経済産業省
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第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第2章 ものづくり人材の確保と育成
第2節 人材育成に向けた取組

5.若者のものづくり離れへの対応

(1)ポリテクカレッジを始めとする学卒者訓練

全国のポリテクカレッジや都道府県の職業能力開発校・短期大学校では、高等学校卒業者等に対し、ものづくり分野を中心とした学卒者訓練を実施している。例えば、ポリテクカレッジでは、高等学校卒業者等を対象に、機械加工や機械制御の専門的技能・技術を習得する「生産技術科」等において、高度な知識と技能・技術を兼ね備えた実践技能者を育成し、さらにその修了生等を対象とした「生産機械システム技術科」等において、製品の企画・開発や生産工程の構築・改善・運用・管理等に対応できる生産現場のリーダーを育成し、ものづくり産業を担う企業へ送り出している。

また、ポリテクカレッジでは、学生のものづくり技能の習得に対する意識を高め、訓練で身につけた技能・技術の成果を発揮するために、ものづくり分野に関連する各種競技大会及び技術交流展示会等への参加も行っている。

2017年度のポリテクカレッジ等の訓練生は約6千人、都道府県の職業能力開発校・短期大学校の訓練生(学卒者訓練)は約1万2千人である。

コラム:沖縄海洋ロボットコンペティション2部門で最優秀賞!四国ポリテクカレッジの学生の活躍

2017年11月沖縄県宜野湾市宜野湾新漁港で開催された「第3回沖縄海洋ロボットコンペティション in 沖縄」において、ROV部門(Remotely Operated Vehicle)では四国ポリテクカレッジ、AUV部門(Autonomous Underwater Vehicle)では沖縄ポリテクカレッジがそれぞれ最優秀賞を受賞した。

四国ポリテクカレッジは、校の所在地名“丸亀市”の中の1字“亀”から『ニトロ・タートル』と名付けたロボットでエントリーした。

初参加ながら、競技ルールで定められた海中のQRコードを素早く読み取ることができるように検討を重ね、参加チームの中で唯一、競技区域内の4箇所に設置された全てのQRコードを、時間内に読み取ることができた。

写真:大会競技中のロボット(四国ポリテクカレッジ)

写真:海中に設置されたQRコード

沖縄ポリテクカレッジは、生産機械システム技術科から4人、生産電気システム技術科から3人、生産電子情報システム技術科から6人の計13人の海洋ロボット開発チームで制作した『ちぶるまぎ~号』でエントリーした。ロボットは片道約70mの海域を浮上、潜航を繰り返しながら自立航行で往復しなければならないが、今回ゴールまで航行できたのは『ちぶるまぎ~号』のみだった。

写真:沖縄ポリテクカレッジ「ちぶるまぎ~号」

3科のそれぞれの学生が得意分野を生かし、グループとしてスケジュールを計画し役割分担して開発することで、最高の結果を得ることができた。

また、今回の大会に向けて、前哨戦として神奈川県横須賀市で開催された「水中ロボットコンペティション in JAMSTEC」にも出場し、準優勝の成績をおさめた。

なお、沖縄ポリテクカレッジの海洋ロボット開発チームは、過去2回とも最優秀賞を受賞しており、今回で3連続受賞となる。

写真:沖縄ポリテクカレッジ海洋ロボット開発チーム

~大会に参加した四国ポリテクカレッジの学生3人からのコメント~

初参加で最優秀賞を受賞することができ、驚いたけれど、とても嬉しい。(後藤さん)

いろいろな問題に直面したが、その度に協力して解決することができ勉強になった。(西村さん)

大学校生活の成果として受賞という形が残るものができてよかった。(明石さん)

写真:左から後藤さん、明石さん、西村さん(四国ポリテクカレッジ)

