経済産業省
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第2部 令和元年度においてものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策
第2章 ものづくり労働者の確保等に関する事項
第2節 職業能力の開発及び向上

1.人生100年時代を見据えた労働者の職業能力の開発及び向上

少子高齢化による労働供給制約と第4次産業革命による技術革新に対応しつつ、全ての方がその能力を存分に発揮する社会を実現するためには、働く方一人一人の生涯を通じた能力開発を支援し、生産性の向上を図っていくことが不可欠である。そのためには、いくつになっても、誰にでも学び直しと新しいチャレンジの機会を確保するリカレント教育の充実や、高齢期も見据えたキャリア形成支援等を推進していく必要がある。

このため、2018年6月に取りまとめられた「人づくり革命基本構想」や2019年6月に取りまとめられた「成長戦略フォローアップ」等に即して、労働者のキャリアプランの再設計や企業内のキャリアコンサルティング導入等の支援、教育訓練給付やIT理解・活用力習得のための職業訓練等のリカレント教育施策を推進するとともに、企業の実情に応じた中高年齢層向けの訓練の提供などを図っていく。

引き続き、誰もがいくつになっても、新たな活躍の機会に挑戦できるような環境の整備に向けた取組を進めていく。

2.ハロートレーニング(公的職業訓練)の推進

(1)公共職業訓練の推進

公共職業能力開発施設では、ものづくり分野を中心として、離職者の再就職の支援や在職労働者のスキルアップ、高度な技能者の養成、学卒者に対する長期間の訓練課程の実施に取り組んでいる。このほか、都道府県が、株式会社、事業主団体NPOなどの民間教育訓練機関に委託する訓練により、地域や産業界のニーズをとらえた職業訓練を提供した。

なお、公共職業能力開発施設として、職業能力開発校(2019年4月現在(以下、同じ。)145校)、職業能力開発短期大学校(14校)、職業能力大学校(10校)、職業能力開発総合大学校(1校)、職業能力開発促進センター(46か所)及び障害者職業能力開発校(18校)を設置している。

(2)求職者支援制度の推進

非正規雇用の労働者など雇用保険を受給できない求職者に対するセーフティネットとして、無料の職業訓練の受講機会を提供し、一定の要件を満たす場合には職業訓練(求職者支援訓練)を受けることを容易にするための給付金を支給するなどして、その早期就職を支援する「求職者支援制度」を2011年10月から実施している。

求職者支援訓練には多くの職種に共通する基本的能力(例:パソコン操作能力など)を習得するための「基礎コース」と特定の職種(例:介護福祉など)の職務に必要な実践的能力を基本的能力から一括して習得するための「実践コース」がある。

(3)生産性向上人材育成支援センターの取組

生産性向上人材育成支援センターは、中小企業等の労働生産性向上に向けた人材育成を支援することを目的として、中小企業等の労働者一人一人の生産性向上を支援するため、民間機関等を活用し、企業の生産性向上に必要な知識やスキル等の習得を図る生産性向上支援訓練を実施している。

さらに、2018年度からは、IT技術の進展に対応するために、中小企業や製造現場などの在職者を対象とした、ITの活用や情報セキュリティなどのIT理解・活用力の習得を図るIT理解・活用力訓練を実施している。

(4)職業訓練の質の向上

民間教育訓練機関の職業訓練の質の更なる向上を図るため、厚生労働省では、「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」を2011年12月に策定し、PDCAサイクルを活用することによる職業訓練サービスの質の向上の取組を進めている。2014年度よりガイドライン研修を実施しており、2018年度より研修受講率100%を目指すため、公的職業訓練のうち委託訓練の契約及び求職者支援訓練の認定にあたっては、ガイドライン研修の受講を要件化している。(2020年度末までは経過措置期間。)

また、職業訓練サービスガイドライン適合事業所認定の制度については、2016年度及び2017年度の試行実施を経て、2018年度より職業訓練サービスガイドライン適合事業所認定を本格実施している。

