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- 第2部第3章第1節 産業集積の推進等
第2部 令和元年度においてものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策
第3章 ものづくり基盤産業の育成に関する事項第1節 産業集積の推進等
1.新たな集積の促進又は既存集積の機能強化及び新規産業等に係る支援機能の充実
(1)伝統的工芸品産業の振興対策事業(10億65百万円)
伝統的工芸品産業の振興に関する法律に基づき、(一財)伝統的工芸品産業振興協会及び伝統的工芸品の各産地の特定製造協同組合等に対し、後継者育成事業や需要開拓事業等に対する補助を行った。具体的には、初心者に対する技術継承研修や中級者に対する実技指導研修などの人材育成の取組及びパリ、中国・重慶でのテストマーケティングや展示会への出展、広報活動の強化などの需要開拓の取組を支援した。
(2)地域中核企業ローカルイノベーション促進事業(20億15百万円)
地域経済の担い手となる企業群の新事業への挑戦を促すため、以下の取組等を実施した。
- 地域のイノベーションを支える支援機関(大学、公設試験研究機関、金融機関等)からなる支援ネットワークの構築
- 支援ネットワークが新事業に取り組む地域企業群に提供する、事業の立ち上げから市場獲得までの、事業の成長段階に応じた総合的な支援(事業戦略策定、事業体制整備、研究開発、販路開拓、ノウハウ提供など)
また、国際市場に精通した専門家等で構成される「グローバル・ネットワーク協議会」を通じ、グローバル市場も視野に入れた事業化戦略の立案や販路開拓等を支援した。
(3)インフラシステム輸出
官民一体となったインフラシステム輸出を推進するため、経協インフラ戦略会議を4回(第42回~第46回)開催し、地域別・分野別・横断的テーマについて議論を行った。6月に開催された同会議では「インフラシステム輸出戦略」を改訂、本邦企業の競争力の向上を目指し、機関投資家等の負担軽減や企業のアフリカ市場参画を支援するスキームの創設やO&Mビジネスへの参画を後押しする円借款の制度改善、環境関連の新技術を活用したプロジェクトを対象に通常より付保率を引き上げる環境イノベーション保険創設等の公的金融支援強化策を打ち出した。さらに、「質の高いインフラの国際スタンダード化」を主導するため、APEC参加エコノミー向けにピアレビュー及びキャパシティビルディングの手順をまとめた「レファレンスガイドブック」を改訂、2019年12月に公表した。
(4)レアアース・レアメタル対策<経産省、文科省>
高付加価値産業に必要不可欠なレアアース・レアメタル対策については、特定供給国の政策に左右されない産業構造の確立を目指して、代替材料・使用量削減技術開発やリサイクル等を推進している。2012年度から実施している「次世代自動車向け高効率モータ用磁性材料開発」を新たに「輸送機器の抜本的な軽量化に資する新構造材料等の技術開発事業」と名称を変更し、モータの高効率化・小型化を実現するため、従来以上に強力かつ希少金属の使用を大幅に削減した磁石材料の開発を行っている。また、「資源循環システム高度化促進事業」により、我が国の都市鉱山の有効利用を促進し、資源の安定供給及び省資源・省エネルギー化を実現するため、廃製品・廃部品の自動選別技術及び高効率製錬技術の開発を行っている。
さらに、消費国間の連携強化として、レアメタル主要消費国である日米欧の政策当局者及び技術専門家が、レアメタル供給を取り巻く世界的な問題について共通理解を深め、レアメタル代替技術やリサイクル技術などといった将来の安定供給を目指した情報交換を行うため、日米欧三極クリティカルマテリアル会合を毎年開催している。2019年度は1月にベルギーにおいて第9回目の会合を開催した。
(5)地域経済牽引事業支援事業(7億50百万円)
地域未来投資促進法の計画承認を受けた事業者が中小企業と連携して行う、戦略分野(成長ものづくり(医療機器、航空機、新素材等)、地域商社、観光等)における設備投資を支援した。
(6)地域未来オープンイノベーション・プラットフォーム構築事業(12億円(2018年度補正))
地域経済の担い手となる企業群等によるイノベーションが創出されるエコシステムが形成されるよう、公設試験研究機関・大学等によるイノベーション支援体制構築に資する設備導入・人材育成等を支援した。
(7)医療機器産業の振興
日本の優れた「ものづくり技術」を活用した医療機関等との「医工連携」による開発・事業化事業及び医療機器開発支援ネットワークを通じた医療機器開発・実用化支援並びに日本が強みを持つロボット技術や診断技術等を活用した世界最先端の医療機器の開発を推進した。また、開発の指針となる開発ガイドライン(手引き)の策定を実施した。
