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経済産業省設備投資調査
「平成11年度の民間設備投資計画について」(主なポイント)
産業政策局調査課
産業政策局産業資金課
1. 調査結果概要
10年度の民間設備投資計画は、長引く景気低迷を受けて、前回調査からの修正率は6.3%減となり、結果として対前年度比7.4%減と大幅な減少の見込みとなった。
11年度については、投資計画策定中とした企業が多く不確定要素があるものの、前回調査からの修正率は7.6%減となり、結果として対前年度比1.7%減(製造業11.7%減、非製造業4.5%増)と3年連続前年度比減少の見込みとなった。産業別には、製造業が前年度比で11.7%減と前年に引き続き2ケタの減少となる見込みとなり(前回調査からの修正率は9.4%の減)、非製造業については同4.5%増(修正率は7.1%減)と増加の見込みとなった。
なお、9年度実績は前年度比2.1%減と3年振りに減少となった。
10年度 | 11年度 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
10年秋調査 (修正計画) |
11年春調査 (実績見込) |
10年秋調査 (計画) |
11年春調査 (修正計画) |
|||
対前年度比 | 全産業 (除く電気) |
▲1.1 (▲3.7) |
▲7.4 (▲6.3) |
1.9 (▲5.6) |
▲1.7 (▲2.9) |
|
製造業 | ▲5.0 | ▲10.4 | ▲13.9 | ▲11.7 | ||
非製造業 (電気) (除く電気) |
1.7 (6.7) (▲2.0) |
▲5.2 (▲5.6) (▲4.8) |
2.1 (3.1) (0.9) |
4.5 (1.5) (7.1) |
||
修正率 | 全産業 | ▲6.3 | ▲7.6 | |||
製造業 | ▲5.4 | ▲9.4 | ||||
非製造業 | ▲6.8 | ▲7.1 |
- 対象企業:通商産業省所管業種のうち、資本金1億円以上の企業
- 回答企業数:1,254社(回収率60.2%)
- 調査時点:平成11年3月31日
2. 設備投資計画の動向
(1)全産業の動向
11年度の設備投資修正計画は全産業で対前年度比▲1.7%、特に製造業において▲11.7%と弱い動き。前回調査との修正率も▲7.6%と大幅な下方修正。要因として考えられるものは以下の通り。
- 長期の需要低迷等による設備稼働率の落ち込み、今後の見通しの不透明感による設備過剰感の高まり
- 10年度における企業収益状況の大幅なマイナス、企業のキャッシュフローの減少による設備投資資金の減少
- 戦略的に拡大すべき事業分野、利益事業への投資の集中等リストラの本格化による設備投資資金の減少

(2)業種別の動向(別紙1参照)
平成11年度の製造業全体の設備投資額は対前年度比▲11.7%と2年連続の減少。
基礎素材産業では、パルプ・紙(同21.0%減)、石油精製(同20.6%減)等の減少により全体では同14.1%減となった。
加工組立産業においても、一般機械(同25.9%減)、電気機械(同7.6%減)等の減により全体では同10.0%減となった。

平成11年度の非製造業全体の設備投資額は、卸・小売(同6.6減)が減少したものの、リース(同6.2%増)、電気(同1.5%増)が増加したこと等により全体で対前年度比4.5%増の伸び。

(3)企業規模別の動向
平成11年度の設備投資計画を規模別に見ると、大企業全体で対前年度比1.8%減に対し、中堅企業全体では同0.1%減となった。
大企業 | 中堅企業 | |
---|---|---|
全産業 | ▲1.8(92.1) | ▲0.1(7.9) |
製造業 | ▲12.2(93.4) | ▲2.8(6.6) |
非製造業 | 4.9(91.4) | 1.0(8.6) |
(4)目的別設備投資の動向
製造業における目的別設備投資をみると、合理化・省力化投資及び研究開発投資に加え、全体に占める構成比は低いものの環境保全投資のシェアの増加の割合が顕著であった。