(5)地域創生人材育成事業

人手不足分野を抱えている地域において、従来の公的職業訓練の枠組みでは対応できない、地域の創意工夫を活かした人材育成の取組を支援するため、「地域創生人材育成事業」を実施している。この事業は、都道府県から提案を受けた事業計画の中から効果が高いと見込まれる取組を選定し、新たな人材育成プログラムの開発を都道府県に委託して実施するものである。2019年度までに、32の道府県において地域の実情に応じた事業が実施された。

3.事業主が行う職業能力開発の推進

(1)事業主に対する助成金の支給

①人材開発支援助成金の活用促進(570億21百万円)<厚労省、経産省>

企業内における労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、雇用する労働者に対して職業訓練などを計画に沿って実施した事業主に対して、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成している。さらに、製造業や建設業等の分野において厚生労働大臣の認定を受けた一定のOJT付き訓練(「特定分野認定実習併用職業訓練」)を行う事業主及び事業主団体等に対して、高率・高額助成での支援を行っている。

また、経済産業省と連携し、中小企業等の生産性向上のため、認定事業分野別経営力向上推進機関が事業分野別経営力向上推進業務として行う、事業分野別指針に定められた事項に関する研修を実施した場合を、当該助成金制度の対象としている。

2019年4月より、リカレント教育機会の拡充を図ることを目的として、eラーニングを活用した職業訓練についても助成対象に追加するとともに、個人の学び直し支援のための環境整備として、長期の教育訓練休暇制度を導入・実施した事業主への助成メニューを追加した。さらに、中堅企業への支援策として、支給対象が中小企業に制限されていた一部のコース(「一般訓練コース」「教育訓練休暇付与コース」)について、大企業も助成対象に拡大する見直しを行った。

(2)認定職業訓練に対する支援(11億33百万円)

事業主や事業主の団体等が行う職業訓練のうち、教科、訓練期間、設備等が厚生労働省令で定める基準に適合して行われている認定職業訓練施設(全国1,103施設(2019年4月末時点))について、国や都道府県が定める補助要件を満たす場合に、これを運営する中小企業事業主等に対して、国及び都道府県からその運営等に要する経費の一部について補助を行った。

(3)セルフ・キャリアドックの普及促進(157百万円)

労働者のキャリア形成を支援するため、年齢、就業年数、役職等の節目において定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定する仕組みである「セルフ・キャリアドック」を企業に広めることを目的に、訪問等による勧奨や相談・研修等の実施を通じて導入及び取組定着の支援を行った。

4.労働者の自発的な職業能力開発のための環境整備

(1)教育訓練給付制度(255億73百万円)<厚労省、文科省、経産省>

労働者が自発的に職業能力開発に取り組むことを支援するため、労働者が自ら費用を負担して一定の教育訓練を受講し修了した場合に、労働者が負担した費用の一定割合を支給した。対象となる教育訓練は、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要と認められるものを厚生労働大臣が指定しており、一般教育訓練11,514講座(2019年10月1日付)、専門実践教育訓練2,436講座(2019年10月1日付)を指定した。

また、2019年10月より、労働者の速やかな再就職と早期のキャリア形成に資する教育訓練を対象とする特定一般教育訓練給付制度を新設し、150講座(2019年10月1日付)を指定した。

(2)ジョブ・カード制度の推進(16億68百万円)<厚労省、文科省、経産省>

「新ジョブ・カード制度推進基本計画」に基づき、個人のキャリアアップや多様な人材の円滑な就職等を促進するために「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担うツールとして、キャリアコンサルティング等の個人への相談支援のもと、求職活動、職業能力開発などの各場面において一層活用されるよう、ジョブ・カードのさらなる普及促進を行った。

また、ジョブ・カードセンターにおいて雇用型訓練の支援に加えて、ジョブ・カードを応募書類、実務経験の評価、キャリアコンサルティングに活用する企業等の開拓・支援を重点的に実施した。

2019年12月末現在のジョブ・カードの作成者数は2,399,624人となっている。

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