第4節 ASEAN・大洋州
1.総論
日ASEANは2023年に友好協力50周年を迎えた。経済産業省は、これまで日ASEANが培った「信頼」を原動力とし、これからの未来を共に創る「共創・Co-Creation」をキーワードに、将来を見据えた新しい時代の方向性を示す「日ASEAN経済共創ビジョン」を策定するなど、年間を通じて様々な取組を実施した。
特に、12月に開催された日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議を機に、来日した各国首脳や閣僚との会談等で二国間の更なる経済協力について議論するとともに、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想の推進、「日ASEAN自動車産業共創イニシアティブ」の立上げ、「ヤング/Z世代ビジネスリーダーズサミット」の開催等を行い、これからの50年間を見据えたマルチ・バイの経済関係の強化・共創に向けて、多くの成果を上げた。
また、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、豪州、ニュージーランド及び太平洋島嶼国と、通商分野での協力や日本企業のビジネス展開について議論を深め、各国との関係強化に努めた。
引き続き、ASEAN及び大洋州地域との経済関係の更なる強化に向けて、IPEF、APEC、ASEAN経済大臣会合、官民対話など様々な国際フォーラムの場を活用し、日本企業の投資・進出支援や現地人材育成等の投資環境整備支援を進めていく。
2.日ASEAN関係
(1)日ASEAN友好協力50周年に係る取組
2023年8月22日、インドネシアのスマランにて、経済産業省、ASEAN事務総長及びASEAN加盟国との間で第29回日ASEAN経済大臣会合が開催され、日本から中谷経済産業副大臣(当時)が出席した。会合では、中谷経済産業副大臣(当時)から、日ASEAN友好協力50周年を機に策定した「日ASEAN経済共創ビジョン」や、ビジョンの実現に向けて策定した「未来デザイン&アクションプラン」などの日本の取組について説明した。ASEAN各国からは、ビジョンの最終取りまとめを歓迎するとともに、アクションプランに合意する旨の発言があった。また、同年12月の日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議では、岸田総理から、「日ASEAN次世代自動車産業共創イニシアティブ」を立ち上げ、ASEANが世界の自動車生産・輸出ハブであり続けるための戦略を策定・実施することを表明した。
(2)日ASEAN経済共創ビジョンに係る取組
① 日ASEAN経済共創ビジョン
日ASEAN友好協力50周年を機に、将来を見据えた、新しい時代の日ASEANの経済共創の方向性を示すため、経済産業省、JETRO及び日本商工会議所を始めとする経済界での議論を経て「日ASEAN経済共創ビジョン」を策定した。「50年間の友好協力で培った「信頼」を原動力として、安全で豊かで自由な経済社会を、公正で互恵的な経済共創で実現する」ことをビジョンのキーセンテンスとし、経済共創の四つの柱として、「多様性・包摂性を両立するサステナビリティの実現」、「国境を越えたオープンイノベーションの推進」、「サイバー・フィジカルコネクティビティの強化」、「活力ある人的資本を共創するためのエコシステムの構築」を掲げた。
② 未来デザイン&アクションプランの策定
日ASEAN経済共創ビジョンの実現に向けて、日本政府とASEAN政府が取り組むべき施策を「未来デザイン&アクションプラン」として取りまとめ、ASEAN各国の経済大臣と合意した。ASEAN地域における貿易の電子化、日ASEAN若手ビジネスリーダー間のネットワーク形成など、ビジョンの4つの柱ごとに具体的な施策を記載した。
③ アジアDX促進事業について
日本企業が有する技術・ノウハウ等の強みをいかし、リープフロッグ的な発展を遂げるASEANでの実証を支援することで、日ASEANが一体となってデジタルイノベーションの社会実装を進めるとともに、その成果を日本にリバースイノベーション291することを目指す。2023年度は従来の実証支援に加え、その前段階である案件の掘り起こしや、VCを巻き込んだ更なる事業拡大・横展開支援を実施するブーストアップコースの新設を行い、企業ステージに沿った一気通貫の支援を実施した。