生産能力増強 | 更新、維持補修 | 研究開発 | 省エネ、代エネ | 環境保全 | 合理化・省力化 | 情報化 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
構成比の増減 | ▲1.6 | +0.2 | +1.0 | +0.0 | +0.7 | +0.4 | +0.2 | ▲0.9 |
同 増減割合※ | ▲4.5% | +1.3% | +9.5% | +0.0% | +21.2% | +2.5% | +10.0% | ▲6.0% |
(5)研究開発投資の動向
8割を越える企業が研究開発を行う目的として「現在生産している製品の高付加価値化」を選択している。研究開発費の実績及び計画の推移を見ると景気低迷による収益悪化を受けて減少傾向。

10年度 | 11年度 | |||
---|---|---|---|---|
全産業 | ▲2.1 | ▲0.6 | ||
製造業 | ▲2.3 | ▲0.6 | ||
基礎素材 | ▲4.7 | ▲1.1 | ||
加工組立 | ▲1.3 | 0.0 | ||
非製造業 | ▲1.8 | 0.8 |
(6)情報化関連投資の動向
情報化関連投資は、設備投資額に対する割合で見ると9-10年度共通回答ベースでは割合が増加しているが、10-11年度共通回答ベースでは割合が微減となった。
情報化関連投資の実施状況としては、「ネットワーク環境整備」、「執務環境のOA化」、「CAD/CAM」、「クライアント/サーバシステム」を実施済みとする企業が多い。
9年度 | 10年度 | 11年度 | |
---|---|---|---|
9~10年度共通企業 | 10.9% | 11.8% | - |
10~11年度共通企業 | - | 6.3% | 6.2% |

3. 企業の資金調達を巡る動向
内部資金を主体とした資金調達が中心であり、平成11年度においてはその傾向が一層顕著
◇設備投資に係る長期資金調達については、引き続き内部資金中心で行われる見込みである。11年度については、借入金がマイナスになっており、設備投資を手控えた資金で借入金返済を計画する動きが読みとれる。

◇直接金融による資金調達に関しては、「金融仲介機関の競争促進」、「社債等に係る手数料体型の見直し」が引き続き回答として多いほか、新たに「発行流通段階におけるCPのペーパーレス化」や「社債登録法のあり方の検討も含めた社債・流通市場の整備」をあげた企業があった点が注目される。

- 1.金融仲介機関の競争促進(免許制から登録制への移行や業態別子会社の業務分野規制撤廃)31.9
- 2.SPC法(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律)の使い勝手の改善14.2
- 3.社債、国債等に係る元利手数料、当初登録手数料等の手数料体系の見直し37.4
- 4.5年物利付国債の発行解禁等、国債の償還期間の多様化2.4
- 5.適格機関投資家の範囲の拡大9.7
- 6.社債に係る発行登録制度を利用できる企業の範囲拡大12.0
- 7.企業の経営内容に関するディスクロージャーの充実14.8
- 8.時価会計の導入等、会計基準の適正化及び国際的調和の促進12.9
- 9.インベスターズ・リレーションズ(投資家向けの広報活動)の充実11.9
- 10.ディスクロージャーの電子化促進3.1
- 11.店頭市場改革の一層の促進4.0
- 12.上場、店頭登録前の株式の流通市場の整備5.3
- 13.発行・流通段階におけるCPのペーパーレス化8.9
- 14.社債、流通市場の整備(社債登録法のあり方等の検討を含む)14.2
- 15.特にない19.8
- 16.その他1.0
4. 設備投資を巡る環境
我が国経済システムの直面する課題
経済システムの懸念項目として「金融システム不安」と「株価下落問題」を回答した企業が大幅に減少し、「雇用問題の顕在化」が大幅に増加。「消費の低迷」は依然として高い水準で回答が多い。
これまでの景気・金融対策については「ある程度効果が出ている」と回答する企業が増加。
◇企業の懸念項目は、昨年来の金融対策を受けて金融システム不安(53.3%、前回86.0%)が大幅に減少。また、株式市況の回復により株価下落問題(21.4%、前回50.2%)も大幅に減少。これに対し、最近の企業倒産増加やリストラ等の影響により雇用問題の顕在化(53.0%、前回23.8%)が大幅に増加している。消費の低迷(79.6%、前回74.4%)は増加しており、今回の調査では企業の最大の懸念項目となっている。