2.環境性能の高い製品の普及促進等
(1)次世代自動車普及目標・長期ゴール
日本は、2030年の新車販売台数に占める次世代自動車の割合を5~7割(ハイブリッド自動車30~40%、電気自動車・プラグインハイブリッド自動車は20~30%、燃料電池自動車は3%程度、クリーンディーゼル自動車は5~10%)にする普及目標を設定している。また、2050年までの長期ゴールとして、世界で供給する日本車について1台あたり温室効果ガス8割程度削減を目指すとともに、究極的には電源のゼロエミッション化とも連動し、燃料から走行までトータルでの温室効果ガス排出量をゼロにする「Well-to-Wheel Zero Emission」を掲げている。
2019年6月にとりまとめた2030年度の乗用車燃費基準においては、2030年における電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車の普及目標と整合的で、2016年度実績値に対して32.4%の改善を求める野心的な基準値を設定した。
(2)環境性能に優れた自動車に対する自動車関係諸税
2019年度税制改正において、環境性能に優れた自動車に対する軽課措置のうち、自動車税及び軽自動車税のグリーン化特例については、適用期限を2年間(2019年4月から2021年3月末まで)延長した上で、2021年4月からは適用対象を電気自動車等に限定することとなった。また、自動車重量税のエコカ―減税については、軽減割合を見直すとともに、2回目車検時の免税対象を電気自動車等や極めて燃費水準が高いハイブリッド車に重点化した上で、適用期限を2年間(2019年5月から2021年4月末まで)延長した。さらに、消費税率の引き上げに伴い2019年10月に廃止される自動車取得税に代わり、環境性能に応じて0~3%(軽自動車については0~2%)を課税する環境性能割が導入され、引き続き、排出ガス性能及び燃費性能が優れた環境負荷の小さい自動車・軽自動車に対する軽減措置が維持されることとなった。
(3)次世代自動車普及に向けた取組(321億円)
運輸部門における低炭素化に貢献するだけでなく、災害時に非常用電源として活用することが可能な次世代自動車の普及を促進するため、車両や外部給電器等の購入支援を行った。
また、電気自動車等の普及に必要な充電インフラの整備を促進するため、充電設備及び設置工事費の一部補助を通じて高速道路のサービスエリア、パーキングエリアや道の駅、マンション等への整備を進めた。
さらに、2020年3月末までに約120か所の水素ステーションを整備し、燃料電池自動車や水素ステーションの低コスト化に向けた技術開発や規制の見直しなどを進めた。
(4)高性能建材等の実証・普及に向けた支援(551億80百万円の内数)
既存住宅の断熱・省エネ性能の向上を図るため、工期短縮可能な高性能断熱建材や蓄熱、調湿等の付加価値を有する省エネ建材の導入の実証を支援した。
(5)J-クレジット制度(3億80百万円)
J-クレジット制度は、省エネ・再エネ設備の導入等による温室効果ガスの排出削減量等をクレジットとして認証する制度である。本事業により、中小企業等の省エネ・再エネ設備投資等を促進するとともに、クレジット活用による国内での資金循環を促すことで「環境と成長の好循環」の実現を図った。
3.産業界の取組に関する支援
(1)サポカー補助金(1127億円)
高齢運転者による交通事故が相次いでいることを踏まえ、2019年度補正予算において、高齢運転者の交通安全対策として、65歳以上の高齢者を対象に、安全運転支援装置を搭載した安全運転サポート車(サポカー)の購入等を補助するサポカー補助金を実施した。
具体的には、対歩行者衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進抑制装置を搭載したサポカーの購入に対しては最大10万円、後付けのペダル踏み間違い急発進抑制装置の購入・設置に対しては最大4万円の補助を行った。
(2)多様なモビリティ導入支援事業(7億70百万円)
2019年6月の「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」を踏まえ、高齢運転者の自動車に代わる移動手段についての検討を行い、電動アシスト自転車については、高齢者等に対して安全講習会の実施を前提とした貸出事業を支援するとともに利用形態に係るデータ収集を実施し、電動車いす等については、認知度向上のため、安全対策を含めた普及促進を行うとともに、利用可能性を拡大するための実証事業を行うことを決定した。