291 リバースイノベーション:新製品・新サービスの日本への逆輸入。例えば、規制等により我が国では実現できない事業をASEANで実証を行い、その後日本でも規制改革を目指す等。
④ 日ASEANビジネスウィーク及び日ASEAN経済共創フォーラムの実施
2023年6月、経済産業省及び日ASEANの関係機関の共催で、「日ASEANビジネスウィーク2023~Toward Innovative and Sustainable Growth~」を開催。3回目となる今年は、対面を含むハイブリッド形式で開催し、西村経済産業大臣(当時)、ASEAN各国経済大臣等からのスピーチのほか、日本及びASEANの企業や有識者等が、今後の日ASEANの経済関係について議論した。西村経済産業大臣(当時)は、日ASEANビジネスウィークへの参加のため来日したカオ・キムホンASEAN事務総長らと会談を行い、日ASEAN友好協力50周年における日本の取組について議論を深めるとともに、エネルギー協力やRCEP等についても意見交換を行った。
同年12月、「日ASEAN経済共創フォーラム」を開催した。岸田総理からのビデオレターで、「新たな50年」の日ASEANのコンセプトは「共創」であることが述べられたほか、日ASEAN次世代人材の連携、経済共創を通じた社会課題解決、アジアのエネルギー移行に関する議論が行われた。
⑤ ヤングビジネスリーダーズサミット、Z世代ビジネスリーダーズサミットの開催
2023年12月、長野県軽井沢町において、日ASEANヤングビジネスリーダーズサミット及びZ世代ビジネスリーダーズサミットが開催された。日本とASEANにおける将来のビジネスリーダーとなることが期待される人材が集まり、相互の理解・信頼関係を構築・強化することを目的として、経済・ビジネスの上の課題、社会課題を共有するとともに、解決に向けた協力の在り方を議論した。
両サミットの成果物である共同宣言については、日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議の共同議長である岸田総理及びインドネシアのジョコ大統領に手交された。
3.ASEAN各国との関係
(1)インドネシア
2023年4月、西村経済産業大臣(当時)がアリフィン・エネルギー鉱物資源大臣とバイ会談を行い、AZECにおける協力の方向性について議論するとともに、インドネシアのクリーンエネルギーへの移行と電力部門の脱炭素化のために、具体的プロジェクト推進の重要性を確認した。
5月には、2022年4月の第1回会合に続き、日・インドネシア官民経済対話(トラック1.5)の第2回会合が東京で開催され、デジタル・スタートアップ、グリーン産業の振興、人材育成、事業環境整備等について議論を行った。
同月、APEC閣僚会合に際し、西村経済産業大臣(当時)がズルキフリ商業大臣とバイ会談を行い、日ASEANの連携の方向性や、RCEPの透明な形での完全な履行を始めとした通商政策、インドネシアにおける事業環境の整備などについて意見交換を実施した。
また、同APEC閣僚会合に際し、西村経済産業大臣(当時)がアイルランガ経済担当調整大臣、アグス工業大臣と会談を行い、新たな経済枠組みであるIPEFについて連携を確認するとともに、これからの日ASEANの経済関係の深化に向けた協力について意見交換を実施した。
8月には、長峯経済産業大臣政務官(当時)がテテン協同組合・中小企業大臣とバイ会談を行い、中小企業分野における一層の連携や日本とASEANにおけるスタートアップ企業の支援協力につき、意見交換を実施した。
9月、西村経済産業大臣(当時)がアリフィン・エネルギー鉱物資源大臣とバイ会談を行い、AZEC構想の下で、アジアの脱炭素化に向けた具体的な案件組成と同時に、政府間でのモメンタム形成も引き続き行っていくことで合意した。また、同月に官民経済対話の具体的な協働プロジェクトとして日インドネシア・ファストトラック・ピッチ2023が開催され、両国間のイノベーション創出に向けての具体的な協業を加速させた。
10月には、西村経済産業大臣(当時)がプアン国会下院議長とバイ会談を行い、インドネシアの政治情勢や首都移転、日尼EPA、スタートアップや若手起業家の交流、AZEC構想の更なる推進について意見交換を実施した。