- 1.株価下落問題
- 2.地価下落問題
- 3.金融システム不安
- 4.コーポレートガバナンス(企業統治システム)の問題
- 5.雇用問題の顕在化
- 6.消費の低迷
- 7.為替レートの動向
- 8.米国の景気動向
- 9.高齢化に伴う負担増の影響
- 10.産業の空洞化
- 11.その他
◇これまで実施・予定されている景気・金融対策については、将来効果が見込まれるとする企業が半数を超えたほか(53.2%、前回48.1%)、期待ほどではないが効果が出ている(26.4%、前回2.1%)とする企業も大幅に増加している。

- 1.十分効果が出ている
- 2.期待ほどではないか効果が出ている
- 3.現在効果は出ていないが、将来効果が見込まれる
- 4.現在効果が出ておらず、将来も効果が見込まれない
- 5.その他
9-10共通企業 | 10-11共通企業 | 対前年度比伸び率 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
企業数 | 9年度 実績額 | 10年度 実績見込 | 企業数 | 10年度 実績見込 | 11年度 計画 | 10/9 | 11/10 | |||
全産業 | 1,567 | 169,572 | 156,960 | 1,467 | 144,969 | 142,549 | ▲7.4 | ▲1.7 | ||
(除く電気) | 1,523 | 126,508 | 116,298 | 1,424 | 104,312 | 101,276 | ▲8.1 | ▲2.9 | ||
製造業 | 1,220 | 72,894 | 65,278 | 1,146 | 55,565 | 49,079 | ▲10.4 | ▲11.7 | ||
繊維 | 55 | 668 | 654 | 50 | 596 | 598 | ▲2.2 | 0.3 | ||
パルプ・紙 | 59 | 3,899 | 2,588 | 57 | 2,580 | 2,039 | ▲33.6 | ▲21.0 | ||
化学 | 154 | 7,807 | 7,876 | 143 | 6,872 | 5,473 | 0.9 | ▲20.4 | ||
石油精製 | 37 | 3,115 | 2,146 | 37 | 2,337 | 1,856 | ▲31.1 | ▲20.6 | ||
窯業・土石 | 69 | 1,642 | 1,173 | 69 | 1,015 | 932 | ▲28.6 | ▲8.2 | ||
鉄鋼 | 95 | 5,420 | 5,660 | 95 | 5,574 | 4,958 | 4.4 | ▲11.1 | ||
非鉄金属 | 96 | 4,174 | 4,085 | 92 | 3,918 | 3,803 | ▲2.1 | ▲3.0 | ||
一般機械 | 160 | 5,142 | 4,544 | 145 | 3,832 | 2,840 | ▲11.6 | ▲25.9 | ||
電子機械 | 146 | 15,088 | 11,978 | 125 | 9,072 | 8,593 | ▲20.6 | ▲5.3 | ||
電気機械 | 59 | 4,402 | 4,005 | 56 | 3,640 | 3,363 | ▲9.0 | ▲7.6 | ||
自動車 | 83 | 14,375 | 14,160 | 80 | 9,962 | 9,367 | ▲1.5 | ▲6.0 | ||
その他 | 207 | 7,163 | 6,411 | 197 | 6,167 | 5,256 | ▲10.5 | ▲14.8 | ||
非製造業 | 347 | 96,678 | 91,682 | 321 | 89,403 | 93,470 | ▲5.2 | 4.5 | ||
同上(除く電気) | 303 | 53,614 | 51,019 | 278 | 48,747 | 52,197 | ▲4.8 | 7.1 | ||
電気 | 44 | 43,063 | 40,663 | 43 | 40,656 | 41,273 | ▲5.6 | 1.5 | ||
ガス | 17 | 3,439 | 3,547 | 17 | 3,547 | 3,597 | 3.1 | 1.4 | ||
熱供給 | 12 | 258 | 221 | 12 | 221 | 175 | ▲14.6 | ▲20.8 | ||
鉱業 | 14 | 363 | 260 | 14 | 260 | 355 | ▲28.4 | 36.3 | ||
卸・小売 | 73 | 4,630 | 4,584 | 67 | 4,049 | 3,784 | ▲1.0 | ▲6.6 | ||
リース | 43 | 42,696 | 40,302 | 41 | 38,988 | 41,401 | ▲5.6 | 6.2 | ||
サービス | 144 | 2,228 | 2,105 | 127 | 1,682 | 2,885 | ▲5.5 | 71.5 |
