経済産業省
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第2部 令和元年度においてものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策
第3章 ものづくり基盤産業の育成に関する事項
第2節 中小企業の育成

1.取引条件の改善

(1)下請等中小企業の取引条件の改善

サプライチェーン全体にわたる取引環境の改善を図ることを目的とした対策パッケージ「未来志向型の取引慣行に向けて」(2016年9月公表)に基づき、2020年2月末までに自動車や電機・情報通信機器など14業種39団体において、取引適正化と付加価値向上に向けた「自主行動計画」が策定された。

また、2017年4月より全国に80名規模の下請Gメンを配置し、下請中小企業ヒアリング調査を開始しており、2018年4月にはその規模を120名体制に拡大し、年間4,000件のヒアリングを実施している。2019年12月、中小企業庁において、各団体が実施した自主行動計画のフォローアップ調査結果及び下請Gメンによるヒアリング調査結果をとりまとめて公表した。両調査結果の突き合わせを行い、改善の動きが鈍い業種については、更なる取組を要請している。加えて、自主行動計画の策定団体の拡大(機械製造業4団体、航空宇宙工業、紙・紙加工業、建材・住宅設備産業)にも取り組んだ。

2015年12月から設置された「下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議」(計13回開催)同会議での決定事項等は、働き方改革を進める上での課題(長時間労働是正や生産性向上等)等を検討するため、2017年9月に設置された「中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」に引き継がれ、同会議の下で引き続き、関係省庁が連携して取り組むこととなり、2020年2月末までに同会議を2回、同会議の下に設置された①下請等中小企業の取引条件改善に関するワーキンググループ、②中小企業・小規模事業者の最低賃金引上げ力ワーキンググループ、③中小企業・小規模事業者の長時間労働是正・生産性向上と人材確保に関するワーキンググループの3つのワーキンググループを延べ28回開催した。

(2)下請代金支払遅延等防止法(下請法)

下請取引の適正化、下請事業者の利益保護のため、公正取引委員会と中小企業庁が密接な協力関係の下、下請法を執行した。中小企業庁は、約4万5千件の親事業者、当該親事業者と下請取引を行う約20万件の下請事業者に対して書面調査を実施するとともに、下請法違反事実に関する情報提供・申告等を行うための「申告情報受付窓口」により、下請法違反に関する情報収集を行ったほか、2019年度には、830社の親事業者へ立入検査等を行い、うち支払遅延、下請代金の減額等の下請法違反又は違反のおそれが認められた738社の親事業者に対し、書面による改善指導を行うなど、下請法の厳格な運用に努めた。

(3)下請中小企業振興法(下請振興法)

2020年1月31日に、下請中小企業振興法の「振興基準」に、①「新たな型取引のルール」に基づき、型取引の適正化を図ること②下請中小企業の業務効率化を目的に「受発注システム等の電子化」に積極的に対応することなどについて盛り込み、改正を行った。改正された振興基準については、改正内容を産業界が策定する「自主行動計画」や国が策定する業種別下請ガイドラインにも反映することとなっている。

大企業等の問題のある取引に対しては、下請法による厳正な対応のみならず、下請振興基準の遵守徹底も図っていく。

(4)下請取引適正化のための普及・啓発

①下請かけこみ寺(9億57百万円の内数)

全国48か所に設置した「下請かけこみ寺」において、中小企業の取引に関する相談対応、裁判外紛争解決手続(ADR)を実施した。

②講習会、セミナーの開催等(9億57百万円の内数)

下請代金法の違反行為を未然に防止するため、親事業者の調達担当者等を対象として下請代金法や下請ガイドライン(自動車産業など18業種)の講習会を全国で開催した。また、下請等中小企業の経営者や営業担当者が、親事業者への価格交渉を行う上で必要な価格交渉ノウハウについて、セミナーを行った。さらに、広く下請法等の遵守を呼びかけるシンポジウム等を開催した。

2.中小企業の経営の革新及び創業促進

(1)経営革新の促進

経済的環境の変化に即応して中小企業が行う新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動を行うことにより、経営の相当程度の向上を図る経営革新を支援するため、以下のような支援措置を行った。

①新事業活動促進資金(財政投融資)

中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画の承認を受け、経営革新のための事業を行う個別の中小企業者、組合及び任意グループに対し、(株)日本政策金融公庫が融資を実施した。

②中小企業信用保険法の特例

中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画の承認を受け、当該事業を行う際の資金供給を円滑化するために、信用保証協会において、中小企業信用保険法に規定する普通保険、無担保保険及び特別小口保険等の特例による支援を実施した。