(2)若年者への技能継承

若者のものづくり離れが見られる中、長年培われた技能の継承が重要である。

このため、2013年度から、ものづくり分野で優れた技能、豊富な経験等を有する熟練技能者を「ものづくりマイスター」として認定注9し、若年技能者等に対する実技指導を行っている(「ものづくりマイスター」制度)。この実技指導は、若年技能者の人材育成を行う企業、業界団体、教育訓練機関にものづくりマイスターを派遣し、職種に必要な様々な技能の要素が盛り込まれた課題(技能競技大会の競技課題、技能検定の実技課題)を用いて実施している。

また、2016年度から、ITリテラシーの強化や、将来のIT人材育成に向けて、小学生から高校生にかけて情報技術に関する興味を喚起するとともに、情報技術を使いこなす職業能力を付与するため情報技術関連の優れた技能をもつ技能者を「ITマスター」として派遣している。

注9 2017年度末現在 認定者数(累計値)9,624人

コラム:ものづくりマイスター制度の実例①~千葉県立工業高等学校における電子機器組立ての実技指導~

【学校の担当教諭からの声】

ものづくりマイスターの指導の最大のメリットは、教科書では学べない現場で積み重ねた熟練の技を目の前で見せてもらえることにある。技能が向上するにつれて生徒に自信が芽生え、自主的に「電子工業部」をつくり、ものづくりに挑戦するなど思いがけない効果も生まれた。マイスターに評価してもらうことで生徒が自分の中に評価の基準を持つようになり、クラスに小さなマイスターが増えているような状況になった。

【受講者からの声】

マイスターのはんだ付けは、仕上げの美しさが凄い。自分もこのような完成度で仕上げられるようになりたいという、大きな目標になっている。

上手くいかなかった時に直接アドバイスをもらい、どのようにしたら良いかが分かるようになるのが良い点である。マイスターの指導を受けたか否かで技能に大きな差がつくと思う。

【ものづくりマイスターの感想】

社会に出ると理論と実技の基本を学ぶ機会はあまりない。また現代はコンピュータの部品でも既製品を使うことが多く、製品がどのような仕組みで作られているのか社会で学ぶ機会はない。仕組みを知らず身の回りの製品が全てブラックボックスになってしまうのは、これから先のものづくりを考えれば良いこととは言えない。

自分の指導においては「しっかり基本を身に付けること」を第一としているが、学生の皆さんにはこの制度を活用して製品の製造過程の基本について理解を深め、やがてはより高度なものづくりに役立てて欲しいと考えている。

写真:マイスターの指導の様子

コラム:ものづくりマイスター制度の実例②~福井県福井市の企業における左官の実技指導~

【企業の経営者からの声】

当社は主に壁や床の下地作業をしているが、ものづくりマイスター制度を受け入れたのは社員からの左官仕上げの技能を身に付けたいという相談がきっかけであり、そのチャレンジ精神を意気に感じ、この制度を導入することとした。

こうした社員の自発的な姿勢には経営者として心強さを感じており、さらに先輩社員もマイスターの指導に添う形でアドバイスをするなどこの挑戦を応援するようになり社員同士に連帯感が生まれた。これは会社の底力のようなもので今後の飛躍のポテンシャルだと考えている。

この制度は素晴らしい技能の持ち主の作業を間近で見させてもらえる良い機会なので、多くの企業で活用してほしい。

【受講者からの声】

左官仕上げの経験はなかったが、技能五輪を見て製作過程や完成したものに驚き、仕上げをやってみたいと思い、早速会社に相談した。仕事に迷惑が掛かってしまったのだが、社長だけではなく先輩も応援してくれた。

マイスターが左官の技能で日本一を獲得された方だと聞いて正直戸惑ったが、自分は仕上げの経験がなくゼロからのスタートだったので、些細なことでも何でも聞いた。間違うことはあったが、マイスターに叱られたことはなく「間違っても構わない。なぜ間違ったのか一所懸命考えろ。」と言われた。

マイスターの指導を受けた経験を活かして、自分で仕事の段取りをすることが多くなってきた。これを糧にして後輩には前向きに取り組んで行くこと、やる気になれば誰かが応援してくれることを伝えていきたい。