同月、保坂経済産業審議官が、サンディアガ観光創造経済大臣とバイ会談を行い、クールジャパン政策や両国のコンテンツ産業戦略について意見交換を実施し、一層連携することを確認した。
同月、G7貿易大臣会合に際して、西村経済産業大臣(当時)がズルキフリ商業大臣とバイ会談を実施し、日尼EPA改正の早期妥結に向けた議論、日ASEAN協力における一層の連携、ALPS処理水や万博等についての意見交換を実施した。
11月、APEC閣僚会合に際し、西村経済産業大臣(当時)がアイルランガ経済担当調整大臣とバイ会談を行い、IPEFにおける両国での連携、日尼EPA、AZEC構想の推進、次世代自動車分野での協力等の多岐にわたるトピックにつき、議論を行った。
12月、齋藤経済産業大臣とアリフィン・エネルギー鉱物資源大臣がバイ会談を行い、AZEC首脳会合を契機に、エネルギー・トランジションや脱炭素に向けた両国の取組を強化すべく意見交換をした。
2024年3月には、保坂経済産業審議官がパハラ外務副大臣とバイ会談を行い、日尼EPAや貿易の促進、AZEC構想における一層の連携等について、議論を行った。
(2)マレーシア
2023年4月、第1回日マレーシア官民産業政策対話がマレーシアで開催され、「サプライチェーン強靱化」「特定の産業分野(ヘルスケアや農業分野等)でのデジタル技術活用」「スタートアップ振興へ向けた両国協力の在り方」についての議論に加え、「航空機産業協力に係る取組の進捗」について報告が行われた。
また、10月には官民政策対話の下での具体的な協働プロジェクトとしてMalaysia-Japan Digital Exchange Pitch 2023が開催され、両国のグローバル企業とスタートアップ企業の具体的な協業に向けての取組を加速させた。
さらに、11月のAPEC閣僚会合では、西村経済産業大臣(当時)がザフルル投資貿易産業大臣とバイ会談を行い、サプライチェーン強靱化やDX、GXなど、産業協力の象徴となる事業の創出を通じて二国間関係を強化していくことや、IPEF等の通商分野での連携についても両国のさらなる協力を確認した。
(3)ブルネイ
2023年12月、齋藤経済産業大臣はアミン・リュー財務経済大臣とエネルギー・トランジションに関するMOCの署名・交換を行い、両国のエネルギー・トランジション実現に向けて、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じたエネルギー協力を進展させていくことを確認するとともに、バイ会談では通商分野の連携のほか、エネルギーやデジタルなど未来を担う産業の共創等、更なる二国間関係の強化を確認した。
(4)フィリピン
2023年4月、平井経済産業審議官(当時)はマニラにてパスクアル貿易産業大臣との面談を行った。面談では、5G・オープンRANなど両国の協力が見込まれる分野、日系企業のフィリピンにおける事業環境整備に加えて日ASEAN50周年を契機とした協力や通商関係について意見交換を行った。
6月、西村経済産業大臣(当時)は、日ASEANビジネスウィーク出席のために訪日中のパスクアル貿易産業大臣とバイ会談を行った。会談では、自動車、エレクトロニクス等の重点産業分野の協力、及びイノベーション創出に向けた連携を強化させていくことを確認するとともに、日ASEAN協力の方向性や通商関係についても意見交換を行った。
11月、経済産業省と環境天然資源省(DENR)は、鉱業分野における協力覚書(MOC)を再締結した。西村経済産業大臣(当時)とロイザガDENR大臣が署名し、岸田総理のマニラ訪問時に岸田総理とマルコス大統領立合いの下、保坂経済産業審議官とレオネスDENR次官との間で文書交換が行われた。
12月、パスクアル貿易産業大臣はマルコス大統領と共に訪日し、日ASEAN経済共創フォーラムにおいて齋藤経済産業大臣、ラオスのマライトーン商工大臣と共に閉会挨拶を行った。
(5)シンガポール
2023年5月、西村経済産業大臣(当時)は、APEC閣僚会議の機会をとらえてガン貿易産業大臣とのバイ会談を行った。会談では、地域統合において緊密な連携を進めているシンガポールと、IPEF、CPTPP、RCEP等の通商分野、スタートアップ分野等における協力を確認するとともに、エネルギー分野における具体的な連携に向けて議論を行った。