(2)創業・ベンチャーの促進

①新創業融資制度(財政投融資)

(株)日本政策金融公庫が、新たに事業を開始する者や事業を開始して間もない者に対し、無担保・無保証人で融資を実施した。

②創業者向け保証

民間金融機関による創業者への融資を後押しするため、信用保証協会において、これから創業する者又は創業後5年未満の者等を対象とする保証制度を実施した。

③ファンド出資事業

民間の投資会社が運営する投資ファンドについて、中小機構が出資(ファンド総額の1/2以内)を行うことで、民間資金の呼び水としてファンドの組成を促進し、創業又は成長初期の段階にあるベンチャー企業(中小企業)や新事業展開等により成長を目指す中小企業への投資機会の拡大を図る事業である。起業支援ファンドについては、累積出資先ファンド数116件、出資約束総額2,828億円、累積投資先企業数3,128社に至った。また、中小企業成長支援ファンドについては、累積出資先ファンド数117件、出資約束総額8,870億円、累積投資先企業数1,652社に至った(両ファンドともに2019年12月末実績)。また、「健康・医療事業分野投資促進出資事業」を活用し、2020年2月までに中小企業成長支援ファンドを7件組成した。

④エンジェル税制

創業間もない中小企業への個人投資家(エンジェル)による資金供給を促進するため、一定の要件を満たす中小企業に対して、個人投資家が投資を行った時点と、当該株式を譲渡した時点において所得税の優遇を受けることができる制度。当該制度を通じて、創業間もない企業の資金調達を支援した。

⑤女性、若者/シニア起業家支援資金(財政投融資)

多様な事業者による新規事業の創出・育成を支援するため、(株)日本政策金融公庫が、女性や35歳未満の若者、55歳以上の高齢者のうち新たに事業を始める者または開業しておおむね7年以内の者に対し融資を実施した。

⑥グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業(8億円の内数)

起業家や、企業内の新規事業担当者を、世界をリードするベンチャー企業を輩出するシリコンバレーに派遣して、グローバル市場への進出や社会課題の解決といった事業目線の高い新事業を創出する人材の育成を図った。また、起業家やベンチャー支援人材、大企業等とのビジネスマッチングの開催や広範なネットワーク形成の場を提供するとともに、イノベーションの創出に大きく貢献したベンチャー企業を称える「日本ベンチャー大賞」の授与等を行い、新事業創出のための基盤形成を図った。

(3)新事業促進支援事業

中小企業による新事業活動の促進を図るため、「中小企業等経営強化法」、「地域産業資源活用促進法」、「農商工等連携促進法」に基づき、中小企業者が行う新商品、新サービスの開発や、それらの販路開拓の取組に対し、予算、融資等を活用した支援を実施した。

①地域産業資源活用・農商工等連携事業(23億85百万円の内数)

上記各法律に基づく計画の認定を受けた中小企業者が、当該計画に従って行う試作品開発や販路開拓等に要する経費の一部を補助する事業であり、2019年度は83件の地域産業資源活用事業・小売業者等連携支援事業と24件の農商工等連携事業を採択した。

②新事業活動促進資金(財政投融資)

(株)日本政策金融公庫が、事業計画の認定を受け、当該事業を行う中小企業に対し、融資を実施した。

③中小企業信用保険法の特例

事業計画の認定を受け、当該事業を行う際の資金供給を円滑化するために、信用保証協会において、中小企業信用保険法に規定する普通保険、無担保保険及び特別小口保険等の特例による支援を実施した。

④商業・サービス競争力強化連携支援事業(130.9億円の内数)

中小企業等経営強化法に基づいて認定された異分野連携新事業分野開拓計画に従って行う中小企業・小規模事業者が、産学官連携して行う新しいサービスモデルの開発等を支援することとし、2019年度は34件採択した。

(4)中小企業の海外展開支援

国内での需要減少や国際競争の激化による産業構造の変化等に直面するなか、中小企業が成長するためには、アジア等の新興国をはじめとする成長著しい海外市場で新たな需要を獲得することが喫緊の課題となっているため、中小企業の本格的な海外展開に向け、資金面を含め総合的な支援策を講じていくこととした。

①現地進出支援強化事業(23.9億円の内数)