【ものづくりマイスターの感想】

技能の指導において大切なのは本人の「癖」と「個性」を見抜くことであり、癖は直さなければならないが個性は伸ばさなければならないと考えている。受講者は「こて」の使い方などに直した方が良い癖が見られたが、指導していくうちに癖が改善され、手際や段取りが良くなっていった。

また、自分の指導は本人に目標を持たせ、それを尊重するスタイルである。やって見せてそれに倣って作業をさせ、おかしな所があれば指摘し、自分で考えるように仕向ける。間違えることもあるが、間違えることが大切で、自ら学びにいくことで得た知識や技能が本物の技になっていくのだと考えている。

自分も受講者と同様に、「下地」の仕事が主だったが、先輩の職人の仕事の姿を見て、仕事を目に見える形で残したいと考えるようになり、「仕上げ」に進んだ。マイスターとして活動する以上、若い人の目標になれるよう努力を重ねていきたい。

写真:マイスターの指導の様子

(3)ものづくりの魅力発信

若年者が進んでものづくり技能者を目指すような環境を整備するために、ものづくり技能者の社会的評価の向上を図ることや、子供から大人までの国民各層において、社会経済におけるものづくり技能の重要性について広く認識する社会を形成することが重要である。

また、ものづくりは、日本ならではの伝統や文化と密接に結びついている面も大きい。このようなものづくりのブランド性を高め、技能の継承に社会的な光を当てていく観点からも、様々なものづくりの魅力発信の取組が求められている。

広く社会一般に技能尊重の気風を浸透させ、もって技能者の地位及び技能水準の向上を図るとともに、青少年がその適性に応じて誇りと希望を持って技能労働者となってその職業に精進する気運を高めることを目的として、卓越した技能者(現代の名工)を表彰している。被表彰者は、次のすべての要件を満たす者のうちから厚生労働大臣が技能者表彰審査委員の意見を聴いて決定している。

<要件>

① きわめて優れた技能を有する者

② 現に表彰に係る技能を要する職業に従事している者

③ 技能を通じて労働者の福祉の増進及び産業の発展に寄与した者

④ 他の技能者の模範と認められる

2017年度の現代の名工の紹介①~モータースポーツ鋳造品の木型製作に卓越した技能を発揮、後進の育成に貢献~

トヨタ自動車(株) 機械込造型工 中家 斉さん(56歳)

中家さんは、37年間にわたり一貫して自動車用鋳造部品の木型製作及び鋳造業務に従事してきた。モータースポーツの鋳造品生産において、0.05㎜の高精度の手加工技能を発揮した。また、軽量化にこだわった薄肉で複雑な形状の鋳造品の木型製作方法の標準づくりに取り組み、鋳造品の生産性と品質を他社の追従を許さない世界トップレベルに押し上げた。技能五輪国際大会・全国大会で培った技能と経験を生かして後進の指導育成にも努めている。

今回の受賞について、「卓越した技能者表彰を受賞できましたことは、身に余る光栄であると同時に大変身の引き締まる思いです。これもひとえに、社内外の関係者の皆様や先輩方の温かいご指導のお陰と深く感謝しています。今後は「名工」の名に恥じぬよう、さらなる技能向上と人間的成長に向け精進を重ね、ものづくりの心と技能を次の世代にも伝えるべく、後進の育成と社会貢献に努めていきます。」と語っており、今後の一層の活躍が期待される。

写真:型構想の設計検討

写真:F1レース用のシリンダーヘッドと中子の一部

2017年度の現代の名工の紹介② ~和裁切りめ・切りぎ技法において卓越した技能を発揮し、後継者の育成に貢献~

藤工房和裁学院 和服仕立職 加藤 靜子さん(73歳)

