的で強靱な国・地域の構築」について議論を行った。会議成果文書としてAPEC閣僚共同声明及び首脳宣言「ゴールデンゲート宣言」が採択されたほか、ウクライナ・中東情勢に関する議長声明が発出された。
2024年のAPECは、ペルーが議長を務め、全体テーマ「エンパワーメント(Empower)、包摂(Include)、成長(Grow)」の下、(1)包摂的で連結性のある成長のための貿易・投資、(2)フォーマルかつグローバルな経済への移行を促進するイノベーション及びデジタル化、(3)強靱な発展のための持続可能な成長の三つの優先課題に取り組んでいる。
日本としては、2010年の「横浜ビジョン」を基礎とした議論の流れを着実に引き継ぐとの方針に基づき、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を始めとするアジア太平洋地域の経済統合の実現、質の高いインフラ開発・投資の促進、現実的なエネルギー・トランジションを通じたカーボンニュートラル実現、サプライチェーン強靱化、デジタルの活用及びそのベースとなるDFFTの理念の重要性や、持続可能かつ包摂的な経済成長実現及び女性のエンパワーメントを通じた経済活動への一層の参画を促進するための取組の実施などを通じ、この地域の力強い成長力を取り込みつつ、我が国経済に豊かさと活力をもたらすことを目指している。また、WTO発足時には貿易投資ルールの対象として想定されていなかったデジタル貿易・電子商取引分野に関する具体的な取組を進め、市場歪曲措置の是正や公平な競争条件の確保にも取り組む。