2023年7月、西村経済産業大臣(当時)は、G20エネルギー移行大臣会合の機会をとらえてタン第二貿易産業大臣兼人材開発大臣とのバイ会談を行った。会談では、AZECを通じた協力について言及したほか、水素、アンモニア等に関する二国間協力について議論を行った。
2023年8月、中谷経済産業副大臣(当時)は、ASEANエネルギー大臣関連会合の機会をとらえてロー国務大臣とのバイ会談を行った。会談では、中谷経済産業副大臣(当時)よりAZEC構想の実現に向けた進捗を述べつつ、具体的な案件を形成するべく連携して取り組む必要がある旨を強調するとともに、脱炭素技術に関するプロジェクト等の各国との二国間エネルギー協力案件について議論を行った。
2023年8月、里見経済産業大臣政務官(当時)は、APEC中小企業大臣会合の機会をとらえてロー国務大臣とのバイ会談を行った。会談では、二国間のスタートアップ協力や同年の日ASEAN友好協力50周年等について意見交換を行った。
2023年11月、西村経済産業大臣(当時)は、APEC閣僚会議の機会をとらえて、ガン貿易産業大臣とのバイ会談を行った。会談では、IPEFやWTO等の通商分野での連携を確認するとともに、DXやGXなどの両国の未来を担う産業協力の象徴となるようなプロジェクトの創出、AZEC構想の推進、イノベーションの推進など、二国間関係を強化することで一致した。また、西村経済産業大臣(当時)から、ALPS処理水の海洋放出について、シンガポールが日本の立場に理解を表明していることに謝意を示すとともに、引き続き、高い透明性をもって情報提供していく旨言及した。
(6)タイ
2023年11月、西村経済産業大臣(当時)はスパマート高等教育・科学・イノベーション大臣と会談し、未来を担う産業とそれを支える産業人材の育成、イノベーション創出に向けた両国企業の協業、日本の水産物の輸入・消費の拡大などについて意見交換を行い、協力を強化していくことを確認した。加えて、西村経済産業大臣(当時)は日系スタートアップとタイ財閥のビジネスマッチングを目的としたピッチイベント「Rock Thailand」に参加し、開会挨拶を行った。
2023年12月、齋藤経済産業大臣は、セター首相兼財務大臣と会談を行い、エネルギー分野に関しては、カーボンニュートラルの実現に向け、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合を契機に、タイと共にエネルギー・トランジションや脱炭素に向けた取組を加速させていきたい旨述べた。また、日本が長きにわたりサプライチェーンを構築したタイの自動車産業の競争力強化に向けた今後の協力の在り方等を中心に意見交換を実施した。加えて、齋藤経済産業大臣は、セター首相兼財務大臣と共に、「日タイ投資フォーラム」に参加し、タイとの経済関係の中心である自動車産業について、国際競争力のある次世代自動車産業の生産・輸出ハブを共に作り上げていく旨を述べた。
さらに同月、齋藤経済産業大臣は、パーンプリー副首相兼外務大臣と会談を行い、両国の共創に向けて、未来産業の創出、エネルギー・トランジションや脱炭素化、人材の育成、タイの次世代自動車の輸出拠点としての競争力維持・強化の今後の方向性等について意見交換を実施した。特に、自動車分野に関しては、齋藤経済産業大臣がセター首相兼財務大臣表敬時に取り上げた、製造工程の脱炭素化への対応や、EVからハイブリッド、内燃機関車まで、世界の市場を見据えた幅広い車種での競争力強化などの取組を提起し、こうした課題を話し合う「日タイ・エネルギー・産業対話」の重要性の認識を共有した。
2024年2月、齋藤経済産業大臣は、ピムパッタラー工業大臣と会談を行い、昨年12月の首脳会談で合意した「エネルギー・産業対話」の早期立上げに向けて、製造工程の脱炭素化や産業人材育成の促進等の両省の重点分野を記した文書を交換し、協力を強化することで一致した。
2024年3月、保坂経済産業審議官は、ナルモン通商代表と会談を行い、タイの自動車産業の競争力強化に向けた今後の協力の在り方、脱炭素化に向けた取組等について意見交換を実施した。
さらに同月、保坂経済産業審議官はジュンラパン財務副大臣と会談を行い、両国の自動車産業の課題の共有、自動車リサイクル等の今後の支援について意見交換を実施した。
(7)ベトナム
2023年4月、西村経済産業大臣(当時)はアイン共産党中央経済委員長(当時)と会談を行い、ベトナムの産業の工業化・近代化、CPTPPやIPEF等の通商政策、エネルギー等の分野で両国の協力関係を深化させていくことを確認した。
