第9節 アフリカ
1.総論
アフリカは、若年層を中心に14億人を超える人口を抱え317、新型コロナウイルス感染症拡大時でも人口増加トレンドは変わっておらず、電力・運輸・港湾等のインフラ需要は引き続き大きい。他方で、資源・インフラを中心としていたアフリカビジネスは、各国の産業開発や、医療・食糧ニーズの増加、急速な情報技術の発達を背景とした一足飛びの電子金融導入、電子商取引の普及などを通じて、様々な分野での社会課題解決に向けた事業の展開など、多様化しつつある。また、2021年1月にはアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の運用が開始され、アフリカ域内貿易の促進が具体的に進むことが期待される。
我が国は、質の高いインフラ整備の推進、投資協定や租税条約の締結促進などとともに、アフリカ開発会議(TICAD)や日アフリカ官民経済フォーラムなどの官民が一体となった対話の場を活用し、日アフリカ二国間に加え第三国や国際機関との協力を強化することを通じて、日本企業のアフリカ進出を支援していくとともに、進出した企業のアフリカにおける円滑な業務遂行をサポートする。
317 外務省「日本とアフリカ」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100498557.pdf)
2.進捗状況
2023年は、西村経済産業大臣(当時)が銅、コバルト、ニッケル、リチウム、レアアースなどの重要鉱物の有数の資源国が多く、市場としての将来性も期待されるナミビア・アンゴラ・コンゴ民主共和国・ザンビア・マダガスカルの5か国を訪問した。経済産業大臣としてこれらの5か国を訪問するのは全て初めてである。若年人口も多く、市場としての将来性も大きい国々との関係強化を目的に訪問し、大統領・首相や関係閣僚との会談を実施した。
官民一体でアフリカビジネスを継続的に議論するプラットフォームである「アフリカビジネス協議会(JBCA)」(2019年6月発足)では、官民の参加者間でアフリカビジネスに係る情報共有と意見交換を行い、関係省庁・機関による支援策の検討・実施・見直し等を行っている。具体的には、①アフリカ政府・企業とのネットワーキング・マッチング機会の提供、②アフリカ各国のビジネス環境改善の促進、③各省庁・機関横断による支援策の連携促進等を目標に掲げ、活動を行ってきた。
JBCAには、経済産業省、外務省、日本経済団体連合会、経済同友会を始め、約400の企業・団体・官公庁・国際機関が所属しており(2024年3月時点)、中堅中小企業、投資環境改善、農業、ヘルスケアなどをテーマとしたワーキンググループが、アフリカビジネス展開に関する課題の吸上げや、現地事情などの関連調査、日本企業と現地関係機関との関係構築等を実施している。
2022年8月には第2回本会議を開催し、JETRO理事長の共同議長就任やJETRO・JICAの事務局への参画等の機能強化が確認された。また、中堅中小企業、農業、ヘルスケアなどをテーマとしたワーキンググループ(WG)が発足し、現地経済団体・企業との関係構築・マッチングや調査ミッションなどを継続的に実施する。特に経済産業省が主宰する中堅中小WGは、2022年5月、2023年1月に開催され、アフリカビジネス進出企業の取組や公的機関による支援メニュー等を紹介した。
また、2023年度においては、JETROは、新型コロナウイルス感染症拡大により減少していた人的往来が回復したことに伴い、デジタルツールの活用に加えて、海外見本市やビジネスミッションといった対面事業を再開した。オンライン商談会は、2022年度に計5回開催し、機械(2022年6月)、エチオピア有望企業との協業連携(2022年9月~2023年3月)、日用品・雑貨(2022年9月~11月)、医療機器(2022年12月)、農業資機材(2023年3月)の各テーマで実施した。海外見本市では、ナイジェリアのラゴス国際見本市(2023年11月)にジャパン・パビリオンを設け、会期中に約2万6,000人の来場者を集めた。ビジネスミッションは、ガーナ(2023年2月)にビジネス環境視察を目的として派遣し、モロッコ(2023年2月~3月)には、水素など再生可能エネルギーを含むグリーンビジネスの促進を目的に派遣した。このほか、アフリカ24か国を対象に、市場動向調査からパートナー先候補の紹介、商談設定までを支援するアフリカビジネスデスクを通年で設置した。これら事業を活用した日本企業は、のべ240社を数えた。
2024年2月、ケープタウン(南アフリカ共和国)でアフリカ鉱業投資会議「マイニング・インダバ2024」が開催され、経済産業省からは石井経済産業大臣政務官が参加した。この会議において、石井経済産業大臣政務官はザンビア、コンゴ民主共和国、タンザニア及び南アフリカ共和国の要人と会談するなど、鉱業分野等における日アフリカ間の一層の関係強化に取り組んだ。また、アフリカ各国以外にも、米国の国務次官と会談を行い、MSP(鉱物資源安全保障パートナーシップ)における同志国間の協力強化やアフリカにおける二国間の協力可能性について議論を行った。さらに、2022年12月に西村経済産業大臣(当時)とンサンバ・コンゴ民主共和国鉱山大臣との間で締結した鉱業分野の協力に関する共同声明で合意したロードマップに基づく「DRC官民ミッション」を石井経済産業大臣政務官を団長に官民で結成し、アフリカにおける鉱山操業の実態に関する日本企業の理解促進、同地域への参入検討につなげた。