中小企業の海外展開を後押しするため、(独)日本貿易振興機構及び(独)中小企業基盤整備機構による情報提供、海外展示会や商談会等を通じた販路拡大支援、商談後のフォローアップ、現地進出後の事業安定・拡大支援(プラットフォーム事業)等、段階に応じた支援を提供し、海外進出、また発展させるまでを一貫して支援した。

②JAPANブランド育成支援事業(23.9億円の内数)

複数の中小企業が連携し、自らが持つ素材や技術等の強み等を踏まえた戦略を策定し、当該戦略に基づいて行う商品の開発や海外展示会への出展等に必要な取組に要する経費の一部を補助する事業であり、2019年度は48件の事業を採択した。

③海外展開・事業再編資金(財政投融資)

経済の構造的変化に適応するために海外展開または海外展開事業の再編を行うことが経営上必要な中小企業の資金繰りを支援するため、(株)日本政策金融公庫による融資を実施した。

④海外展開を担う人材育成の支援(44億3百万円の内数)

●技術協力活用型・新興国市場開拓事業(研修・専門家派遣事業)

開発途上国のリーダーとしての活躍が期待される産業人材に対し、日本企業が有する専門技術やノウハウ、経営管理手法等の習得に向けた日本への受入研修、専門家派遣による現地指導に対する支援をすることで我が国企業の海外進出や開発途上国の発展を促進するもの。具体的には、アジアをはじめとする開発途上国の産業技術者や経営管理者等の人材を対象に日本国内の企業の製造ライン等現場を活用した研修や、我が国からの専門家派遣による現地企業でのOJTを含む技術指導等に対する支援を行った。

●技術協力活用型・新興国市場開拓事業(国際化促進インターンシップ事業)

急拡大する新興国市場に対応できるグローバル人材を育成し、中小企業の国際展開等を促進するため、海外学生等のインターン受入を実施した。

⑤海外知的財産プロデューサーによる支援((独)工業所有権情報・研修館運営費交付金の内数)(再掲 第2部第1章第1節3.(6)参照)

⑥知的財産に関するワンストップ相談窓口「知財総合支援窓口」(再掲 第2部第1章第1節3.(6)①参照)

⑦中小企業等外国出願支援事業(再掲 第2部第1章第1節3.(6)②参照)

⑧中小企業等海外侵害対策支援事業(再掲 第2部第1章第1節3.(6)③参照)

⑨新輸出大国コンソーシアム(249億63百万円の内数(当初)、29億円の内数(補正))

JETRO、中小企業基盤整備機構、商工会議所、商工会、金融機関等の支援機関を結集するとともに、幅広い分野における247名の専門家を確保(2020年3月3日時点)し、海外展開を図る中堅・中小企業に対して、事業計画の策定から販路開拓、現地での商談サポートに至るまで、総合的な支援をきめ細かに実施した。

3.中小企業のものづくり基盤技術強化

(1)戦略的基盤技術高度化支援事業(再掲 第2部第1章第1節1.(4)②参照)

(2)中小企業・小規模事業者人材対策事業(13億67百万円の内数)

地域の中小企業・小規模事業者が、そのニーズに応じ、地域内外の女性・シニア等の多様な人材から、必要な人材を確保するため、企業の魅力発信やマッチングの促進等を行った。また、製造現場の経験が豊富な人材や、IoTやロボットに知見を有する人材等が指導者としての汎用的なスキルを身につけるための研修を実施し、育成した指導者を製造業等の中小企業・小規模事業者の現場に派遣する「スマートものづくり応援隊」の拠点を2019年度末時点で全国34か所に整備。

さらには、次世代自動車の技術等に知見を有する人材等が指導者としての汎用的なスキルを身につけるための研修を実施し、育成した指導者を自動車製造業等の中小企業・小規模事業者の現場に派遣する「サプライヤー応援隊」を新たに立ち上げ、2019年度末時点で全国8か所に拠点を整備。

(3)中小企業大学校における人材育成支援((独)中小企業基盤整備機構交付金の内数)

中小企業の人材育成を支援するため、中小企業大学校において、中小企業等の工場長や生産現場の監理・監督者を対象に、効果的な品質管理、原価管理、工程管理のノウハウを提供する「工場管理者養成コース」を実施した。

(4)中小企業等経営強化法

中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画を策定し、認定された企業に対し、中小企業経営強化税制や日本政策金融公庫の融資制度等税制面や金融面の支援を講じ、2020年1月末時点において、100,339件を認定。

(5)中小企業投資促進税制

機械装置等を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円超の法人を除く)ができる措置。2019年度税制改正において、適用期限を2年間延長(2020年度まで)することとされた。

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