第3節 中国・韓国
1.中国
(1)総論
日中平和友好条約締結45周年を迎えた昨年11月、APEC首脳会議(於:サンフランシスコ)のマージンにおいて、日中首脳会談が行われた。会談では、岸田総理から正当なビジネス活動が保障されるビジネス環境を確保した上で、日中経済交流の活性化を後押ししていきたい旨を述べた。また、引き続き首脳レベルを含むあらゆるレベルで緊密に意思疎通を重ねていくことでも一致した。
こうした中、経済産業省としては、中国に対して、ビジネス環境整備の要請とビジネス協力の具体化の両輪で政策を展開している。具体的には、輸出管理法・データ関連規制といった国内法制度の予見可能性向上や外商投資規制の緩和等を通じた公正・公平な競争環境の実現を求めるとともに、省エネ環境分野や介護サービス分野等の日中が共通の課題を抱える分野での協力強化に向けた取組も行っている。
(2)主な進捗
ビジネス環境に関しては、2023年5月と11月の2回にわたり西村経済産業大臣(当時)と王文濤商務部長(当時)との閣僚級会談を行い、西村経済産業大臣(当時)から、ビジネスに関わる企業関係者の安全確保や透明で公平なビジネス環境を確保することが重要である旨発言し、中国における法執行・司法プロセスの透明性確保や中国の輸出管理措置の運用の適正化、国産品優遇策の是正などを強く求め、また、改めてALPS処理水の海洋放出の安全性などについて説明し、日本産食品輸入規制の即時撤廃を求めた。また、更なる対話促進の観点から、11月の会談においては、経済産業省と商務部との間で、新たに「日中輸出管理対話」及び「日中ビジネス環境円滑化ワーキンググループ」の枠組み設置に合意した。
また、ものづくり・情報分野に関しては、2023年12月には、中国・工業信息化部との間で、約5年ぶりとなる第三回の次官級定期協議を北京で開催し、製造業や情報産業等における双方の政策や産業の状況について、意見交換を実施した。
エネルギー・環境分野においては、2023年2月11日に、経済産業省、一般財団法人日中経済協会、中国国家発展改革委員会及び商務部、中国駐日本国大使館の共催で、日中のエネルギー・環境分野の協力プラットフォームである「第16回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」を開催した(新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2021年度と同様に東京と北京をつないだオンラインでの開催となり、日本側からは、西村経済産業大臣(当時)、宗岡日中経済協会会長(当時)ほか、中国側からは、何立峰国家発展改革委員会主任(当時)、李飛商務部部長助理(当時)ほか、約870名の官民関係者が参加した)。
2.韓国
(1)日韓関係
日本にとって韓国は、世界第3位の輸出先であり、世界第7位の輸入先である289。また、韓国にとって日本は、世界第4位の輸出先、世界第3位の輸入先となっている290。日本と韓国は、お互いにとって重要な貿易相手国であるとともに、国際社会における様々な課題への対応に協力していくべき重要な隣国である。
日韓関係は、2023年3月16日に行われた日韓首脳会談において、首脳間のシャトル外交の再開や、政治・経済・文化など多岐にわたる分野で政府間の意思疎通を活性化していくことで一致した。政府・民間の双方で幅広い分野の協力が進展している。
289 財務省「貿易統計」、2023年。
290 韓国貿易協会(https://stat.kita.net/stat/world/major/KoreaStats06.screen)、2023年。
(2)進捗状況
政府間での対話等について、経済産業分野では、5月25日に釜山において、南資源エネルギー庁首席国際カーボンニュートラル政策統括調整官(当時)と李沅柱(イ・ウォンジュ)産業通商資源部エネルギー政策官(当時)による日韓エネルギー協力対話を開催し、エネルギー分野の協力について意見交換を実施した。また5月31日には、東京において、濱野特許庁長官と李仁實(イ・インシル)韓国特許庁長(当時)による日韓特許庁長官会合を開催し、知財分野における協力に向けた意見交換を行い、11月30日には、釜山において、定例会合として日韓特許庁長官会合を実施した。
さらに、6月30日には、ソウルにおいて、平井経済産業審議官(当時)と安德根(アン・ドックン)産業通商資源部通商交渉本部長(当時)による会談が行われ、IPEFや、WTO等の通商分野での連携等を中心に、産業・エネルギー分野での協力等について幅広い意見交換を行った。
こうした日韓協力に向けた対話の進展を踏まえ、更なる協力強化に向けて取組を進めるため、西村経済産業大臣(当時)と方文圭(バン・ムンギュ)産業通商資源部長官(当時)は、国際会議の機会等を活用し、9月23日、11月15日及び12月2日に相次いで会談を行い、通商分野、産業分野及びエネルギー分野など幅広い分野で進展している対話や協力について確認するとともに、今後の協力の在り方等について意見交換を行い、引き続き、意思疎通を図っていくことで一致した。