5月には、西村経済産業大臣(当時)とジエン商工大臣は、APEC貿易担当大臣会合/IPEF閣僚会合の際に意見交換を行い、IPEFやCPTPP、RCEPを始めとした通商政策について議論、引き続き連携していくことを確認した。
11月には、第6回「日ベトナム産業・貿易・エネルギー協力委員会」をベトナムで開催し、共同議長である西村経済産業大臣(当時)及びジエン商工大臣は、未来を担う産業の創出やサプライチェーンの強靱化に向けたワーキンググループの設置について合意した。また、IPEF等の協力、AZECを通じたエネルギー・トランジションの実現やレアアースの協力等について議論を行い、共同閣僚声明とファクトシートを発出した。加えて、西村経済産業大臣(当時)は、スタートアップイベント「Inno Vietnam - Japan Fast Track Pitch2023」に参加するとともに、ズン計画投資大臣との会談や、チン首相への表敬を行った。
12月には、齋藤経済産業大臣は、日ASEAN特別首脳会議に参加するために来日したチン首相を表敬し、両国の経済関係の共創に向けた意見交換を行うとともに、チン首相とともに日越経済フォーラムに出席した。
(8)カンボジア
2023年12月、齋藤経済産業大臣はチャム商業大臣と会談を行い、2023年が、日カンボジア外交関係樹立70周年かつ日ASEAN友好協力50周年であることに触れつつ、デジタル分野、人材育成など、両国の共創に向けた取組について意見交換を行った。さらに、齋藤経済産業大臣はケオ・エネルギー鉱業大臣とも会談を行い、今回初めて開催されたAZEC首脳会合を契機に、脱炭素化に向けた両国の協力を更に加速させていくことを確認するとともに、AZECを核として、ASEANを中心とするアジア地域の脱炭素化を進めるために連携していくことで一致した。
2023年12月、齋藤経済産業大臣は、日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議及びAZEC首脳会合に参加するために来日したフン首相と会談し、クリーンエネルギー、デジタル等について意見交換を行った。
(9)ラオス
2023年8月、中谷経済産業副大臣(当時)は、インドネシアにて開催された日ASEAN経済大臣会合に出席した機会に、マライトーン商工大臣とバイ会談を行い、デジタル分野や水素・アンモニア・CCUS等の脱炭素技術の導入に係る連携等、日・ラオスの経済関係強化に向けて議論を交わした。
2023年9月、岩田経済産業副大臣は、東京GXウィークに出席したシナワ・エネルギー鉱業副大臣とバイ会談を行い、二国間で多くのプロジェクトが進展していること、またAZEC構想に向けた取組への協力について意見交換をし、日ラオス間で協力が進むことは、世界の脱炭素化に貢献するものであり、重要であることを確認した。
2023年10月、西村経済産業大臣(当時)は、ポーサイ・エネルギー鉱業大臣と会談を行い、両省間で署名されたエネルギーパートナーシップ実現に関する覚書を歓迎するとともに、今後この覚書に基づき、日ラオスエネルギー政策対話を開催し、二国間のエネルギー協力について議論を深めていくことを確認した。加えて、2024年のASEAN議長国であるラオスと共に、AZEC構想等を核として、ASEANを中心とするアジア地域においてエネルギー・トランジションを加速させていくことで一致した。
2023年12月、齋藤経済産業大臣は、日ASEAN経済共創フォーラムに出席するために来日したマライトーン商業大臣と会談し、2024年にラオスがASEAN議長国を務めることから、両国で、日ASEANの枠組みにおいてGX、DX等の協力強化に向けて連携を進めることを確認するとともに、クリーンエネルギーやスマート農業等、日ラオス両国の未来を共に創る「共創」に向けた取組について意見交換を行った。
4.大洋州各国との関係
(1)豪州
2023年5月、西村経済産業大臣(当時)はボーエン気候変動・エネルギー大臣との間でテレビ会議による会談を行い、両国の気候変動対策やエネルギー分野の動向や現況について意見を交わした。また、豪州からの安定したLNG供給の確認、豪州におけるエネルギー関連事業のより良い投資環境の在り方について議論を行った。