加藤さんは、切り嵌め(※1)や切り接ぎ(※2)の技能に卓越している。柄の大島紬を5㎝角に切り取り、割り縫いで接ぎ合わせ、ベースとなる無地の大島の布地に切り嵌めて模様としたり、共布の細いループで作った花柄や格子などの造形を模様とするなど、長年の研鑽を積んだ作品は、そのデザイン、センスとともに高く評価されている。自ら開発した技能を後継者に指導・育成しており、業界への功績は大きい。

今回の受賞について、「長年和裁一筋に打ち込んできた私にとって、この度の受賞は職人冥利に尽きる喜びです。共に学んだ朋輩や和裁の修行に励んだ生徒たちに囲まれ、さらに職業能力開発協会あるいは和裁や呉服業界の皆様など、多くの方々から御指導お引き立てをいただいたお陰で続けてこられました。お客様には仕立の技と工夫でさらに和装を好きになっていただければ嬉しいです。また、和装文化の担い手の一人として、和裁を目指す人が少しでも増えるように、これからも積極的に普及活動に関わって行きたいと思います。」と語っており、今後の一層の活躍が期待される。

(※1)切り嵌め(きりばめ)…布地を切り取り、そこに他の布をはめ込み、割り縫いで接ぎ合わせる技法。

(※2)切り接ぎ(きりつぎ)…切り取った布と布を、割り縫いで接ぎ合わせる技法。

写真:「切り嵌め」の製作風景

写真:切り嵌め模様大島訪問着

また、子供から大人まで国民各層で技能尊重の気運を醸成し、ものづくり人材の育成の重要性が再認識されるよう、以下の大会等の実施及び参加を行っている。

①若年者ものづくり競技大会

職業能力開発施設、工業高等学校等において技能を習得中の若年者(原則20歳以下)であり、企業等に就職していない者を対象に、技能競技を通じ、これら若年者に目標を付与し、技能を向上させることにより就業促進を図り、併せて若年技能者の裾野の拡大を図ることを目的として開催する大会である。

直近では、2017年8月に、愛知県の吹上ホールを主会場として第13回若年者ものづくり競技大会を開催し、全15職種の競技に全国から443人の選手が参加した。

さらに、2013年に創設した若年技能者人材育成支援事業において、地域における技能振興に係る取組の促進を図ることとし、都道府県単位で、地域関係者の協力を得て、各種講習会等を実施している。

コラム:若年者ものづくり競技大会(大会金賞受賞校(静岡県立科学技術高等学校)へのインタビュー)

2017年度に第12回を迎えた本大会だが、旋盤職種において金賞を獲得した静岡県立科学技術高等学校は、大会へ向けた取組を通じて学生の技能向上や人材育成を図っている。

ものづくりの魅力について

【ものづくりの魅力】

自分の思いを形にすることの難しさを乗り越え、課題を解決した時に得られる達成感や充実感がものづくりの魅力だと考えている。

【ものづくり教育に携わるに当たって、最も必要と考えること】

チャレンジ精神だと思う。困難を伴う課題であっても果敢に挑戦し、実際にものに触れて、仕上げようとする情熱と姿勢がものづくりには不可欠だと考えている。

若年者ものづくり競技大会について

【学生が出場したきっかけ】

高校生ものづくりコンテスト東海大会で優勝したことで、技能が全国レベルに達していると思い、部活動の目標である「日本一」を狙うチャンスの一つとして参加を決めた。

【練習(訓練)の内容・期間】

大会までの3か月間、過去に出題された競技課題での練習を通して、ものづくりマイスターから、旋盤操作やものづくり競技として勝つためのノウハウを教わった。

【出場する生徒の選定方法】

部活動の部員の中から、加工技術だけでなく、ものづくりへの興味・関心、生活態度などを総合的に評価して、ふさわしい生徒を選定している。

【生徒や学校にとって参加するメリット】

生徒にとっては、大会への参加が自信につながるだけでなく、自分と同じようにものづくりに情熱をかけてきた生徒と触れ合うことにより、心身共に成長できたと感じている。学校にとっては、目標となる生徒が生まれることで、ものづくり教育が一層活性化すると思う。