11月17日、米国サンフランシスコのスタンフォード大学で行われた日韓首脳共同行事「先端科学技術をテーマとする討論会」において、岸田総理から尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対して、日韓が中心となって「水素・アンモニア・グローバル・バリューチェーンを構築していくことを提唱したい」と提案した。そのフォローアップとして、2024年2月15日、東京において、井上資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長と朴贊祺(パク・チャンギ)産業通商資源部水素経済政策官は、水素アンモニア等の分野に関する局長級協議を開催した。両国の政策や取組等について意見交換を行い、継続的なコミュニケーションと協力を促進するため、新たに「日韓水素アンモニア等協力対話」の枠組みを立ち上げ、継続して開催することに合意した。
日韓政府間の対話等とともに、日韓の政府関係機関及び民間団体間の交流も活発に行われた。主な政府関係機関間の交流については、2023年5月30日に、東京において日本貿易保険(NEXI)と韓国貿易保険公社(K-SURE)が定期協議を開催した。また、9月21日に、ソウルにおいてJETROと大韓貿易投資振興公社(KOTRA)が定期協議と共同フォーラムを開催した。
また、主な日韓の経済団体間の交流等については、2023年5月17日に、ソウルにおいて日韓経済協会と韓日経済協会等が「日韓経済人会議」を開催し、6月9日には、釜山において日本商工会議所と大韓商工会議所が「日韓商工会議所会頭会議」を開催した。
経団連と韓国全国経済人連合会(2023年10月に韓国経済人協会に名称変更)は、2023年3月16日の日韓首脳会談の翌日に、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領臨席のもと開催した日韓ビジネス・ラウンドテーブルに続き、7月6日に、ソウルにおいて日韓産業協力フォーラムを開催するとともに、2024年1月11日に、東京において首脳懇談会を開催した。
3.日中韓
コンテンツ分野では、2023年12月7日に、「第16回日中韓文化コンテンツ産業フォーラム」を日本で開催した。本フォーラムでは日中韓の文化コンテンツ産業の交流と協力、特に、エンターテイメント分野におけるデジタル技術の活用に関して議論を行った。また、日中韓三国は、政府間のみならず関係機関や産業間の積極的な協力を通して、三国の文化コンテンツ産業の共同発展と繁栄を模索していくことで合意した。
ヘルスケア分野では、JETROと協力し、中国の江蘇省、青島市・濰坊市、広東省で「地方都市高齢者産業交流会」を実施し、日本の介護サービス・福祉用具の事業者と中国現地企業とのビジネスマッチングを行った。
知財分野では、2023年11月30日に特許庁、中国国家知識産権局(CNIPA)、韓国特許庁(KIPO)が「第23回日中韓特許庁長官会合」を韓国・釜山で開催した。意匠・商標・審判など三庁間での協力について議論を行うとともに、三庁におけるAI関連発明の審査などについて情報交換し、次回会合に向け、議論を深めていくこととした。さらに、「革新的中小企業のための知財の役割」をテーマとした日中韓特許庁シンポジウムを開催し、日中韓の各庁担当者や各国実務者によるテーマに沿った講演やパネルディスカッションが行われた。
基準認証分野では、経済産業省が事務局を務める日本産業標準調査会の主催により、2023年7月24日から26日、東京において、第21回北東アジア標準化協力フォーラム(NEASフォーラム)を開催した。日本、中国、韓国の国家標準化機関、規格協会、民間の標準化専門家など標準化関係者約150名が対面又はオンラインで参加した。
NEASフォーラムでは、三か国の標準化政策・活動に関する情報交換を行ったほか、国際標準化機構(ISO)中央事務局及び国際電気標準会議(IEC)アジア地域事務局の代表者が参加し、アジア地域における地域関与政策について講演を行った。また、三か国共同で個別案件の国際標準化に向けた協力を実施する提案について議論が行われ、日本からは、「人間工学的な安全性と快適性を確かなものとする国際標準化」と「魚類の鮮度の試験方法」に関する国際標準化協力を提案した。これら2件の協力に加え、図記号の国際標準化及び自動車分野の情報交換に関する更なる協力が合意された。
NEASフォーラムに併せ、日中韓政府間会合、日中政府間会合及び日韓政府間会合を開催した。さらに、標準分野における若手人材育成に係る日中韓共同プログラムを初めて実施した。
また、地域間協力として、2023年10月31日、中国遼寧省大連市において、第21回「環黄海経済・技術交流会議」を開催した。「産業・サプライチェーンの円滑化、環黄海地域における協力と発展」をテーマに4年ぶりに対面開催し、日本側は経済産業省九州経済産業局、韓国側は産業通商資源部、中国側は商務部を代表として、各国の政府機関・地方行政機関・企業・経済団体など約300人が参加した。