また、同じく5月に米国デトロイトで開催されたAPEC貿易担当大臣会合において、西村経済産業大臣(当時)はファレル貿易・観光大臣とバイ会談を行い、「特別な戦略的パートナー」である豪州と、経済的威圧等への対応等について認識を共有しつつ、IPEF、WTO、CPTPP及び資源・エネルギー分野での協力等における日豪連携の重要性を相互に確認した。
7月には、西村経済産業大臣(当時)はボーエン気候変動・エネルギー大臣と会談を行い、両国の気候変動及びエネルギーに関する政策について議論を行った。両大臣は、エネルギー安全保障及び気候変動に関する協力の深化には、両国における安定した政策、投資環境が不可欠との認識に基づき、セーフガードメカニズム(SGM)の運用も含め、引き続き両国間で議論を重ねていくことの重要性を強調した。日豪間では水素や燃料アンモニアなどの分野でも密に連携してきており、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想の実現に向けた連携や今後の日豪間のエネルギー協力について議論した。加えて、資源及びエネルギーの安定的な供給元であるだけでなく、エネルギー移行に関する多くの二国間プロジェクトが進展している豪州との関係を一層強化するため、日豪で幅広い協力及び協議を行っていくことを大臣間で確認した。
10月には、第5回日豪経済閣僚対話が豪州のメルボルンで開催され、西村経済産業大臣(当時)とファレル貿易・観光大臣、ボーエン気候変動・エネルギー大臣、キング資源大臣兼北部豪州担当大臣と対面で意見交換等を行った。ファレル貿易・観光大臣とのワーキングランチでは、民主主義的な価値観や「自由で開かれたインド太平洋」のビジョンを共有する、「特別な戦略的パートナー」である豪州と、IPEFやCPTPP、WTO等の通商分野での協力やスタートアップ協力、10月末に大阪で行われるG7貿易大臣会合などについて議論した。ワーキングランチの後、ボーエン気候変動・エネルギー大臣及びキング資源大臣兼北部豪州担当大臣も交えて会談を行い、LNG、石炭等の資源の安定供給と信頼できる投資環境を確保すること、重要鉱物のサプライチェーンの強化に向けた協力を継続していくこと、さらに協力の範囲を水素、アンモニア、CCUS等の脱炭素化やイノベーションにまで広げ、AZEC構想の下、アジア地域の脱炭素化に貢献していくことで一致した。
また、同じく10月のG7大阪・堺貿易大臣会合の際、西村経済産業大臣(当時)はファレル貿易・観光大臣とバイ会談を行い、「特別な戦略的パートナー」である豪州と、CPTPP等の通商分野での協力等における日豪連携の重要性を相互に確認した。
2024年1月、齋藤経済産業大臣は、キング資源大臣兼北部豪州担当大臣と会談を行い、資源・エネルギー分野における日豪協力について意見交換した。
2月には、アラブ首長国連邦のアブダビで開催された第13回WTO閣僚会議(MC13)に出席した上月経済産業副大臣は、エアーズ貿易副大臣と会談を行い、MC13の成果及びその後のWTO改革に向けた連携等について議論した。
(2)ニュージーランド
2023年5月に米国デトロイトで開催されたAPEC貿易担当大臣会合において、西村経済産業大臣(当時)はオコナー貿易・輸出振興大臣とバイ会談を行った。会談では、戦略的協力パートナーである両国関係を踏まえつつ、IPEFやCPTPP等の通商分野での協力の在り方について意見交換を行った。
(3)太平洋島嶼国
2023年5月に米国デトロイトで開催されたAPEC貿易担当大臣会合において、西村経済産業大臣(当時)はパプアニューギニアのマル国際貿易大臣とバイ会談を行った。会談では、太平洋島嶼国との今後の連携の在り方等について議論し、両国の経済関係をより一層深化させていくことを確認した。
2023年11月に米国サンフランシスコで開催されたAPEC貿易担当大臣会合において、西村経済産業大臣(当時)はフィジー共和国のカミカミザ対外貿易・企業・中小事業大臣とバイ会談を行った。会談では、自由で公正な経済秩序の構築に向けたIPEFでの連携、スタートアップ等企業の太平洋島嶼国における協業促進等について議論し、フィジーを含めた太平洋島嶼国との経済関係をより一層深化させていくことで一致した。また、西村経済産業大臣(当時)から、ALPS処理水の海洋放出について、フィジーが日本の立場に理解を表明していることに謝意を示すとともに、引き続き、高い透明性をもって情報提供していく旨言及した。