【学校としての今後の課題や抱負】

良い結果が得られたのは、先輩から後輩へ技術を継承し続けてきたことが大きな要因と考えている。これからも良い伝統を引き継ぎ、ものづくりを通して学校の活性化を図っていきたいと思う。

②技能五輪全国大会

国内の青年技能者(原則23歳以下)を対象に技能競技を通じ、青年技能者に努力目標を与えるとともに、技能に身近に触れる機会を提供するなど、広く国民一般に対して技能の重要性、必要性をアピールし、技能尊重気運の醸成を図ることを目的として実施する大会である。1963年から毎年実施している。

直近では、2017年11月に栃木県のマロニエプラザを主会場として第55回技能五輪全国大会を開催し、全42職種の競技に全国から1,337人の選手が参加した。

コラム:第55回技能五輪全国大会(大会優勝者インタビュー)

洋菓子製造職種:高堀 有以 選手(高級フランス菓子ロワイヤル)

「洋菓子製造」について

【「洋菓子製造」の魅力】

材料の組み合わせや製法で色々な味・食感を出せること。

【最も必要と考える技能】

作品の完成度の他に、作業を衛生的に行うこと。

技能五輪全国大会について

【本大会を目指すようになったきっかけ】

職場の社長に紹介していただいた事がきっかけであり、大会出場により自分の技術向上にも繋がるのではないかと思い決心した。

【本大会に向けた練習(訓練)】

毎日1時間は細工(アメ・マジパン)の練習を心掛け、アントルメは日々の仕事の中で効率の良い製法を探し、実践した。

【本大会を目指す過程で嬉しかった、または苦労したこと】

練習を重ねて行く事で技術の向上を感じられたこと、素敵な仲間に出会えた事が嬉しかった。

【参加して有意義だったこと】

タイムトライアルならではの緊張感と、完成した時の達成感を味わうことができ、精神的にも成長できたと思う。

【優勝経験を今後どのように活かしていきたいか】

1日も早く一人前のパティシエになれるよう努力を続け、今大会出場へ向けて協力してくださった方々へ貢献できるよう邁進していきたい。

写真:洋菓子製造職種の課題に取り組む高堀選手

③全国障害者技能競技大会(アビリンピック)

障害のある方々が日頃職場等で培った技能を競う大会であり、障害者の職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々に障害者に対する理解と認識を深めてもらい、その雇用の促進を図ることを目的として開催している。

全国アビリンピックは、1972年から4年に1度開催される国際アビリンピックの開催年を除き毎年開催されている。

直近では、2017年11月に第37回大会が、栃木県と機構の共催により開催され、365名の選手が参加して、「義肢」、「電子機器組立」、「木工」等のものづくり技能を含む22の種目について競技が行われた。

※「アビリンピック」(ABILYMPICS)は、「アビリティ」(ABILITY・能力)と「オリンピック」(OLYMPICS)を合わせた造語。

コラム:第37回国障害者技能競技大会(アビリンピック)

2017年度は、11月17日から19日までの3日間に渡り、栃木県において、「とちぎから 未来へ翔(はばた)く技と夢」という大会スローガンのもと、第37回全国障害者技能競技大会が開催された。

大会には、技能競技22種目に全国から365名の選手が参加し、日頃培った技能を競い合うとともに、障害者雇用に関する新たな職域の一部として、「クリーニング」、「製パン加工」、「ベッドメイキング」の3職種による技能デモンストレーションが実施された。

また、第37回アビリンピックの開催に併せて、障害者の雇用に関わる展示、実演及び作業体験など総合的なイベントである「障害者ワークフェア2017」が同時開催され、盛大な大会となった。

写真:第37回アビリンピック競技風景

写真:第37回アビリンピック競技風景

④技能五輪国際大会

青年技能者(原則22歳以下)対象に、技能競技を通じ、参加国・地域の職業訓練の振興及び技能水準の向上を図るとともに、国際交流と親善を目的として開催される大会である。1950年に第1回が開催され、1973年から2年に1回開催されており、我が国は1962年の第11回大会から参加している。

