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  7. 第Ⅰ部 第2章 第4節 パワーバランスの変化とグローバルサウス

第Ⅰ部 第2章 増幅する不確実性

第4節 パワーバランスの変化とグローバルサウス

多くの新興国・途上国の経済力の高まりは、国家間のパワーバランスを変化させている。新興国のGDPシェアは長期的に拡大を続けており(第I-2-4-1図)、今後も人口やGDPで国際的な存在感を拡大することが見込まれる11。一部の国家は、この変化を自覚し、新興国・途上国の意見を国際的に糾合し、自らの国際的な影響力につなげるための行動を強めている。例えば、2023年1月にはG20議長国のインドが「グローバルサウスの声サミット」を主催した。「グローバルサウス」は、そうした文脈で新興国・途上国を総体として指す言葉として使われているが、その定義や外縁に必ずしも共通理解はない。

第Ⅰ-2-4-1図 先進国と新興国・途上国のGDPシェア
先進国と新興国・途上国のGDPシェアの図

BRICSの動向は、グローバルサウスの存在感を示す象徴的な事象と捉えられている。BRICSは新興国の連携強化を目的として、2009年にブラジル、ロシア、インド、中国で始動し、程なく南アフリカが加わった。その後は長らく5か国にとどまる枠組みだったが、2024年から25年にかけて中東・アフリカの4か国やインドネシアが加盟したほか、タイやマレーシアを含む9か国が準加盟国に相当する「パートナー国」となった。この変化は、新たな潮流として注目されている。こうしたグローバルサウスを巡る動向は、既存のグローバル・ガバナンスの在り方などに対する不信感の表れとの指摘もあり、その行方はルールベースの国際経済秩序を巡る不確実性を高める要因にもなり得る。

グローバルサウス諸国とされる国々の歴史的背景や社会経済的な状況、政治体制、地政学的な立場は多様であり、一括りに捉えることは必ずしも適切ではない。第Ⅱ部第3章第5節で詳述するとおり、グローバルサウス諸国がそれぞれ直面する具体的な社会経済的課題に、共創のパートナーとして連携して取り組むことで、国際社会を分断と対立から協調へと方向づけていくことは、国際的な不確実性への対処にもつながる。

11 経済産業省(2024)。令和6年版通商白書第Ⅱ部第1章第4節では、世界の各地域の一人当たりGDPや人口の成長を踏まえた中長期的な経済成長の推移を推計した。

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