直近では、2017年10月にアラブ首長国連邦・アブダビで第44回技能五輪国際大会が開催された。日本選手は、40職種の競技に参加した結果、「情報ネットワーク施工」、「製造チームチャレンジ」、「メカトロニクス」の3職種で金メダルを獲得したほか、銀メダル2個、銅メダル4個、敢闘賞17個の成績を収めた。金メダル獲得数の国・地域別順位は、第9位であった(第1位中国(15個)、第2位スイス(11個)、第3位韓国(8個))。

次回は2019年8月にロシア・カザンでの開催を予定している。

コラム:第44回技能五輪国際大会(金メダリストインタビュー)

製造チームチャレンジ職種金メダリスト:麻生 知宏選手、上野 祐平選手、最上 拓選手(株式会社デンソー)

製造チームチャレンジ」について

【「製造チームチャレンジ」の魅力】

3人とも異なった得意分野があり、より良い製品を作るために自分たちの知識と技能を駆使し、一人ではできない事でも、チームで達成させることができること。

【「製造チームチャレンジ」において、最も必要と考える技能】

製品設計、電気、機械等、幅広く技能を求められる職種である。

変化する環境とルールの中、いかに柔軟に作業を行い、トータルで考えてコストの低い製品を完成させる能力が求められる。

技能五輪国際大会について

【本大会を目指すようになったきっかけ】

高校の先輩に電子機器組立てで金メダルを獲った方がいて、高い技能と豊富な知識を使い競技に取り組む姿に憧れ、自分もそうなりたいと思った。(麻生さん)

見学で技能五輪選手の真剣に取り組む姿見てかっこいいと思った。(上野さん)

中学生の時、テレビ番組で技能五輪の選手の技を見て、自分もやりたいと感じた。(最上さん)

【練習(訓練)の実施期間】

2016年12月~2017年10月までの約10ヵ月。

【本大会を目指す過程で嬉しかった、または苦労したこと】

電子分野だけでなく、金属加工やCAD等様々な技能を習得するのに苦労したが、1つずつ自分のできることが増えていくのが嬉しかった。(麻生さん)

大会が近付くにつれ、競技ルールがかなり変わってきた。ルールの言葉の解釈によって減点になる可能性があり、その中で情報を集め、出題者の意図に沿った課題を作り上げることに苦労した。大会では、出題者の意図をしっかりとらえることができ、減点されることがなかった。(上野さん)

ロボットの設計は、アイディアが出てこなくて苦心したが、完成して自分の設計したロボットが動いたときはとても感動した。(最上さん)

【本大会に参加して有意義だったこと】

問題点の抽出・改善方法等、今後の仕事でも活かせる考え方を身につけられたこと。(麻生さん)

自分たちが考えてしてきた訓練が、間違いでなかったことが次のステージへの自信につながった。(上野さん)

溶接作業で、日本で練習した条件では、うまく溶接ができなかった。自分は、焦って頭が真っ白になってしまったが、チームメンバーから「いつもより音が低いよね。」というアドバイスで、冷静になり、音を頼りに条件設定を行ったところ、うまく溶接することができた。チームワークの重要性を再認識した。(最上さん)

【優勝経験を今後どのように活かしていきたいか】

自分が先輩に憧れて技能五輪を挑戦したように、誰かの憧れの存在になれるよう今後も技術・技能を磨いていきたい。(麻生さん)

優勝したという事に奢らずもっと勉強していきたい。(上野さん)

もっと技術・技能を高め、新製品の開発に携わっていきたい。(最上さん)

写真:第55回技能五輪国際大会の様子

⑤国際アビリンピック

障害のある人々が職業技能を競い合うことにより、障害者の職業的自立の意識を喚起するとともに、事業主や社会一般の理解と認識を深め、さらに国際親善を図ることを目的として開催されている。

第1回国際アビリンピックが国連で定めた「国際障害年」である1981年に東京で開催されて以来、おおむね4年に1度開催されており、直近では第9回大会が2016年3月にフランス・ボルドーで開催された。

⑥技能グランプリ

特に優れた技能を有する1級技能士等を対象に、技能競技を通じ、技能の一層の向上を図るとともに、その熟練した技能を広く国民に披露することにより、その地位の向上と技能の振興を図ることを目的として開催する大会である。1981年度から実施しており、2002年度からは2年に1度開催している。直近では、2017年2月に静岡県を主会場として第29回技能グランプリを開催し、全30職種の競技に全国から514人の選手が参加した。

(4)地域若者サポートステーション

地域若者サポートステーション(愛称:「サポステ」)は、働くことに悩みを抱えている15歳から39歳までの若年無業者等に対し、就労実現に向けた支援を地方自治体と協働で行う施設である。サポステは、厚生労働省が委託した若者支援の実績やノウハウのあるNPO法人等が実施しており、全国に設置されている。

サポステでは、①キャリアコンサルタント等による一人ひとりの課題に応じた専門的な相談や各種プログラム、②個々のニーズに応じたOJTとOFF-JTを組み合わせた職場体験プログラム、③生活面のサポートと職場実習の訓練を集中的に実施する若年無業者等集中訓練プログラム(一部のサポステ)、④就労後の職場定着のためのフォローやより安定した就労形態へのステップアップのための支援を実施している。また、高校等との連携強化による、高校中退者や進路未決定卒業者等に対する切れ目ない支援の充実の観点からアウトリーチ(訪問)型等による就労支援を実施している。

コラム:若者サポートステーション 利用者の体験談~職場見学・職場体験をきっかけにものづくりの魅力を再発見したYさん~

子どもの頃から人の感情や心の動きに興味があり、大学では心理学を勉強してきたYさん。そんなYさんの不得手なことは「対人」。「どうして『人』に興味はあるのに『人』が苦手なのだろう・・・克服したい」と考え、卒業後の進路として、接客の仕事、コンビニでのアルバイトの道を選んだ。売上向上への貢献、新人への業務説明やアドバイスなど、対人面で自信が持てるようになってきたころ「全体を見ながら気を利かせて行動することは自分には無理。任された領域内で1人で完結するような仕事のほうが向いている」と、3年勤めたコンビニを退職した。「未来の働き方」について奈良若者サポ-トステーションへ行き、相談をした。

サポステでは、2社の異なる業種・仕事内容の会社で職場見学、職場体験に参加。そのうち1社はこれまでも興味のあった「モノづくり」の会社、蚊帳製品の製造販売会社である丸山繊維産業株式会社だった。体験内容は、蚊帳製品の裁断、機械の扱い、細やかな調整方法から、検針・検品まで一連の製造工程までを1週間で知ることであった。体験期間が終了した頃、体験先2社から採用連絡があったが、2社の職場体験やこれまでの経験を踏まえ、Yさんのやりたい仕事は「モノづくり」「職人」であると考え、丸山繊維産業株式会社を選択した。社長の人柄や現場担当者が仕事の内容を丁寧に教える環境に直接触れたことも決め手の一つだった。

当初、パートタイム労働者として入社したYさん、3か月後には正社員となった。現在では、来客対応や電話応対、受発注の事務処理の他、ミシンでの縫製作業を任され、幅広く活躍、後に続くサポステの職場体験者に「ものづくり」の良さを伝えている。

丸山繊維産業株式会社は、奈良県天理市にある粗目織物の一貫製造を手がける企業。農業用寒冷紗や、建築部材、自動車部品の下請けの他、蚊帳織り技術を活かしたオリジナルブランド「ならっぷ」として蚊帳織物を中心とした生活雑貨ブランドを展開している。

写真:製造工程・裁断をするYさん

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